ブラマプトラ川の水資源をめぐる中国とインド

[研究ノート]
ブラマプトラ川の水資源をめぐる中国とインド
対立と協調の考察
天野健作
https://www.jstage.jst.go.jp/article/asianstudies/61/2/61_55/_pdf

『はじめに
本稿の目的は、アジアの大国に位置付けられる中国とインドの間を流れる国際河川のブ
ラマプトラ川(中国側・雅魯蔵布江=ヤルツァンポ川)Dを事例研究の対象にし、両国間で生
じている対立と協調を分析することである。

近年の両国関係を概観すると、上流国の中国が自国の領土側でダム開発や河川の分水計
画を進めており、中国の情報開示への消極的対応も相俟って、インドが中国に対し明確な
抗議の意思を示している。注視すべき点は、両国の人口は世界人口の37%を占めるが、水
資源は両国で世界の10.8%しかないという遍在性に加えて、1人当たりの水資源利用可能
量が両国ともに急激に落ち込んでいることである。両国間の緊張関係の悪化の度合いが、
水資源に向けた渇望度合いと結び付き、今後、急速に高まることが予測される。

ブラマプトラ川をめぐる水政治学(hydro-politics)の観点からの研究は、中国がこの河川
での開発を公式に認めたのが2010年4月であることからして、これからさらに進展して
いくものと思われる。先行研究の中には、両国の対立を強調する記事を掲載するメディア
と同様に、プラマプトラ川の水資源争いが、単なる外交上の対立から軍事的な対応を引き
起こす可能性を示唆する論考も見られる(Christopher, 2013; Malhotra-Arora, 2012など)。こうし
た水資源をめぐる軍事衝突の可能性をいわゆる「水戦争」(water war)という語句で位置付
けるために、これまでの研究では必ずしも両国がどのようにブラマプトラ川の水資源をめ
ぐって外交交渉を繰り広げてきたか、時系列的に明確に分析されていなかった。

むしろ、
水戦争という括りの中で理解されているがために、両国間の協調関係を意図的に回避して
いるかのように見える。

本稿では両国の協調関係に考察を加えるとともに、この協調は限
定的であることにも言及する。

またブラマプトラ川の開発の実態もこれまで明瞭ではなかった。本稿では中国の実際の
ダム開発会社の情報で開発の全体像をとらえることに努めている。そして、河川開発の経
緯と中国の対外的な主張とをリンクさせると、中国が情報を秘匿する意図を持っていたこ
とが浮き彫りになる。

本稿では、ブラマプトラ川をめぐる両国関係の年表を作成した上で、
中国のこうした外交的戦略も考察の対象にしている。考察の材料としては、中国政府やイ
ンド政府の公式情報はもとより、国際機関のデータに依拠しながら、中国やインド、周辺
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国からのメディア報道やNGOの情報を用いて事実を収集した。それらの事実検証と背景
分析をもとにして、水資源をめぐる両国関係を捉えることが本稿の主眼である。

I ブラマプトラ川での開発

ブラマプトラ(ヤルツァンポ)川の源流はヒマラヤ山脈の北側で、中国領チベット自治区
にあるチベット高原南部を東に進んだ後に急カーブ(大屈曲部)して南下し、インドとバ
ングラデシュを貫流してガンジス川に合流し、ベンガル湾に注ぐ国際河川である。全長は
2,880 kmになり、標高4,000 m級の世界で一番高い位置にある川としても知られる。イン
ドの潜在的な水資源量の30%を占め、インドで水力発電所として開発可能な水力エネル
ギーの中で未開発のもののうち、40% (6万6千MW)がブラマプトラ川にあると推測され
ている(Singhetal.,2004: 2)〇

1.中国とインドの水不足の概略

まず、中国とインドが水資源をめぐって争う大前提として、両国の水不足の現状につい
て略述する。国連食糧農業機関(FAO)によると、中国は世界で5番目の水資源量を持つが、
1人当たりの水資源利用可能量は2009年時点で、年間2,079 m3であり、世界平均の年間
図1 ブラマプトラ川の地図(筆者作成、口はダムの位置)
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6,225 n?を大きく下回る。

