「H3」ロケット2号機「目標軌道に到達」前回の失敗乗り越える

「H3」ロケット2号機「目標軌道に到達」前回の失敗乗り越える
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240216/k10014360921000.html

『2024年2月17日 11時49分

日本の新たな主力ロケット「H3」の2号機が17日午前9時22分すぎ、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられました。

打ち上げに失敗した初号機では2段目のエンジンが着火しませんでしたが、JAXA=宇宙航空研究開発機構は今回の打ち上げでは「2段目のエンジンの燃焼が停止したことを確認した」として、機体が計画どおり飛行し目標の軌道に到達したと発表しました。

「H3」の2号機は17日午前9時22分すぎ、種子島宇宙センターから打ち上げられました。補助ロケットや1段目のエンジンを切り離しながら上昇を続け、午前9時40分ごろ、JAXAは「ロケットの2段目のエンジンの燃焼が停止したことを確認した」と発表し、機体が計画どおり飛行し目標の軌道に到達したことを明らかにしました。

「H3」は去年3月に打ち上げた初号機では2段目のエンジンが着火せず打ち上げに失敗していて、JAXAは今回、2段目のエンジンの燃焼停止に成功すればロケットの軌道への投入を達成できることから大きな目標としていました。

JAXAはこのあと記者会見を開いて、今回の飛行の詳しいデータやロケットの性能を確認するため行った衛星を分離する動作の実証結果などについて説明することにしています。

「H3」は、現在運用されているH2Aに代わる日本の新たな主力ロケットで、JAXAなどは今後の宇宙開発を担う“切り札”として、国際競争が激しさを増す宇宙ビジネスで海外に対抗していきたい考えです。

【打ち上げの状況を速報しています】

目次

JAXA会見 山川宏 理事長 “こんなにうれしい日はない”

17日 9:40ごろ

開発責任者ら 抱き合って喜ぶ

JAXA アルミ製の模擬衛星の分離動作を確認

JAXA=宇宙航空研究開発機構は「H3」の2号機がアルミ製の模擬衛星の分離動作を確認したと明らかにしました。
JAXA会見 山川宏 理事長 “こんなにうれしい日はない”

機体が目標の軌道に到達したことを受けてJAXA=宇宙航空研究開発機構は午後0時半すぎから記者会見を開きました。会見の冒頭でJAXAの山川宏 理事長は「ロケットは計画どおりに飛行し機体を所定の軌道に投入し衛星を分離できたことを確認した」と発表した上で、「H3ロケット試験機1号機の打ち上げ失敗を受け原因究明に真摯(しんし)に向き合い、再発防止に向けて全力を挙げて取り組んできた。本日、打ち上げの結果を報告できたことに安どしている」と述べました。

また、「宇宙業界に長らくいるがこんなにうれしい日はなく、こんなにほっとした日はない」としたうえで「H3プロジェクトのスタートから10年にわたって継続的に努力されてきたみなさまに本当に感謝している」と述べました。

17日 9:40ごろ
開発責任者ら 抱き合って喜ぶ

JAXAが公開した中継映像では発射場の総合司令棟にいる開発責任者、岡田匡史プロジェクトマネージャなどエンジニアたちが抱き合って喜ぶ様子が見られました。

17日 9:40ごろ
プレスセンターでもJAXA職員ら涙流す

「H3」の2号機の機体が計画どおり飛行し、初号機では着火しなかった2段目のエンジンの燃焼が停止したことが確認されて目標の軌道に到達したことがわかると、鹿児島県の種子島宇宙センターにあるプレスセンターではJAXAの職員らが目に涙を浮かべながら喜ぶ様子が見られました。

17日 9:40ごろ
JAXA「機体が計画通り目標の軌道に到達した」

JAXA=宇宙航空研究開発機構は17日午前9時40分ごろ、「ロケットの2段目のエンジンの燃焼が停止したことを確認した」と発表し、機体が計画どおり飛行し目標の軌道に到達したと明らかにしました。

17日 9:22
種子島宇宙センターから打ち上げ

日本の新たな主力ロケット「H3」の2号機が17日午前9時22分すぎ、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられました。

17日 9:12
最終判断の結果「GO」

新型ロケット「H3」の2号機についてJAXA(ジャクサ)=宇宙航空研究開発機構は午前9時22分55秒の打ち上げに向けて最終判断の結果、「GO」となったと発表しました。

16日 午後
組み立て棟から姿現す
ゲートから出て発射地点に移動するロケット

「H3」の2号機は17日午前9時22分に種子島宇宙センターから打ち上げられる予定で、これを前に16日午後3時ごろ、組み立て棟から姿を現し、30分かけて発射地点に移されました。

JAXAによりますと、17日の打ち上げ時間帯の天候はおおむね晴れで、気象条件に問題はないということです。

今回の打ち上げでは、初号機ではできなかった2段目のエンジンが計画どおりに燃焼し、地球を周回する軌道にロケットを投入させることを大きな目標としています。

また、ロケットの性能を確認するため衛星を分離する動作を実証することにしています。
打ち上げに失敗した初号機

「H3」は現在運用されているH2Aに代わる日本の新たな主力ロケットで、JAXAと三菱重工業が10年前に開発に着手しました。

日本の大型ロケットとしては30年ぶりの新規開発で、開発費用は2000億円を超えています。民間企業の参入で宇宙ビジネスをめぐる国際競争が激しさを増す中、今後の日本の宇宙開発の行方を左右する「H3」の打ち上げが初めて成功するか注目されます。
16日朝 宇宙ファンが続々と

