その数「3350万回」…米・戦略国際問題研究所のシミュレーションが明かす「中国が台湾全域を支配する『ラグナロク(終焉)シナリオ』」がヤバすぎる
https://news.yahoo.co.jp/articles/fd07ea288922e97e62fb568f99fe3092ce3034e0?page=1
※ こういう記事も、「認知戦」の一環だということを、重々承知の上で読んでくれ…。
『戦後数十年にわたって「あり得ない」と考えられていた「次の戦争」が、目と鼻の先まで迫っている。人命が犠牲となり、世の中が大混乱に陥ってからでは遅い。今、この国にできることは何なのか。
【写真】「台湾有事Xデー」に日米はどこまで戦えるのか《日米中・戦力比較図》
差し迫る「台湾有事」
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「我々は台湾侵攻に関する24のシナリオを用意しました。そのうち19のシナリオで『中国はまず、日本国内の軍事拠点を叩く』という展開になっています。在日米軍基地だけでなく、自衛隊の基地もターゲットになる。開戦直後から、日本各地にミサイルが降り注ぐ事態にもなりかねません」
戦略国際問題研究所(CSIS)。アメリカ政府や日本政府の意思決定にも深く関与し、安全保障分野においては世界最高の研究機関と言われるシンクタンクである。
そのCSISが今年まとめた、160ページにわたるレポートが各国を震撼させている。
”The First Battle of the Next War”(次なる戦争の緒戦)―。「中国が台湾侵攻を決断したとき、何が起きるのか」を詳細にシミュレーションし、得られた結論がそこに記されているのだ。
冒頭で警鐘を鳴らすのは、レポートの著者でCSIS上級顧問・元米海兵隊大佐のマーク・カンシアン氏である。氏が続ける。
「通常、戦争シミュレーションは政府・軍関係者や学者といった参加者の主観にもとづき、多くても数回だけ実施されます。対して、我々は台湾侵攻のシナリオを『基本』『楽観』『悲観』に大別し、コンピュータを用いて計3350万回もの試行を重ねました。その結果、きわめて客観的な予測ができたと考えています。
そのうち大部分のシナリオでは『台湾・アメリカ・日本は大きな損害を被るが、中国は台湾占領に失敗する』との結果になりました。しかしこれは、あくまで米軍が日本国内の基地をフルに使えて、自衛隊も米軍や台湾軍をサポートすることが前提です。日本国内の基地を使えなかった場合―これを我々は『ラグナロク(終焉)シナリオ』と呼んでいるのですが―、数ヵ月の戦闘ののち、台湾全域を中国が占領することになります」
世界で「台湾有事」が現実の脅威と捉えられるようになっている。3月には、アメリカ情報機関を統括する国家情報長官室が年次報告書で「北京(=中国政府)は将来の中台危機の際、アメリカの介入を阻むための軍事力を2027年までに整えようとしている」と明言。一方の中国は台湾海峡のみならず、南の要衝・バシー海峡、沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡にも公然と空母・艦艇や戦闘機を送り込んでいる。
情勢緊迫を踏まえて、いま「当事者」である日米台の安全保障関係者は非公開のものも含め、膨大な数の「台湾有事シミュレーション」を行っている。今回本誌はCSISのみならず、そうしたシミュレーションに関わる国内の研究機関の専門家や元自衛隊幹部を多数取材し、現実的なシナリオを弾き出した。今から数年後の近未来、中国の習近平国家主席が「台湾を武力で併合せよ」との指令を下す―。本特集の本記事と次の記事『「日本は本当に台湾有事に対応できるのか」「数10万人の避難者の命を助けられるのか」…自衛隊が動くためのプロセス「事態認定」のノロさがヤバすぎる』では、このような仮定のもと「そのとき、実際に何が起きるのか」を検討したい。』
