大統領の核発言削除を 日本の注文に米閉口 89年の海部首相初訪米巡り

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE228XE0S0A221C2000000

『海部俊樹首相が初訪米して臨んだ1989年夏の日米首脳会談を巡り、米軍艦船が核兵器を搭載しているか否かを明らかにしない「NCND政策」に言及しようとした米側に対し、日本側が削除を求めていたことが23日、外交文書から分かった。米国側は要求を受け入れたが、米大統領の発言内容まで事前に細かく注文を付ける手法に、閉口する様子も伝えている。

米海軍が核巡航ミサイル・トマホークを配備する一方、会談約40日前の参院選で与野党の過半数が逆転。マドンナブームで大躍進した社会党の土井たか子委員長が核持ち込みを認めない姿勢を鮮明にする中、世論を刺激しないよう、日本政府が核問題の議題化を回避しようとした実情が浮かび上がった。

米側は日本の要求に応じる半面「大統領発言からNCND政策という言葉を取り除くだけでも大変であった」(89年8月31日付の駐米大使公電)と不満を表明している。

首脳会談を翌々日に控えた8月30日の事前打ち合わせで、米側が「NCND政策は核抑止力の確保のため枢要」とするブッシュ(第41代)大統領の発言案を示したのに対し、日本側は「大統領がNCND政策に直接言及されるのはいろいろな意味で好ましくない」と削除を求めた。

さらに日本側は「米国の核抑止力(の体系)は日米安保体制の実効性の確保の為の不可欠な要素である」とした大統領発言の代替案を示し、米軍艦船への核搭載問題を想起させる表現を避け「一般的言及」にとどめるよう要請した。

この打ち合わせで米側は部内で検討することを約束。実際9月1日の首脳会談で大統領がNCND政策に触れることはなかった。〔共同〕』