北朝鮮の「国防科学発展及び武器体系開発5ヶ年計画」に関する考察

防衛研究所 National Institute for Defense Studies
NIDSコメンタリー
第294号 2024年1月23日
北朝鮮の「国防科学発展及び武器体系開発5ヶ
年計画」に関する考察一現在地と展望一
https://www.nids.mod.go.jp/publication/commentary/pdf/commentary294.pdf

『地域研究部アジア・アフリカ研究室 浅見明咲

はじめに

2021年1月、北朝鮮は、第8回党大会において、「国防科学発展及び武器体系開発5ヶ年計画(以下、
5ヶ年計画)」を発表した。北朝鮮は、コロナ禍にも関わらず、2021年以降、ミサイル発射実験を中心に、
この5ヶ年計画の推進に注力してきた。北朝鮮が5ヶ年計画で掲げる項目は表1の通りである。
表1 「国防科学発展及び武器体系開発5ケ年計画」
① 核兵器の小型化•軽量化、戦術核兵器化
② 超大型核弾頭の生産※
③ 射程15,000kmにおける任意の戦略的対象を正確に打撃する能力の確保※
④ 極超音速滑空飛行弾頭の開発、導入※
⑤ 水中および地上固体発動機大陸間弾道ミサイル事業※
⑥ 核潜水艦(原子力潜水艦)と水中発射核戦略武器の保有※
⑦ 軍事偵察衛星を運用し、偵察情報収集能力を確保
⑧ 500kmの前線の縦深までを精密に偵察することができる無人偵察機などの偵察手段の研究開発
⑨ 先端武器や戦闘技術機材を研究開発し、通常戦力の先端化•先鋭化を図る
⑩ 装備の知能化、精密化、無人化、高性能化、軽量化
『労働新聞』「第8回労動党大会第?期事業総和報告」2021年1月9日をもとに執筆者作成。
※は計画のうち、「5大課業」とされているもの。

北朝鮮は、2026年1月に第9回党大会を開くことが予想される。それまでに北朝鮮は、この5ヶ年計
画に掲げる項目を1つ1つ達成していくものと思われる。

本稿では、北朝鮮の5ヶ年計画の達成度を整
理しつつ、残りの計画目標に関する展望について考察を試みる。
-1-
NIDSコメンタリー第294号

核開発と7回目の核実験の可能性

5ケ年計画の中でも特に注目されているのは、①の核開発に関する項目であろう。北朝鮮がこの目標
を達成するために、7回目の核実験を行うのかについて様々な議論がなされている。北朝鮮は、2017年
9月以降核実験を行っていない。米朝会談が行われる前に、北朝鮮が、豊渓里の核実験場の入り口を爆破
したことは記憶に新しい。しかし、その後、北朝鮮は、同実験場坑道の修復作業をしているものとみられ、
7回目の核実験を行う可能性が指摘され始めた七韓国の国家情報院も、北朝鮮の核実験の可能性につい
て、国会の情報委員会で報告をしている2。このような各種報道や専門家の予想と反し、北朝鮮は未だに
7回目の核実験を行っていない。

北朝鮮が、5カ年計画で掲げているのは、核兵器の小型化、軽量化、戦術核兵器化である。まず、小型
化と軽量化についてみていきたい。

北朝鮮は、2013年2月に行った3回目の核実験において、次のよう
に述べている。「(今回の核実験は)以前とは異なり、爆発力は大きいが、小型化、軽量化された原子爆弾
を使用し、高い水準で安全かつ完璧に進行」された3。

この実験での推定される出力は、約6〜7ktであっ
たん 北朝鮮が目指す核兵器の小型化と軽量化が、低出力の核兵器(Low-yield Nuclear Weapons)を意味
するのであれば、6〜7ktという数値はそれに該当するものと考えられる5。

この出力だけでは、小型化と
軽量化に成功したかを判断することはできないカヾ、北朝鮮としては、実験が「完璧に進行」されたという
立場をとっている。

また、2023年3月、『労働新聞』は、金正恩が、核武器兵器化事業を指導したという記事と共に、戦術
核弾頭「火山一31」が映った写真を公開した6。

金正恩は、「新しい戦術核武器たちの技術的諸元および構
造適用特性、それぞれの武器体系たちとの互換性等について具体的に了解」し、「国家核兵器総合管理体
系『核の引き金』の情報化技術状態を了解」したとした7。

