日米首脳 「台湾」有事へ協力探る 軍事挑発の中国抑止

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『菅義偉首相とバイデン米大統領の16日午後(日本時間17日未明)の会談で台湾海峡の安定が主要議題の一つになる。北東アジアの軍事バランスは中国優位が鮮明になってきた。台湾で軍事的な挑発を続ける中国の抑止を念頭に、日本政府は有事に備えた米軍との協力のあり方を探る。

台湾は日本最西端の沖縄県与那国島から110キロ、同県尖閣諸島から170キロに位置する。不測の事態が起これば日本への影響は避けられない。…

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バイデン氏が就任後初めて対面で会談する相手に首相を選んだ背景には威圧的に振る舞う中国に近い日本の戦略的価値の高まりがある。

中国は台湾への威嚇を続ける。12日に中国軍の戦闘機など25機が台湾の防空識別圏(ADIZ)に進入した。台湾国防部が中国機の動向を公表し始めてから最多だった。

台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統は15日、訪台した米国のアーミテージ元国務副長官らと会談した。挑発行為の阻止へ米国と連携する考えを表明した。

アーミテージ氏は共和党のブッシュ政権(第43代)で国務副長官を務め、北東アジア情勢に精通する。民主党のバイデン氏が超党派で台湾問題に臨む姿勢を明確にした。

岸信夫防衛相は16日の記者会見で「台湾は地理的にも日本に非常に近い。台湾海峡の情勢を高い関心を持って注視したい」と述べた。

中国が台湾で力による現状変更の試みをエスカレートさせれば、尖閣周辺を含む東シナ海での領海侵入や軍事演習などを一段と活発化させる恐れがある。最近も実施している日米の訓練が中国の行動に歯止めをかけているとは言い難い。

台湾海峡を巡っては、1996年の中国のミサイル訓練を発端に中台の軍事的緊張が高まった。米政権が空母を派遣して危機が収まった当時と比較すると中台の軍事バランスは様変わりした。

96年時点で中台の国防費はほぼ同規模だった。2000年代に入ると、中国は経済成長をテコに急増させた。20年は公表ベースで中国が台湾の16倍を投じている。

各国が主力と位置づける「第4世代」以降の戦闘機や近代的な駆逐艦の保有数は00年時点で台湾が大きく優勢だった。足元では戦闘機、駆逐艦の数ともに中国が台湾の3倍に達する。

台湾で軍事的緊張が発生すれば米軍も最前線に立つ。中国軍とアジア前方に展開する米軍との戦力も開く一方だ。

米国は中国が台湾を射程に収める短距離弾道ミサイルを750~1500発保有すると分析する。95年には50発ほどしか持っていなかったとされる。中国は空母建造に動き、現在は2隻を保有する。米領グアムを射程に入れる中距離弾道ミサイルの増備も進める。

半導体の最大の生産地である台湾で有事が起きればサプライチェーン(供給網)が混乱し、電子機器や自動車の生産に支障をきたす。台湾への依存リスクも米政権が焦りを募らせる要因だ。

台湾有事に日本はどう対処するのか。15年に成立した安全保障関連法に基づき米軍を補助する役割を米国から要請される可能性がある。

政府は日本の安全を脅かす状況になった際は「重要影響事態」に認定する。自衛隊は米艦への補給など後方支援ができるようになる。

土屋貴裕京都先端科学大准教授は「シーレーン(海上交通路)の重要な場所にある台湾で緊張が長期化すれば、日本経済の大きな打撃になる」と話す。重要影響事態の認定はあり得ると見る。

米艦が攻撃を受けるなど危機の度合いが高まれば「存立危機事態」の認定も選択肢になる。安保法は日本と密接な関係にある他国が攻撃を受け、日本の存立が脅かされる明白な危険がある場合と定める。集団的自衛権の限定的な行使ができる。

政府は14年に集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更をした際、具体的な対処事例を一つ示した。有事の際、危険地域から邦人を輸送する米艦を自衛隊が防護するケースだ。台湾有事でも排除はされない。

安保法成立後の17年には当時の小野寺五典防衛相が北朝鮮が米領グアムに向け撃ったミサイルの対処に言及した。存立危機事態に認定し、イージス艦で迎撃することは法的に可能だとの認識を示した。

政府は国会などで北朝鮮や中東のケースを中心に見解を示した。中国による台湾攻撃が現実になれば、重要影響事態や存立危機事態を迅速に認定できるか懸念が残る。土屋氏は「実務レベルや日米間のオペレーションの整理が必要だ」と語る。

(安全保障エディター 甲原潤之介)