2033年には人口が15億人に増加することが予測されており、
年間!,890 m3に落ち込むとみられている(FAO, 2012a)。インドも同様で、1997年に1人当
たりの水資源利用可能量が!,910 m3だったのが、2011年に1,519 m3へと急激に落ち込んで
いる(FAO,2012b)〇

国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)は2009年4月に提示した報告書の中で、ア
ジアにおける深刻な水不足が社会の安定にとって新たな脅威と位置づけ、このため資源競
争が高まり、頻繁に紛争が起こると予測している。

特に1990年代だけでも、中国は水資
源に関わり12万件の国内紛争があり、インドもまた同様で水を共有する州間での紛争が
起こり、2004年秋にはラジャスタン州西部にある「インディラ・ガンジー運河」の水資源
をめぐって4人が死亡し、30人以上が負傷した事例があったと報告されている(UN
ESCAP, 2009: 62-64)。

2.南水北調計画の概要

中国の水資源は、北と南で偏在が著しい。長江を中心とする南側では国全体の水資源量
の80.4%を占め、人口は53.5%であるが、一方で黄河を中心とする北側では19.6%の水資
源量で人口 46.5%をまかなう。1人当たりの水資源利用可能量を見ると、北側は年間
779 m3で、南側(3,629 m5)の4分の1程度しかない(Xie, 2009: 9-11)〇

「南水北調計画」はこの水資源の偏在を解消するものとして構想された。これは南側に
ある河川にダムを建設し、南側の河川の水を北側の河川へと運河を用いて分水する計画で
ある。計画では3つのルート(東、中央、西)を使い、年間44.8 km3の水を南から北に移送
する。長年にわたる研究や議論を経て、国務院が2002年に計画を承認した後、東ルート
から工事が始まり、2050年に全線完成見込みである(FAO,2012a)。規模や水量などの面で、
これほど大規模な水移送計画は歴史的に見ても初めてである。

南水北調計画の西ルートの構想の中に、ヤルツァンポ川の大屈曲部に巨大ダムを建設
し、数百kmに及ぶ運河を経て、長江や黄河へと分水する計画がある。

2005年に公刊され
た李伶の『西蔵之水救中国』に基づくものである。この本の基礎となっているのは1980
年代末に国務院水利部の郭開研究員が提案した「大西線南水北調工程」方案で、2002年に
政治協商会議から江沢民国家主席に提出された(三浦、2007: 22-28)。水利部が支援した李
伶の本は広く行き渡り、民政部門や軍事部門に受け入れられている。

特に人民解放軍の関
係者から案が出ていることの意義が大きい。すなわち、水をヤルツァンポ川から黄河まで
分水するためには、険しい山々を通るトンネルを掘る必要があり、その際に爆破兵器を持
つ軍の力が最も効果的だからである(Chellaney.2011:135)〇

さらに歴史を遡っていくと日本人の関与がうかがえる。三菱総研の創設者、中島正樹が
1977年に5千億ドルに及ぶ「世界公共投資基金」の構想を発表し、国際機関に提出した。

中島は世界的な公共投資の対象として8つのプロジェクトを提唱し、そのうちの1つに「世
界で1番大きな水力発電ができるのはここではないか」と指摘し、ヤルツァンポ川上流の
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水力発電に言及した。

中島は「中国とインドの間で適当な分配ができれば、双方にとって
非常にプラスになる」とも強調した(中島、1978, 1979: 36~41,1-36)。

3.ブラマプトラ川の開発実態

ャルツァンポ(ブラマプトラ)川での中国による開発は不透明な部分がある。それは後
述するように中国が情報開示に積極的ではなく、むしろ国家主権を盾に開発を秘密裏に
進めようとしたからである。

チベットの環境問題を訴え続けている国際NGOのTesi
Environmental Awareness Movementは2010年5月、中国が進めるヤルツァンポ川での水力
利用計画についてのレポートを発表した。

中国の開発実態を明らかにした最初のレポート
であり、レポートによれば上流域にすでに10カ所のダムが完成しており、3カ所が工事中、
15カ所に検討中の計画があるという(Tesi Environmental Awareness Movement, 2010)o

