トヨタ純利益4.5兆円に上方修正 25年3月期、生産挽回
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『2025年2月5日 13:26 (2025年2月5日 13:36更新)
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深尾三四郎田中道昭
トヨタ自動車の業績はハイブリッド車の販売増や円安が利益を押し上げる
トヨタ自動車は5日、2025年3月期の連結純利益見通し(国際会計基準)が前期比9%減の4兆5200億円になりそうだと発表した。従来予想である28%減の3兆5700億円から上方修正する。車の量産に必要な「型式指定」の認証不正などによる生産停滞からの挽回に加え、好採算のハイブリッド車(HV)の販売増や値上げ効果が寄与する。円安も利益を押し上げる。
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売上高見通しは4%増の47兆円、営業利益は12%減の4兆7000億円となる。営業利益は事前の市場予想平均であるQUICKコンセンサスの4兆7965億円を下回る。
円安など為替変動による押し上げ効果は5400億円に上る。通期の為替前提は1ドル=152円と、従来の147円から円安方向に見直した。1円円安が進むと営業利益を500億円押し上げる。4〜12月の期中平均は152円程度、足元は153円程度で実勢と同水準に見直した。
同日開いた決算説明会で宮崎洋一副社長は「価格改定や販売奨励金の抑制、(部品交換など販売後にサービスを提供する)バリューチェーン収益が拡大した。継続的に高い商品価値を継続できた」と背景を話した。車の機能向上に伴う値上げ効果は通期で4000億円利益を押し上げる。
台数や車種構成の影響は550億円利益に寄与する。台数は減るもののバリューチェーン収益が利益に貢献する。
認証不正による生産減などを背景に、トヨタの4〜12月期の生産台数(レクサス含む)は723万台と前年同期比6%減った。ただ、足元では生産が正常化に向かい「1日当たりに1万4000台を上回るペースで生産できている。手応えを感じている」(宮崎副社長)。
あわせて発表した4〜12月期決算は売上高が前年同期比5%増の35兆6735億円、純利益が4%増の4兆1003億円と過去最高だった。営業利益は13%減の3兆6794億円だった。台数減に加え、取引先の部品メーカーへの労務費やエネルギーのコストの上昇分負担などの費用が響いた。
HV販売は同期間に320万台と前年同期から22%増え、販売に占める比率は4割に達した。米国を中心に需要が強く、4月に出荷を始める米ノースカロライナ州に建設した電池工場でも当初はHV向け電池を生産する。
決算発表を受けて、トヨタ株は3%上昇で引けた。通期の営業利益予想は市場予想を下回るものの、4〜12月期の純利益が市場予想を上回ったことを好感した買いが入ったようだ。
業績は上向いてきたが、先行きの不透明感は増している。今年誕生した米トランプ政権は保護主義的な政策を打ち出し、市場を翻弄し続けている。
同政権は3日に発動するとしたカナダ・メキシコからの輸入品への関税強化を1カ月延期した。猶予は生まれたが、今後発動すれば米国への輸出拠点として両国に工場を持つトヨタの収益を下押しする要因となる。
一方で、電気自動車(EV)普及策の転換はHV需要に追い風となるとの見方が強い。トヨタにとっては強弱感が交錯する状況だ。トランプ政権への対応を問われた宮崎副社長は「変化する環境の中で最適な方策、判断をしていかないといけない」と述べるにとどめた。
24年は大手メーカーにとって苦難が続く年だった。中国での競争激化に加え、欧州ではEV支援策が相次ぎ打ち切られ、EVシフトを進めていた大手メーカーは投資負担に苦しんだ。
フォルクスワーゲン(VW)の24年通年の世界販売は前年比2%減少した。全体の3割超を占める中国で10%販売を落とした。一方で、中国・比亜迪(BYD)は年間で4割増の400万台超を販売しホンダや日産自動車を抜く規模となった。
中国の合弁事業再編などの費用が重荷となったゼネラル・モーターズ(GM)は24年10〜12月期の最終損益が赤字に転落した。EV大手の米テスラは10〜12月期の営業利益が23%減った。
トランプ政権は中国からの輸入品に対して10%の追加関税を発動した。中国もすぐさま対抗措置を打ち出した。報復関税の応酬になれば18〜19年の貿易戦争の再来となる恐れもある。
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深尾三四郎
伊藤忠総研 エグゼクティブ・フェロー、MOBI 理事、The Drivery 顧問
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別の視点 中古車でしっかり稼げるトヨタらしい強さが垣間見えた決算。
通期営業利益見通しが4000億円上方修正されたが、為替・スワップ影響を除いた2250億円のうち、増額に最も大きく貢献した要因がバリューチェーン(VC)収益の拡大だった。延長保証やメンテナンスパックの品揃えを拡大したことで、新車を売った後の保険や金融含むアフターサービス収益が想定以上に増えていることが背景。今期のVC収益は前期比で2000億円も拡大する見通し。管理顧客が持つ中古車の品質向上は、残価率(中古車価格)が低い中国ブランドEVへのトヨタ車の比較優位性を高める。中古車ビジネスが強いトヨタらしさが垣間見られる決算内容と言える。
2025年2月5日 14:16
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田中道昭
立教大学ビジネススクール 教授
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ひとこと解説 トヨタの第3四半期決算では、累計営業利益は3兆6,794億円となり、前年同期比で減少したものの、生産回復と営業・原価改善により高水準を維持。通期の営業利益見通しを4,000億円上方修正し、4兆7,000億円とした。特に電動車比率が45.3%に達し、HEVの成長が顕著。一方、販売台数は7,758千台と前年同期比で減少した。認証問題による影響があったが、第3四半期以降は生産が回復傾向。地域別では日本・北米の減益に対し、欧州・アジアは増益。また、Woven City開発、米国電池工場稼働、中国BEV・電池新会社設立などの成長投資を継続し、年間8,300億円を計画通り実行していることも評価ポイント。』