ゼレンスキー大統領夫人が米国議会で演説

 ※ 今日は、こんなところで…。

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「宮崎正弘の国際情勢解題」 
      令和四年(2022)7月28日(木曜日)
          通巻第7416号  <前日発行>
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 ゼレンスキー大統領夫人が米国議会で演説
   80年前の宋美齢のアジテーション演説を彷彿させた
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 1943年2月18日、宋美齢が米国議会で演説するというチャンスを与えられた。宋美齢は日本軍を「侵略者」と見立て、支援を要請した。

 宋美齢は政治宣伝戦争で、米国議会をいかにたらし込むかを心得ていた。蒋介石も、宋美齢にしたがってキリスト教に改宗したと偽っていた。

 宋美齢は「1937年に日本が中国に全面戦争を仕掛けたとき、各国の軍事専門家は中国にチャンスの幽霊すら与えなかった」と歴史をねじ曲げた見解を述べた。日本はPKO(平和維持軍)で北京に軍を派遣していたが、中国共産党の仕掛けた謀略的発砲事件で、戦争に巻き込まれた。

 およそ八十年後、2022年7月20日、ウクライナ大統領夫人のオレーナ・ゼレンスカは「ウクライナへの支持拡大を訴え、プーチンの侵略軍が「私たちの人々を破壊している」と警告した。
 
 米国は情勢判断を誤り、中国を支援するために数十億ドルを援助したが、1941年から1951年の間に31億ドル(今日のお金で約500億ドル)の援助をなした。

 2月24日から現在までに米国は540億ドルのウクライナへの援助を承認した。それでもウクライナは「足りない。金をくれ、武器を呉れ」と獅子吼している。
 
 米国議会は、ゼレンスキー大統領夫人の演説直後に、追加で30基のハイマース供与を決めた。ロシアはハイマースの設置場所や保管場所を索敵し、長距離ミサイルで破壊している。戦争は泥沼に這入り込んだ。

 ▲ウクライナ、ルトワックやランド・ポール議員を「ロシアの代理人」
 
 ゼレンスキー政権は著名な外国人等を「ロシアの代理人」と規定し、ブラックリストに乗せた。当該の人たちはツィッター、フェイスブックなどでウクライナ政府批判を展開している。

 シカゴ大学教授で地政学の大家ミアシャイマー教授、国防戦略アナリストとして日本で有名なルトワック、米連邦上院議員でウクライナへの武器供与に反対するランド・ポール、フランスでは国民戦線のルペンもブラックリスト入りである。

 なかでも注目はバイデン政権に近い前下院議員のトゥルシー・ギャバードだ。彼女はサモア生まれでヒンズー教徒、志願兵としてイラクでも戦った退役少佐でもあり、TPP反対論者。2020年には最年少で大統領選挙にも立候補した。
 彼女がなぜブラックリスト入りか、全米メディアが注目した。

      □☆□☆み□☆☆□や☆□☆□ざ☆□☆□き☆□☆□         』

北朝鮮のGDP、昨年0.1%減 韓国銀行推計

北朝鮮のGDP、昨年0.1%減 韓国銀行推計
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM271B30X20C22A7000000/

『【ソウル=甲原潤之介】韓国銀行(中央銀行)は27日、北朝鮮の2021年の国内総生産(GDP)推計を発表した。物価の影響を除いた実質ベースで前年に比べ0.1%減り、4.5%の大幅減となった20年に続き2年連続のマイナス成長だった。今年に入っても米欧の経済制裁や新型コロナウイルスの影響で、域内経済の低迷が続いているとみられる。

業種別では鉱工業が6.5%減となり、落ち込みが大きかった。石炭の採掘が減り鉱業は11.7%の大幅減となった。製造業も3.3%減で、食品や化学などの分野で生産が落ち込んだ。サービス業も卸売や小売りの低迷で0.4%減った。

鉱工業などの不振は、新型コロナの感染対策で中国との間の物流や人流を大幅に制限したことが主因だ。中国の税関当局によると、21年の北朝鮮との貿易総額は新型コロナ感染が広がる前の19年と比べて8割減った。

北朝鮮は16~17年に核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を繰り返し、国連安全保障理事会が経済制裁を科した。現在も中国への主要輸出品である石炭の取引が禁止され、経済低迷の一因になっている。17年以降の5年間で実質GDP推計がプラスになったのは19年の1回しかない。

一方、農林水産業は6.2%増と、集中豪雨の影響などで7.6%の大幅減だった20年から生産量が回復した。電気・ガス・水道業も6.0%増とGDPの押し上げ要因になったが、鉱工業などの低迷を補えなかった。

21年の名目国民総所得(GNI)は36.3兆ウォン(3兆6千億円)で、韓国の58分の1と推計した。56分の1だった20年から南北の格差は開いた。

経済が低迷するなかでも、金正恩(キム・ジョンウン)総書記は軍事力の強化を続ける方針を示す。22年に入り少なくとも28発の弾道ミサイルを発射し、近く7回目の核実験に踏み切るとの観測も出ている。

韓国銀行は関連機関から取り寄せたデータを基に北朝鮮の経済成長率を毎年推計している。北朝鮮は自らの経済指標を定期的に公表していない。21年に国連に提出した報告書では19年のGDPが335億400万ドル(4兆5千億円)だったとした。』

韓国GDP、4~6月0.7%増 輸出低迷で先行き減速も

韓国GDP、4~6月0.7%増 輸出低迷で先行き減速も
民間消費は好調、半導体市況悪化が足かせに
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM25BOE0V20C22A7000000/

『【ソウル=細川幸太郎】韓国銀行(中央銀行)が26日発表した2022年4~6月期の国内総生産(GDP、速報値)は、物価の影響を除いた実質ベースで前期比0.7%増え、8四半期連続のプラスとなった。衣類や旅行など民間消費が伸びてGDPを押し上げた。ただ、中国向け輸出低迷や半導体市況の変調によって先行きは減速懸念が高まっている。

民間消費は3.0%増と成長をけん引した。新型コロナウイルスの行動制限緩和を背景に宿泊や文化活動といったレジャー消費が好調で、衣類や靴などファッション販売も伸びた。足元では韓国でも新型コロナウイルスの感染者が増加傾向で、韓国銀行は「感染再拡大によって消費者心理の萎縮が見られ、下半期のリスク要因となる」とした。

韓国経済の屋台骨である輸出は3.1%減と振るわなかった。中国の都市封鎖(ロックダウン)を背景に中国企業の生産活動が低下したことが化学製品や鉄鋼製品の輸出減につながり、20年4~6月期以来のマイナス幅となった。パソコンやスマートフォンの販売不振で、輸出金額の2割を占める半導体の市況にも陰りが見え始めている。

半導体市況の変調は設備投資にも波及し、4~6月期は前期比1.0%減った。設備投資の減少は4四半期連続。SKハイニックスが4500億円をかける新工場の建設計画を延期し、サムスン電子が投資金額を抑制するなど投資低迷は長期化する可能性がある。

建設投資は、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権によるマンション供給拡大政策を背景に建設案件が活発で0.6%増だった。

韓国銀行は2月時点で3.0%としていた22年の成長率見通しを、5月に2.7%へと下方修正した経緯がある。延世大学の成太胤(ソン・テユン)教授は「輸出の改善は見られず、継続的な利上げで消費はさらに減速する。4~6月期の成長率を下半期も維持するのは難しい」と分析。さらなる下方修正は避けられないとの見方が強まっている。』

米韓野外訓練、8月に4年ぶり再開 同盟再構築打ち出す

米韓野外訓練、8月に4年ぶり再開 同盟再構築打ち出す
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM252C50V20C22A7000000/

『【ソウル=甲原潤之介】米韓軍は8月下旬に実施する合同演習で、野外での機動訓練を4年ぶりに再開する。野外訓練を交えた大規模演習は米朝の非核化交渉直前の2018年4月を最後に中断している。野外訓練の再開は韓国の政権交代を機に同盟関係を強化し、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮を抑止する米韓の戦略の一環でもある。

韓国の李鐘燮(イ・ジョンソプ)国防相が22日、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に合同演習の方針を説明した。8月下旬~9月初旬の期間中に陸海空軍あわせて11の野外機動訓練を実施すると伝えた。尹氏は「しっかり進めてほしい」と指示した。

