ベルギーがウクライナへのF-16提供を表明、2028年までに30機提供
https://grandfleet.info/european-region/belgium-announces-offer-of-f-16s-to-ukraine-30-by-2028/
『2024.05.28
ウクライナの要請に応えてオランダは42機、デンマークは19機、ノルウェーは22機のF-16を提供する予定だが、戦闘機連合の訓練分野や後方支援分野に参加していたベルギーも「2028年までに30機のF-16を提供する」「最初の1機を年末までに引き渡す」と明かした。
参考:La Belgique va livrer 30 chasseurs F-16 à l’Ukraine: la livraison des premiers avions est prévue “d’ici la fin de l’année”
一つだけ確かなのは「現在のウクライナには希望が必要でF-16は戦場に変化を戦場にもたらす」という点
ウクライナの要請に応えてオランダは42機、デンマークは19機、ノルウェーは22機のF-16を提供する予定で、戦闘機連合の訓練分野や後方支援分野に参加していたベルギーも昨年秋「F-35Aの引き渡しが始まり次第、一定数のF-16をウクライナに提供する」と発表していたが、ラビブ外相は28日「2028年まで30機のF-16を提供する」「最初の1機を年末までに引き渡す予定だ」「この約束はゼレンスキー大統領のブリュッセル訪問時に署名される協定で正式なものになる」と明かした。
デンマーク 19機 2024年夏頃
オランダ 42機 2024年後半 提供に向けて24機分の機体を準備中
ノルウェー 22機 時期不明 内10機は飛行可能な状態ではない
ベルギー 30機 2024年の年末頃
合計 113機
ゼレンスキー大統領は「ロシアと同等の立場になるためにはF-16もしくは先進的な戦闘機が120機~130機必要だ」と述べていたため、ベルギーが提供する30機は120機~130機に近づくため重要な意味をもつものの、2024年中にデンマーク、オランダ、ノルウェーが約束したF-16が全て引き渡される訳では無い。
ウクライナへのF-16提供は訓練具合やインフラ構築の成熟度に応じて段階的に提供され、特にデンマークやノルウェーは提供するF-16が現役のため、提供スケジュールはTR3の問題に直面しているF-35Aの引き渡しスケジュールに影響を受ける。
出典:PRESIDENT OF UKRAINE
この点についてはゼレンスキー大統領も把握済みで「最初のF-16は2024年中に受け取れると信じているものの、最初は数が足りないため重要な役割は果たせないと思う」と言及しており、数が揃えば一方的だった戦闘機戦力の格差を緩和し、ロシア軍の前進速度を鈍らせるのに効果を発揮すると思われるが、間違っても「F-16はゲームチェンジャーだ」「F-16が登場すれば戦争の流れが変わる」「F-16がロシア製戦闘機をバンバン撃墜する」といったことは起きない。
ウクライナに提供されるのは1994年に運用が開始されたBlock50/52相当のF-16AMで、今後も運用を続ける国はAN/APG-68からAN/APG-83への換装を含むアップグレード(Block70/72仕様)を行っており、もしロシア軍相手に旧式のF-16AMで「決定的な違い」を生み出せるなら、西側諸国はF-16V、第5世代戦闘機、第6世代戦闘機への投資を再考しなければならないだろう。
出典:U.S. Air Force photo by Trevor Cokley
そもそも戦闘機の性能をあれこれ比較して「どちらが優れているのか」と論じても実際の戦場環境は派手な空中戦を演じられるほどシンプルなものではなく、現代の戦闘機も空中発射式の兵器を戦場に運搬する空中プラットフォームとしての性格が強いため、F-16が戦場で結果を残すには西側諸国が提供する搭載兵器の種類、他戦力との協調性、効果的な運用戦術を開発できるかどうかにかかっており、他の西側製兵器と同様に敵の対抗アプローチに対する適応に手間取れば直ぐに効果を失うかもしれない。
一つだけ確かなのは「現在のウクライナには希望が必要でF-16は戦場に変化を戦場にもたらす」という点で、同時に「期待感を過剰に煽れば必要以上の失望を生み出すだけ」とも学んだため、これ以上の言及は止めておく。
出典:U.S. Army photo by Eugen Warkentin
追記:パトリオットシステムの提供を拒否したスペイン政府は「代替案としてパトリオットの迎撃弾提供に同意した」と報じられ、ラムシュタイン会議で正式に迎撃弾提供を表明していたが、迎撃弾の提供数は12発だと報じられている。