公開された写真から、「火山一31」は、直径40
~50 cm程度であり、北朝鮮が近年行なってきた弾道ミサイル(KN-23、KN -24、KN-25)、無人水中攻
撃艇(魚雷)、巡航ミサイル等に搭載が可能であるとみられている8。

北朝鮮は、「火山一31」の公開と共
に、ミサイル総局による弾道ミサイル発射実験を行った。

北朝鮮は、この実験に関し、「戦術弾道ミサイ
ルには核戦部を模した試験用戦闘部が装着された」と発表した。

一方で、「火山一31」が使用されたかど
うかについては言及されなかったため、戦術核弾頭が短距離弾道ミサイルに搭載可能な水準に達してい
るかどうかは断言できない。

しかし、3回目の核実験から、「火山一31」の公開までに明らかとなったこ
れらの情報を総合して考えると、北朝鮮が、核兵器の小型化と軽量化の成功に近づいている可能性は否
定できない。

続いて、戦術核兵器化についてみていきたい。

戦術核は、その使われ方や考え方によって定義が異なる
ことがある七 北朝鮮がどの定義をもって、戦術核兵器化と謳っているのかは定かではない。北朝鮮がど
-2 –
NIDSコメンタリー第294号
のように核を使うかによって、それは戦術核にも戦略核にもなりうるのである。

北朝鮮は、2023年9月
2日、人民軍西部地区戦術核運用部隊によって「戦術核攻撃仮想発射訓練」を行った。

北朝鮮は、「核戦
闘部を模した試験用戦闘部を装着した長距離戦略巡航ミサイル2機が実践環境の中で発射」され、正確
にその任務を果たしたと発表した而。

この巡航ミサイルに、上述の戦術核弾頭「火山一31」が搭載されて
いたのかについては言及されなかった。

北朝鮮は、核弾頭のモックアップを用いて実験を行ったと主張
していることから、戦術核兵器化を目指した実験であったことは確かだ。

そして、北朝鮮としては、「核
打撃任務を正確に遂行した」と、実験の成功を主張している。

したがって、北朝鮮の立場としては、戦術
核兵器をすでに手に入れたと主張することもできるのである。

以上のことから、北朝鮮は、5カ年計画で掲げる「核兵器の小型化•軽量化、戦術核兵器化」に一定程
度の成果を見出していると考えられる。

もちろん技術的には、様々な面で疑問が残るカヾ、北朝鮮が何をも
って計画の達成とするかは、北朝鮮次第であると言わざるを得ない。

しかし、これまでの北朝鮮の主張に
基づけば、5カ年計画の核開発に関する項目には、チェックが入れられる状況に近づいているとみえる。

ここで疑問が残るのは、7回目の核実験の可能性についてである。

北朝鮮が、7回目の核実験を行う可能
性については、上述の通り、各機関が言及してきた。

また、一部報道では、2017年の核実験(6回目)
を行った際、北朝鮮の軍幹部が、北朝鮮は7回目の核実験をする予定であり、7回目の核実験をもって
「核武力」が完成されると語ったとされている“。

したがって、北朝鮮が、7回目の核実験を行う可能性
は、ゼロではないが、5カ年計画の遂行という名分のもと、2025年末までに行われるかについては、不
透明であり、その動向を注視していくしかない。

「核抑止力」を高めるためのミサイル開発と潜水艦の建造
核による抑止力を高めるには、核弾頭の開発だけでな、その運搬手段も重要である。

5カ年計画のなか
で、主にミサイル開発に関連するものは、表1で示した③、④、⑤、⑥である。

まず、③の射程15,000km
内の目標に対する打撃能力について、北朝鮮は、すでに!CBM級の「火星一15」の発射実験に成功したと
主張しているため、射程距離!5,000kmのミサイルを飛ばすことは可能であると考えられる。