『「真珠湾」の再来
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カンシアン氏が述べた通り、まず中国側からみて最も合理的なのは、初動で台湾周辺にある日米の軍事施設・基地に「先制攻撃」を加えることだ。具体的には、最前線の与那国島・石垣島・宮古島にある各自衛隊基地・駐屯地、与那国島などに配備されているレーダー施設、沖縄本島の米軍基地と自衛隊基地が標的となりうる。今年3月に独自の台湾有事シミュレーションの結果を公表した、日本国際問題研究所の小谷哲男主任研究員が言う。
「ヒントになるのは、真珠湾攻撃です。日本は当時『東南アジアに侵攻したいが、ハワイから米軍が来る。ならば、先にハワイを叩けばいい』と考えた。今の中国にとって、沖縄など台湾の喉元にある在日米軍基地は、まさに『真珠湾』なのです。
リスクが大きすぎるという指摘もありますが、山本五十六も『最初にガツンとやれば、米国民は戦意を失うはず』と賭けに出た。アメリカと互角の国力を手にしつつある中国が、同様に考えてもおかしくはありません」
現状、日米の空軍力は中国に勝るとされる。だが、いかに最新鋭の戦闘機とて飛べなければ無力だ。台湾軍は駐機中の戦闘機への攻撃を見越して、格納庫の強化や地下壕への格納を行っているが、自衛隊・米軍にはそうした備えが乏しい。カンシアン氏の共同研究者である、マサチューセッツ工科大学国際研究センター主席研究員のエリック・へギンボサム氏もこう指摘する。
「我々のシミュレーションでは、ほとんどのシナリオにおいて、中国側は初手もしくは2手目で在日米軍基地へのミサイル攻撃を決断しました。
米軍が台湾を支援する際、頼りにできるのは日本国内の基地だけだということ、これが最大の問題なのです。日米側が戦闘機を置いておける基地は沖縄など数ヵ所しかありませんが、中国は国内各地に戦闘機を分散させられる。もちろん米軍は空母を出撃させますが、現代の戦争では対艦ミサイルや戦闘機の大きなマトになるだけでしょう」』
『近づくことすらできない
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同時に、台湾ではもちろんのこと、沖縄や南西諸島、場合によっては九州や本州でもサイバー攻撃や陽動作戦、インフラへの破壊活動が行われることは間違いない。島々を結ぶ海底ケーブルは寸断され、中国空軍の電子戦機が飛来し、強力な妨害電波がバラまかれる。携帯電話もインターネットも、テレビさえも使えなくなる地域が出るかもしれない。国士舘大学准教授で危機管理学が専門の中林啓修氏が言う。
「’14年にロシアがクリミア半島を電撃的に占拠した際には、翌年末までにウクライナ国内で1500件以上のテロが発生し、その大部分は軍や政府機関が対象でした。台湾有事に絡めた日本に対する攻撃としても、自衛隊や警察に対する直接的な襲撃だけでなく、空港の爆破、施設へのドローンの侵入、政府要人や自衛隊指揮官に関するフェイクニュースの流布など、想像できる限りのあらゆることが起きると考えておくべきでしょう。
たとえば戦端が開かれた当日、那覇空港で民間機の偽装ハイジャック事件が起こって滑走路が半日使えなくなれば、それだけで自衛隊や米軍の行動に甚大な影響が出てしまうかもしれません」
台湾周辺の通信を遮断し、基地の空軍力を足止めし、周辺海域を封鎖した中国軍は、満を持して台湾本島を落としにかかる。中国南部・江西省に点在する中国人民解放軍ロケット軍基地には、南西諸島にも届く射程1000kmの弾道ミサイル「DF16」が多数配備されているとみられるが、これが近海に浮かぶ艦艇からの攻撃とあわせて、台湾へと降り注ぐのだ。
