平成29年・2017|問7|憲法の概念(※ 行政書士試験)

平成29年・2017|問7|憲法の概念(※ 行政書士試験)
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 ※ おそらく、この問題の正答率は、極端に低かったんだろう…。

『憲法の概念に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1、通常の法律より改正手続が困難な憲法を硬性憲法、法律と同等の手続で改正できる憲法を軟性憲法という。ドイツやフランスの場合のように頻繁に改正される憲法は、法律より改正が困難であっても軟性憲法に分類される。

2、憲法の定義をめぐっては、成文の憲法典という法形式だけでなく、国家統治の基本形態など規定内容に着目する場合があり、後者は実質的意味の憲法と呼ばれる。実質的意味の憲法は、成文の憲法典以外の形式をとって存在することもある。

3、憲法は、公権力担当者を拘束する規範であると同時に、主権者が自らを拘束する規範でもある。日本国憲法においても、公務員のみならず国民もまた、憲法を尊重し擁護する義務を負うと明文で規定されている。

4、憲法には最高法規として、国内の法秩序において最上位の強い効力が認められることも多い。日本国憲法も最高法規としての性格を備えるが、判例によれば、国際協調主義がとられているため、条約は国内法として憲法より強い効力を有する。

5、憲法には通常前文が付されるが、その内容・性格は憲法によって様々に異なっている。日本国憲法の前文の場合は、政治的宣言にすぎず、法規範性を有しないと一般に解されている。』

『【答え】:2

【解説】

1.通常の法律より改正手続が困難な憲法を硬性憲法、法律と同等の手続で改正できる憲法を軟性憲法という。ドイツやフランスの場合のように頻繁に改正される憲法は、法律より改正が困難であっても軟性憲法に分類される。

1・・・妥当ではない
硬性憲法とは、憲法改正について、通常の立法手続よりも厳格な手続を要求している憲法を言います。分かりやすいえば、憲法改正をしにくい憲法です。
日本の憲法も、憲法改正については、
各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議し、
さらに国民投票または国会の定める選挙の際行われる投票において過半数の賛成を得なければならない
とされている(憲法96条)ので、硬性憲法にあたります。
また、ドイツとフランスの憲法は、どちらも硬性憲法です。
一方、軟性憲法とは、憲法改正につき通常の立法手続で可能な憲法を言います。
イギリスは改正手続がしやすい軟性憲法に当たります。

2.憲法の定義をめぐっては、成文の憲法典という法形式だけでなく、国家統治の基本形態など規定内容に着目する場合があり、後者は実質的意味の憲法と呼ばれる。実質的意味の憲法は、成文の憲法典以外の形式をとって存在することもある。

2・・・妥当
憲法の意味は「形式的意味の憲法」と「実質的意味の憲法」の2つがあります。
つまり、憲法とは?という問いに対して、2つの切り口から説明できるということです。形式的意味の憲法とは、
憲法という名前で呼ばれている成文の法典(日本国憲法のように文としてあらわされているか)を意味します。
つまり、憲法典という形式さえあれば、内容がどのようなものであるかは問いません。
極端なことを言えば、憲法が1条しかなかったとしても、成文として存在しているのであれば
形式的意味での憲法は存在することになります。
ちなみに、イギリスは主要国で唯一、憲法が法典として存在しない国です。実質的意味の憲法は、「成文」「不文」は関係なく、内容に着目しています。
内容のない憲法は、実質的意味での憲法は存在しないということになりますそして「実質的意味の憲法」には、さらに「固有の意味の憲法」と「立憲的意味の憲法」に分類されます。

実質的意味の憲法には、さらに「固有の意味の憲法」と「立憲的意味の憲法」に分類されます。明治憲法下の皇室典範は実質的意味の憲法には当たりますが、形式的には憲法ではないため、上記の形式的意味の憲法には当たりません。

「固有の意味の憲法」とは、
国家統治の基本を定めた法としての憲法をいいます。

国があれば、当然に国家権力があります。
国家権力とは、国家統治の力です。

憲法は、国家統治の力についてルールで定めたものなので、
どんな国家でも、「固有の意味の憲法」は存在するわけですね。

「立憲的意味の憲法」とは、
市民革命により、絶対的な存在である王様を倒して、国家(王様)による個人の自由への干渉を制限し、国民の権利を保障するという内容をもった憲法です。
つまり、権力を制限することで国民の自由を保障するための法という意味が「立憲的意味の憲法」です。

そして、問題文を見ると
憲法の定義をめぐっては、
①成文の憲法典という法形式だけでなく、
②国家統治の基本形態など規定内容に着目する場合があり、
後者②は実質的意味の憲法と呼ばれる。
②実質的意味の憲法は、成文の憲法典以外の形式をとって存在することもある。
これは妥当です。

3.憲法は、公権力担当者を拘束する規範であると同時に、主権者が自らを拘束する規範でもある。日本国憲法においても、公務員のみならず国民もまた、憲法を尊重し擁護する義務を負うと明文で規定されている。

3・・・妥当ではない
憲法は、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員」を拘束する規範です。
国民(主権者)は含みません(憲法99条)。
よって、本肢は「主権者が自らを拘束する規範でもある」という部分が妥当ではありません。

4.憲法には最高法規として、国内の法秩序において最上位の強い効力が認められることも多い。日本国憲法も最高法規としての性格を備えるが、判例によれば、国際協調主義がとられているため、条約は国内法として憲法より強い効力を有する。

4・・・妥当ではない
憲法は、国の最高法規であって、その条規(憲法)に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しません(無効)(憲法98条)。
条約と憲法の優劣については、明確な判例はありません。
したがって、「条約は国内法として憲法より強い効力を有する」が妥当ではありません。
5.憲法には通常前文が付されるが、その内容・性格は憲法によって様々に異なっている。日本国憲法の前文の場合は、政治的宣言にすぎず、法規範性を有しないと一般に解されている。

5・・・妥当ではない
日本国憲法には前文があるが、この前文は憲法の一部だと考えられていて、法規範性も有しています。
したがって、前文を改正するためには、憲法改正の手続き(憲法第96条)が必要です。』