米韓は17年まで合同軍事演習を毎年、春と夏~秋の2回開いていた。18年6月の史上初の米朝首脳会談を踏まえ、同年秋の演習を中止した。19年以降はコンピューターシミュレーションを用いた指揮所訓練にとどめている。

5月に発足した尹政権は文在寅(ムン・ジェイン)前政権の南北融和路線からの転換を打ち出している。尹政権にとって初めての米韓合同軍事演習となる8月の訓練を同盟強化の象徴として位置づける。

米韓は今回の演習を「乙支(ウルチ)フリーダムシールド(自由の盾)」と名付けた。17年までの「乙支フリーダムガーディアン」との呼称を引き継ぎつつ修正し、米韓の結束を再構築する意図を込めている。

野外訓練の再開の背景には、北朝鮮に対する米韓の危機感もある。北朝鮮は22年に入り少なくとも28発の弾道ミサイルを撃ち、すでに年間の発射数で過去最多を更新した。変則軌道や複数種の同時発射など新たな戦闘技術を試しており、近く7回目の核実験に踏み切る兆候もある。

米韓が訓練を控えていた間に非核化交渉は頓挫し、北朝鮮は軍事技術を高めた。李国防相は「高度化する北朝鮮の核・ミサイルに対する能力の補完は国防の最優先課題だ」と話す。

合同軍事演習の中心になるのが米韓の陸軍の戦闘訓練だ。砲弾の運用やヘリコプターからの射撃、前方部隊への補給、爆発物処理などについても共同での対処の手順を確認する。
敵が保有する核や生物・化学兵器などの大量破壊兵器を共同で除去する訓練も予定されている。17年に実施した際は北朝鮮の生物・化学兵器の施設に模した建物に入り、敵を制圧して兵器を除去するシナリオを採用した。北朝鮮の核の技術向上により訓練の重要性が高まる。

軍事演習では米韓の空軍機による訓練も予定されている。核兵器を搭載できる戦略爆撃機などを登場させるかどうかが焦点になる。海軍は海上から敵の動きを監視する「哨戒作戦」の演習をする。

尹政権は北朝鮮のミサイル攻撃に対し「3軸体系」と呼ぶ3段階の防御態勢の構築をめざす。①相手の発射兆候を捉えて先制打撃する「キルチェーン」②発射された後に空中で迎撃するミサイル防衛③攻撃を受けた後の大量反撃報復――だ。

北朝鮮の能力が上がるなか、韓国側にも新たな軍事技術が必要になる。そのうえで米軍が持つ探知や攻撃の能力も求められている。韓国政府は米韓両軍の様々な階層で訓練を重ね、連携を円滑にすることが急務とみる。

北朝鮮は反発しそうだ。北朝鮮外務省は21日、同省軍縮・平和研究所の副所長による英国メディアのインタビューでの発言をホームページで公開した。米韓合同軍事演習について「我々に核先制打撃を加えるための実戦演習なのは明らかだ」と批判した。』

インドネシア、日本産食品の輸入規制撤廃 首脳会談

インドネシア、日本産食品の輸入規制撤廃 首脳会談
G20サミットへ協力確認
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA272J30X20C22A7000000/

『岸田文雄首相は27日、首相官邸でインドネシアのジョコ大統領と会談した。首相は共同記者発表で、ジョコ氏からインドネシアで一部に残っていた日本産食品の輸入規制を完全に撤廃したとの説明があったと明かした。ジョコ氏は日本企業による投資拡大に期待を示した。

両首脳は11月にインドネシアで開く20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)の成功に向けて協力すると確認した。

ジョコ氏は共同記者発表で「G20が国際的な経済危機からの回復に寄与していきたい」と主張した。「日本と優先アジェンダを常に調整していきたい」と語った。

日本とインドネシアの経済連携協定(EPA)に関し「G20サミットで改正議定書に署名することで一致した」とも表明した。インドネシア産のマグロやパイナップル、バナナに日本が課す関税の軽減・撤廃を要望したと説明した。

首相は「G20サミットの成功に向け引き続きインドネシアを支え緊密に連携していく」と述べた。インドネシアでの水力発電所の完成に向けた436億円程度の円借款を供与すると伝えた。

両首脳の正式な会談は4月にインドネシアで会って以来となる。両首脳は自由で開かれたインド太平洋の実現へ連携すると確かめた。海上保安や安全保障を巡り協力を深めると合意した。

日本からインドネシアへの巡視船供与に関する覚書の署名を歓迎した。陸上自衛隊は8月にインドネシアで実施される多国間の共同訓練に初めて参加する。会談ではインフラや気候変動、エネルギー、防災など幅広い分野での連携強化も話し合った。

Twitterで最新情報を発信 https://twitter.com/nikkeiseijibu/?n_cid=MCH998 』

アフガンで宗教少数派へテロ インドはシーク教徒にビザ

アフガンで宗教少数派へテロ インドはシーク教徒にビザ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB254V70V20C22A7000000/

『イスラム主義組織タリバンが制圧したアフガニスタンで、同国の宗教少数派を狙ったテロが相次いでいる。6月には首都カブールでシーク教徒の礼拝施設が武装集団の襲撃を受け、過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出した。シーク教徒が比較的多い近隣のインドは緊急ビザ(査証)を発給し、少なくとも11人の同教徒が特別便でカブールを離れた。

攻撃を実行したのはアフガンのIS系勢力であるISホラサン州だ。2021年8月にタリバンがカブールを掌握してからシーク教徒がテロリストの攻撃を受けたのは初めて。カブールでは4月以降、主にイスラム教シーア派、同教の神秘主義スーフィー派へのテロが相次ぎ、計数百人の市民が殺害されていた。

ISはアフガンで多数派のイスラム教スンニ派を主体とする組織だが、タリバンは宗教少数派の安全を保証すると表明している。だが、少数派は、タリバンの治安維持能力への疑念を強めている。

カブール警察の報道官は「武装した反乱勢力」が6月18日朝、礼拝施設に入る前に手りゅう弾を投げ込んだとツイートした。タリバンの治安部隊と戦闘になり、数時間後に武装メンバーは全員、死亡した。2人のシーク教徒、複数の治安部隊メンバーも命を落とした。

シーク教徒側は、身の安全が保証されていないと考えるようになった。カブールに近いガズニ州出身のシーク教徒(42)は「6月の攻撃で、私たちは脅かされていると感じた」と話した。

アフガンにおけるシーク教徒へのテロはこれが初めてではない。20年3月にもカブールでシーク教徒の礼拝施設が襲撃され、少なくとも25人が死亡した。その際にもISが犯行を認めた。
テロリストに襲われたカブールのシーク教徒の礼拝施設で泣き叫ぶ女性(2020年3月)=ロイター

インドで宗教多数派のヒンズー教徒もアフガンでは少数派で、シーク教徒と同じく迫害を受けてきた。多くがアフガンの国外に逃れてきた。

アフガンの主要メディア、トロニュースの調べでは、シーク教徒とヒンズー教徒の人口は1980年代に計20万人を超えた。だが90年代、前回のタリバン政権の際に計約1万5000人に減った。米国務省の報告書によると、21年末時点では計150人にすぎない。

タリバン暫定政権の内務省報道官は、日本経済新聞に対し「私たちはヒンズー教徒の同胞に対し、国内にとどまるよう常に求めてきた。信教の自由を侵害するものはない」と主張した。

タリバンはISと対立している。アフガンでテロが相次げば、タリバンによる同国の統治が揺らぎ、ISには都合のよい環境になる。

ISは傘下の通信社のウェブサイトで公表した6月の犯行声明で、インド政府高官の一人がイスラム教の預言者ムハンマドを侮辱した疑いがあるため「シーク教とヒンズー教の寺院」が攻撃を受けたと指摘した。

アフガンに残るヒンズー教徒やシーク教徒の多くは襲撃を恐れ、礼拝施設を避けて海外への移住を希望している。6月のテロ後、インド内務省は21年9月の申請に基づき、アフガンのヒンズー教徒とシーク教徒の計100人以上に緊急ビザを発給した。

(寄稿 ニューデリー=カニカ・グプタ)
この記事の英文をNikkei Asiaで読む
Nikkei Asia https://asia.nikkei.com/Politics/International-relations/Afghanistan-turmoil/Afghanistan-minorities-fear-for-future-despite-Taliban-assurances/?n_cid=DSBNNAR 』

