北朝鮮、偵察衛星打ち上げ失敗 沖縄に一時避難呼びかけ

北朝鮮、偵察衛星打ち上げ失敗 沖縄に一時避難呼びかけ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA155GA0V10C24A4000000/

『2024年5月27日 22:48 (2024年5月28日 7:12更新)

【ソウル=甲原潤之介】北朝鮮の朝鮮中央通信は28日未明、国家航空宇宙技術総局が27日に軍事偵察衛星を打ち上げ、失敗したと報じた。1段階飛行中に空中爆発したと明らかにした。新しく開発したエンジンに事故の原因があると説明した。

記事によると、北西部・東倉里(トンチャンリ)の「西海衛星発射場」で打ち上げを断行した。偵察衛星「万里鏡1-1」号を新型衛星運搬ロケットに搭載した。

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北朝鮮は27日に「人工衛星」の発射を予告し、黄海とフィリピン東側の太平洋の合計3カ所を落下予想範囲に設定していた。韓国軍合同参謀本部は北朝鮮側の海上で多数の破片が落ちるのを探知した。

林芳正官房長官は記者会見で「弾道ミサイル技術を使用した発射を強行したが黄海上空で消失し、宇宙空間への何らかの物体の投入はされていないと推定している」と述べた。日本政府関係者は「失敗したものとみられる」との見方を示した。

林氏は国連の安全保障理事会決議違反として北京の大使館ルートを通じ、北朝鮮に厳重に抗議したと明かした。「現時点において被害報告などの情報は確認されていない」とも語った。

日本政府は27日午後10時46分、全国瞬時警報システム(Jアラート)を発令し「北朝鮮からミサイルが発射されたものとみられる」として沖縄県に避難を呼びかけた。午後11時3分に「わが国には飛来しないものとみられる」と発表し、避難の呼びかけも解除した。

岸田文雄首相は午後10時47分に①情報収集・分析に全力を挙げ国民に迅速・的確な情報提供をすること②航空機、船舶の安全確認の徹底③不測の事態に備え万全の態勢をとること――の3点の指示を出した。

防衛省は不測の事態に備えて2023年5月以降、弾道ミサイルなどを迎撃するため破壊措置命令を出し続けている。今回の発射では破壊措置は実施していない。

Jアラートの発令は沖縄県に避難を促した23年11月21日以来。この時は北朝鮮が「軍事偵察衛星」を打ち上げて成功したと公表した。北朝鮮は24年に3基を発射する方針を明らかにしていた。

北朝鮮が「軍事偵察衛星」と主張する飛行体の発射は23年から本格化し、これまで3回発射した。同年5月と8月は打ち上げに失敗し、11月に地球の周回軌道への投入を成功させた。

北朝鮮は米軍の活動をリアルタイムで監視する目的があると説明している。衛星ロケットの発射には弾道ミサイルと同様の技術が用いられることから、日米韓は国連安全保障理事会決議に違反する行為だとして自制を求めてきた。

軍事面で接近するロシアから、衛星に関する技術供与を受けているとの指摘もある。韓国の聯合ニュースは26日、韓国政府高官の話として、北朝鮮にロシアの技術陣が入り、エンジン燃焼試験を繰り返していたと報じた。

北朝鮮は年内に3基打ち上げる方針を示している。今後も技術的な課題を解決したうえで再び発射に乗り出すとみられる。

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