インド、経済変革できるか スレーラム・チャウリア氏
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD1017N0Q4A610C2000000/
『2024年6月15日 2:00
インドのモディ首相は3選を目指す総選挙の期間中、2047年までにインドを先進国にするという目標をしばしば口にした。だが選挙でモディ氏率いる多数派の与党連合の議席が劇的に減るという予想外の結果になり、この目標に影響を及ぼすかもしれない。
モディ氏が率いるインド人民党(BJP)は14年の選挙で単独過半数を獲得したが、これは30年ぶりのことだった。BJPは19年の選挙で過半数の議席をさらに上積みし、モ…
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『BJPは19年の選挙で過半数の議席をさらに上積みし、モディ氏は強い権力を用いた政権の運営が可能になった。
5日発表の開票結果は、BJPが単独過半数を失ったことを示している。モディ氏にとって、今後の課題はインド経済を変革し、国際政治を主導する大国のひとつにするという野望の推進だ。同時に小さな地域政党と協議し、権力を分かち合わなければならない。モディ政権が地域の利害を調整し、国家の優先目標と国益をどれだけ確保できるかが焦点になる。
選挙結果が明らかになる前に、モディ氏は経済だけでなく、「生活のあらゆる面で、将来の世代、今後の世紀のための強固な基盤を作る改革」をさらに加速させると宣言していた。これには持続的な成長に拍車をかけるための土地・労働市場の改革や、非効率な行政・官僚制度の見直しが欠かせない。海外から得られる利益を最大化するための貿易・投資政策に加え、国民の価値観を再構築することも重要だ。
モディ氏は連立パートナーの懸念に配慮しながら、自らの中核を成す信条を強めるだろう。政治勘に優れるモディ氏は、今回の選挙の失望をBJPの新たな成功への足がかりに転換しようと試みるとみている。4日夜の挑戦的な勝利演説では、3期目に「大きな決断の章を書く」と誓った。与党連合である国民民主同盟(NDA)と再び活気づいた野党の圧力をかわし、改革プロジェクトをやり遂げることができるかが、モディ氏の政治的遺産を左右する。
アナリストはBJPのつまずきの原因について、候補者選びでの戦術的なミス、身分制度や少数派に関する判断の誤り、社会の一部が経済成長の恩恵を感じていないことなどを指摘している。BJP関係者の中には、党の幹部があらゆる考え方を持つ政治家を参加させようとしたことが戦略的な過ちであり、票の減少につながったとの批判がある。関係者の一部は、BJPが長年掲げてきた明確なヒンズー教の価値観を中心とした戦略の継続を求めているわけだ。
党の内部対立はともかく、世界の大半はインドで政権交代がなかったことに安堵している。現在の不安定な世界秩序の中で、モディ氏は新たな大国として台頭するインドの代名詞になった。世界各国はインド政治に関して、他の関係者とも新たに接触しながら、モディ氏が首相にとどまることを喜んで受け入れるだろう。モディ氏には独特のリーダーシップがあり、自国発のイノベーションを新興・途上国「グローバルサウス」の問題解決策として提示しようとする熱意は変わらない。
今回の選挙結果はインドを一変させるものではない。変化が伴う継続性という複雑なメッセージを示している。あいまいな選挙の結果がモディ氏の反対派を勢いづかせる可能性はあるものの、新たな連立与党は29年の任期満了まで難なく政権を維持することができるだろう。
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『成長産業の育成が急務
独立100周年の2047年までに「先進国」になるというモディ政権のスローガンは、インド人皆が抱く「悲願」の代弁だろう。
「先進国」かどうかを測る一般的な物差しである1人当たり国内総生産(GDP)で見ると、どの程度現実的な目標なのか。
経済協力開発機構(OECD)加盟国の1人当たりGDPの最低ラインはコロンビアの2万ドル(約315万円)強。
インドは23年度に国際通貨基金(IMF)推計で約2500ドルだ。あと24年で2万ドルに達するには平均で年9%強伸ばし続けなければならない。
モディ政権は新型コロナウイルス禍を除いて、この数値を平均5〜6%しか伸ばせていない。
けん引役の産業を育て数億人の良質な雇用を生まないと、先進国の仲間入りは見果てぬ夢で終わる。(編集委員 小柳建彦)』