種子島の玄関口である西之表港には、16日朝、鹿児島港から高速船でロケットの撮影機材などを抱えた人たちが続々と到着していました。

仕事を休んできたという鹿児島県霧島市の60代の男性は「H3の2号機のリターン・トゥー・フライト、再挑戦を目の当たりにしようと思ってきました。技術者の努力が報われてくれることを願っています。絶対、成功すると信じています」と話していました。

去年3月の初号機の打ち上げの際も見に来たという徳島県の小学4年生の女の子は「前回、ロケットの打ち上げに失敗した時、いつ飛ぶのかなと気になっていました。あすはちゃんと宇宙まで飛んでいって欲しいです」と話していました。

ホテルは満室… 公園で

種子島では、多くの宿泊施設がすでに満室となっているため、南種子町の「宇宙ヶ丘公園」ではテントやキャンピングカーで過ごしながら、打ち上げを待つ人たちの姿が見られました。

13日から妻と9か月の子どもとキャンピングカーで寝泊まりしているという兵庫県姫路市の30代の男性は「宿が取れなかったので、キャンピングカーを借りました。きのう打ち上がる前提で帰る予定だったのですが、宇宙センターでJAXAの岡田プロジェクトマネージャと話す機会があり、打ち上げを見ないと帰れないと思い、とどまることにしました。子どもにもロケットの記憶が少しでも残ってくれたらと思います」と話していました。

初号機打ち上げ失敗 原因は

「H3」は去年3月に初号機が打ち上げられましたが、2段目のエンジンが着火せず打ち上げに失敗しました。このためJAXA=宇宙航空研究開発機構はおよそ半年間にわたって原因の究明を進めてきました。

ロケットは1段目と2段目の分離まで計画どおり飛行し、その後に2段目のエンジンが着火しなかったことが分かっていて、飛行データを分析し、同じ現象を再現する試験などに取り組んできたということです。

そして、2段目のエンジンに搭載された機器の一部に損傷が発生したことが原因だと結論づけ、損傷の要因を大きく3つに絞り込みました。
2023年3月 打ち上げ直後の初号機

このうち2つは運用中の「H2Aロケット」と共通する部品が関係しているケースで、
▽製造時の部品のずれや打ち上げ時の振動などによって着火直後に点火装置でショートが発生したというものと、
▽点火装置の内部にある電気の流れをコントロールするトランジスターが、地上の点検などで過度の電圧に耐えられなくなっていてショートしたというものです。

残る1つは「H3」だけに搭載された機器が関係するケースで、
▽2段エンジンを制御する部品の一部が故障してショートしたというものです。

JAXAはこの3つの要因についてそれぞれ対策を講じ、点火装置の部品を強化したり、製造検査を厳しくしたりしたほか、ショートの原因となりうる機器の設計を一部変更したとしています。
国際的に激化する宇宙開発競争

宇宙開発をめぐっては近年国際競争が激しくなっています。

内閣府によりますと、去年、世界で成功した打ち上げは過去最高の212回に上りました。このうちアメリカが半数以上の108回を占め、そのうちのおよそ9割はイーロン・マスク氏がCEOを務める宇宙開発企業「スペースX」によるものでした。

中国が68回、ロシアが19回、インドが7回、フランスが3回と続きますが、日本は2回にとどまりました。

アメリカの大手投資銀行「モルガン・スタンレー」の試算では、宇宙ビジネスの市場規模は、2040年には2020年の3倍にあたる1兆ドル規模まで拡大すると見込まれています。

アメリカがリードし、各国がし烈な競争を続ける中で、日本の新たな切り札「H3」が、その市場に食い込んでいけるかが鍵となっています。
今後の打ち上げ計画は

新型ロケット「H3」は現在主力の「H2A」の後継機として運用される計画です。

「H2A」はことし1月(2024年)に48号機を打ち上げていて、2024年度の50号機までで製造を終え、2025年度以降「H3」に切り替えられる予定です。

内閣府の宇宙基本計画によりますと、「H3」の打ち上げは、2024年度以降に地球観測衛星の「だいち4号」や、“日本版GPS衛星”とも言われる「みちびき」の5号機、宇宙ステーションに物資を補給する輸送船の「HTV-X」など、2032年度までに少なくとも22回計画されています。
海外の商業衛星の受注も

「H3」による海外の商業衛星打ち上げはイギリスの衛星通信大手からすでに1件受注しています。

「H2A」では5件にとどまっている受注を増やしたい考えです。
「アルテミス計画」にも

さらに、地球から遠く離れた月や火星の探査にも活用され、火星の衛星からサンプルを地球に持ち帰る探査機のほか、月の南極に着陸し氷の量などを調べる探査機を打ち上げる計画です。

また、2030年にはアメリカが進める国際的な月探査プロジェクト「アルテミス計画」で月を周回する新たな宇宙ステーション「ゲートウェイ」に物資を運ぶ予定にもしています。