しかし、大
気圏再突入技術が証明されているとは言い難いため、「正確に打撃する能力の確保」という面では、さら
なる実験が必要になる可能性もある。

また、④の極超音速ミサイルについて、北朝鮮は、2021年9月に
初めて「火星一8」の発射実験を行った。

続いて2022年1月には、2回の発射実験を行い、国防科学院
はいずれも成功したと発表した人。

1月5日の実験に対して、韓国国防部関係者は、「極超音速」ではな
く、一般的な弾道ミサイルであると評価したが吐 北朝鮮としては、「極超音速滑空飛行弾頭の開発、導
入」のうち、「開発」に関しては一定の成果を得たとしていると思われる。
-3 –
NIDSコメンタリー第294号

次に、⑤の固体燃料式の大陸間弾道ミサイルの開発についてである。

北朝鮮は、2023年4月、金正恩
の現地指導のもと、新型大陸間弾道ミサイルとする「火星一18」の発射実験を通して、「大出力固体燃料
多段発動機」の性能確認を行ったとした4燃料の固体化に成功することで、北朝鮮は、ミサイル発射ま
での準備時間を短縮し、奇襲攻撃能力を高めることができると考えられる。

また、韓国統一研究院の専門
家は、北朝鮮が、今まで発射実験を行ってきた!RBMおよびICBM級のミサイルに関して、液体燃料から
固体燃料に切り替え作業が行わる可能性を指摘した也 実際に北朝鮮は、2023年11月15日に、中距離
弾道ミサイルの「固体燃料発動機試験」を行ったことと、「国防力現代化計画」としてミサイルの更新を
行うと発表している任。

この更新作業の過程で、北朝鮮は、今後もミサイル発射実験を繰り返していくこ
とになるだろう。

北朝鮮は、水中から発射が可能な大陸間弾道ミサイルの開発も目標に掲げている。

この項目に関して、
具体的な実験等は公表されていないため、現段階での能力を推察することは難しい。

北朝鮮は、2021年
10月19日に「新型潜水艦発射弾道ミサイル」の実験を行った。

実験を担当した国防科学院は、「側面機
動および滑空跳躍機動をはじめとする多くの進化した操縦誘導技術が導入された」と発表し、実験の成
功を伝えた。

2022年5月7日にも、再びSLBMと思われるミサイルの実験が行われたが、北朝鮮メディ
アによる報道がなかったため、詳細については不明である。

その他、巡航ミサイルの発射実験なども行わ
れているが、北朝鮮が掲げる、水中からの「固体発動機大陸間弾道ミサイル」実験は、未だ行われていな
い。

北朝鮮は、「火星一18」で使用されたエンジンを利用して、潜水艦発射型のミサイル開発も進めてい
く可能性がある日。

したがって、北朝鮮は、残りの2年間で、ICBM級のSLBMの開発を進めていくもの
と考えられる。

このSLBMの開発のためには、5ヶ年計画で掲げた⑥の潜水艦の開発を同時並行していくものと思わ
れる。

北朝鮮は、2023年9月、841号「金君玉英雄」艦と称する潜水艦の進水式を行った的。

この「金君
玉英雄」艦は、既存の中型潜水艦(ロメオ級)を「攻撃型」に改造した「戦術核攻撃潜水艦の標準型」と
して発表された。

新たに公開された「金君玉英雄」艦は、大小合わせて1〇の発射管を兼ね備えている。

北朝鮮が、今まで軍事パレードなどで公開してきたSLBM (北極星一3、北極星一4人、北極星一5人な
ど)は、既存のロメオ級潜水艦で打ち上げるには発射管が小さいため、この新型潜水艦を使用して、発射
実験が行われる可能性があると指摘されている也

進水式の演説において、金正恩は、すべての中型潜水
艦を「攻撃型」に改造すると宣言した2°。

したがって、北朝鮮は、SLBMの開発を進めるためにも、「金君
玉英雄」艦を主力潜水艦として開発•改造していくと考えられる。

その過程の中で、SLBMの発射実験を
行う可能性も高まるであろう。

また、金正恩は、この潜水艦が敵に対する「先制および報復打撃」手段として使われると言及し、既存
の潜水艦の「核潜水艦化」、つまり原子力潜水艦に転換を目指すことを発表した。

要するに北朝鮮は、最
終的に弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(SSBN: Nuclear-powered ballistic missile submarine)の保有を目
-4 –
NIDSコメンタリー第294号
指しているということである。

