<朝鮮半島有事>勃発はあるか?

<朝鮮半島有事>勃発はあるか?金正恩の韓国は「第一の敵対国」の意図を読む
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/32872

『北朝鮮の動向をウォッチするサイトである「38 North」が2024年1月11日付で、ロバート・カーリン元国務省情報研究局北東アジア担当部長とジークフリード・ヘッカー元ロスアラモス国立研究所所長による「金正恩は戦争を準備しているのか」と題する論説を掲載している。朝鮮半島有事の勃発を警告する内容である。

北朝鮮の金正恩氏が潜水艦発射巡航ミサイルプルファサル-3-31の発射を監督し、核動力潜水艦の建設プロジェクトを検討した(ZUMA Press/アフロ)

 朝鮮半島における状況は、1950年6月以来で最も危険な状況にある。金正恩がいつ引き金を引くかは分からないが、危険は米韓日の各国が北朝鮮の「挑発」について行う通常の警告を遙かに超えるものである。

戦争を準備しようとする北朝鮮の政策変更は、他のすべての選択肢を使い果たしたと金正恩が結論づけたこと、1990年以来の政策の前提であった戦略が回復不能なまでに失敗したことに起因している。

 北朝鮮は、1990年、戦略的決定によって中国とロシアに対する緩衝材として、米国との関係正常化を目指す政策を進めることとした。

 2018年6月のトランプ大統領とのシンガポールでの首脳会談の後、金正恩は自らの威信をかけて19年のハノイの首脳会談に臨んだが、失敗した。そのことで北朝鮮は、抜本的政策変更をすることになった。

 そうした決定の最初の兆候が21年の中国とロシアへの戦略的な方向転換であり、それは米国が世界で退却しているとの国際状況の再評価の結果としてなされた。

特に露朝関係は昨年9月の露朝首脳会談のように軍事分野で着実に発展している。

 23年の初めから、戦争準備の議論が北朝鮮の発言の中に出始め、12月の朝鮮労働党大会において、金正恩は韓国を敵だと宣言することで政策変更を明らかにした。

 米国と韓国は強固な同盟関係によって、金正恩を現状維持に止めることができると信じているが、それは危険である。北朝鮮がわれわれの計算を超えた動きを計画している可能性がある。

 北朝鮮は50発~60発という大きな核戦力を有しており、韓国、日本の全土、グアムに届くミサイルに搭載できる。

もしも、数十年にわたって試みたものの米国と関与することはできないと金正恩が確信を得たとすれば、同人の最近の言葉と行動は、その核兵器を使って軍事的解決を目指すことを指し示している。もしもそうなれば米韓が勝利したところで空しい結果となる。

*   *   *   

 東アジアにおける危機の可能性としては、このところ日米の政策コミュニティーでは台湾有事に焦点が当てられているが、この論説は朝鮮半島有事の勃発を警告する内容である。

 この論説の執筆者のカーリン、ヘッカーの二人とも北朝鮮専門家にはよく知られている。

ヘッカーは米国の核軍備を支えるロスアラモス国立研究所の所長を務め、北朝鮮の招きで04年から10年まで毎年、北朝鮮を訪れ、西側の関係者の中で、北朝鮮の核開発について最も直接的な情報を得てきた人物である。

カーリンは米政府の内外で北朝鮮の分析に携わり、ドン・オーヴァードーファーが名著『二つのコリア』をアップデートする際に協力を仰いだ人物である。』

『昨年来、北朝鮮が韓国に対して用いる言辞が極めて戦闘的なものになってきている。昨年末には、金正恩総書記は韓国との関係を「同族関係ではなく、敵対的な国家関係」と位置づけ、「2024年は戦争準備強化の新たな全盛期だ」と表明した。

 1月15日には、金正恩は国会に相当する最高人民会議の場で、韓国を「第一の敵対国、不変の主敵」と位置付け、憲法を改正すべきだと演説した。この会議では南北対話や協力のための三機関の廃止も決めた。

 北朝鮮が戦闘的な言葉を用いるのは珍しいことではないが、ヘッカーらはこの論説において第二次朝鮮戦争の勃発を警告する根拠として、第一に、北朝鮮は長年の間、米国との関係正常化を目指してきたが、結局、その望みはないと見限ったこと、第二に、国際環境が北朝鮮にとって有利なものとなってきたと判断したことを挙げている。

 金正恩が戦争を決意したというヘッカーらの見立てが正しいのかどうかは別として、北朝鮮にとって米国からの安全の保障を得ることが重要な国家目標となっているという従来の見方を見直す必要があることは確かであろう。

核・ミサイル開発の進展によって、北朝鮮は米国を抑止しうる対米攻撃能力を得たと判断している可能性がある。これは、地域紛争が起こりやすい状況を招きかねない。

 また、米国の国力の衰え、複数の対応すべき国際的危機の発生、国内の分裂から、米国が朝鮮半島有事に介入できる程度に大きな限界があると見切っているのかもしれない。

 他方、北朝鮮がこれまで何度も繰り返してきた「獲得したいものを得るために緊張を高める」という手法が過去のものになったという証拠もない。

2025年1月のトランプ政権の登場を予想しつつ、掛け金を高めようとしている可能性もある。

米国の関与で核・ミサイル開発を止められるのか?

 ヘッカーらは、この論説において、米国が北朝鮮と関与する機会を過去に何度も失ってきたことを北朝鮮の強硬姿勢の原因として挙げている。北朝鮮には米国との関与がうまく進めば、核・ミサイル開発を止める気があったのであろうか。

 むしろ米国との関与により獲得したいものを得つつ、核・ミサイル開発は国際社会の目を欺きつつ営々と進める考えであったのではないだろうか。

そうだとすると、遅かれ早かれ北朝鮮が米国との関与に従来ほど重きを置かない時期がやってきたのだと思われる。

 金正恩の「決意」の真偽は分からないが、境界線付近の小競り合いがエスカレーションする可能性も排除できない。

そうした可能性も念頭に置いて、危機管理の備えが必要であろう。』