海外における危険と日本人の安全
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/bluebook/2021/html/chapter5_02_01.html


『第2節 海外における日本人への支援
1 海外における危険と日本人の安全
(1)2020年の事件・事故などとその対策
2019年の時点で、年間延べ約2,000万人1の日本人が海外に渡航し、約141万人(2019年10月現在)の日本人が海外に居住している。このように海外に渡航・滞在する日本人の生命・身体を保護し、利益を増進することは、外務省の最も重要な任務の一つである。
2020年は、日本人が犠牲となるテロ事件は発生しなかった一方、各地で引き続き多くのテロ事件が発生した。主なテロ事件としては、パリ(フランス)郊外での刺殺事件(1月)、ロンドン南部(英国)での刺傷事件(2月)、チュニス(チュニジア)の米国大使館付近での自爆事件(3月)、ロマン=シュル=イゼール(フランス)での刺殺事件(4月)、パリ郊外での警官襲撃事件(6月)、ベルリン(ドイツ)の高速道路での車両衝突事件(8月)、パリの風刺週刊誌シャルリー・エブド元本社前での刺傷事件(9月)、パリ郊外での教師刺殺事件(10月)、ニース(フランス)での刺殺事件(10月)、ウィーン(オーストリア)での銃乱射事件(11月)、ジッダ(サウジアラビア)の式典会場での爆発事件(11月)などが挙げられる。
近年のテロ事件の発生地域は、中東・アフリカのみならず、日本人が数多く渡航・滞在する欧米やアジアにも拡大している。欧米で生まれ育った者がインターネットなどを通じて国外のイスラム過激思想に感化され実行するテロ(ホームグロウン型)や、組織的背景が薄く単独で行動する「一匹狼」によるテロ(ローンウルフ型)が多数発生している一方、ウィーンでの銃乱射事件(11月)のように、「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)2などの組織的背景があるとみられるテロ事件も発生している。また、不特定多数の人が集まる日常的な場所(ソフトターゲット)を標的とするテロ事件も引き続き多く発生している。
2020年は、新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」という。)の影響で海外渡航者が大幅に減少したことから、日本人の犯罪被害件数も例年に比べ減少したものの、世界各地で、日本人が強盗目的で殺害される事件などが発生している。
また、新型コロナは中国から世界各地に感染が拡大したことから、アジア人に対する風評被害が各国で見られ、日本人が被害に遭う事案も発生した。
邦人援護件数の事件別・地域別内訳(2019年)
邦人援護件数の事件別・地域別内訳(2019年)
CSV形式のファイル(1)はこちら / CSV形式のファイル(2)はこちら
援護件数の多い在外公館上位20公館
順位 在外公館名 件数
1 タイ日本国大使館 1,521件
2 フィリピン日本国大使館 1,187件
3 英国日本国大使館 981件
4 大韓民国日本国大使館 775件
5 フランス日本国大使館 750件
6 ロサンゼルス日本国総領事館 626件
7 ホノルル日本国総領事館 615件
8 上海日本国総領事館 595件
9 バルセロナ日本国総領事館 591件
10 サンフランシスコ日本国総領事館 559件
11 香港日本国総領事館 449件
12 ニューヨーク日本国総領事館 445件
13 セブ領事事務所 368件
14 イタリア日本国大使館 356件
15 デンパサール日本国総領事館 282件
16 ハガッニャ日本国総領事館 277件
17 アトランタ日本国総領事館 268件
18 シアトル日本国総領事館 265件
19 ヒューストン日本国総領事館 233件
20 ポートランド領事事務所 231件
※大使館、総領事館、領事事務所などのうち、援護件数の多い上位20公館を掲載
自然災害は、世界各地で多く発生しており、ルソン島(フィリピン)の火山噴火(1月)、サイクロン「LINFA」(5月)、エーゲ海地震(10月)、ハリケーン「ETA」(11月)などにより大きな被害が出た。
さらに、2020年は米国や香港を始め世界各地で大規模な抗議活動が相次ぎ、外務省としては、デモや抗議活動に近付かないよう海外安全ホームページなどで呼びかけた。また、地域情勢に応じ、渡航・滞在に当たって特に注意が必要と考えられる国・地域に関する海外安全情報を随時発出し、エチオピア、アゼルバイジャン、アルメニア及びコートジボワールなどの危険情報の危険レベルを引き上げた。
また、海外旅行中に発病し滞在先のホテルなどで急死した事例も前年に引き続き報告された。これらの事故や疾病では、日本と比べて高額な医療費や搬送費用が発生したり、医療サービスが不十分なことなどにより対応が困難な事例も散見された。
外務省は、感染症や大気汚染など、健康・医療面で注意を要する国・地域についても随時関連の海外安全情報を発出し、流行状況や感染防止策などの情報提供及び渡航や滞在に関する注意喚起を行っている。
2019年末以降、中国から発生した新型コロナが世界で猛威を振るった。これに対し、外務省は、感染症危険情報やスポット情報を機動的に発出するなど、ホームページやメールを通じて在留邦人及び渡航者に対し適時適切に情報発信・注意喚起を行った。また、中国湖北省に滞在していた日本人などが政府チャーター機で帰国したほか、世界各地の日本国大使館・総領事館などの支援により、11月末までに合計で101か国から1万2,000人を超える日本人の帰国が実現した(2ページ 巻頭特集参照)。
海外安全ホームページに掲載されている主な海外安全情報(体系及び概要)
その他の感染症については、エボラ出血熱の感染例がコンゴ民主共和国及びウガンダで報告され、世界各地で麻しんが流行したほか、中東では中東呼吸器症候群(MERS)の感染例が引き続き報告されている。ジカウイルス感染症、黄熱病、デング熱やマラリアといった蚊が媒介する感染症も引き続き世界各地で流行した。
(2)海外における日本人の安全対策
日本の在外公館及び公益財団法人日本台湾交流協会が2019年に対応した日本人の援護人数は、延べ2万1,725人、援護件数は2万295件と微減となった。
しかし、日本人の安全を脅かすような事態は世界中の様々な地域で絶え間なく発生している。特に2020年の年初以来、新型コロナ感染拡大に伴い、各国の渡航者に対する入国・行動制限や、航空便の減便などの様々な制約がある中で、海外に渡航する日本人にとっては、感染症とテロといった複合化したリスクに適切に対処することが必要とされている。また、万が一海外でテロやその他事件・事故に遭遇した場合の対応は、従来にも増して難しくなっていることから、海外安全対策に万全を期すことが一層求められている。
こうした観点から、外務省は、広く国民に対して安全対策に関する情報発信を行い、安全意識の喚起と対策の推進に努めている。
具体的には、「海外安全ホームページ」を通じて各国・地域の最新の安全情報を発出しているほか、在留届を提出した在留邦人及び外務省海外旅行登録「たびレジ」に登録した短期旅行者などに対して渡航先・滞在先の最新の安全情報をメールで配信している。』