米国、WTOルール軽視 トランプ氏再選なら無視
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN280WH0Y4A320C2000000/
『2024年3月28日 12:08
【ワシントン=飛田臨太郎】バイデン米政権は世界貿易機関(WTO)が定めた自由貿易推進のルールを軽視する。トランプ前政権が導入した中国への高関税は維持し、保護主義的な政策を相次ぎ打ち出す。トランプ前大統領が11月の大統領選で再選すれば、脱退論が再浮上する可能性もある。
中国商務省は26日、米国の電気自動車(EV)の購入支援策が公正な競争を阻害しているとして、WTOに同日付で提訴した。同制度は北米で…
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『WTOのこれまでの裁定では中国の言い分が通り、米国が敗れるケースも少なくない。米国が導入した鉄鋼・アルミニウムへの追加関税を巡っては、2022年末に「WTO協定違反」との裁定を第一審のパネルが下した。
バイデン政権は意に介さない。最終審にあたる上級委員会は米国が16年から委員の選任や再任を拒み、19年から審理が停止した。WTOの紛争解決制度は機能していない。』
『米国にはWTOの構造そのものに不満がある。01年にWTOに加盟した中国は表向き自由貿易のルールに同意したが、実態は巨額の政府補助金による国家資本主義で急成長を遂げた。
米国では超党派で、中国政府の支援を受けた安価な製品の海外輸出が、米製造業を衰退させたとの認識が広がる。WTOが中国の過剰生産問題を放置し、対応できていないと問題視する。
表向き国際協調を重視するバイデン政権は一時、紛争解決制度の改革議論を進める構えを見せた。ただ、米政府の本気度は低く、24年2月に開いたWTO閣僚会議でも進展はなかった。』
『前大統領はさらにWTOから距離を置く。在任中「必要であればわが国は離脱する」と発言した。「WTOは長年にわたって我々を搾取してきた。そのようなことを二度と繰り返させてはいけない」と説いた。
今回の大統領選の公約には「ほとんどの外国製品」を対象に一律で関税を引き上げる措置を掲げた。WTOルールを無視するかのような通商政策がずらりと並ぶ。』
『米調査会社ユーラシア・グループのデビッド・ボーリング氏は「トランプ前政権はWTOに攻撃的なアプローチをとった。一方、バイデン政権はWTOを表立って攻撃したわけではないが、WTOを助けるようなことは何もしていない」と解説する。
前大統領が再選した場合については「前大統領は『脱退する』と脅すだろう。しかし、離脱する可能性は低い」と分析する。紛争解決制度が機能不全に陥っているため「脱退する理由があまりない」とみる。』