世界経済「軟着陸に道筋」 IMF、24年3.1%成長に上げ

世界経済「軟着陸に道筋」 IMF、24年3.1%成長に上げ
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『【ワシントン=高見浩輔】国際通貨基金(IMF)は30日、四半期に1度の経済見通しを公表した。2024年の世界の実質経済成長率を前年並みの3.1%とし、23年10月の前回予測から0.2ポイント引き上げた。景気を失速させずに物価上昇率を下げるソフトランディング(軟着陸)への道筋がみえたと強調した。

想定よりも早いインフレ率の鈍化を反映し、減速予測を修正した。IMFは先進国の24年の消費者物価上昇率を2.6%と0.4ポイント下方修正した。供給網や労働力といった供給面の改善が進み、需要が堅調でも物価は高止まりしなかった。

歴史的な高インフレに対応した金融引き締めによって景気後退が避けられなくなるという悲観論は薄まった。IMFチーフエコノミストのピエール・オリビエ・グランシャ氏は「軟着陸に向けて最後の下り坂に入った」と評した。

米国の24年の成長率は個人消費の強さを反映して0.6ポイント高い2.1%とした。23年後半の国内総生産(GDP)が強く、年平均で計算する成長率のベースが高くなった影響も大きい。中国は新規国債発行額の積み増し効果を加味して、4.6%と0.4ポイント上方修正した。

日本は0.1ポイント低い0.9%となった。新型コロナウイルス禍からのリベンジ消費や企業投資の回復など、23年に成長を支えた要因が一巡すると指摘した。

弱さを引きずるのはユーロ圏だ。23年の0.5%という低成長に続き、24年も0.9%と0.3ポイント下げた。消費者心理や企業投資の低迷が続き、23年にマイナス成長に陥ったドイツは24年も0.5%の伸びにとどまる。

経済の下押し要因は少なくない。IMFは米欧の利下げを24年後半からとみており、年前半の開始を織り込む市場を過度に楽観的だと警戒する。市場の期待が実現せずに市場金利が上昇し、民間企業や政府の資金調達環境が厳しくなる事態が起こり得るという。

地政学的なリスクもくすぶる。ロシアによるウクライナ侵攻のほか、中東ではパレスチナ自治区ガザでの軍事衝突や紅海での民間船舶への攻撃などが続く。原油など商品価格の高騰につながれば、先進国の金融引き締めは長期化する可能性がある。

IMFは25年の世界の成長率も3.2%にとどまるとみる。00〜19年平均の3.8%を下回る。

低成長から抜け出して持続的な成長軌道を取り戻すには、米中対立を中心に進むグローバル化の巻き戻しも障壁になる。

民間の政策監視機関グローバル・トレード・アラートは23年に新たに導入された貿易制限措置が約3000件程度と19年の3倍近い水準になったと指摘している。今回のIMFの予測でも世界の貿易量の伸びは24年に3.3%、25年でも3.6%にとどまり、過去平均の4.9%を下回る。

米大統領選など世界的に重要な選挙が相次ぐ24年は、保護主義的な施策が打ち出されるリスクも高まる。短期的には不透明感が晴れつつある世界経済だが、中長期的な先行きはなお見通しづらい状況が続く。

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