中国軍の日本海進出に警戒感 安保体制も見直し不可避

中国軍の日本海進出に警戒感 安保体制も見直し不可避
編集委員 高坂哲郎
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM313I90R30C24A1000000/

『中国軍が、日本海に常時戦力を展開するのではないかとの警戒感が高まり始めている。中国が対米軍事力の中核と位置付ける核戦力の配備先として、日本海が現在の南シナ海よりも望ましい場所になってきたためだ。現実化すれば、日本の安全保障や朝鮮半島情勢を大きく揺さぶる事態となる。

2023年12月、中国のH6爆撃機2機が日本海上空に入った後、ロシア軍のTU95爆撃機2機と合流した。両軍の戦闘機や哨戒機、電子戦機…

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『「中国軍は将来的に、次世代の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)である『巨浪3型』を搭載した『唐級』戦略原子力潜水艦を日本海に常時配備したいようだ」――。防衛省情報部局OBの一人はこう語り、中国軍の近年の日本海進出の裏には、戦略的な思惑が潜んでいるとの認識を示す。』

『こうした観測は実は以前からあったが、現実味が急速に増している。引き金となったのは、米英豪の安保協力枠組み「AUKUS(オーカス)」の発足だ。AUKUSの最大の狙いは中国軍が南シナ海に配備している戦略原潜を含む潜水艦部隊への対抗で、攻撃型原潜に加え、センサーや攻撃兵器を搭載する最新の無人潜水艇を大量に展開して中国軍潜水艦部隊の無力化を狙う。

南シナ海は水深が比較的浅い。しかも同海域の中国潜水艦部隊の基地がある海南島と、現役の戦略原潜「晋級」の主な展開先としている南シナ海中部海域の間には距離がある。中国軍はこれまで、浅瀬を埋め立てて造成した人工島群を同海域の周囲に形成することで、米国を威嚇するうえで最も強力なSLBM「巨浪2型」を搭載する晋級原潜を死守する構えをとってきた。しかし、新技術による「海中の透明化」を掲げるAUKUSの具体化が進めば、南シナ海は安住の地ではなくなってしまう。』

『中国軍がこの状況を脱するには、より安全な海域に戦略原潜を移すことが必要になる。そこで有力候補となるのが日本海というわけだ。地球が球状であることを踏まえれば、北極圏越しに米国に向けてSLBMを撃ち込む場合、南シナ海からではなく日本海から発射した方が距離も近い。米国に対処する時間を与えないことが中国軍には利点となる。』

『「先々朝鮮半島有事が現実になれば、中国軍は混乱に乗じて北朝鮮領北部を占領し、中国東北部から日本海に出る回廊にする可能性がある」と防衛省情報部局OBは予測する。「戦時中まで日本軍が軍港として使っていた羅津(ラジン)港を中国軍が確保できれば、SLBM部隊の母港として使えるし、羅津沖にはSLBMを隠すのに適した水深が深くなる海域がすぐ近くにある」という。日本海上空で繰り返される爆撃機の飛行は、先々日本海に配備するかもしれない虎の子兵器SLBMを、空から守る態勢をとろうとしているとも受け取れる。』