SSBNの確保により、先制核攻撃と報復能力の両輪で、核による抑止力を
強化して行く狙いがあるといえる。

北朝鮮の既存の潜水艦はディーゼルエンジンであり、原子力潜水艦
建設には時間を要するものとみられる。そのため、5ヶ年計画の中で、「核潜水艦」の保有は、課題とし
て最後まで残ると思われる。

5ケ年計画では、潜水艦と共に「水中発射核戦略武器」の保有も掲げている。

北朝鮮は、2023年3月、
「新たな水中攻撃型武器体系に関する試験」として「核無人水中攻撃艇『ヘイル』」の実験を行ったん

『労働新聞』は、金正恩が、29回にわたって攻撃艇「ヘイル」の試験を直接指導したことと、党中央委
員会第8期第6回全員会議が、作戦配備を決定したことを伝えている。

北朝鮮は、攻撃艇について、「こ
の水中核戦略武器の使命は、隠密に作戦水域に潜航し、水中爆発で超強力な放射能の津波を起こし、敵の
艦船集団と重要作戦港を破壊消滅させることである」としている。

上述の戦術核弾頭「火山ー31」は、大
きさから推察するに、この「ヘイル」への搭載も可能とみられている。

そのため、「ヘイル」が戦術核と
して用いられる可能性は十分に考えられる。

現段階では、「ヘイル」カヾ、実戦配備されているかについて
は確認されていない。

しかし、北朝鮮としては、5ヶ年計画における「水中発射核戦略武器」の保有を達
成したと主張できる段階に近づいているといえる。

核攻撃の能力は、運搬手段である弾道ミサイル等の性能も大きく関わってくる。そのため、5ヶ年計画
で掲げた核弾頭の運搬手段に関する項目(表1の③〜⑥)の完成度によって、北朝鮮の核抑止力も左右さ
れるのである。

技術的に疑問が残る点や、北朝鮮の報道からは確認できない点もあるカヾ、北朝鮮は、着実
に5ヶ年計画完遂への階段を上っているといえる。

軍事偵察衛星は「核抑止力」における「目」

2023年11月22日、北朝鮮は偵察衛星「望遠鏡一1」号の打ち上げ成功を発表した。

北朝鮮が、衛星
の打ち上げを試みたのは、今回が初めてではない。

1998年の「光明星1号」を皮切りに、北朝鮮は、8回
の打ち上げを行った。そのうち軌道に乗った衛星もあるが、衛星と地上間での信号の送受信が行われて
いる様子は確認されておらず、北朝鮮が、衛星写真を公開することもなかった22。

したがって、北朝鮮と
しては、衛星を軌道に乗せ、交信し、軍事偵察衛星としての機能を構築していくことカヾ、長年の課題であ
ったといえる。

また、北朝鮮は、2022年9月に「朝鮮民主主義人民共和国核武力政策について23」を発
表し、核兵器の使用条件を提示した。

その中で、北朝鮮は、自国への攻撃(核兵器などの大量破壊兵器だ
けでなく通常戦力によるものを含む)カヾ、切迫していると判断される場合には、核を使用するとしてい
る。

そのような兆候を捉える1つの手段として、偵察衛星が用いられる可能性がある。そのため、衛星の
打ち上げは、北朝鮮の抑止力強化という文脈でも重要な事業であると考えられる。
-5 –
NIDSコメンタリー第294号

2023年、北朝鮮は、偵察衛星の発射を3回行った。

1回目(5月31日)と2回目(8月24日)は、
運搬用ロケットの問題により失敗に終わった。

3回目(11月22日)の打ち上げは、金正恩が見守る中行
われ、『労働新聞』は当日のうちに、「偵察衛星『望遠鏡一1』号を軌道へ正確に進入させた」と伝えた24。

金正恩は、打ち上げの成功について、「今や万里を見下ろす『目』と万里を叩く強力な『拳』をすべて自
らの手中に収めた」とし、衛星の打ち上げは、「軍事的打撃手段の効用性を高める側面や自主防衛」のた
めのものであると語った25。