スリランカ前大統領、帰国の見通し 現地報道

スリランカ前大統領、帰国の見通し 現地報道
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM26BSL0W2A720C2000000/

『【ムンバイ=花田亮輔】スリランカのラジャパクサ前大統領が近く帰国する見通しであることがわかった。スリランカ政府報道官の話として、現地メディアが26日報じた。具体的な日時は明らかになっていない。ラジャパクサ氏は経済危機に端を発した抗議活動の高まりを受けて同国を出国し、辞任していた。

スリランカでは食品や燃料の不足や高騰といった経済危機が深刻になり、政権の要職を一族で占めてきたラジャパクサ氏への批判が高まった。9日には多数のデモ隊が大統領公邸などを占拠する事態に発展した。

ラジャパクサ氏は同国を13日に離れ、モルディブ経由で14日にシンガポールに到着していた。シンガポール外務省は報道機関向けの声明で「(ラジャパクサ氏は)私的訪問として入国を許可された」と説明していた。同氏を巡っては、シンガポールから中東をめざすとの見方もあった。

ラジャパクサ氏の辞任を受け、首相や大統領代行を務めてきたウィクラマシンハ氏が21日に新大統領に就任した。通常は国民による直接選挙で大統領が選ばれるが、ラジャパクサ氏の任期途中での出国・辞任により、憲法などの規定に従い議会での投票によって選出された。ラジャパクサ氏は「挙国一致」を訴え5月に、野党の統一国民党(UNP)からウィクラマシンハ氏を首相に起用していた。

大統領に就いたウィクラマシンハ氏のもと、新たな首相には与党スリランカ人民戦線(SLPP)のグナワルダナ氏が任命されている。グナワルダナ氏はラジャパクサ前政権で外相や教育相を務めた。新政権に対するラジャパクサ氏の影響力を懸念する声もあるなか、今後の同氏の処遇に注目が集まりそうだ。』

チュニジア、独裁回帰の懸念 大統領権限強化へ国民投票

チュニジア、独裁回帰の懸念 大統領権限強化へ国民投票
「アラブの春」から後戻り
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR234540T20C22A7000000/

『【チュニス=久門武史】チュニジアで25日、サイード大統領の権限を強化する新憲法案を問う国民投票が実施された。承認されるとの見方が多く、反対派は「独裁回帰」と批判を強める。中東の民主化運動「アラブの春」で唯一の成功例とされた同国が後戻りを始めた背景には、経済低迷による議会不信がある。

25日は朝から30度を超す暑さのなか、投票所となった首都チュニス中心部の小学校を訪れる有権者が途切れなかった。「憲法じゃなくて生活よ。経済悪化を止められない議会と政党にノーを言いに来たの」。主婦のナスィーバさん(60)はパンの値上がりに愚痴をこぼしながら、サイード氏の権限強化を支持した。

憲法学者出身のサイード氏による権限掌握は「ソフトなクーデター」とも評される。ちょうど1年前の2021年7月25日、新型コロナウイルスの感染拡大や経済の悪化による反政府デモを受け、首相を解任し議会を停止した。議会の機能不全に嫌気がさしていた市民が歓迎したのを見て、司法権への介入、議会解散と段階的な権力集中を進めた。

国民投票にかけた新憲法案では、大統領が閣僚の任免権や議会の解散権、優先的な法案提出権を握る。任期は2期10年までだが、国家の「急迫の危険」を理由に延長でき、解任の規定は消えた。チュニス・エル・マナール大のザカラウィ・スガイエル教授(憲法学)は「大統領に強い力を与え、議会の監視が利かなくなる。民主化の歩みを無にする」と警告した。

チュニジアは11年の「ジャスミン革命」でベンアリ大統領の長期独裁政権を市民の反政府デモが倒し「アラブの春」の先駆けとなった。続いて独裁政権が崩壊したアラブの国では民主化の挫折が相次いだ。

エジプトはムバラク政権が退陣に追い込まれたが、軍出身のシシ大統領による強権的な統治に回帰した。リビアは約42年続いたカダフィ政権が崩壊後、国が東西に分裂し内戦に陥った。

これに対し14年制定の現行憲法で大統領と首相に権力を分散したチュニジアは民主的な選挙を重ね、例外的な成功とみなされてきた。新憲法案は起草委員会のベライド委員長が「独裁体制に道を開く」と不支持を表明し、サイード氏が解散した議会で最大の議席を握っていたイスラム政党アンナハダは国民投票のボイコットを訴えた。

ただ反大統領の動きは広がりを欠く。議会の不作為こそが経済の行き詰まりを招いたとの見方からだ。国際通貨基金(IMF)によると21年の1人当たり国内総生産(GDP)は、革命が成就した11年に比べ14%縮んだ。新型コロナウイルスの感染が拡大した20年は経済成長率がマイナス9%に悪化し、失業率は2割に迫った。

「大学を出て4年たっても職にありつけない。政争に明け暮れる議会には失望している」。チュニスの路上で果物を売るジャセルさん(26)は「強い大統領に戻せばいい」と訴えた。「有権者の多くは革命前の方が経済はましだったと感じ、デモで何かが解決するとは期待していない」とスガイエル氏はみる。

強権統治が復活したエジプトは民主化が頓挫したが、政情の安定が外資誘致の呼び水になった。世界がコロナ禍でマイナス成長に沈んだ20年でさえ、3%台の経済成長を達成した。民主化に成功したチュニジア市民が、失敗した国をうらやむかのような光景だ。

【関連記事】

・チュニジア新憲法案、大統領の権限強化へ25日国民投票
・「アラブの春」逆行止まらぬチュニジア カギ握る労組
・[FT]チュニジア新憲法案が大統領に許す「不名誉な独裁」

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東京大学 公共政策大学院 教授
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分析・考察

アラブの春で唯一成功例といえるのがチュニジアのケースであったが、それも数年前から厳しくなり、ついにアラブの春で勝ち取った憲法を手放すことになるというのは何とも皮肉な話。バイデン政権が「民主主義対専制主義」という図式で世界を見ようとしているが、民主主義が良いものだと思っている国は必ずしも多くなく、途上国の多くは政治参加や自由な政治活動よりも生活の安定や豊かさを求めている。グローバル化が進展する中で、国家が持ちうる経済安定機能、再配分機能が低下しつつあり、政治的な参加よりも国家の権力を効率的に行使することを求める人たちも多くいることは忘れてはならないだろう。
2022年7月26日 2:38 』

ウクライナ産穀物の輸送船監視、共同調整センター開所へ

ウクライナ産穀物の輸送船監視、共同調整センター開所へ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR265MW0W2A720C2000000/

『【ドバイ=福冨隼太郎】ウクライナ産穀物の輸出再開を巡りトルコ国防省は26日、船舶の「共同調整センター」が27日に同国イスタンブールで開所すると発表した。ウクライナが目指す週内の輸出再開に向けて一歩前進したかたちだ。一方でロシアは港湾への再攻撃の可能性を示唆しており、輸出が実現できるか不透明感は残る。

ロシアのタス通信も26日、同国国防省が同センターが活動を始めたと明らかにしたと報じた。

共同調整センターの設置は、22日にロシアとウクライナの間で結ばれた穀物の輸出再開に関する合意項目の一つだ。黒海の出入り口に位置するイスタンブールに置かれる。ウクライナの港から穀物などを運ぶ船舶を監視する役割を担う。船舶はセンターに事前登録し、武器を積んでいないかなどの検査を受けたうえで特定の航路を通る。

ウクライナ政府高官は25日、週内にも穀物輸出を始める方針を明らかにしていた。南部チョルノモルシク港からの週内の出航を期待しているという。国連高官は、本格的な輸出の再開は数週間以内で、それ以前にいくつかの船が試験的に航行するとの見通しを示した。
合意の履行にはなお不透明感が漂う。ロシアは合意直後の23日に、輸出拠点の1つとなるウクライナ南部オデッサ港をミサイルで攻撃した。ロシア側はウクライナの軍艦などが標的だったと主張した。だが英国防省は26日、軍事標的が「ミサイルが命中した場所にあった兆候はない」との分析を示した。

ロイター通信などによるとロシアのラブロフ外相は25日、「合意はロシアによるウクライナの軍事インフラへの攻撃を継続することを妨げない」と指摘した。ラブロフ氏の発言は港湾への攻撃が今後も起きうることを示唆したものだ。