ただこの
レポートにおいても、その情報源が明確ではなく、中国側の公示情報に依拠する必要がある。

中国国営のダム開発企業、中国水電工程顧問はヤルツァンポ川でのダム開発を「コアビ
ジネス」として、そのホームページにおいて開発案件を地図に明示している(http://www.
hydrochina, com. cn/zgsd/images/ziyuan_b .gif, 2014年8月10日確認)。

中でも注目すべきは、インド
側が主張する国境線からわずか約30km北にある墨脱ダムである(図1参照)。墨脱ダムは、
3,800万kWの発電力を持つことが予定され、現在世界一といわれる長江の三峡ダム(2,250
万kw)をはるかに越える。このダムが完成すれば下流への影響は著しいことは容易に想
像できる。

ヤルツァンポ川での最初のダムは、インド側が主張する国境線から約200 km北に位置
する蔵木ダム(51万kW、図1参照)で、79億元(12億米ドル)をかけて2009年に工事に着
手し、2015 年に完成予定である(Hussain, 2013: 7-8; China Daily, 2010)。

さらに、国務院が2013年1月に公表した「エネルギー発展第12次5か年計画」(2011-2015)
では、蔵木ダムに近い3つのダム(加査、街需、大古=図1参照)をヤルツァンポ川に建設予
定であることを明らかにした(国務院、2013)〇これらのダムは25km圏内に立て続けに建
設するもので、大古の出力は64万kW、加査は32万kWだが、街需はまだ公表されていない。
アメリカン大学の調査によると、ヤルツァンポ川での分水計画が成功すれば、黄河へ年
間2,000億π?の水が供給され、水流のおよそ60%が急激に減っていくことが予測されて
いる(Hodum,2007)〇

π インドの抗議と中国の対応

1.インドの抗議の経緯

インドの中国に対する抗議の理由には、上流でのダム開発や分水に伴う流量の変化で自
国の漁業や生態系へ影響が出ることや、肥沃な土壌が中国側のダムに滞留することから農
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業への影響がある。

それ以上に、インドの北方に位置するヒマラヤ山脈への開発に著しい
懸念があった。

歴史を遡ると、こうしたインドの懸念は1947年、ジャワハルラール・ネ
ルー首相の次の演説に最初に現れている(Nehru, 1950:155)〇

「インドの地図を広げ、河川や鉱物など資源を有するヒマラヤ山脈を見るときに、そこ
には広大な力が集中していることが分かる。今は開発されていないが、将来はその可能性
があり、もしそうなれば、急速にインドの全体像が変わってしまうことになるだろう」

中国によるヤルツァンポ川の分水計画自体に対する批判が国際的に最初に現れたのは、
1996年3月のアメリカの科学雑誌Scientific Americanである。

開発への直接的批判ではない
が、ヤルツァンポ川での分水が通常の工法では不可能なため、核爆発によって20 kmにわ
たる山脈を掘削する際に、「包括的核実験禁止条約」に抵触するかが問題点として提起さ
れた。この論文では、土木工事に用いられる核の平和的利用は条約の「抜け道」ではある
ものの、結局は軍事目的に情報が流用される点を指摘し、多くの制約が必要と結論付けた
(Horgan, 1996:14-16)〇

このころからインド側でも中国によるヤルツァンポ川の分水計画が噂になり始め、イン
ドのメディアが2000年代初頭に警告を続けたため、政治的議論に発展した(Holslag, 2011:
22)。

具体的な中国への抗議活動の証拠として用いられたのは、人工衛星により開発状況
を示した映像であり、その衛星画像でもこの時点では、中国は開発計画を実行していることを認めなかった。

流れが変わったのは、2009年12月にデンマークのコペンハーゲンで
開かれた気候変動をめぐる国際交渉であり、同じ発展途上国グループに含まれる中国とイ
ンドが「前例のない協力」を見せたことで、両国間の協力の機運が盛り上がったとされる
(The Times of India, 2010)o

中国が公式にヤルツァンポ川での開発を認めたのは、2010年4月のことである。インド
のソマナハリ•マライア・クリシュナ外相が中国を訪問した際に、中国の楊潔饒外相が蔵
木ダムの建設を認めた。

その年の9月には、インド防衛問題分析研究所が「インドの水安
全保障:外的動向」というレポートを発表している。この中で、中国のダム開発状況に触
れ、「国際的な関心を呼び起こすべきだ」と提言し、抗議活動を活発化させた(Institute for
Defense Studies and Analyses, 2010: 51)o

