北朝鮮、国家ぐるみで暗号資産奪取 核・ミサイル開発に

北朝鮮、国家ぐるみで暗号資産奪取 核・ミサイル開発に
暗躍 北朝鮮ハッカー(上)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM10BW70Q3A710C2000000/

 ※ 今日は、こんな所で…。

『北朝鮮のハッカー集団がサイバー空間を暗躍している。ハッキングを担う部隊の養成から奪取した資金の運搬までを国家ぐるみで管理・運営。2022年に得た暗号資産(仮想通貨)は年間輸出額の13倍に上り、その一部は核・ミサイル開発に回る。国際社会の制裁が続くなか、韓国政府の分析などから新たな外貨獲得手段の実態を探った。

出自などで身分が決まるとされる北朝鮮。そんななか、個々の能力が優先される唯一の職業がハッ…

この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。』

『そんななか、個々の能力が優先される唯一の職業がハッカーだ。

ハッカーの養成にあたり、まず対外工作を手掛ける偵察総局が全土の小学校から理数系に秀でた生徒を選抜。平壌第1中学校などの名門校で学び、大学のハッカー養成クラスに入学する。大学卒業後は偵察総局などに「少尉」として任官するという。

こうしたエリートたちは、19〜25歳までハッカーとして従事する。「その後は盗み取った資料の分析やハッキング教育などの支援業務を担う」(韓国NK知識人連帯の金興光代表)という。

北朝鮮のサイバー活動を主導するのは金正恩(キム・ジョンウン)総書記を頂点とする専門組織だ。偵察総局の傘下組織である技術偵察局が、サイバー攻撃や仮想通貨奪取などを担う。

北朝鮮のハッカーは外貨稼ぎを主目的にするグループと情報収集・技術奪取を主目的にするグループに分類できる。北朝鮮専門サイト「デイリーNK」によると、技術偵察局は4つの部署と直属部隊で構成する。

さらにその下に、ハッカー集団「キムスキー」や「ラザルス」が所属する。キムスキーは先端技術を盗み取ったとして、韓国政府が6月に独自制裁の対象に指定。ラザルスは金融機関などを対象に仮想通貨を窃取した疑いがもたれている。韓国国防部は北朝鮮のサイバー戦力規模を6800人だと推定する。

ハッカー集団は通常5〜10人で1チームを構成し、中国や東南アジア、中東、アフリカを活動範囲とする。1人当たり月平均で約20万〜30万ドル(約2900万〜4300万円)の外貨を稼ぐ。

月収は2000〜6000ドル程度で、900ドルの国連駐在北朝鮮大使を大きく上回る。今やハッカーは北朝鮮の学生たちによって羨望の職業となった。

こうして得た外貨の運搬を担当するのが、海外に駐在する大使館や領事館の外交官たちだ。かつては各集団の監視役が直接平壌に持ち込んでいたが、現在は現金を持ち込みにくくなった。

そこで、北朝鮮は輸送方式を変更。監視役が現地の大使館や領事館に少額に分けて運搬。外交官が外交特権を利用して渡航し、年数回に分けて自国へ送り届ける仕組みをとる。

核実験や弾道ミサイルの発射を受け、国連安全保障理事会は06〜17年にかけて制裁を相次いで科した。元北朝鮮外交官の高英煥(コ・ヨンファン)氏によると、1990年代に年15億ドル規模だった北朝鮮の兵器輸出は、制裁の影響で2019年に2000万ドルまで減った。

外貨獲得手段が細るなか、北朝鮮は情報工作手段として発展させてきたサイバー能力を15年ごろから外貨稼ぎの手段として本格的に活用し始めた。

今年2月に国連対北朝鮮制裁委員会が発表した報告書によると、22年に北朝鮮が得た仮想通貨は最大1兆3千億ウォン(約1400億円)規模。そのうち約3割を核・ミサイル開発に注いでいるという。

【関連記事】北朝鮮ハッカー事情 「外出禁止」「月30万ドル稼ぐ」』