ロシアの強硬姿勢は合意履行の見返りとして、欧米による制裁の緩和を引き出すのが狙いとみられる。ラブロフ氏は24日に、ロシア産穀物の輸出に対する欧米制裁の緩和を求める発言をした。

ウクライナ大統領府によると同国のゼレンスキー大統領は25日、記者団に「輸出のために必要な全てを行う予定だ」と語った。仲介役の国連とトルコがロシアをどれだけコントロールできるかが問題とも指摘した。

合意を仲介したトルコのエルドアン大統領は25日、同国国営放送のインタビューで「ロシアとウクライナ両国が合意に基づく責任を果たすことを求める」と述べた。仲介国として合意の実行を進めると強調した。

【関連記事】

・穀物輸出「ロシアは合意順守を」 駐日ウクライナ大使
・ウクライナ大統領「穀物輸出、必ず始める」
・ロシア・ウクライナ、穀物輸出再開で合意 黒海に「回廊」』

ウクライナ軍、欧米供与の武器で反攻へ ドイツ戦車到着

ウクライナ軍、欧米供与の武器で反攻へ ドイツ戦車到着
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR2682Q0W2A720C2000000/

『【ロンドン=佐竹実】ウクライナ軍が、欧米から供与されたロケット砲などの武器で攻勢を強めている。ドイツが供与したゲパルト対空戦車もウクライナに到着し、ロシアが実効支配を進める東部や南部での反攻を本格化させる。英国防省は26日、ロシアは対艦ミサイルを重要な脅威と位置づけているとの見方を明らかにした。

英国防省は26日の戦況分析で、「ロシアは対艦ミサイルを黒海艦隊の有効性を制限する重要な脅威と位置づけていることはほぼ間違いない」と指摘した。ロシアはオデッサ攻略のための水陸両用攻撃に踏み切ることができず、侵攻計画が大きく損なわれているとした。
米シンクタンクの戦争研究所は25日、ロシア軍によるウクライナ東部ドネツク州の主要都市制圧が困難になっているとの見方を示した。攻めにくい地形でもない小さな集落の攻略に数週間を要しており、ロシア軍は攻撃を続けるうちに消耗していくと分析した。

ウクライナのレズニコフ国防相は25日、ドイツが供与したゲパルト対空戦車が到着したことを明らかにした。米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、ドイツがウクライナに戦車を送ると公表したのは4月で、供与に3カ月を要したものの、新たな戦力が加わることになる。

ロイター通信によると、ウクライナ軍は米国から供与された高機動ロケット砲システム「ハイマース」を使って、ロシア軍の50の弾薬庫を破壊した。レズニコフ氏はウクライナ軍がいくつかの橋を正確に攻撃し「ロシア軍の補給路を断った」と主張した。

南部ミコライウでは26日未明、ロシア軍によるミサイル攻撃があった。ロイター通信などが同市市長の話として伝えた。ミコライウはウクライナ軍が反撃姿勢を強めるロシア占領下のヘルソンに近い。市長は「黒海方面から大規模なミサイル攻撃があった」とした。』

EU、ガス消費15%削減で合意 ロシア産供給減に対応

EU、ガス消費15%削減で合意 ロシア産供給減に対応
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR2639U0W2A720C2000000/

『欧州連合(EU)は26日、ブリュッセルでエネルギー相理事会を開き、8月から2023年3月までの天然ガスの消費を過去5年の平均に比べて15%減らすことで合意した。ロシアが欧州へのガス供給を一段と減らし、欧州のガス在庫が枯渇する懸念が強まっているためだ。ただ一部の加盟国に配慮して例外規定を設けるなど実効性には課題もある。ガスの安定調達に向け綱渡りが続く。

「EUはプーチン(大統領)によるガスの完全な供給途絶の脅威に立ち向かうための一歩を踏み出した」。フォンデアライエン欧州委員長は声明を出し合意を歓迎した。EUは21年にロシアから需要全体の4割にあたる1550億立方メートルの天然ガスを輸入。15%の削減が実現すれば450億立方メートルの節約になるが、例外規定を設けたことで効果は薄れる可能性が高い。詳細は今後詰める。

ガスの消費削減については、EUの欧州委員会が20日に15%の「節ガス」案を提案していた。一部の加盟国が一律15%削減に反対したため、例外規定を設けることなどで合意にこぎつけた。具体的には加盟国が自主的な目標として実現に努め、ロシアがガス輸出を止めるなどの緊急事態になれば、欧州委が目標を加盟国に強制できる。

島しょ国など他の加盟国とガス網で結ばれていない国は除外する。発電をガスに大きく依存している国は目標を免除される可能性がある規定も設けた。十分なガスの貯蔵がある場合は目標の緩和を申請できる。鉄鋼や化学など重要な産業で使うガスは目標の対象外とできるルールも設けた。

EUが合意を急いだのは、ガス在庫の枯渇懸念が再び強まっているからだ。ロシア国営ガスプロムは25日、ドイツと結ぶパイプライン「ノルドストリーム」の供給量を8割減らす方針を明らかにした。

欧州は例年、ガスの不需要期の夏場に在庫を蓄え、暖房需要が増える冬になると消費量の半分を在庫でまかなう。24日時点では、ガスの貯蔵能力は67%と平年並みの水準に回復している。液化天然ガス(LNG)の4~6月の輸入量(金融情報会社リフィニティブ調べ)を約3300万トンと前年同期比5割増やしたのに加え、ロシアからの調達を継続した効果も大きかった。

ただ欧州ではLNGの受け入れ能力が限界に近い。リフィニティブのデータによると、7月のロシアから欧州への天然ガス供給量(主要パイプライン経由の合計)は、ノルドストリームの供給が削減される前の5月と比べ7割ほど減った。LNG輸入量はすでに受け入れ能力の上限に近い水準まで増やしており、これ以上の拡大は難しい。ドイツなどが進めるLNG受け入れ基地の新設や拡充も、今冬には間に合いそうにないものが多く、ロシアからの供給減を穴埋めするのは困難だ。

石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の白川裕氏の推計によると、ノルドストリームの供給量が8割減ったままの場合、高水準のLNG輸入を続けても、欧州のガス在庫は来年2月中に枯渇するという。EUが15%削減を実行できれば、こうした枯渇リスクも下がる見通しだ。

「節ガス」は企業活動などの停滞で欧州経済を冷やす懸念がある。ロシアがさらに供給を絞る可能性もある。EUの合意後も欧州の天然ガス価格は高止まりしており、日本時間26日夜時点で、1メガワット時当たり190ユーロ台半ばと前週末比で2割高い水準だ。在庫枯渇懸念は後退しておらず予断を許さない。

(竹内康雄、蛭田和也)

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鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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分析・考察

ロシアがノルドストリーム1の供給を40%で継続していれば、15%の節ガスでも備蓄を作ることはできるが、これが20%になると、備蓄に回すガスが無くなってしまうという恐れもある。そうなると発電用に使っている天然ガスを備蓄に回すことになり、足りない発電を石炭火力などに頼ることになる。そうすると、脱炭素の道筋はもっと厳しくなっていく。ロシアはそういうところを見越した形で供給量を減らしているのが憎らしい。
2022年7月27日 2:30 』

ロシア、極東で軍事演習実施へ 軍事力保有を誇示

ロシア、極東で軍事演習実施へ 軍事力保有を誇示
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR26E420W2A720C2000000/

『【ドバイ=福冨隼太郎】ロシア国防省は26日、8月30日から9月5日まで同国東部で戦略的軍事演習を行うと明らかにした。ウクライナ侵攻で兵力の損失を欧米から指摘されるなか、戦地から離れたロシア極東で演習を実施して広大な領土を防衛する通常の軍事力を有していると国内外に誇示する狙いがあるとみられる。

侵攻によるロシア側の損失をめぐっては、米中央情報局(CIA)のバーンズ長官が20日、侵攻したロシア軍の死者数が1万5000人程度、負傷者数は4万5000人程度に達しているとの分析を示している。英秘密情報部(MI6)のムーア長官も21日に「今後数週間でロシアは人員と物資の確保がますます困難になる」と指摘していた。

ロシア国防省は声明で「(ウクライナでの)特別軍事作戦に参加しているのはロシア軍の一部にすぎず、その数は最高司令官が定めた任務をすべて遂行するのに十分だ」と強調。ウクライナへの侵攻は訓練を実施する能力には影響しないとの認識を示した。