実際にインドの懸念が被害として顕在化したのは、2012年2月27日、インド北東部に
あるアルナチャル・プラデーシュ州の東シアン県で、ブラマプトラ川の水が急に干上がつ
たことである。

州政府の水資源部局が中国による上流でのダム開発によってもたらされた
ものかどうか調査を命じ、同日には、ビハール州知事がヤルツァンポ川の中国の開発に懸
念を示す手紙をインド首相に提出している(The Economic Times, 2012a; The Hindu, 2013a)o川
の干上がりは直ちに中国のダム開発による影響とは断定できないものの、インド側で不信が増幅していることが明確になった事例である。

中国が2013年1月に新たにヤルツァンポ川で3つのダムをつくる計画を承認すると、同
年3月、南アフリカで開かれたBRICSサミットの開催中に、マンモハン•シン首相が初め
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て中国の習近平国家主席と会談し、ヤルツァンポ川での中国の開発に対して、インド側で
も中国で進行中の開発行為を評価できるような「共同機構の創設」を提案した(Press
Information Bureau Government of India Prime Minister5$ Office, 2013)〇

しかしその1カ月後、中国側
は「既存のメカニズムで十分だ」と返答し、交渉は実を結ばなかった(The Hindu, 2013b)。
インドの不信感の増幅は2013年4月、中国が下流国に影響はないと主張する「流れ込
み式」(run-of-the-river)のダムへの開発動向を監視するよう、省庁間専門家グループが求め
たことにも現れている(The Hindu, 2013c)。

流れ込み式ダムは、確かに貯留式ダムと違い水
量を変えるものではないが、下流へと流れる肥沃な土壌の量を変える。

ブラマプトラ川は
58万kn?という世界でも有数の流域を有するだけでなく、そこに住む人々の生計の大半が
農業で成り立っていることに留意する必要がある(Gupta,2010)。

表1ブラマプトラ川をめぐる関連年表

1977 年 1996年6月 1999年6月 2000年6月 2002 年 4月 2003年1月 日本人がブラマプトラ川の開発構想を発表 アメリカの科学雑誌Scje〃ガ?c,me”如〃に河川の開発計画への批判論文が掲載 江沢民国家主席が「西部大開発」を宣言 ブラマプトラ川で洪水が発生し、インドに多大な被害が出る 中国国務院が南水北調計画を承認し、東ルートで工事開始 中国が洪水期での水文データをインドに提供する「了解覚書」に署名 中国水保全•水力発電計画研究所がヤルツァンポ川での水力発電が可能かどうか事前調 査実施
2005 年 1月 2006年11月 水文データ提供の了解覚書を更新(第1回目) 李伶『西蔵之水救中国』が発刊。ヤルツァンポ川の分水計画を明示 中国の胡錦濤国家主席がインドを訪問。インドのシン首相との間で「専門家委員会」の 創設に合意
2007年9月 2008年1月 第1回専門家委員会の会合開催。水文データの交換について協議 シン首相が北京へ訪問、ヤルツァンポ川の開発について問題提起するものの、中国側は 否定
6月 9月 2009年4月 2010年4月 水文データ提供の了解覚書を更新(第2回目) 第2回専門家委員会の会合開催。毎年開催することに合意 第3回専門家委員会の会合開催。雨季での水文データの提供について互いの立場を確認 インドのクリシュナ外相が中国を訪問した際に、中国政府が初めてダム建設を認めた 第4回専門家委員会の会合開催。水文データの提供の履行計画について合意
11月 2011年4月 2012年1月 中国とインドの外務当局が二国間交渉。張志軍外務副大臣が「分水計画はない」と強調 第5回専門家委員会の会合開催 第6回専門家委員会の会合開催。社会経済の発展にとって国際河川が重要であることを 互いに認識
2月 2013年1月 2月 ブラマプトラ川の一部地域が干上がる 中国国務院がヤルツァンポ川でさらに3つのダムをつくる計画を承認 中国とインドの非公式会議で、中国は「新しいダムは下流国に影響を与えるものではな い」と明言
3月 5月 BRICSサミットで、シン首相が習近平国家主席に共同機構の創設を提案 第7回専門家委員会の会合開催。了解覚書の草案について合意 中国の李克強首相がインドを訪問、相互信頼の強化を確認
10月 中国とインドが新しい了解覚書に署名(第3回目)。水文データ交換期間を拡大

