「遠い国だった…」日本ならではの貢献 ウクライナ支える

「遠い国だった…」日本ならではの貢献 ウクライナ支える
迫真 苦闘ウクライナ(4)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA194WB0Z10C24A2000000/

『「日本ならではの貢献」。首相の岸田文雄は19日、自ら主導して都内で開いた「ウクライナ経済復興推進会議」の演説で、この言葉を3回繰り返した。

会議の2週間前には首相官邸で今年の主要7カ国(G7)議長を務めるイタリア首相のメローニに「G7の役割が重要だ」と説いた。メローニは支援の遅れを認めつつ「努力を続ける」と明言した。

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『戦闘機や弾薬を提供できない日本ができることは、国際的な支援の機運を盛り上げながら、進出を探る企業を支えることだ。

日本企業は戦時の制約の中で動き始めている。「橋梁や道路の整備、発電所の建設、産業機械の提供。できることはたくさんある」。2023年11月にウクライナの首都キーウを訪れたIHI理事の松野憲司は復興支援に自信を深める。

松野は南部の主要都市オデッサからドナウ川を越え、ルーマニアに至る幹線道路の整備をウクライナ側に提案した。道幅を広げ最短ルートで巨大な橋梁をかける計画だ。輸送時間は1〜2時間短くなり、輸送量も2倍以上に増やせる。

建設コンサルタント大手の日本工営は23年12月、キーウ事務所を新設した。所長の三浦良知は2月中旬、ウクライナの自治体関係者十数人を日本に招き、がれき処理から上下水道や住宅に関する技術を教え込んだ。

ウクライナでは日本の評価が高まっている。「正直、日本は遠い国だった」。2月に初めて東京を訪れた商議所会頭のゲンナジー・チジコフの印象も変わった。「日本は明確に支援の意志を示してくれている」

日本政府の対応にはまだ改善の余地がある。2月中旬からは渡航制限の緩和でキーウに限り最長1週間滞在できるようになったが、松野は「建設現場に入れない以上、状況は変わらない」と指摘する。測量や地質調査は東欧の建設会社に任せる方向になった。

企業の動きは止まらない。「日本では大震災の余震が続く中で支援してきた実績がある」。三浦は戦時下の国を後押しする今回の取り組みが日本企業にとって貴重な前例になると感じている。(敬称略)

田中孝幸、林英樹、木寺もも子、地曳航也が担当しました。

【ルポ迫真「苦闘ウクライナ」連載記事】

・「国が2つの世界に分かれた」 ウクライナ兵の葛藤
・「ウクライナの経済止めない」 農業やIT、より強く
・「誰も凍えさせない」 ウクライナの戦場、インフラ維持 』