ロシア軍はウクライナ南部や東部などで攻撃を続けている。ウクライナメディアによると、南部オデッサ州では26日、ロシア軍機が黒海沿岸の町をミサイルで攻撃した。ウクライナ軍参謀本部は同日、東部ドネツク州クラマトルスク方面でもロシア軍が空爆を含む攻撃を試みたが、失敗したと発表した。
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小泉悠
東京大学先端科学技術研究センター 専任講師
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ひとこと解説

ロシア軍は毎年秋に各軍管区持ち回りで大演習を行います。今年は極東の東部軍管区の順番なので「ヴォストーク(東方)2022」という名称になるはずです。ちなみに演習実施地域には北方領土の択捉島と国後島が含まれるとされています。
ただ、前回の「ヴォストーク2018」が30万人近い兵力を動員した過去最大級の巨大演習だったのに対し、今年は兵力の大部分をウクライナに投入していますから、果たしてどうなるか。
もう一つの注目点は中国が付き合うかどうか(「ヴォストーク2018」には参加)。国防省発表では「一連の諸外国が参加」とされているだけなので、まだ参加国は調整中なのでしょう。
2022年7月27日 10:49 (2022年7月27日 11:01更新) 』

感染対策を怠ると懲役3~4年 中国ゼロコロナの恐怖

感染対策を怠ると懲役3~4年 中国ゼロコロナの恐怖
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM184CN0Y2A710C2000000/

『中国政府が新型コロナウイルス対策で、厳しい隔離やPCR検査を駆使する「ゼロコロナ」政策。その恐怖を象徴するのが、ルールに違反した住民らが逮捕される場合があることだ。東北部の遼寧省大連市では会社の幹部らが懲役3~4年ほどの実刑判決となった。一体何が起こったのか。

大連市で相次ぎ懲役判決

「コロナに関する違法な犯罪は法律に従って厳重に対処する」。大連市中級人民法院(地方裁判所に相当)の担当者らは5月17日、記者会見でこう強調し、3つの事件を説明した。
日本の地裁に相当する大連市中級人民法院(20日、遼寧省大連市)

最新の事例が、地元の裁判所が同日、公務員ら9人に一審判決を言い渡した事件だ。まず大連市内の一地域である荘河市の市場監督管理局・副局長である那氏が懲役3年3月、その部下の鄭氏が懲役3年となった。

荘河では2021年11月4日、地元企業の大連科強食品の冷凍倉庫で働く男性の感染が確認された。荘河を中心に感染が広まり、大連市全体の感染者は11月27日までに約350人に増えた。

那氏と鄭氏は科強食品の冷凍倉庫を監督する立場。一審判決は「2人の被告は倉庫内で貨物の消毒やPCR検査を正しく実行せず、ウイルスを外部に拡散させた」として、公務員らの職務怠慢罪を認定した。

裁判所は消毒やPCR検査を科強食品から請け負った外部企業3社などの幹部ら7人にも、それぞれ懲役1年3月~4年を言い渡した。感染防止を妨害した罪などを認定した。

大連では20年にも2つの事件が起き、二審判決が終了した。水産品加工の大連凱洋世界海鮮について、判決は「同年6~7月に輸入海産品に対するPCR検査を怠った。熱などのコロナの症状がある従業員を自由に出歩かせ、感染を広げた」と認定。4人の担当者らは懲役3年3月~4年6月となった。

港で貨物の積み下ろしをする会社の大連浩涵企業管理も20年12月、従業員の隔離やPCR検査を怠った罪が認定され、幹部ら3人が懲役3年3月~4年9月となった。
コロナが法定感染症になり、罪を適用

最高人民法院(最高裁に相当)によると、中国各地で大連と同じような有罪事件が起きた。20年1月に衛生当局が新型コロナを「法定感染症」に指定した結果、「職務怠慢罪」「感染症の防止を妨害した罪」などが適用されるようになった。当局は「新型コロナ防疫方案」と題したマニュアルを定期的に更新し、隔離などの方法を細かく規定している。市民や企業は法律違反を避けるため、これを順守しなければならない。

もっとも大連市の3事件は判決文が非公開で、量刑などが適切なのかを客観的に検証できない。同市に住む30代中国人男性は「市民や企業に警告するため、見せしめとして厳しい判決を出したのでは」と推測する。

中国ではコロナが広がった19年12月以降、感染抑え込みに失敗した各地方政府の幹部らが相次ぎ更迭や停職、免職となった。「政府の幹部らはクビが危うくなるのを恐れ、感染対策に必死」(30代男性)とみられ、政府には逮捕や実刑をちらつかせ、防疫ルールを厳守させる狙いがありそうだ。

中国のゼロコロナ政策には海外から批判も出ているが、中国共産党の幹部人事を決める党大会を22年秋に控え、習近平(シー・ジンピン)指導部はなお同政策を継続する構え。経済は冷え込み、住民の不満は高まるばかりだ。

(大連=渡辺伸)

[日経ヴェリタス2022年7月24日号掲載]
日経ヴェリタス https://www.nikkei.com/theme/?dw=20062208 』

[FT]新興国に迫る債務危機 カギ握る主要な貸し手・中国

[FT]新興国に迫る債務危機 カギ握る主要な貸し手・中国
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB254US0V20C22A7000000/

『世界銀行がリスクについて語るときは、気をもむように曖昧な表現にしがちで、具体的な破滅の予言を口にすることはそうそうない。そのため世銀が3月、「怒濤(どとう)の債務危機」が新興国に押し寄せているというリポートを公開したことは、ちょっとした事件だった。

ザンビアは莫大なインフラ整備費用にくわえ、主要産品である銅の輸出減少がデフォルトの原因となった=ロイター

世界が相次ぐデフォルト(債務不履行)の寸前にあるということは、それほど驚くような話ではない。

長期に及んだ世界的な超低金利時代はすでに終わりを迎えていたが、そこに新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が経済成長に打撃を与えた。

さらに、ロシアのウクライナ侵攻は大きな不確実性をもたらした。これに起因する燃料・食料の価格急騰はとりわけコモディティー(商品)純輸入国を動揺させ、通貨ドルの上昇は、ドル建て債務の急激な膨張につながった。

ザンビア、スリランカはデフォルト

この問題はあくまで大きな流れとしてとらえ、無責任な途上国政府への警鐘を鳴らすような訓話にはしないことが重要だ。新興国はパンデミック以前、大挙して借り入れをしていたわけではなかった。

怒濤と表現される危機も津波のように絶え間なく押し寄せるものではない。世銀は1980年代の中南米危機や2000年代の「重債務貧困国(HIPC)」現象に匹敵するような事態にはならないとみている。

それでも、債務に脆弱な国や政策運営でミスを犯した国は確かに危機に見舞われている。西側諸国の経済制裁を受けているロシアを別にすると、アフリカ南部ザンビアとスリランカなどがすでにデフォルトした。

両国の場合、莫大なインフラ整備費用が重荷となった。また、ザンビアは主要産品である銅の輸出減少、スリランカは観光業の収入減少が打撃となった。特にサハラ砂漠以南のアフリカでは、さらに多くの国が同じ方向へ向かっている。

デフォルトの波が押し寄せる時、金融機関や国際通貨基金(IMF)のような国際機関はこうした問題を建設的かつ経済成長を犠牲にせずに解決する準備ができているのだろうか。

数十年、いや数世紀も練習を積んだ後、債権国はソブリン債(国債や政府機関債など)を再編する予測可能な合理的な手法を編み出しているはずだと思うかもしれない。

そう思っている人は国際的な資本フローが変化したことと、債権者がまとまりを欠いていることを見落としている。しかも今回は、中国という大きな新しい要因が存在する。

債権者の間で公正な負担の分担を達成するために、ソブリン債再編を規則化する試みは過去に何度もあった。1976年、国の借り入れの大部分が銀行融資だった時代に商業銀行の債権者機関「ロンドンクラブ」が立ち上げられ、80年代の中南米債務危機の最中に多用された。

だが、借り入れが資本市場へ移行した後、ロンドンクラブは本質的にあまり意義を持たなくなっている。公的な債権者の負担軽減については56年、ほかならぬデフォルトの「常習犯」であるアルゼンチンの債務危機に対処するために「パリクラブ」が創設された。

