米韓同盟、貢献と不信の70年 「連合軍」強まる相互運用

米韓同盟、貢献と不信の70年 「連合軍」強まる相互運用
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『米韓同盟の前提となる「米韓相互防衛条約」の署名から1日で70周年を迎えた。北朝鮮の核開発やロシアとの連携、中国の軍備強化により、米韓両軍が相互に対処する場面が増えると想定される。最貧国から先進国にのし上がった韓国の責任は高まり、同盟の役割はかつてなく重くなっている。

「朝鮮半島の平和に寄与し、70年の同盟の歴史をともにつくった在韓米軍の将兵と家族に深く感謝する」。尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領…

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『尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は9月26日、韓国軍の行事で挨拶した。

米韓同盟の深化を象徴する動きが韓国南部東岸の浦項市で6月にあった。米韓連合軍司令部による訓練だ。仮設テントの指揮所で韓国軍の兵士がモニターを指さしながら米軍兵に指示を送っていた。室内には指示の流れを示すチャートと監視カメラのモニターが立ち並ぶ。

この日の訓練は海上から軍需物資を陸揚げし、戦闘部隊に補給する動きを確かめる内容だった。連合軍で軍需計画を担う韓国側の責任者は「韓米の陸海空、海兵隊の能力を総動員した戦争の勝敗に直結する訓練だ」と強調した。

軍需支援訓練は2016年まで各軍で個別に実施していた。連合軍指揮下での統合訓練は17年に初めて実施した。攻撃時だけでなく裏方の輸送部門まで連携が整うようになった。

米韓同盟は1953年の朝鮮戦争休戦を機に、米国が韓国を共産主義勢力から守るため発足した。米軍が韓国に駐留し、戦術核を配備した。当時の韓国は1人当たり国内総生産(GDP)が60ドル台の最貧国層で、米国に安全保障の大部分を依存する関係だった。

米国は韓国の人的貢献を期待した。60〜70年代のベトナム戦争に韓国は30万人超を派兵し、約5000人が戦死した。90年代の湾岸戦争には医療支援団などを送った。2000年代のテロとの戦いでイラクに送った兵は3000人規模で米英に次ぐ3位だった。

韓国が貢献に注力したのは米国との関係が生命線だったためだ。同時に韓国は米国に対し「いざという時、守ってくれるのか」という不信感を抱き続けた。

1960〜70年代の軍事政権を率いた朴正熙大統領は、ニクソン大統領の訪中やカーター大統領の在韓米軍撤退論を警戒した。ベトナム戦争に参戦する傍らで自主国防を唱え、核技術の開発を指示した。

米国は90年代の冷戦終結とともに、韓国から戦術核を撤収した。原子力潜水艦や戦略爆撃機の運用で「核の傘」を提供するが、北朝鮮は大陸間弾道ミサイル(ICBM)を開発し、米国を脅して介入阻止をめざすようになった。韓国で安保の対米不信は今も存在する。

ソウル市の大韓民国歴史博物館では「米韓同盟70年」の特別展示が開かれている
米国は最近、韓国に新たな貢献を求め始めた。中国抑止への協力だ。台湾有事を想定した在韓米軍基地の使用や韓国軍からの弾薬供給の要求を高める可能性がある。

対中姿勢で日米と韓国の温度差があるとの見方は多い。米ランド研究所のジェフリー・ホーナン氏は「日米韓で中国に対抗する場合に韓国が障害になる可能性がある」と話す。

尹政権はインド太平洋戦略をつくり、対中姿勢を米国に近づけようとしている。

だが北朝鮮の核抑止を米国に依存するしかない状況は変わらない。軍事の対中シフトを急ぐ米国に見捨てられるのではないかという韓国国民の不信感は抜けない。両国関係はいまもトップの個性や世論に左右される不安定さをはらんでいる。

米国、半導体・電池の供給網で期待

米政府の韓国への期待は経済分野にも広がる。米国は中国を排除する供給網(サプライチェーン)を構築するため同盟国に協力を求めているためだ。米政府が戦略物資と位置付ける半導体と電気自動車(EV)用電池で一定のシェアを握る韓国企業の役割も高まっている。

バイデン大統領は22年の訪韓時、真っ先にサムスン電子の半導体工場へ向かった。製造ラインを視察し「ここは米韓両国が共につくっていく未来を象徴している」と強調した。

サムスンの李在鎔(イ・ジェヨン)会長は「(米韓の)友情は非常に大切で、今後も強力な関係を保っていく」と話した。米政府の補助金を受けて南部テキサス州で先端半導体の工場を建設中で、半導体の顧客企業を多く抱える米国との関係強化に動く。

米国内の急速なEV普及を受けて韓国電池メーカーの米国シフトも鮮明だ。
LGエネルギーソリューションやSKオン、サムスンSDIは米自動車大手と北米に電池工場を建設する。韓国企業が運営役の電池工場だけで10カ所以上にのぼる。

車載電池の分野では既に中国電池大手の寧徳時代新能源科技(CATL)が世界首位に立つ。それでも米国の対中けん制によって中国企業が北米市場に食い込むのは難しい。結果的に韓国企業が電池供給の担い手に浮上している。

(ソウル=甲原潤之介、細川幸太郎、ワシントン=坂口幸裕)

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深川由起子
早稲田大学政治経済学術院 教授
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ひとこと解説 尹政権は前政権の下で深刻な危機に瀕した日米韓の枠組み再生に全力で取り組んできました。

ただ、北朝鮮に対しては結束できる日米韓ですが、中国に対しては微妙。

北朝鮮に対する中国の影響力が存在する限り、そして分断国家の韓国で統一民族主義が消滅しない限り、中国との距離が日本と同じになるはずはありません。

嫌中感情は学校で延々と刷り込まれる反日感情とは同列ではなく、経済面で中国市場依存からの脱却がそう容易ではないのも事実。

米韓同盟に対する日本、日米同盟に対する韓国の理解が不足していることも日米韓の弱さにつながりがちで、常に確認が必要な枠組みであり続けるでしょう。

2023年10月2日 23:29』