米通商代表、中国「WTOを悪用」 事務局長に改革要求

米通商代表、中国「WTOを悪用」 事務局長に改革要求
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2308R0T20C23A9000000/

『ワシントン=飛田臨太郎】米通商代表部(USTR)のタイ代表は22日、世界貿易機関(WTO)のオコンジョイウェアラ事務局長に中国がWTOを悪用しているとして改革を直接、要求した。オコンジョイウェアラ氏は明言を避けつつ、改革の必要性には同調した。

両氏がともに米戦略国際問題研究所の講演に登壇した。米中対立で機能不全に陥るWTOや国際貿易のあり方を巡り議論した。

タイ氏は名指しは避けつつも中国への厳…

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『タイ氏は名指しは避けつつも中国への厳しい批判を繰り広げた。「経済大国が恵まれない国と同じ状況だと主張し、制度を悪用するようなことがあってはならない」と訴えた。

中国は2001年にWTOに加盟した。世界2位の経済大国になったいまも、WTOで自国企業の優遇が例外的に認められる「途上国」の扱いを受け続けている。

オコンジョイウェアラ氏は同問題で「中国とも協力してきた」と弁明し、中国は状況に応じて、途上国の扱いを利用するかどうか検討すると同意していると答えた。

タイ氏は中国を念頭に「外国の競争相手を差別し、自国企業に多額の補助金を与え、コスト構造を操作している」と唱えた。中国の経済慣行が「発展途上国でも先進国でも同様に労働者に不利益をもたらす」として、WTOに対処を求めた。

タイ氏は米国が長年支持してきた多国間の貿易システムは「今、この秩序の機能と公正さが問われている」と提起した。バイデン政権は自由貿易の推進から背を向け、巨額補助金で中国に対抗しようとしている。

オコンジョイウェアラ氏はWTOの起源は1930年代のフランクリン・ルーズベルト大統領(当時)にあると説いた。「経済恐慌や戦争を目の当たりにしたルーズベルト氏が貿易を通じた経済的相互依存が必要だと結論づけた」と強調した。

労働者に恩恵のある貿易政策を訴えるタイ氏に対し、貿易が増えれば安価な製品の流入で高所得者よりも低所得者に恩恵が多いと説いた。「世界経済が分断されれば、家計が圧迫される」と語り、米国の保護主義的な動きをいさめた。

オコンジョイウェアラ氏はナイジェリアの元財務相で、WTOでは初の女性トップだ。トランプ前政権は中国が影響力を強めるアフリカの出身者の選出に反対し、韓国の候補者を支持した。

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