パリクラブはHIPCの債務救済措置のような危機の解決で重要な役割を担った。しかし、民間部門の債権者にも国家債務の損失処理負担を強いることでは常に苦労してきた。

IMFは20年前、民間投資家にも損失を負担させる公的な破産手続き(「国家債務再編メカニズム」)の立ち上げを果敢に試みたが、あえなく失敗した。

借り手は次第にソブリン債の契約にリストラを容易にする条項を加えるようになったが、対象の範囲と効果は不完全だ。

国家破綻は、公的な救済措置と民間債権者がからむ場合は今でも場当たり的に解決されており、競合する債権者委員会が複数存在することもある。債務危機にある国のソブリン債で稼ぐ債券投資家が訴訟を起こした場合、解決には特に時間がかかりがちだ。

欧州連合(EU)は2010年、ユーロ圏債務危機の真っただ中に民間債権者を再編に巻き込む独自の公式な枠組みを立ち上げようとした。だが、独仏首脳が打ち出した債務再編案「ドービル提案」は公的な救済プロセス全般と同様におざなりにされ、やがて廃案となった。
主要20カ国・地域(G20)は20年、パンデミックの最中に「債務措置に係る共通枠組み」を立ち上げたが、確実な結果をもたらす仕組みとしては曖昧すぎる。

西側の民間債権者も問題

このため新たなデフォルトの波が起きた場合、いつものような急ごしらえの債権者枠組みで解決されることになる。これに加え、重要な二国間債権者に台頭した中国という不確実性が加わる。

中国はパリクラブの一員ではない。同国は先進国が率いるグループへの参加には一貫して消極的だった。

中国による融資は、それぞれアプローチが異なる多様な政府機関経由で実施されており、なかには広域経済圏構想「一帯一路」のインフラ開発など、政治的な思惑が絡んでいるものもある。中国は債務減免を個別に、二国間で、しかも内密に交渉することを好む。

力を増してきた中国は取引内容の不透明さや多国間主義の原則の無視、ルールを守らないことなどをよく批判されてきた。中でも、債務危機の解決は世界貿易機関(WTO)のルール違反と並び、中国が話題にされることが多い分野だ。

多くの場合は妥当な批判だが、豊かな国も自分たちが策定した債務再編のルールを守ってきたと自慢できるわけではない。アフリカ数カ国では、中国の国家債務の保有比率が高いとされるが、西側諸国の民間債権者の保有比率のほうが高いことが多い。西側諸国はこうした民間債権者を十分に監督しているとは言えない状況だ。

難しい交渉、必至か

迫りくる新興国の債務危機の解決は、中国が関係するようになった今、今まで以上に時間がかかり、より大きな苦痛を伴うことになるだろう。今は官民双方のすべての債権者を縛る体系的な債務処理の仕組みを作る好機だ。

だが、債権問題以外の政策協議の場における中国の態度と、中国が主要債権国になる前から続く同国の協調姿勢のなさをみるに、新たな枠組みの策定は期待できないだろう。デフォルトする国は先行き、難しい交渉を覚悟しなければならない。

By Alan Beattie

(2022年7月20日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2022. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation. 』

あふれる「思想なき保守」

あふれる「思想なき保守」 宇野重規・東京大学教授
 「シン・保守」の時代(中)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD04CUW0U2A700C2000000/

『「保守主義」は政治的な立場を論じる際に用いられるが、真意を理解して使われる例は昨今ほとんど見られない。男女平等や外国人との共生に抵抗するネット右翼、古いものを無批判に賛美する精神性とは無縁なのに、それらと同一視する言説が流布している。現代は「曖昧な保守論がインフレした時代」と定義できる。

起源は18世紀半ばまで遡る。欧州で絶対主義や封建主義を打倒する市民革命が起こり、「社会は理想の未来に向けて邁進(まいしん)する」という進歩主義が興隆した。フランス革命が顕著な例で、既存の制度一切を白紙に戻し、望ましい社会をゼロから再構築することを目指した。

模範を過去ではなく未来に求める進歩主義は楽天的で傲慢だとも言える。歴史や伝統には知恵や配慮が込められているし、私たちの理想通りに人類社会が発展するわけでもない。急進的な進歩主義を批判して、自由を守る伝統的な制度や習慣を守り、漸進的な改革を求める立場として保守主義の思想は生まれた。

ある思想に対するブレーキ役となり、20世紀でも価値を持ち続けた。ロシア革命で実現した社会主義や、「大きな政府」の下で福祉国家を目指す米国リベラリズムの対抗軸になり得たからだ。

現代では進歩主義の存在自体が危うくなっている。労働者による革命や計画経済を目指した社会主義や、大きな政府による社会改良を信じたリベラル派が大きく衰退したからだ。理想の社会像を失った結果、保守主義も対抗軸を見失い迷走する事態が起きている。

保守主義は日本に存在したのか。戦後を代表する2人の知識人、丸山真男と福田恆存は、1960年の安保闘争の頃にはすでに「保守主義の不在」を指摘していた。

丸山は、現行の政治体制を自覚的に守る立場は現れなかったという。欧米から新しい思想や制度を輸入することにあくせくする日本の伝統は、保守主義を何かと関連付けることもなく受容した。その結果、ズルズルとなし崩し的に現状維持を好む「思想なき保守」ばかりが目立つようになった。

福田は、日本における2つの断絶を指摘した。江戸時代以前の制度や慣習を捨て欧米化に走った明治維新と、事実上の征服を経験させられた第2次世界大戦での敗戦だ。過去との連続性が絶たれた社会では、何が自分たちに大切かを共有できず、保守主義を確立させるのは難しいといえる。

デジタル空間も議論の場に

現代の日本で以前のように保守と進歩を対比して語ることが有用かは分からない。政治家や政党の間ですら保守主義は誤用されるし、かつて進歩主義が唱えた社会の展望は全く見えないからだ。

だが、今後も保守主義に意味を持たせ続けるには、一人ひとりが「本当に大切なもの」「保守したいもの」を自発的に問い直し、他者と共有して行動することが必要だ。地域社会に目を向ければ、祭りや芸能、自然と密着した暮らしが受け継がれている。こうした財産が、守るべき歴史や伝統だと考えることもできる。

若者の政治離れも指摘されるが、政治や社会との関わり方は古典的な選挙運動やデモ活動に限定しない方がよい。SNS(交流サイト)などのデジタル空間を活用し、「守りたいもの」を共有する他者と関わり、それに向けて議論することも一つの社会参加ではないか。
今後はオタク文化や特定の商品や人物に熱狂した人同士の集団(ファンダム)を取り込むことが保守にとっても重要になりそうだ。現代的な通信手段を前提に「保守」をよりダイナミックに捉えることが求められている。

(聞き手は渡部泰成)

うの・しげき 1967年生まれ。専門は政治思想史。著書に「トクヴィル 平等と不平等の理論家」(サントリー学芸賞)、「保守主義とは何か」、「民主主義とは何か」など。

【「シン・保守」の時代】

(上)「愛国」への誤解乗り越える 将基面貴巳オタゴ大学教授 』

「北京封鎖」解除はウクライナ対策 習氏が狙う和平関与

「北京封鎖」解除はウクライナ対策 習氏が狙う和平関与
編集委員 中沢克二
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK241MF0U2A720C2000000/

『首都北京への「よそ者」の侵入を許さぬ堅固な長城を取り払う封鎖解除には、秋の中国共産党大会の後まで見据えた党総書記兼国家主席の習近平(シー・ジンピン)の遠謀がある――。

これは新型コロナウイルスを徹底して抑え込む「ゼロコロナ」政策の転換という話題ではない。習政権がかたくなに拒否してきた外国首脳の訪中、北京入りに突然、ゴーサインを出したのだ。あくまでも中国外交上の「北京封鎖」解除である。

栄えある最初の外国首脳として25日深夜、北京郊外の首都国際空港に到着したのは、インドネシア大統領のジョコだ。外国首脳の北京入りは、2月4日の北京冬季五輪開会式に伴うロシア大統領、プーチンらの訪中以来となる。例外だった五輪首脳外交を除けば、ジョコ訪中は、2020年に中国でゼロコロナが打ち出された後、初の本格的な対面式2国間首脳外交の始動だといえる。