「中国が保有するミサイルの数は莫大です。特に戦闘開始直後には、在庫が少なくなるまで、米軍の艦艇も台湾周辺に近づくことさえ難しくなるでしょう。もっぱら潜水艦と、本州の岩国基地などから発進する戦闘機に頼るほかなくなります」(前出・カンシアン氏)
専門家の間でも意見が分かれる
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台湾島中央部には南北に3000m級の山々が連なる中央山脈が走っており、島の東西どちらから攻めるかが中国にとっては重要になる。西側は地形が比較的なだらかだが、市街地も軍事施設・迎撃拠点も多い。東側は軍事拠点が少ないものの、急峻で上陸しづらい。
中国がどちらを優先するかについては、今回取材した識者らの間で見解が分かれた。台湾全土を掌握することを重視した場合、まず東側から攻めるのではないか―と言うのは、慶應義塾大学名誉教授の島田晴雄氏だ。
「西側から攻めた場合、台湾軍は東側の基地に撤退してゲリラ戦を仕掛けるでしょう。そうなれば戦況は膠着しますから、中国は先に東側へミサイル集中攻撃を行い、台湾軍の逃げ場を奪おうとするのではないでしょうか」
これに対して、元陸上自衛隊中部方面総監で『完全シミュレーション 台湾侵攻戦争』(講談社)などの著書がある山下裕貴氏は、西側を重視する可能性が高いとみる。
「東側に上陸するとの考えもありますが、上陸部隊の補給線が長大かつ脆弱になります。また中央山脈は航空機も越えるのが簡単でないほど険しく、山麓部には台湾軍の守備隊が潜んでいます。もし私が習近平なら、無理に東側を攻めず、台湾海峡の掃海と西側の基地・市街地への爆撃、上陸に注力するでしょう。台湾は人口の7割以上が西側に集中していますから、西半分を取った時点で戦闘をやめて妥協し、中華民国政府に代わる傀儡のトップを据えればいいわけです。
その場合、台湾総統府は東部の花蓮市などに機能を移して継戦することになると思われます」
山下氏は前掲の著書の中で、本格的な戦闘が始まる数週間前から、台湾市民の多くが島外へ脱出を図るとの見解を示している。ウクライナでは人口の5分の1に迫る800万人以上が国外に出て難民となったが、約2300万人が九州ほどの島にひしめき合う台湾からは、それ以上の割合の難民が出てもおかしくない。
当然、西へは逃げられないから、大半は船や航空機に乗って東―つまり日本を目指すことになるだろう。数百万人単位の難民が絶海に放り出される事態さえ、日本のすぐそばで現実になりかねないのだ(南西諸島に住む日本人の避難民については第2章で述べる)。
ある意味で残酷な予測だが、CSISや日本国際問題研究所のシミュレーションでは、台湾軍は戦闘開始直後から大きな損害を負うと考えられている。ただ、ウクライナの例を見るまでもなく、戦いにおいて最も重要なのは当事国の「士気」だ。降伏を選ぶか、それとも前述したようにゲリラ戦を展開しつつ、反攻のときを探るか―。
「シナリオによっては、米軍や自衛隊が駆けつけるのに数日~数週間かかってしまうこともありました。海に囲まれた台湾には、物資を補給するにも困難がつきまといます。
戦いが泥沼化すれば、今度は中国が核の使用を視野に入れるリスクも出てきます。こうした困難や威嚇に台湾市民が屈してしまえば、日本やアメリカが払う犠牲はすべて無駄になってしまうのです」(前出・カンシアン氏)
この戦争は間違いなく、台湾、日本、アメリカ、のみならず中国にも、あらゆる面で壊滅的損害をもたらす。ではそのとき、日本人は何を考え、どう動くべきなのか。次の記事では、日本政府と国民がいま見落としている「盲点」を詳しく見てゆこう。
2つめの記事『「日本は本当に台湾有事に対応できるのか」「数10万人の避難者の命を助けられるのか」…自衛隊が動くためのプロセス「事態認定」のノロさがヤバすぎる』に続く。
「週刊現代」2023年9月9日・16日合併号より
週刊現代(講談社)』