大企業製造業の景況感、4期ぶり悪化 3月日銀短観
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB269U80W4A320C2000000/
『2024年4月1日 8:51 (2024年4月1日 10:06更新)
日銀が1日発表した3月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、前回の2023年12月調査(プラス13)から2ポイント悪化してプラス11だった。悪化は4期ぶり。品質不正問題による自動車生産の減少により、関連産業の業況感が悪化した。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を引いた値。3月調査の回答期間は2月27日〜3月29日。回答率は99.0%だった。日銀が締め切りのめどとしている回収基準日は3月13日で、同時点で7割弱の回収率だった。日銀がマイナス金利を解除した3月18〜19日の金融政策決定会合の影響は「ほとんど織り込まれていない」(日銀)とみている。
大企業製造業の業況判断DIはプラス11と、QUICKが集計した民間予想の中心値(プラス10)を1ポイント上回った。ダイハツ工業が認証不正で自動車の生産を停止したことを受け、自動車関連の大企業で景況感が前回調査より15ポイント悪化しプラス13となった。鉄鋼や非鉄金属など関連産業もあおりを受けて悪化した。
大企業非製造業の業況判断DIはプラス34と、23年12月調査から2ポイント改善した。8期連続の改善で1991年8月以来の高い水準となった。「インバウンド(訪日客)需要が寄与して改善している」(日銀)とみる。人件費のサービス価格への転嫁も進んでいるとみられ、大企業非製造業の販売価格判断DIは2ポイント改善した。
日銀は経済の実態を正確に把握するため、調査対象の企業を3月調査から見直した。見直し後ベースでは、23年12月調査の大企業製造業の業況判断DIはプラス12からプラス13、大企業非製造業の業況判断DIはプラス30からプラス32に修正された。
企業の物価見通しは前回調査から変わらなかった。全規模全産業で1年後は前年比2.4%、3年後は2.2%、5年後は2.1%と政府・日銀が掲げる2%物価目標を上回る上昇率だ。
調査時の水準と比較した際の販売価格の見通しは、1年後は2.7%、3年後は4.0%、5年後は4.7%といずれも前回調査から上昇修正された。企業が原材料コストや人件費の上昇を価格転嫁する動きが持続する見通しが強まっている。
企業の事業計画の前提となる24年度の想定為替レートは全規模全産業で1ドル=141円42銭だった。円安・ドル高の進行を受けて、23年度で139円38銭としていた前回調査から円安方向に修正された。足元のドル円相場は1ドル=151円台で推移しており、企業は円高水準で収益計画を立てているとみられる。
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永浜利広
第一生命経済研究所 首席エコノミスト
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分析・考察
大企業製造業の業況判断指数は12月調査の+13から+11に低下していますが、12月調査時点での先行きでは+8の見通しでしたので、3カ月前の見通しほど悪化しなかったことはポジティブでしょう。
また、企業収益計画が増収減益となってますが、想定為替レートがドル円141円台ということで、足元より10円ほど円高想定となってますので、今後の為替次第では上方修正の余地含みと言えるでしょう。
さらに設備投資計画調査でも、前年比で見た当初計画が最も強かった22年度に次ぐ高水準となっており、企業の設備投資意欲も旺盛なことが見て取れます。
総じて今回の短観はヘッドラインが示すほど中身は悪くないと言えるでしょう。
2024年4月1日 9:11
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滝田洋一
日本経済新聞社 客員編集委員
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ひとこと解説
①ダイハツ・ショックでしょう。何しろ自動車の業況判断が前回12月の+28から+13へと15ポイントものつるべ落とし。ショックは鉱工業生産ばかりでなく、短観の製造業にも影を落とした形です。
②そんな製造業に対して非製造業の業況判断は好調。中でも宿泊・飲食が+52の絶好調を保ったことは、インバウンドの肌触りを示しているかのようです。
③いつも思うのですが、新年度の決算予想は慎重。24年度は製造業も非製造業も減益見通しです。上方修正のノリしろを作りたがる経営者心理がのぞいています。
2024年4月1日 9:42 (2024年4月1日 10:09更新)』