いらだつ永守氏、始まるEV株大選別 中国発乱売にリスク
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB23BBN0T20C24A4000000/

『2024年4月24日 17:47

電気自動車(EV)市場の先行きに暗雲が漂っている。中国政府の補助金に後押しされた中国EVメーカーの低価格攻勢が、モーター大手ニデックなど関連企業の業績に逆風となっている。安価なEVの普及は産業構造を大きく変える。「コモディティー化」が追い風となる銘柄はどれか。投資家も選別を始めている。

24日に都内で開かれたニデックの決算説明会。創業者の永守重信グローバルグループ代表は、中国EV市場の現状を聞か…

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『24日に都内で開かれたニデックの決算説明会。創業者の永守重信グローバルグループ代表は、中国EV市場の現状を聞かれた際、「フェアじゃない。不健全な競争だ」といらだちを隠さなかった。

中国政府は比亜迪(BYD)など中国のEVメーカーを巨額の補助金で支援しているため、「(本来であれば)利益が出ない低い水準の価格でEVを市場投入している」(永守氏)。車両価格の下落は部品メーカーのマージン縮小に直結する。』

『23日に発表したニデックの2024年3月期連結決算(国際会計基準)は、営業利益が1月に下方修正した会社計画(1800億円)を下回る1631億円(前の期比63%増)にとどまった。中国市場の競争激化を受け、EV向け駆動装置「イーアクスル」を含む車載事業で598億円の構造改革費用を計上したことが響いた。

25年3月期は、勝利への道筋が見えない中国EV部品事業をいったん縮小して採算改善を図る。永守氏は「休んで(今後の戦略を)よく考えることが大事。大損になるところでは勝負しない」と「一休み」を強調した。』

『EV関連銘柄ではオムロンも苦しんでいる。24年3月期の純利益は15億円と前の期から98%減ったもよう。株価は22年末比で17%安の水準だ。中国の制御機器事業は大手EVバッテリーメーカー向けの比率が高く、顧客の設備投資の抑制が影響して業績が悪化した。

世界最大のEVメーカー、米テスラは中国市場での価格競争が利益率を押し下げ、23日発表の1〜3月期決算は約4年ぶりに減収減益となった。

イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が表明した低価格モデルの前倒し投入が評価されテスラ株は時間外取引で大幅高となったが、「投資家からは生成AI(人工知能)ほどの期待を継続的には集められない」(インベスコ・アセット・マネジメントの木下智夫グローバル・マーケット・ストラテジスト)との見方がある。

米アップルはEV開発を断念したと報じられ、EV関連企業の苦悩がにじむ。

国際エネルギー機関(IEA)は23日、2035年にEVが世界の新車販売の5割超を占めるとの予測を発表した。中国メーカーを中心とする低価格帯の普及によって市場が拡大し、EVのコモディティー化が一気に進む。』

『EVの爆発的な普及は関連銘柄にとって追い風か向かい風か。株式市場では選別が始まっている。販売台数に比例してニーズが高まる充電設備の関連銘柄には買いが集まる。22年末比の株価をみると、日東工業が76%高、東光高岳が43%高、ニチコンが7%高だ。これらの銘柄は24日も前日比で2〜3%上昇した。一方、価格低下圧力にさらされる素材・部品メーカーには逆風で、住友化学は22年末比25%安い。

コモンズ投信の伊井哲朗社長は「EV市場は過渡期にあり、足元では価格競争が業績に影響している銘柄とそれ以外とで評価が分かれている」と指摘する。ニデックの永守氏はこう言った。「(どれだけ競争が厳しくとも)勝利の方程式は変わらない。技術でもキャパ(生産能力)でも勝つ」。投資家にとって、「一休み」の真意を明かしたこの言葉が今後のヒントになりそうだ。

(桝田大暉)』