(出所)中国、インド両政府の公式情報や各種報道より筆者作成
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2.中国の対応一戦略的沈黙と問題の矮小化

インド側の抗議に対する中国の受け止めについては、2点指摘しておきたい。

1点目に、
中国はヤルツァンポ(ブラマプトラ)川のダム開発の計画を2010年まで否定していたこと
である。その理由を検討すると、「戦略的沈黙」を保つことで、既成事実を積み重ね現状
の変化を固定しようとする意図がうかがえる。このため、以下では水資源に関わる政府高
官の言葉や水政策に影響を持つ学者らの言動を引用し考察する。

2点目は、中国による問
題の矮小化である。ダム開発を公式に認めた後も、中国は下流国の影響を十分考慮し、ダ
ムで水量をコントロールすることで洪水や早•魅を軽減できるため、下流国にも利益がある
と主張し、自国の開発を正当化していることである。

まず1点目であるが、当時の水利部長であった汪恕誠は2006年10月、香港大学で講演
を行った(Reuters, 2006) 〇 2006年は上述したようにヤルツァンポ川の分水計画がインドで
政治的議論に発展していたころで、汪は「チベット高原からの分水は、実現不可能だ」と
述べ、インド側の懸念を払拭させようと努めた。しかしその一方で、南水北調計画など水
行政において権限を持つ中国黄河水利委員会主任の李国英は2006年8月1日付の米紙
International Herald Tribuneのインタビューに、ヤルツァンポ川を含むチベット高原から黄
河への分水計画について、「北西部の経済的社会的発展があるレベルに達するとき、この
計画は着手されるだろう」と述べた。同紙ではそのほか、中国科学院の水文学者、劉昌明
が「(南水北調計画の)西ルートは、抽象的な計画ではなく、現実化するだろう」と計画の
着手を示唆している(International Herald Tribune, 2006)。

特に、ダム開発計画はすでにその数
年前から実際に存在しており、地方政府は2007年頃から地域住民の立ち退きを命じてい
る(Malhotra-Arora, 2012:144-151)。

次に2点目であるが、中国は2010年4月にダム建設を一旦認めると、その後の下流国へ
の影響の打ち消しは連射砲のようだった。

中国国営のダム開発会社で、実際にヤルツァンポ川でダム開発を進める中国華能集団の
幹部は2010年11月19日付の中国英字紙China Dailyのインタビューで、「ダム計画におい
て環境保護を十分に考慮しており、下流地域への水量は変わらない」と強調している。し
かし、北京の「公共環境研究所」によると、環境影響評価レポートは一般にはアクセスで
きないとされており、実際の影響は不明である(ChinaDaily,2010)〇

同時期にインドと中国の外交当局が二国間交渉を行い、中国外務副大臣の張志軍が「河
川を分水する計画はなく、下流地域の住民の水の利用や福祉に影響を与えない」と述べた
(Global Times, 2010)〇インド側が水文データの追加的な情報提供を求めると、中国外務省報
道官の洪罷は「国境をわたる水資源の開発に関しては責任ある態度を示しており、下流国
の利益には十分配慮している」と要請を事実上拒否している(The Economic Times, 2011)。

その後も、中国側は度重なるインドの懸念に対して同様の主張を繰り返した。例えば、
中国水利部副部長の矯勇は2011年10月12日の北京での記者会見で、「技術的な難点や環
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境への潜在的な影響があり、中国政府としてはヤルツァンポ川から分水する計画は持ち合
わせていない」と語った。これには伏線があり、同年4月、北京市で両国の専門家委員会
が開かれ、その席上で河川の水を華北地域に分水する計画が示され、インド側の反発を
招いていた。このため、インド紙The Times 〇了Indiaは、矯の発言は「インドを安心させた」
と伝えている(The Times of India, 2011)。しかしながら、中国の専門家の間では、河川の分
水計画は公然の秘密であった。中国科学院の学者、王光謙はヤルツァンポ川から新疆ウィ
グル地区の北西へ分水する計画があることを認めている。その理由は、黄河だけでなく長
江についても増加する水需要に耐え切れず水量が目立って減少していることにあり、南水
北調計画の次の一手として位置付けている(2point6billion.com, 2011)〇