「目」は偵察衛星、「拳」は弾道ミサイルを指し、両者を手にいれることで、
攻撃と防御を一気に強化できるとしているのである。

その後、北朝鮮の国家航空宇宙技術総局は、偵察衛星によって、韓国、米国、日本の都市や基地の様子
を捉えたとして、衛星が正常に機能していることをアピールし始めた26。

しかし、それらの報道の中で、
衛星写真が公開されることはなかったため、北朝鮮の衛星の性能について疑問視する声が上がっている。

1回目の打ち上げ失敗の際、韓国軍は、落下したロケットの一部を回収し、調査を行っていた。

その結果、
合同参謀本部は、「米韓の専門家が綿密に分析した結果、偵察衛星としての軍事的効果性が全くない」と
いう評価を下した27。

このように衛星の精度についての疑問が残る段階ではあるカヾ、北朝鮮の偵察衛星運
用室(国家航空宇宙技術総局の平壌総合管制所に組織)は、12月2日から衛星による情報収集任務に着
手している28。

また、北朝鮮は、来たる党中央委員会第8期第9回全員会議において、2024年以降の偵
察衛発射計画を審議する予定であることから2七この先も複数回の衛星打ち上げを行い、偵察能力の向上
を図るものと思われる。

5カ年計画では、「軍事偵察衛星を運用し、偵察情報収集能力を確保」と目標を掲げている。

衛星を1
基打ち上げただけでは、「偵察情報収集能力」が十分に確保されたとは言い難いが、北朝鮮が、衛星の打
ち上げに成功したことは事実として受け止めなければならない。

2024年以降に、衛星を数基打ち上げる
予定であることから、5カ年計画の成果報告の際には、複数の偵察衛星が任務に就いている可能性があ
る。

また、衛星という「目」を持った北朝鮮が、「拳」である弾道ミサイルなどをどのように開発してい
くのかについても注視していく必要があろう。

おわりに

以上のように、北朝鮮は、2021年に5カ年計画を発表してから3年間、計画遂行のための取り組みを
着実に進めてきたといえる。

そして、それぞれの項目に対して、一定の成果を上げたとみえる。

しかし、
北朝鮮が主張する開発の成功や目標の達成は、必ずしも技術的な完成度と一致していないのが現状であ
る。

北朝鮮が、5カ年計画に対し、何をもって達成とするかは、北朝鮮の判断に委ねられることになるだ
ろう。

北朝鮮は、5カ年計画の意義について、「敵対勢力たちの脅威と恐喝という言葉自体が終息するま
-6 –
NIDSコメンタリー第294号
で、国の軍事的な力を持続的に強化していく鉄の信念と意志の表明」であるとしている3〇。

つまり、米国
と韓国の対北敵視政策が緩和されない限り、軍事力の強化を続けていく、そのための5カ年計画なので
ある。

そして、その軍事力の強化の中で、一番重要なのが、核による抑止力の強化である。

5カ年計画の
大部分は、核による威嚇の信憑性や反撃能力を高めるための技術開発目標である。核弾頭の小型化•軽量
化を図り、弾道ミサイルなどの運搬システムの性能を強化しながら、北朝鮮は、戦術核の保有へと駒を進
めているのである。

残りの2年間も、北朝鮮は、自分たちの計画に沿って、開発を進めていくだろう。


の中でも特に、本稿で言及した7回目の核実験、SLBMの発射実験、追加の偵察衛星打ち上げの可能性に
ついて注視していく必要がある。
(2023年12月22日脱稿)