12発という数にがっかりするかもしれないが、スペインの迎撃弾備蓄量は約50発なので「12発」という数字は軽くない。
追記:ウクライナとベルギーはF-16提供を盛り込んだ安全保障協定に署名、デ・クロー首相は「ロシア領空内でのF-16使用を認めるのか」という質問に「今回の合意に含まれる全てのものはウクライナ軍がウクライナ領内で使用するためのものだ」と回答したため、安全保障協定に含まれるF-16の使用は国内運用に限定される見込みだ。
関連記事:オランダのルッテ首相、ウクライナに初納入するF-16の準備開始を表明
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Cedrique Oldaker
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投稿者: 航空万能論GF管理人 欧州関連 コメント: 52 』
『 名無し
2024年 5月 28日
管理人さんの仰る通り、ゲームチェンジャーなど存在しないかと。
しかも、旧式機に過ぎないし。
29
乙大
2024年 5月 28日
返信 引用
開戦前は西側の第四世代戦闘機、東側で言う第三世代戦闘機など対空ミサイルで容易に無力化され何の成果も上げないと懸念されていた
実際には、黒海艦隊に打撃与え、潜水艦すら撃破
ウクライナ側に対しても滑空爆弾による攻撃でかなりの出血を強いた
成果を見る限り、予想を遥かに上回る様に見える
また、グリペンとスホーイ27の間の演習実績を考えると別の考えの想起される
8
ras
2024年 5月 28日
返信 引用
あの演習、このブログでも紹介されてましたが中国のSu-27がかなり古いままアップグレードされていないものだったのですよね。
とはいえ古いと言ってもそれなりの装備ではあるはずなので数さえ揃えばF-16も活躍の場は多くあるでしょう。ただ、数が揃うまで温存するのと、前線の地対空兵器を排除できるかが焦点になります。
4 』
『 センツァノーメ
2024年 5月 28日
最後の最後にサラッととんでもない情報が…
12
理想はこの翼では届かない
2024年 5月 28日
返信 引用
「ウクライナ領内で使用するためのもの」という表現ですが、ここで問題となるのが「クリミア半島上空は含まれるのか?」という話です
これまで支援国の兵器によるクリミア半島への攻撃は明文化はされていませんが許可されているので、供与されたF-16でクリミア半島上空を飛行する事も許可されるでしょう
ロシア軍の対空兵器がある間はクリミア半島上空を飛行するなど夢のまた夢ですが、今度どうなるかはわかりません
5 』
『 hiroさん
2024年 5月 28日
果たして2028年まで継戦する国力がウクライナにあるのだろうか?
ロシア軍の防空能力が低下しない限りはF-16の戦術は限定されそうだし、ウクライナ軍の防空能力が強化されないとロシア軍のミサイル·無人機の目標が増えるだけに感じる。
27
FAB
2024年 5月 28日
返信 引用
2028年まで戦わそうとしてるなら鬼だな
35
なな氏
2024年 5月 28日
返信 引用
むしろ負けるのを待ってるのではないでしょうか。
ウクライナに率先して支援できるような余裕のある国なんてもはや存在しませんし。
10 』
『 nk
2024年 5月 28日
F-16焼け石に水でしょうね、ほぼ戦況に影響を及ぼさないレベルな未来が見える。ここ最近は毎日の様にロシア側が東部と南部で前進しているが、ヘルソンに予備送り過ぎたのが効いていそう。
東部攻勢のロシアはウクライナ陣地を更地にしながら慎重に前進している感じはするが相手の防衛が薄ければ軽い突破も仕掛ける緩急の付いた攻勢になっていそうではと思う。もちろん単にウクライナ兵がそもそもいないか潰走してる可能性もあるが。
ハルキウ反撃の結果次第ではアメリカはタオルを投げ入れてもいいと思うウクライナもロシア相手に健闘はしたと思うしもはやnato参戦しか止める手もないと思うのでここらで手打ちが良いのではないだろうか。
23
舎人
2024年 5月 29日
返信 引用
アメリカは大統領選挙前にはどんな状況でもタオルを投げ入れることはしないのではないですかね。
ウクライナが負けたとなるとバイデン大統領の選挙運動に確実にマイナスになりますし。
今回の戦争の最大の変数はアメリカなのでアメリカの政治日程はとても大きな意味を持っていると思います、
本来ならアメリカは遅くとも武器支援が滞った時点でタオルを投げ入れるべきだったと思いますが、バイデン大統領にはそれはできませんでしたね。
