ウクライナのクレバ外相、欧州に砲弾の域外輸出を禁止するよう訴える
https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/ukraines-foreign-minister-kuleba-appeals-to-europe-to-ban-export-of-shells-outside-the-region/
『ウクライナのクレバ外相は独RNDの取材に「欧州で生産された弾薬を域外輸出せずウクライナに送るべきだ」「欧州で生産される全弾薬はヨーロッパ防衛に役立てなければならない」と述べ、RNDは「クレバ外相が砲弾(域外)輸出を禁止するよう要求した」と報じている。
参考:Кулеба просит Европу запретить экспорт боеприпасов кому-либо, кроме Украины
参考:Kuleba bittet Deutschland erneut um Taurus – und lässt einen Einwand nicht gelten
参考:Editorial: It’s been 2 years and world’s on the brink. Time to wake up or fall
既存契約を無視した要求は絶対に受け入れられるはずがない
EUは昨年3月「今後12ヶ月間で砲弾100万発をウクライナに供給する政治的合意」を発表したが、ドイツのピストリウス国防相は昨年11月「2024年3月までの砲弾供給量は100万発に達しないと認識する必要がある。個人的に100万発の供給を保証したことはなく、早い段階で納期を守るのが難しいと聞かされていた」と、EUのボレル上級代表も「恐らく期日までに100万発の供給は達成できないだろう。企業は生産量の40%を世界中に輸出している」と述べ、その責任を砲弾製造企業に押し付けた格好となった。
出典:U.S. Army Photo by Dori Whipple, Joint Munitions Command
これを受けて欧州防衛産業協会は「欧州諸国が砲弾調達を削減した中で最小源の製造能力を維持できたのは非欧州向けの生産だった」「この契約を一方的にキャンセルするのはサプライヤーとしての信頼を損なう行為で到底許されない」「縮小した製造能力をウクライナのニーズに合わせて拡張するには政治的指導者が考えているより多くの時間が必要だ」「業界は原材料費の高騰、労働者不足、リスクの高い設備投資、不安定な受注環境など投資に不利な環境下で最大源の増産措置を講じてきた」と反論。
さらに言えば「砲弾100万発を2024年3月までに供給する」と突然決まっても、その資金を供給する各国の予算は思っている以上に柔軟性がなく、政治的合意後も各国の砲弾契約が低調だったのは「年度単位の予算制度」に原因があり、2024年春までにEU域内の砲弾生産能力を年100万発、2024年末までに年130万発~140万発に引き上げる欧州企業は寧ろ「政治的合意という口に約束に過ぎない砲弾調達のニーズ」と「単年契約による発注」の中で良くやっているほうだ。
出典:Генеральний штаб ЗСУ
RNDの取材に応じたクレバ外相は「欧州で生産された弾薬の域外輸出は保留して全ての弾薬をウクライナに送るべきだ。欧州で生産される全ての弾薬はヨーロッパ防衛に役立てなければならない」と述べ、RNDは「ウクライナ軍の弾薬不足を背景にクレバ外相は域外輸出の禁止を欧州に要求した」と報じて注目を集めているが、こんな既存契約を無視した要求は絶対に受け入れられるはずがない。
ボレル上級代表も「ウクライナへの弾薬供給を増やす最も早くて効果的な方法は第三国(域外)への輸出を止めることだ」と指摘したが、同時に「これらの輸出契約は戦争が勃発する前に結ばれたもので今直ぐウクライナ向けに変更するのは不可能だ」「当該国の政府が企業と交渉する必要がある」と付け加えた。
出典:President.gov.ua
因みにボレル上級代表はKyiv Independentの取材の中で「(ロシアの制裁回避=中国やインドへの石油輸出などについて)EUの制裁は治外法権的なものではない。法律が適用される対象国に制裁を課すことは出来るが、第三国に制裁を課すことはできない」と述べたが、同紙は24日の社説で「それを変更すべきだ。平和な時代に確立された規則や慣行は出来ない理由の正当化にはならない」と主張して「EUは制裁対象を第三国に広げるべきだ」と訴えた。
ウクライナの苦境を考えればKyiv Independentの主張も理解できないことはないが、もしEUが第三国に制裁を課せば当該国の主権を侵害するのでは???
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※アイキャッチ画像の出典:Ministry of Foreign Affairs of Ukraine photographer Eduard Kryzhanivsky
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投稿者: 航空万能論GF管理人 ウクライナ戦況 コメント: 54 』