上川外相ウクライナ訪問、無人機検知へ54億円拠出
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA057MV0V00C24A1000000/
『上川陽子外相は7日、ウクライナを訪問し、首都キーウ(キエフ)でゼレンスキー大統領やクレバ外相と会談した。ロシアによる侵攻が長期化し、米欧の「支援疲れ」が指摘される。日本は2月に東京で復興推進会議を開く。官民で連携して将来の復旧・復興を支える姿勢を示した。
上川氏はクレバ氏との共同記者発表でロシアによる相次ぐミサイルや無人機を使った攻撃を強く非難した。空襲警報が発令され、会場は地下シェルターになっ…
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『空襲警報が発令され、会場は地下シェルターになった。
北大西洋条約機構(NATO)の信託基金に新たに3700万ドル(およそ54億円)を拠出すると表明した。これを通じてドローンなどの動きを把握する「対無人航空機検知システム」を供与する。越冬対策のため大型電力機材の支援も伝えた。
この後、ゼレンスキー大統領とも会談した。
上川氏がこの時期にウクライナを訪れた背景には、2月に都内で開く予定の「日ウクライナ経済復興推進会議」がある。現地事情を直接確認しつつ、ウクライナ側と擦り合わせる狙いがあった。会議にはシュミハリ首相を招く。
集団埋葬地となった教会を視察する上川外相(左手前)ら(7日、ウクライナ・キーウ近郊ブチャ)=共同
米国や欧州のNATO加盟国などはウクライナに戦闘機や戦車、砲弾などを供与してきた。一方で日本は直接的な軍事支援には制約がある。
政府は2023年12月に防衛装備移転三原則と運用指針を改定した。防空用の迎撃ミサイル「パトリオット」を米国に輸出すると決めた。米国から第三国への提供は戦闘中の国・地域を除くため、戦時下のウクライナは対象外になる。
日本が柱に据えるのが官民連携による復旧・復興だ。政府は日本企業とともにウクライナの支援ニーズをくみ取ってきた。地雷やがれきの撤去のほかインフラ再建、ウクライナ経済の柱である農業分野での協力を念頭に置く。
23年9月の林芳正前外相の訪問時には楽天グループの三木谷浩史会長兼社長や遠隔診療などを手掛ける医療スタートアップ、アルム(東京・渋谷)が同行した。ゼレンスキー氏との面会にも同席し、意見交換した。
23年11月には岩田和親経済産業副大臣と辻清人外務副大臣がキーウを訪れ、シュミハリ首相らと協議した。IHIやクボタなど10社が参加した。
ポーランドからウクライナに入った上川外相(7日)=外務省提供
今回の上川氏の訪問には企業関係者は同行しなかったものの、取り組みの継続を伝える狙いがある。
経団連は23年11月、既存の特別部会を格上げする形で「ウクライナ経済復興特別委員会」を立ち上げた。同国でビジネスを展開してきた丸紅の国分文也会長が委員長を務める。経団連の会員企業に限らずスタートアップも含めて参加を呼びかける。
日本政府は2月の経済復興推進会議に向けて企業も含めた協力案件の具体化を目指す。
世界銀行や国連などの23年3月時点の試算によると今後10年でウクライナで必要な復旧・復興の経費は4110億ドル(およそ60兆円)にのぼる。侵攻の長期化で復興費用はさらに膨らむ可能性が高まっている。
経済を立て直すためには民間投資が不可欠になる。米国などでは長引く軍事支援への消極論も出始めている。パレスチナ情勢の対応に追われ、ウクライナへの支援が後退する懸念もくすぶる。日本は2月の会議で国際世論を喚起する姿勢をみせる。
こうした日本の支援の動きにはウクライナで歓迎の声が出ている。米議会でウクライナ支援のために614億ドルの追加予算案の成立にメドが立っていない。欧州連合(EU)でも総額500億ユーロの資金支援にハンガリーが反対し、合意できなかった。
ゼレンスキー氏は昨年12月、松田邦紀駐ウクライナ大使と会い、日本の支援への謝意を示した。X(旧ツイッター)では「このような強力な同盟者がいることを喜ばしく思う」と投稿した。
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植木安弘
上智大学グローバル・スタディーズ研究科 教授
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ひとこと解説 欧米によるウクライナへの財政支援が滞る中で、日本が積極的な財政支援やNATOへの拠出などを通じた支援を表明したことは歓迎される。2月に開催される日・ウ復興支援会議では民間企業のより積極的な関与が期待され、6月にベルリンで予定されている第3回ウクライナ復興会議に向けての重要なステップとなろう。ただ、戦争が長引くことが予想されるため、復旧のための支援と復興のための支援のやり方には工夫が必要であろう。
2024年1月8日 7:57 』