26日、北京で会談したインドネシアのジョコ大統領(左)と中国の習近平国家主席=インドネシア大統領府提供

これまでは、各国外相らが訪中しても決して北京には入れず、天津、福建省など首都から離れた地で会うのが常だった。北京の空港は最近まで海外からの直行旅客便さえ受け入れなかった。北京に入るビジネス客らはまず北京以外の地に到着し、そこで長期隔離を強いられてきた。異常ともいえる厳格さだ。

11月のG20サミットでウクライナ問題の仲介役も

首都防衛を最優先する外交上の北京封鎖の解除には、習の並々ならぬ意気込みが感じられる。なぜなのか。習は国外に出ていないコロナ禍の2年余り、ジョコと6回も電話で協議した。22年だけですでに2回を数える。

中国はインドネシアとの良好な関係を最大限、生かし、20カ国・地域(G20)のなかで新興国の「盟主」の地位を固めたい。自由主義陣営の主要国(G7)と距離を置くだけに、新興国が多数派のG20こそがよりどころだ。

折しもG20の22年の議長国はインドネシアである。そのトップであるジョコが、ウクライナ侵攻で制裁を受けるロシアと、当事国のウクライナが直接対話する機会をつくろうと動き出したのだ。

ジョコがめざすのは11月15、16両日、バリ島で開くG20首脳会議(サミット)における戦闘の当事国首脳同士の対面である。橋渡し役への意欲はポーズだけではない。すでにウクライナとロシアの両国に足を運んだ。ウクライナの首都キーウ(キエフ)では同国大統領のゼレンスキーと会談し、G20サミットへの出席を求めた。続いてモスクワではプーチンにも会った。

ウクライナのゼレンスキー大統領(右)と握手するジョコ氏(6月29日、キーウ) =ロイター

中国はロシアによるウクライナ侵攻を一切、非難できない。侵攻開始前の2月の中ロ首脳会談の共同声明に「北大西洋条約機構(NATO)の拡大反対」と明記したためだ。ウクライナ問題は中国外交の足かせとなり、米欧などが「対中包囲網」を狭める要因の一つになった。

G20サミットを巡っては、米国などがロシア排除と、ウクライナの参加を求めている。米国をけん制したい中国にとって、日本、韓国を含むジョコの東アジア諸国歴訪は自らの力をアピールする絶好の機会だ。利用しない手はない。

今後、当事者が直接対話する機が熟せば、インドネシアと組んで仲介役を担う布石にもなる。ロシアに肩入れした中国がウクライナから信頼を得るのは容易ではない。それでも和平に関与する主要な国として存在感を示すことができれば、習のメンツは立つ。
習近平氏(右)と言葉を交わすロシアのプーチン大統領(2月4日、北京)=タス共同

北京の釣魚台国賓館での会談で両首脳はウクライナ危機を巡って意見を交わした。中国側によると「国際社会が和平に向けた対話を促す条件を整えるべきだ」といった認識を双方が示したという。

実現には過去2年半以上の国内「引きこもり」を破り、G20サミットに「リアルで出席」する必要がある。トップの外国での顔見せが長いことなかった中国外交には限界がある。

今回の会談後、発表したプレス向けの共同声明は「ジョコ大統領がG20サミット出席を招請。習主席は感謝し、サミット成功を願うと表明した」という内容にとどまった。

習の最後に訪問した外国は20年1月17、18両日のミャンマーだ。その間、中国はトップ不在となり、湖北省武漢でのコロナ対応が後手に回って各地に広まった。初期対応の失敗に懲りた習は長く国内にとどまっている。69歳という年齢を考えれば海外での新型コロナ感染への警戒感も強かった。

11月半ばのG20サミット出席なら、5年に1度の共産党大会も終わり、習の党トップ続投が決まっているかもしれない。半面、米大統領バイデンの民主党は11月上旬の中間選挙で勝利できず、勢いをそがれている可能性もある。中国側が「時期としては絶好だ」と考えていても不思議ではない。

仮に今回、ジョコがゼロコロナ下の北京を素通りすれば、中国外交には大打撃になっていた。これがジョコだけのために北京封鎖を解いた理由だ。ジョコが日本で首相の岸田文雄、韓国で大統領の尹錫悦(ユン・ソンニョル)に会うのに先立ち、習との会談のため北京入りしたのは大歓迎だ。中国ではこの意義が事前に大きく宣伝された。

インドネシアは東南アジア諸国連合(ASEAN)の有力国で、中国の重要なパートナーでもある。1955年、アジア・アフリカ諸国が集まったインドネシアでの「バンドン会議」に当時の首相、周恩来が出席して以来の深い縁がある。
インドネシアで披露した「一帯一路」

13年10月3日には、インドネシアを訪問した習が国会で演説し、21世紀「海上シルクロード」を提唱した。同年9月、中央アジアのカザフスタンで提起した「シルクロード経済帯」と合わせて中国主導の広域経済圏構想「一帯一路」と呼ばれるようになった。
習近平氏(中央)は2013年10月のインドネシア訪問で21世紀「海上シルクロード」を提唱した(インドネシア・バリ)

ちなみに習がインドネシアで演説した際、同国駐在の大使だったのが、劉建超(58)だ。劉はその後、習にゆかりの深い浙江省などで経験を積み、この6月、共産党の対外関係を担う重要部門、中央対外連絡部のトップに抜てきされた。

ジョコの北京入りの前に注目されたニュースがある。中国の衛生当局者が23日の記者会見で、習を含む中国指導者らが、中国製ワクチンを接種済みだと明らかにしたのである。

中国指導者が国産ワクチンを打つのは当たり前にみえるが、当局者が明言したことはなかった。まるで「国家機密」のような扱いは臆測を広げ、米ファイザーなど中国製でないワクチンをひそかに接種しているのでは、という噂まで流れていた。

中国当局者は、インドネシアの指導者(ジョコ)も中国製ワクチンを接種したとあえて強調している。ジョコが科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)製のワクチンを最初に打ったのは21年1月13日だ。世界的なワクチン不足の中、中国の「ワクチン外交」が話題になっていた。
中国製ワクチンの2回目の接種を受けるジョコ氏(2021年1月、ジャカルタ)=ロイター

北京を訪れる賓客が中国製ワクチン接種の事実を公開しているのに、習ら中国指導者の対応が不明だというのは外交上、礼を失する。これが今回の表明の引き金になったという見方もある。

インドネシアは中国にばかり肩入れしているわけではない。米国と中国の間で中立を保つ工夫も凝らしている。ジョコの訪中直前には、米軍制服組トップを招き入れた。統合参謀本部議長のミリーは、中国軍の脅威を訴え、米・インドネシアの軍事連携強化に言及した。米国の対インドネシア武器売却を含め、中国は大いに気にしている。

新型コロナ感染の米大統領に見舞い電報

習はジョコとの対面会談に臨む一方、調整中のバイデンとのテレビ電話を通じた協議もにらみ、ある動きをみせた。バイデンが21日、新型コロナ感染を発表したが、その翌日、早い回復を願う見舞い電報を送ったのだ。

想定以上の経済の急減速、失業率上昇に見舞われている中国としてはいま、米国との首脳協議を断る余裕などない。対中制裁関税の一部でも引き下げられるなら、厳しい中国経済には慈雨になる。ただ、中国としては米下院議長、ペロシが計画していると報じられた台湾訪問では譲歩できない。

習はこの2年間、ただ国内に引きこもっていたわけではない。頻繁なジョコとの通話を含め、年間で約80回といわれる外国首脳との電話協議をこなしていた。アフリカの小国も例外ではない。

豊富な資金も各国に投下してきた。中国による「債務のワナ」という厳しい批判はあるが、これが中国の外交力の源泉だ。「カネで友情を買う」。中国の著名な外交研究者も公言しているように、これは中国では後ろめたいことではない。

7月末以降は、現役の共産党指導者と長老らが意見交換する「北戴河会議」のシーズンである。対米外交、ウクライナ問題、経済急減速にどう取り組むかは、党内で常に議論されてきた大きなテーマだ。ゼロコロナを曲げてまでジョコを北京に招き入れた積極外交、そして対米協議が功を奏するのかどうか。それは中国で「1強」といわれる習の今後の権力にも影響する。(敬称略)

中沢克二(なかざわ・かつじ)

1987年日本経済新聞社入社。98年から3年間、北京駐在。首相官邸キャップ、政治部次長、東日本大震災特別取材班総括デスクなど歴任。2012年から中国総局長として北京へ。現在、編集委員兼論説委員。14年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