2012年2月にブラマプトラ川の一部地域が干上がったことに対しては、報道官の洪罷が
同年3月、「下流国の利益を十分に配慮し、公正と衡平の政策を実行している」と強調し
た上で、「ヤルツァンポ川での中国の開発レベルは低く、河川の水資源の利用率は1%に満
たない」と過小評価している。同様に「蔵木ダムの水力は抑制的であり、貯蔵能力を持た
ないため、下流国の水量を変えることはない」とも述べている(Foreign Ministry Spokesperson
Hong Lei!s Regular Press Conference, 2012)o 2013年に新たに3つのダムを建設することが明らか
になった際にも、報道官の華春臺は「ダムの建設の影響を十分に考慮している。国際河川
において、インドとのコミュニケーションと協力を維持している」と述べた(Foreign
Ministry Spokesperson Hua Chunying’s Regular Press Conference, 2013) o

しかしここではもはや、洪
のように水資源の利用率に言及することはなく、開発の規模に触れることを避けて、将来の開発の余地を示唆するに至った。

m中国とインドの限定的協調関係

1.協調関係の経緯

水資源の分配を法的に規律するためには条約や協定が必要であるが、中国とインドの間
に国際河川に関する法的合意は一切存在していない。ただ以下に見るように法的拘束力の
ない政治的文書を作成し協調関係を拡大してきた。
インド側ではモンスーンの影響で、もともとブラマプトラ川では洪水が1950年代から
毎年のように頻繁に起こっていた(Dhemaji District, 2014) 〇特に2000年6月に生じた洪水で
は、アルナチャル•プラデーシュ州の5つの県とアッサム州の一部に被害が及び、少なく
とも30人以上が死亡し、5万人が住居をなくしたと伝えられている(Yan, 2012)。このため
インドはこうした破壊的な洪水の責任は中国側にあると非難し、洪水を未然に予測するた
めの上流域の水文データを求めてきた。
インド水資源省によると、中国とインドがブラマプトラ川において初めて「了解覚書」
(Memorandum of Understanding)の形で合意したのは、2002年4月である。最初の覚書では、
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中国からインドにブラマプトラ川の洪水期の期間中(6月1日から10月15日まで)、奴各沙、
羊村、奴下の3カ所の水文データ(水位、流出量、降水量)を提供することが記載されている。

このデータはインド側で洪水予測をするために使われたが、覚書は5年間で失効する規定
になっていた。そこで、両国は2008年6月、さらに5年間の期限で新しい了解覚書に署名
し、ブラマプトラ川の2つの支流についても洪水期のデータを追加し提供することになっ
た (Ministry of Water Resources, Government of India, 2014) 〇

中国の胡錦濤国家主席が2006年11月、インドを訪問した際には、シン首相と共同声明
を発表した。両国は「専門家委員会」を設立し、委員会の中でブラマプトラ川の洪水期の
水文データの提供や緊急措置などについて相互に議論し、協力し合うことを約束したこと
は大きな進展となった。ただその場においても、胡は「インドに影響のある分水計画はな
い」と言明したため、分水に関する実質的な協議は始まらなかった(Malhotra-Arora, 2012:
152) 〇専門家委員会の会合は毎年開催されており、水文データの提供が実際にどのように
履行されているか、監視の役割を果たしてきた。了解覚書の実質的な審議機関ともなって
おり、着実に両国政府の信頼関係を積み上げている。

2013年10月には、中国の李克強首相がインドを訪れ、了解覚書をさらに5年間延長し
2018年までのデータ提供に合意した。この覚書では、インドが求めていた水文データ提供
期間が拡充され、始期が6月1日から5月15日に変更されたほか、以下の3点で合意した
ことが注目に値する(Ministry of External Affairs, 2013b)o