-7 –
NIDSコメンタリー第294号
1 Joseph S. Bermudez Jr, Victor Cha and Jennifer Jun, 11 New Activity at Punggye-ri Tunnel No.4,” Beyond Parallel, June 15, 2022,
https://beyondparallel.csis.org/new-activity-at-punggye-ri-tunnel-no-4/.
2聯合ニュース「国情院『北7回目核実験をするなら10月16日〜11月7日の可能性』(総合)」2022年9月28日。
3朝鮮中央通信「朝鮮中央通信報道第3回地下核実験を成功的に進行」2013年2月12日。
4防衛省「北朝鮮による核・弾道ミサイル開発について」2023年5月。
5 *’Although there has been some debate over what constitutes a “low-yield” nuclear weapon, one definition of “low-yield” is ten kilotons
or less.7 Furthermore, some ambiguity exists with regard to the exact definition of a “kiloton” (see Appendix A), with different states, and
sometimes even organizations within states, often defining the term “kt weapon” somewhat differently.” (Eva Lisowski, “Potential Use of
Low-yield Nuclear Weapons in a Korean Context,” February 22, 2022, p.5.)
6『労働新聞』2023年3月28日。
7『労働新聞』2023年3月28日。
8聯合ニュース「北朝鮮の戦略核弾頭『実物』公開で核脅威極大化••・直径40〜50 cm (総合)」2023年3月28日。
9ここでは、戦術核の定義や戦略核との違いについての詳細な議論は行わない。ただし、本稿では、以下のような考え方に基づいて議論を進
める。
“In contrast, the tactical use of nuclear weapons is defined as “the use of nuclear weapons by land, sea, or air forces against opposing
forces, supporting installations or facilities, in support of operations that contribute to the accomplishment of a military mission of limited
scope, or in support of the military commander’s scheme of maneuver, usually limited to the area of military operations.” (CRS,
“Nonstrategic Nuclear Weapons,” March 7, 2022.)
10朝鮮中央通信「重要目的の対応訓練」2023年9月3日。
11朝鮮日報「北朝鮮軍高位級幹部『7回目核実験実施する••・核兵器完成のための最後の核実験』•-RFA報道」2017年11月26日。
12朝鮮中央通信「国防科学院極超音速ミサイル試験発射」2022年1月6日;朝鮮中央通信「極超音速ミサイル試験発射連続成功一金正恩総書
記参観」2022年1月12日。
13日本経済新聞「韓国国防省、『極超音速』否定、5日の北朝鮮ミサイル」2022年1月7日。
14『労働新聞』2023年4月14日。
15聯合ニュース「北朝鮮、『固体|CBM』初の試験発射を確認•••金正恩『不安恐怖に苦しむだろう』(総合2報)」2023年4月14日。
16『労働新聞』2023年11月15日。
17 Vann H. Van Diepen, “North Korea’s New HS-18 Makes a Solid but Incremental Contribution to the ICBM Force,”38 North, April 20,
2023.
18『労働新聞』2023年9月8日。
19 Joseph S. Bermudez Jr, Victor Cha and Jennifer Jun, “North Korea Launches New Ballistic Missile Submarine,” Beyond Parallel,
September 11,2023.
20『労働新聞』2023年9月8日。
21『労働新聞』2023年3月24日。
22聯合ニュース「北朝鮮、6回撃って2回軌道進入・••正常に作動しない『死んだ衛星』」2023年5月31日。
23朝鮮中央通信「朝鮮民主主義人民共和国最高人民会議法令 朝鮮民主主義人民共和国核武力政策について」(2022年9月9日)
24『労働新聞』2023年11月22日。
25『労働新聞』2023年11月23日。
25『労働新聞』2023年11月23日;『労働新聞』2023年11月25日;『労働新聞』2023年11月2 6日;『労働新聞』2023年11月28日;
『労働新聞』2023年11月30日。
2Y韓国合同参謀本部「北朝鮮の宇宙発射体等の残骸物探索および引き上げ作戦の終了」2023年7月5日。
28朝鮮中央通信「国家航空宇宙技術総局平壌総合管制所偵察衛星運用室が任務に着手」2023年12月3日。
29『労働新聞』2023年11月23日。
30『労動新聞』2021年1月9日。
-8 –
NIDS
Tokyo Japan
防衛研究所 National Institute for Defense Studies
NIDSコメンタリー
第294号 2024年1月23日
PROFILE
浅見明咲
地域研究部アジア•アフリカ研究室研究員
専門分野:朝鮮半島の安全保障問題
本欄における見解は、防衛研究所を代表するものではありません。
NIDSコメンタリーに関する御意見、御質問等は下記へお寄せ下さい。
ただし記事の無断転載•複製はお断りします。
防衛研究所企画部企画調整課
直通:03-3260-3011
代表:03-3268-3111(内線 29177)
防衛研究所Webサイト:www.nids.mod.go.jp
-9 –