正義を重視する人ほどこういう決断は鈍ると思います。正義は悪に屈することはできないですからね。
4 』
『 たむごん
2024年 5月 28日
仰る通りですね。
ゲームチェンジャー論のような、現実性のないものよりも、地道な観点は重要と思います。
13
kame
2024年 5月 28日
返信 引用
とは言っても、元々の国力差があるので地道で現実的な観点で考えた場合、勝ち筋はNATO参戦(その場合は、核戦争の危険度が急上昇のデメリット付き)しかないでしょう。
アメリカや中国もそうですが、消耗戦や全面戦争になったら、物を言うのは国力ですし、そういった国力のある国々と衝突しないようにするのが外交ではあります。
15
たむごん
2024年 5月 28日
返信 引用
仰る通りです。
派兵に関して、何の条約も盟約もないわけですから、希望にすがりつくのは苦しいですね。
特にトップとの意思疎通、外交の重要性を感じますね。
4 』
『 FAB
2024年 5月 28日
>期待感を過剰に煽れば必要以上の失望を生み出すだけ
撃墜された時の心理的ダメージ大きそう
レオパルドがやられた時も大騒ぎだったもんな
ロシアのフェイク動画だと信じない人すらいたし。
20
乙大
2024年 5月 28日
返信 引用
両軍に言える
S400やパーンツィリがあればストームシャドーなど迎撃できるだろうと謳われていたが、実際には多くの軍事資産をストームシャドーで喪失した
9
理想はこの翼では届かない
2024年 5月 28日
返信 引用
モスクワもそうですが、かつては想像もしなかったレベルの飽和攻撃がドローンとミサイルの混合により実現してしまった事で「これぐらいの対空兵器を配置しておけば大丈夫」という想定が崩れて、対空兵器そのものすらも飽和攻撃で潰せてしまうという状況になっているのだと思います
つい先日もS-400がドローンとATACMSによる飽和攻撃と思われる手法でレーダー・ランチャーが破壊されており、万能なものなど無くて物量こそ正義なのだと改めて考えさせられます
(パトリオットも飽和攻撃でランチャーなどが損耗してましたし)
6 』
『 名無し
2024年 5月 28日
結局こうやって西側がウクライナに一縷の望みを与え続けて戦わせれば戦わせるほど
ロシア側からすれば「ほーん、降参せんのやな、じゃあ人的損害第一で音を上げるまで嬲るわ」って思考になるよなあ
だからと言ってロシアに折れろとは言えないけど、西側のやり方も生殺しが過ぎるんでない?
少なくとも西側民主主義陣営として一度選挙ぐらいして民意を問うべきでは、
戦時中にそういう事やってられないというなら東側の専制主義との違いは何って話になる
28
通過点
2024年 5月 29日
返信 引用
選挙をやらないのは問題だけどやるのもやった後も現実論としては課題山積なのは確か。
まず恐らく最も停戦希望が多いと思われ現実に戦場になっている東部では誰に投票権を与えるか、どこまでリスクを許容するか的なこと。
本人確認、本人の自由意思での投票担保、ロシア人の成りすまし排除、(人が集まる)投票所の被害回避、開票作業あるいは投票箱の輸送等を最前線までやるのか(そのために何百人何千人死んでもやるのか)。
最前線ではやらないとしたらどう線引きするのか。
もう1つに、仮に親ロシアの直ちに東部も南部も土地もそこの住民も切り捨ててでも大幅譲歩して停戦を唱える候補が出て来たときにその候補がロシアのスパイあるいは影響下じゃないと確認できるのか。疑わしいときは候補として認めるのか。当選後に実はとなったときはどうするか。
さらに国論が西側的/親ロシアで二分された結果としてゼレンスキーの党が支持されたとして、戦争継続できるのか。二分された時点でロシアの勝利ではないか。
選挙が終わったらノーサイドにできるのか。色分けが鮮明になればロシアからの働きかけが加速するのでは。
また前線の東部とキエフなど地域により明らかに投票行動が異なった場合はどうするのか。東部は停戦、西部は戦争継続となったときに東部の意思は切り捨てて良いのか。
これらにエネルギーを割いてる余裕があるのか、選挙実施後はカオスと考えるとやらないのも知恵。』
『 Easy
2024年 5月 29日
つくづく、他国の兵器支援が当てにならないことが分かったのがこの戦争の教訓だなと。
自国の安全は自国で守れ,とは当たり前ですが真理ですね。
3
たむごん
2024年 5月 29日
返信 引用
まさに仰る通りです。
『日米同盟。日本は盾、アメリカは矛』ずっと国会で議論してたのが時間の無駄だったと分かる戦争ですね…
日本の仮想敵国3か国、全て核保有国ですから、アメリカに期待できない事が分かりましたし。
1 』