① 両国は、国際河川と関連する自然資源がすべての流域国の社会的・経済的発展にとつ
て計り知れない価値を持つ資産であることを認識したこと
② 両国は、国際河川における協力を進めることで、相互の信頼とコミュニケーションを
高め、戦略的•協力パートナーシップを強化することに合意したこと
③ 両国は、既存の専門家委員会を通じて、協力を強化することに合意したこと
この協調の拡充の背景には、中国がインドを経済・貿易面でも安全保障面でも重要な二
国間関係とみなしたことがある。すなわち、2013年に了解覚書を延長したのと同時に、「国
境防衛協力協定」に調印したことがその証左である。協定では、国境地域の実効支配線付
近で警戒活動を行う場合、相手側に対する追跡活動を行わないことや、相手国の動きに疑
念を持った場合に説明を求めるとの規定がある(Ministry of External Affairs, 2013a)o中国とイ
ンドとの経済依存関係の拡充では、両国の貿易総額は2000年に10億ドルだったが、2010
年には600億ドルと、60倍になっており、2015年には1000億ドルとも予測されているこ
とが挙げられる(HindustanTimes,2011)〇

2.協調の限界

協調拡充の様相は見せているものの、水文データの情報提供は洪水期だけに収まってお
り、インドは了解覚書を結んだ当初から、下流地域にとって日照りを予測できる渇水期も
含めた河川の全データの提供のほか、すべての国際河川で了解覚書を適用できるように求
ブラマプトラ川の水資源をめぐる中国とインド
63
めてきた(Chellaney, 2011:134)〇さらに、水文データは当初は無料で提供されていたが、後
に中国がインドに対し高額な料金を支払うように求めたことも、一概に純粋な「協力」と
呼べない側面がある。

特に1962年の中印国境紛争以来、両国の長年の懸案事項である国境が定まっていない
ことが協調拡充の大きな障害となっている。インドは中国によるチベットの併合(1951年)
を認めたものの、チベットとインドの国境を定めていた約4,000 kmにわたるヒマラヤの境
界については争いが生じていた。特に、水資源が豊富であり、5万7,000 MWもの水力発
電の潜在的能力があると見積もられているアルナチャル・プラデーシュ州については
(Government of Arunacha! Pradesh, 2008),インドが1987年にこの地域に州を設けて以来、中国
がチベットの一部として自らの領有権を主張し、抗議が活発化した。2009年にシン首相が
同州を訪れた際に、中国外務省は「強い不満」を表明し、インド側に中国との健全な関係
を阻害しないように要求するとの声明文を発表した(Ministry of Foreign Affairs of the People’s
Republic of China, 2009) o

アメリカ国防総省は2010年、中国人民解放軍がこの地域沿いに、核兵器が搭載可能な
中距離弾頭ミサイル(CSS-3)を配備しており、不測の事態に対応するための空挺部隊の配
備計画も持っていると指摘した。さらに人民解放軍の国境沿いの防衛活動を補強するため
に道路などインフラ整備にも着手していると分析した(US Department of Defense, 2010: 17-
38)。

そもそもインドがチベットの併合を認めたことを「失敗」と評価する論考もあり
(Chellaney, 2011:185)、もし併合を認めていなければチベットは独立国家として存在し、中
国との間でブラマプトラ川をめぐる資源争いは生じていなかったとも仮定できる。このた
め、水文データの提供以上に、領土問題が孕む水の分配にまで合意に至ることは現状では難しい。

すでに両国の間では、アルナチャル・プラデーシュ州の水資源をめぐる国際的緊張が生
じている。2009年、アジア開発銀行(ADB)が同州の開発計画に融資しようとしたことに
対し、中国が同州は「係争地域」であることを理由に融資に抗議した(The Indian Express,
2009b)〇これは中国が国際機関を通じて両国の水資源問題を提起した初めての事例である。
この計画はそもそも、同州での洪水や土壌浸食を防ぐためのものとして総額29億ドル
の提案がされていたが、その中に6,000万ドルの水利開発が盛り込まれていたことが問題
となった(ADB, 2008) 〇 2009年6月に行われた加盟国による投票では圧倒的多数で融資が
認められたが、中国の抗議により、同年9月の再投票により否決された(The Indian Express,
2009a) 〇この時、アルナチャル・プラデーシュ州の知事が、インド政府はこの地域にさら
なる軍隊と戦闘機を送るべきだと主張し、同時期に、中国の兵士 2300人が挑発的な国境
警備をしていると記録されている(US Department of Defense, 2010:17)〇
このような事例だけを取り上げれば、両国の「水戦争」は現実味を帯びているともいえ
る。翌年の2010年には上述したように、中国がヤルツァンポ川での開発を初めて認める
64
アジア研究 Vol.61,No. 2, June 2015
に至り、両国間の緊張は増すことになるが、その後も専門家委員会は継続して開催されて
おり、交渉の積み重ねが緊張を緩和するなど功を奏している。

