地方に「ごっつぁん体質」 知事の7割、中央から天下り

地方に「ごっつぁん体質」 知事の7割、中央から天下り
政治再考 日本の分かれ目④
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC095HW0Z00C24A1000000/

『政府の能登半島地震復旧・復興支援本部が2月1日に首相官邸で開いた初会合。「年度内に支援パッケージ第2弾をぜひともお願いしたい」。オンライン参加した石川県の馳浩知事が予定外の発言をすると、出席した官僚に動揺が走った。

復旧・復興が重要なのは言うまでもない。災害のような危機時には国の積極的な関与が必要だ。政府も追加経費を順次出す構えだったものの、1週間前に第1弾パッケージを決めたばかりのタイミングだ

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『復旧・復興が重要なのは言うまでもない。災害のような危機時には国の積極的な関与が必要だ。政府も追加経費を順次出す構えだったものの、1週間前に第1弾パッケージを決めたばかりのタイミングだった。

生活再建や産業復興など当面必要な施策は網羅したと認識していただけに「ごっつぁん体質ではないか」との声があがった。』

『日本は明治以来の中央集権体制で国が地方を下請け機関と位置づけてきた。バブル崩壊後に行き詰まりが指摘され、衆参両院が1993年に「地方分権の推進に関する決議」をした。それから30年。2000年に国と地方が法的に対等となっても、地方分権が進んだとは一概に言いにくい。』

『リーマン・ショックなどで地方の財政力は弱まり、安倍晋三政権や菅義偉政権は地方創生、新型コロナウイルス対策の臨時交付金などで地方に支出した。96%の自治体は財源の一部を国からの地方交付税に頼る。』

『総務相を務めた片山善博・大正大特任教授は「国に従えば無難と考える自治体が多い」と指摘する。「甘え体質」の一端は都道府県知事の属性にみてとれる。47知事のうち官僚出身者と国会議員経験者が33人と7割を占める。

いわば中央省庁と国会議員からの「天下り」で、馳知事もその一人だ。経歴と関係なく主体的に動く知事もいるが、割合は90年代からあまり変わっていない。』

『事選の候補者選びは各政党の地方組織が主導する。予算や政策での交渉パイプを期待して総務省や財務省などの出身者が多くなる。政党本部も地方との連携を意識して中央省庁や国会の経験がある人材を選ぶ傾向がある。』

『人口減や業務拡大に対処する方法としては、より広域の自治体で対応する道州制という選択肢がある。日本維新の会などが掲げてきたが、地域内での一極集中が進むとの警戒が強く具体的な議論は進んでいない。

行政学者の故・西尾勝氏は地方分権を「未完の改革」と呼んだ。国と地方の役割分担は時代や環境の変化に合わせて絶えず変えていかなければならない。

足元では災害が頻発し、安全保障環境も厳しい。災害や感染症拡大などの際に国が自治体へ指示を出せるようにする地方自治法改正案を政府が閣議決定したのはその対応の一環だ。

平時に地方が自主性を発揮できるようにしつつも、非常時には国民の安全を守るために国が集権的な対応を取らざるを得ない場面がある。この30年で浮き彫りになったのは線引きの必要性でもあった。』