習近平帝国の暗号 2035

著者 : 中澤 克二
出版 : 日本経済新聞出版
価格 : 1,980円(税込み)

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益尾知佐子
九州大学大学院比較社会文化研究院 准教授
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ひとこと解説

中国外交の変化に着目した重要な記事だと思います。中国外交は少し前から調整を始めています。ウクライナ危機以前、中国はロシアと肩を組み、米国をはじめとする西側秩序に対抗していく目算でした。侵攻によって西側の経済制裁が始まり、ロシアの長期的衰退は不可避となりました。中国はリアリストなので、自分の安全のために自分の側の態勢を立て直さねばと考えています。中国は今後、新興国・発展途上国との関係を強化しつつ、その勢力が世界的に拡大していくのを支援するでしょう。(中国にとってそれが望ましい、という判断です。)米国といま衝突するのは不利なので、絶対にやりません。世界の勢力均衡図の塗り替えが進んでいます。

2022年7月27日 9:25 (2
022年7月27日 9:26更新) 』

家やモノに手が届かない米消費者の憂鬱(NY特急便)

家やモノに手が届かない米消費者の憂鬱(NY特急便)
米州総局 大島有美子
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN26D7B0W2A720C2000000/

『26日の米株式市場でダウ工業株30種平均は前日比で228ドル(0.7%)下落した。前日の取引終了後に小売り大手ウォルマートが2023年1月期の通期業績予想を下方修正し、消費関連銘柄に売りが広がった。26日発表の新築住宅の販売件数は2年2カ月ぶりの低水準に落ち込み、投資家心理に重くのしかかった。インフレで家やモノの購入をためらう消費者の憂鬱が数字に表れ始めた。

「メッセージは明白だ。インフレが消費者をむしばんでいる」。米調査会社データトレックのニコラス・コラス氏は26日、ウォルマートの下方修正を受けてこう述べた。ウォルマートの株価は7.6%下げて121ドルとなった。米銀ウェルズ・ファーゴは23年末のウォルマートの目標株価を150ドルから130ドルに引き下げた。

規模の大きさで効率的な経営をする「ウォルマートで利益を確保できないのであれば、他の小売りはどう利益を上げるのか」(コラス氏)。ターゲット(3.6%安)、ホーム・デポ(2.6%安)と連想売りが広がった。

米調査会社コンファレンス・ボードが26日発表した7月の消費者の景況感は3カ月連続で低下した。米オアンダのエドワード・モヤ氏は「雇用が減速し、収入への期待が減っている」ことに着目する。消費者が収入の見通しに悲観的になれば、おのずと支出は絞られる。
6月の新築一戸建て住宅販売では、販売件数は前年同月比17.4%減、販売価格(中央値)が40万2400ドルと前月比で9.5%下落した。米西部や北東部など「特に生活コストの高い地域での販売減が顕著だ」(LPLファイナンシャルのジェフリー・ローチ氏)。

米インターネット不動産仲介のレッドフィンによると、6月の住宅の購入契約件数のうち、14.9%が解約された。解約は新型コロナウイルス禍に入った直後の20年4月(16.4%)以来の高水準で、5月(12.7%)から急増した。

米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)によると、30年固定の住宅ローン金利は6月下旬に5.8%に達した。3カ月間で1.4ポイントの上昇だ。レッドフィンのエコノミスト、テイラー・マール氏は「金利急上昇でローンが組めなくなり、住宅購入を諦めざるをえなくなった人もいる」と指摘する。

住宅購入をためらう消費者の需要は賃貸住宅へと向かう。不動産物件情報を提供するリアルター・ドット・コムによると6月の全米主要50都市の家賃の中央値は1876ドルと前年同月比で14%上昇し、過去最高を更新した。「上がってもなお、購入するより月額の費用負担は抑えられる」(同ジョエル・バーナー氏)

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は27日、米連邦公開市場委員会(FOMC)後に記者会見する。市場を覆う消費への不安にどう向き合うのか。「FRBの心境変化やメッセージの変更は、27日の会見では見られそうもない」。米JPモルガン・アセット・マネジメントのデービッド・ケリー氏はこうみる。「経済が弱まっていることは認めても、インフレに断固として戦う姿勢を見せる義務感を持っている」

(ニューヨーク=大島有美子)』

中南米通貨下落、資源安や左派政権移行で

中南米通貨下落、資源安や左派政権移行で
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN26E540W2A720C2000000/

『【サンパウロ=宮本英威、メキシコシティ=清水孝輔】外国為替市場で中南米の通貨が対ドルで下落している。世界的なドル高に加え、世界経済の先行きを懸念した資源価格の下落や左派政権によるビジネス環境の悪化が懸念されているためだ。政府当局は利上げや市場介入で通貨の下支えに動いているが、輸入物価上昇による一段のインフレ加速も警戒されている。

米連邦準備理事会(FRB)が利上げ開始を決めた3月半ばと今月25日の対ドルの為替相場を比較すると、コロンビアの通貨ペソは17%、チリのペソは15%、ブラジルのレアルは5%の通貨安が進んでいる。

チリの場合、世界最大の生産量を誇る銅の価格下落に伴い、通貨の下落が進んだ。経済紙ディアリオ・フィナンシエロによると、通貨ペソは14日に終値で1ドル=1051ペソと、過去最安値をつけた。

国際指標となるロンドン金属取引所(LME)の先物価格は3月の史上最高値から3割ほど下落している。ボリッチ大統領は「我々には手の届かない問題もあるが、チリ経済を前進させるために可能なすべての施策を行う」と話す。

中央銀行は18日から9月末まで、250億ドル(3兆4000億円)規模で為替介入を実施する方針を示した。足元ではペソ相場はやや戻しているが、先行きは油断できない。3月に発足した左派のボリッチ政権は鉱業分野の増税に動いており、経済界からは懸念する声もある。

コロンビアは6月の大統領選で左派のペトロ氏が勝利し、8月に就任する次期大統領に決まった。選挙戦では石油探査の停止や自由貿易協定(FTA)の見直しを主張しており、ビジネス環境の悪化への警戒が膨らむ。

ペトロ氏は今月上旬、ツイッターへの投稿で「いまドルを購入している人は価値の減少に直面することになる」と通貨安を口先介入でけん制したが、効果は限定的にとどまっている。ブラジルの場合は10月の大統領選に向けて左派のルラ元大統領が優位にたっている。
一方、メキシコペソは対ドルでやや上昇している。輸出の約8割が向かう米国の需要が旺盛なことが背景にある。2022年1~6月に米国への自動車の輸出台数は約110万台と前年同期比で3.6%増えた。半導体不足の影響は残るが、生産は回復基調にある。

メキシコではロペスオブラドール政権が新型コロナウイルスに対応した財政出動を抑えたため財政の悪化が抑えられており、「経済の基礎的条件が良い」(メキシコ銀行のヘラルド・エスキベル副総裁)ことも通貨が底堅く推移する理由となっている。

中南米の主要な中央銀行はインフレ対策としてFRBに先行して相次ぎ利上げしてきた。ブラジルは11会合、チリは9会合、コロンビアは7会合連続で利上げを実施してきた。金融引き締めによる経済への打撃も目立ち始めており、今後の上げ幅の余地は狭まっている。

FRBが利上げペースを一段と引き上げた場合には金利差は縮まるため、中南米通貨にとっては下落要因となる。米シティーグループは今年12月時点の中南米通貨について25日時点よりも対ドルで下落すると予測している。各国のインフレは依然としておさまる状況にはなく、輸入物価の上昇がさらにインフレを悪化させる可能性もある。
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白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授
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ひとこと解説

米国など多くの先進国の中央銀行がインフレ抑制のために利上げをしている中で、新興国からの資本流出が起きています。ドルの全面高により多くの国で通貨安が起きています。新興国では金利の大幅な上昇により設備投資が抑制され景気減速に拍車をかけているだけでなく、コロナ危機後の企業の債務拡大もあって利上げによる債務返済負担が大きくなっています。先進国でも同じような状況ですが、財政政策の余地が乏しく、資本流入に依存する新興国のほうが状況は深刻です。中国の景気減速もコモディティ価格の低下に影響しており、コモディティ価格の高騰で資本流入の恩恵をうけていたラ米では逆風が吹き始めており、政治的不安も懸念されます。

2022年7月27日 7:37 (2022年7月27日 7:53更新)』