ミャンマー軍事政権〝転換〟の兆しと備えるべきこと
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/32334
『2023年11月28日付のワシントン・ポスト紙が、「ミャンマーの軍事政権は負けている。米国はその崩壊に備えるべきである」との社説を掲載している。
2023年3月第78回軍隊の日を記念するパレードで将校を視察する軍事評議会議長のミン・アウン・フライン上級将軍(RM(ライツマネージド))
ミャンマー軍が民主的政権をクーデタで倒し、国を内戦状態にして約3年、潮目は変わりつつある。まだ先のことであるが、世界は軍事政権崩壊後を考え始める必要がある。それは、この国の唯一の正統な民主主義的勢力、挙国一致政府と話すことである。
武装された少数民族の諸グループが軍に対して勝利を収めている。10月27日の攻撃でシャン州の村落、軍の拠点、中国との国境地点を占領することに成功した。別の少数民族も北東のサガイン、チン州とラカイン州で同じような戦果を挙げた。
しかし、戦場での動きは、亡命中の影の挙国一致政府を利してはいない。この政府はノーベル賞受賞者アウン・サン・ス―チーの党、「民主主義のための国民連盟」の収監又は亡命中の高官その他活動家から構成されている。このグループは国連でミャンマーの議席を持つが、米国を含む諸国から承認、支持を得るのに苦労している。多くの少数民族グループが今は優勢である。
これらの武装グループは人身売買、麻薬、木材、野生動物取引など不法なビジネスを行って生き残ってきた。シャンでの戦いは中国のギャングによる不法なサイバー詐欺を弾圧する中国の試みで起こった。軍事政権を倒し民主主義を回復する努力ではない。
米国はミャンマーの隣国である東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国がイニシアティヴを取ることに頼れない。ASEANはコンセンサスと互いの内政への「不干渉」への頑固な固執で動きが取れない。ASEANは一部は挙国一致政府との対話をしているが、その他の国は軍事政権と話すなど分裂している。
軍事政権は弱まっている。さらなる圧力は崩壊を早められる。もしそうなれば、各少数民族が異なる地域を支配し、中央に真空ができ、カオスになりうる。
中国は国境地帯の確保に動くだろう。中国は既にシャン州近くで軍事演習をしている。ミャンマーは破綻国家になり得、人身売買や不法薬物取引の問題を悪化させかねない。
そのような結果を避けるために、米国は挙国一致政府の代表と真剣な話を始め、それを助け、準備すべきである。この政府の高官は民主的で、連邦制のミャンマーの未来を望むと言っている。
新憲法の作成はこれらの約束を守るようになされるべきである。これがミャンマーを安定させる唯一の道である。
* * * 』
『ミャンマー情勢は10月の軍事政権に反対する少数民族の攻勢により一つの転換点に来ていることは明らかである。ワシントン・ポスト紙が社説を掲載するに値する動きがあるということである。
ミャンマーがこの転換点を超えていかなる国になっていくのか、まだ断定的なことが言える状況ではない。破綻国家になっていく可能性がある一方、ミャンマーにとって好ましい民主的で少数民族の権利も尊重した連邦制に行く可能性もある。
この社説は米国が挙国一致政府を支援し、米国がミャンマーが民主的な連邦制の方向にいくように努力すべきと論じているが、おそらく正しいのだろう。
ただ、それを米国だけで実現していくのには相当な困難があると思われ、関係国との連携が必要だろう。
日本も大胆な行動を
上記の社説は、ASEANは頼りにならないと切り捨てているが、ミャンマーにとり仲間のASEANの意向は受け入れやすい面がある。米国はそれを活用していくべきであろう。
ミャンマーが安定し、民主的で繁栄する国になり、中露のような国に牛耳られることがないように、日本としてもミャンマーとの伝統的な良い関係を活用していくことも考えられる。来日した挙国一致政府の幹部とは外務省の関係者が会談したと報じられているが、挙国一致政府との関係の在り方について強化の方向で考えればよい。
慎重さが良い場合と大胆な行動が良い場合がある。これをよく見極めるべきであろう。
ミャンマーは中印間にあり、中印両国にとっても、重要な地政学的意味を持つ国である。
ワシントン・ポスト紙が社説でミャンマー問題を取り上げたことは歓迎できることであり、米国が関心を示すことにつながるだろう。 』