【ヨルダンやサウジアラビアなど中東諸国がイスラエルに協力】
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『イランはイスラエル本土攻撃を決行するものの、時間のかかる無人機を使用、過疎地域を狙う、アメリカの事前通告しておくということで、イスラエルが確実に迎撃して被害は最小に抑えられることを前提としたものでした。
イスラエルは大規模攻撃は控えるものの、イラン中枢部を狙って、いつでも防空体制を突破できることを知らしめるという限定作戦を実施。
こうした“緻密に練られた”シナリオと同時に興味深いのは、ヨルダンやサウジアラビアなど中東諸国がイスラエルに協力したことです。
****イラン無人機を迎撃したヨルダン、「自衛のため」強調 疑問の声も****
イランによるイスラエル攻撃を巡り、ヨルダンの動きが議論を呼んでいる。パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘を巡り、アラブ国家としてイスラエルに対する批判を強めていたにもかかわらず、イランの無人機を領空で迎撃し、イスラエルを支援する形となったためだ。
ヨルダンはイスラエルと中東戦争を戦った経緯があるだけに、イスラエルでは歓迎ムードが漂うが、イスラム圏の市民の間には疑問を呈する声もあるようだ。
「ヨルダンはイランの無人機や航空機が領空に侵入すれば、撃ち落とす用意がある」。ロイター通信などによると、イランが多数の無人機を発射したと報じられた直後の13日夜、中東の治安関係者はこう語り、ヨルダン軍が迎撃態勢を取っていることを明らかにした。
一方、イラン軍関係者は「ヨルダンの動きを注視している。(イスラエルを防衛する)行動があれば、彼らが次の標的になる」とけん制。だが、ヨルダンは領空を通過したイランの無人機の一部を迎撃した。ヨルダンのサファディ外相は14日、ヨルダンを標的にするとのイラン側の発言が報じられたことを受け、イラン大使を呼び出して抗議したという。
ヨルダンはイスラエルと4度にわたる戦争を戦い、1967年の第3次中東戦争ではヨルダン川西岸と東エルサレムをイスラエルに占領された。200万人を超えるパレスチナ難民を含め、人口の約7割がパレスチナ系住民とされる。
ただ、94年にはアラブ諸国としてはエジプトに続き2番目にイスラエルと国交を正常化。米国とも友好関係を維持しており、米軍も過激派組織「イスラム国」(IS)掃討を支援するために駐留を続けている。
今回、迎撃に参加したのは、米国などとの関係を重視したほか、イスラエルで被害が拡大すれば紛争が拡大し、自国も巻き込まれる恐れがあったためとみられる。米紙ニューヨーク・タイムズによると、ヨルダン政府は14日の声明で、迎撃した無人機やミサイルについて「人口密集地の住民を危険にさらさないために実施した」とし、あくまでも自衛のためだったと強調した。(後略)【4月16日 毎日】
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今回のヨルダンの対応については、あくまでも「自国の領空保護が目的」であり、(対イスラエル対応の変更など)それ以上の“深読み”はしないほうがいいとの指摘も。
それにしても、中東ヨルダンがイスラエルへの攻撃を迎撃阻止するというのは興味深いことです。
サウジアラビア・UAEについては・・・
****サウジやUAE、イスラエルなどにイランの攻撃情報共有****
サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)はイスラエルや米国に対し、イランから得た攻撃情報を事前に共有していたと、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが15日報じた。イランがイスラエルに向けて発射したドローン(無人機)やミサイルの効果的な迎撃につながったとみられるという。
WSJによると1日に起きたシリアのイラン大使館周辺への空爆を受け、米国が中東各国にイランの報復に関する情報共有や迎撃への協力を要請。中東の国々は当初は対立に巻き込まれることを懸念して消極的だったものの、最終的に同意したという。
サウジとUAEは機密情報の共有に同意したほか、ヨルダンは米国やその他の国の戦闘機の領空使用を許可し、迎撃も支援するとした。イランはサウジなどの湾岸諸国に対し、イスラエルへの攻撃2日前に計画を説明した。(後略)【4月16日 日経】
