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『【ニューヨーク=吉田圭織】28日の米株式市場では、ダウ工業株30種平均が3営業日続伸し、最高値を更新した。先行きに強気の個人投資家が株高を支えている。1日の売買高に占める個人の割合は2割を超え、過去平均の2倍に達した。取引手数料の無料化に加え、新型コロナウイルス感染拡大による「巣ごもり」で、投資家層が広がった。株高の恩恵が広く行き渡る一方、当局はゲーム感覚の取引に警戒を強める。
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・ダウ平均は終値で前週末比204㌦10㌣(0.67%)高の3万0403㌦97㌣となり、17日以来、およそ1週間ぶりに過去最高値を記録した。ナスダック総合株価指数とS&P500種株価指数も同日、そろって史上最高値を更新した。米政府の追加経済対策成立などが好感された。クリスマス休暇で機関投資家の取引参加が減るなか、個人投資家による活発な売買が株高を支えている。
手数料無料化、ロビンフッドが仕掛ける
・米証券業金融市場協会(SIFMA)によると、米株式市場における個人の売買高シェアはこれまで10%程度で推移してきた。足元では推計で約25%まで上昇しているという。米インターネット証券大手のインタラクティブ・ブローカーズは11月の1日の売買高が前年同期比で3倍近く拡大した。米TDアメリトレードや米ロビンフッド・ファイナンシャルでは取引量の急増にシステムが対応しきれず、取引の一時停止などの障害が起きた。
・個人の活発な取引には2つの要因がある。まず売買手数料の無料化だ。ロビンフッドの仕掛けた競争に、チャールズ・シュワブなどネット証券大手が追随し、19年秋以降、現物株の売買手数料は横並びでゼロとなった。個人は取引コストを気にする必要がなくなったため、短期売買を繰り返すようになった。
「巣ごもり」で投資家層拡大
・投資家層も拡大した。新型コロナが急速に広がった3月以降、多くの人は外出できなくなり、娯楽も制限された。政府から給付金が入っても消費の機会は少ない。手元資金が積み上がるなか、個人の目に止まったのが株式投資だった。
・3月にロビンフッドで新たに口座を開いたフロリダ州の看護師ライザさんは「株価急落は絶好のチャンスだと思った」と話す。ライザさんのような投資未経験者が株式に興味を持ち始めたほか、しばらく投資から離れていた人も相場の大きな変動をみて取引を再開したようだ。シュワブやTDアメリなど大手ネット証券4社の口座数は前年に比べて30%増となった。
・投資家層の拡大は新規株式公開(IPO)の風景を変えた。例えば12月に上場したエアビーアンドビーは初日の上昇率が2倍を超えた。TDアメリによると上場初日の売買の4割以上は20~30歳代の「ミレニアル世代」だった。初日に85%高となった料理宅配のドアダッシュも同様だ。両銘柄の上昇率は今年の平均(約35%高、フロリダ大調べ)を大きく上回る。身近なサービスの上場に若年層が飛びついた形だ。
「ゲーム感覚」当局警戒
・個人投資家は先行きに楽観的だ。米個人投資家協会(AAII)によれば、今後6カ月の相場見通しについて「強気」と答えた個人は一時5割に達し、18年1月以来、約3年ぶりの水準まで上昇した。「ワクチン接種が進めば、止まっていた旅行関連支出などが出てくる」。AAIIの実施したアンケートでもこんな回答が目立った。強気の個人が足元の年末ラリーを支えている。
・一方、米証券当局は警戒を強める。米東部マサチューセッツ州の規制当局は今月、ロビンフッドが初心者に過度な投資を促しているとして投資家保護違反で提訴した。訴状によると、同社で金融派生商品(デリバティブ)の一種、オプション取引の手続きをした州住民の3分の2以上がほぼ投資経験がなかった。友人紹介で人気株を取得できるなど取引を「ゲーム化」することで、短期売買を誘発したと批判した。
・「我々はいまユーフォリア(陶酔)を目撃している」。米証券取引委員会(SEC)のクレイトン委員長(当時)は17日、米CNBCとのインタビューでこう話した。一部の個人は株高で下落リスクに鈍感になり、借り入れで取引を膨らませている。当局は相場ショック時に初心者が思わぬ損失を被り、社会問題化することを警戒する。米株式市場は危うさを抱えたまま、上昇を続けている。