おわりに——今後の展開と課題

ブラマプトラ川の水資源をめぐっては、アジアの二大国である中国とインドとの衝突要
因ともなり得るが、本稿はそれを回避するための要因の分析も行った。すなわち、現存す
る専門家委員会や水文データの提供制度を拡充することで、現状としては脆弱ではあるも
のの、紛争を回避するメカニズムの芽は出ており、徐々に育っている。専門家委員会は毎
年開催されており、専門家を中心に実質的には両政府が運営しながら、了解覚書の更新の
時期には外交交渉の場として機能していることからしても、一定の評価は両国政府から受
けている。安全保障の構築や強化は、信頼を醸成する装置が不可欠であり、対立を緩和す
る意味でも、この委員会や制度のさらなる発展が、問題解決の糸口につながる。
ただ、課題を挙げるなら、水資源をめぐる対立や紛争を解決するために用いられる国際
基準や国際法が確立していないことである。中国としては、絶対的領域主権を主張すれば、
そもそも下流国の影響を考慮する法的義務はないはずであり、下流国と協定を結ぶインセ
ンティブもなく一方的行為が干渉されるいわれもない。現状としては、国際河川を規律す
る「国際水路の非航行的利用に関する条約」(1997年に国連で採択)が存在し、2014年8月
にようやく発効したが、中国はそもそも条約採択に反対票を投じており、インドは条約採
択を棄権している。条約の中には、流域国との間で水資源の衡平な配分を求める条文もあ
るが、どこまで国際慣習法として確立しているかは疑問で、両国間の対立に適用できるか
はさらなる考察が必要であろう。
さらに、本稿ではブラマプトラ川のもうー^の当事国であるバングラデシュとの関係に
ついて詳しく触れる紙幅はなかった。中国が下流国と一切条約や協定を結んでいない一方
で、インドはバングラデシュとの間ではガンジス川の水利権をめぐって協定を結んでい
る。今後は、バングラデシュとの間で中国とインドがどのような対応を見せるか。特に、
バングラデシュとの間では逆に上流国になるインドの「中流国」としての振る舞いがどう
なっていくかも今後の課題である。
結論として言えることは、ヤルツァンポ(ブラマプトラ)川での開発の着手は、中国とし
ては潜在的な外交カードともなったことである。すなわち、これまで未開発の地域であっ
たヤルツァンポ川の水資源が一転して顕在化し、開発が意図的ではないにせよ、インドに
対して「脅威」の意味を与えたことで、中国は下流国の水資源をコントロールする「見え
ない武器」を手に入れたのも同然である。
非伝統的な安全保障観に立てば、武力行使を伴わなくても、水資源の支配権を握ること
で地域の平和や安定を阻害する要因にもなる。特にアジア地域では人口増加とともに経済
ブラマプトラ川の水資源をめぐる中国とインド
65
成長も著しく、水が単なる「資源」という以上に、安全保障を脅かす存在になっている。
アジアにおいては、中国とインドとを包含する安全保障の構造的フレームワークがないこ
とが大きい。これは、インドが民主主義国であり、中国は共産党独裁国家であるという政
治体制の違いも一因であろう。
こうした意味で、リアリズムの観点から国際関係を俯瞰するならば、中国と対峙し、も
う一方の世界の大国であるアメリカとの関係にも考察を加えなければならない。民主主義
を標榜するアメリカが中国への牽制を図る上で、どのようにこの地域へ関与していくかも
今後、留意すべきだろう。

(注)
1)本稿では全般的な名称として「ブラマプトラ川」を用いるが、中国国内に言及する際には「ヤルツァ
ンポ川」の名称も併用する。

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2014年9月29日 第1稿受領
2015年1月9日第2稿受領
2015年2月9日 査読を経て掲載決定
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アジア研究 Vol.61,No. 2, June 2015 』