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【アメリカの中東戦略再開 サウジアラビアとイスラエルの国交正常化を再び仲介】
こうしたヨルダンやサウジアラビアの“イスラエル支援”は、パレスチナ情勢を受けてとん挫していた感のあるアメリカの中東戦略の転換点ともなりうるとの見方もあります。
****イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイスラエル支援「中東におけるバイデン外交の転換点へ」****
<イランのイスラエル攻撃の撃退に、ヨルダンやサウジなど湾岸諸国が協力した戦略的な理由とは? 中東での大展開に、バイデン外交の方向転換はあるか?>
長年にわたる「影の戦争」が、ついに直接攻撃になった。イランが4月13~14日、イスラエルに向けて300機以上のドローン(無人機)や複数のミサイルを発射。イスラエルの領土を標的にしたのは、これが初めてだ。
イスラエルが4月1日、シリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館を空爆したことへの報復だった今回の攻撃では、もう1つの前代未聞の出来事が起きた。アラブ諸国がイラン撃退に協力したのだ。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、ヨルダンはイランのドローンやミサイルを多数迎撃し、アメリカなどの戦闘機に領空使用を許可した。アラブ首長国連邦(UAE)やサウジアラビアはイランから得ていた攻撃情報を、アメリカやイスラエルと事前に共有したという。
パレスチナ自治区ガザで続く戦争は、中東各地でイスラエルへの怒りをかき立てている。それでも今回の出来事は、ふらつきながらも芽生え始めた「対イラン中東同盟」の最初の試金石になった。
「湾岸諸国の行動は国益を最優先する姿勢を維持していることの表れだ」と、複数の米政権で中東和平交渉に携わったアーロン・ミラーは指摘する。「重要なのは協力自体ではなく、協力があり得ない状況でそれが実現したことだ」
ガザでのイスラエル軍の焦土作戦や人道危機の悪化に、欧米がいら立ちを募らせるなか、イランの攻撃はイスラエルが直面する脅威に改めて注目を集めた。イスラエル政府はこれを機に、イランの孤立を深めようと動いている。(中略)
アラブの現実主義ゆえ?
今回のアラブ諸国の協力を深読みしてはならないと、元米当局者はクギを刺す。現実主義の所産である可能性が高いからだ。「ヨルダンの行動は主に地域的計算に基づき、自国の領空保護が目的だ」と、米国防総省の元上級顧問ビラル・Y・サーブは語る。
サウジアラビアは自国の関与が目立たないようにしているようだ。サウジアラビア系のニュース専門衛星テレビ局アルアラビアは4月15日、匿名の情報提供者の発言として迎撃に参加したことを否定し、同国の微妙な立場が浮き彫りになった。
「ガザ戦争は終わっていない」と、ミラーは言う。「イランに敵対していると受け取られかねない連携を正式化することには、多くの国が慎重になるはずだ」
アメリカは1月、サウジアラビアとの防衛協定に向けた協議を再開した。協定の実現は、イスラエルとサウジアラビアの関係正常化を仲介しようとするジョー・バイデン米大統領の取り組みの大前提だ。
今回の出来事は、バイデン外交の転換点になるかもしれないと、オバマ政権でイスラエル・パレスチナ交渉特使上級顧問を務めたダビド・マコフスキーは話す。
「バイデン政権が(サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子と)新たな道を探っても驚きではない。『中東で大展開があった。この際、方向転換してはどうか?』と」【4月23日 Newsweek】
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実際にサウジアラビアとイスラエルの国交正常化交渉が、アメリカの仲介で再び動き出しています。
ただ、ガザでの戦闘開始以前に比べて、サウジアラビアにとって「パレスチナ国家樹立」がより優先的なものとなっており、イスラエルがそこで譲歩しない限りは進展は難しいかも。』









