国産か海外か?陸上自衛隊、次期装輪装甲車の座を巡って三つ巴の争い(2019.09.14)

国産か海外か?陸上自衛隊、次期装輪装甲車の座を巡って三つ巴の争い(2019.09.14)
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『防衛省は9月10日、陸上自衛隊の96式装輪装甲車の後継車両(次期装輪装甲車)選定について、各企業から提案のあった3種類の試験用車種を選定したと発表した。

参考:次期装輪装甲車の試験用車種の選定について

次期装輪装甲車に海外勢の参加は予想されていた

防衛省傘下の防衛装備庁は、96式装輪装甲車の後継として輸送性や機動性を有し、防護力等の向上を図った装輪装甲車(改)の開発を小松製作所が行い、試作車を2017年1月10日に納入した。

しかし、試作車の防弾板等に不具合があるとして、開発期間の延長を発表したが、その後2018年6月、開発計画が白紙になったと発表し、その後7月に開発計画中止を正式に発表した。

出典:防衛装備庁 装輪装甲車(改)

開発中止の表向きな理由は、小松製作所が要求性能を満たせなかったためとされている。
防衛装備庁は2019年5月、96式装輪装甲車の後継車両(次期装輪装甲車)の試作車を提案可能な企業を探すための説明会を開催した。

2019年1月に後継車両に関する情報提供を呼びかけていた際、挙げた条件は以下の通りだ。

装輪装甲車に関する研究、開発、製造等の実績を有する企業
装輪装甲車の開発又は製造等に関する知識及び技術を有することを証明できる企業
日本国内において装輪装甲車の輸入・販売に関する権利を保有する企業又は権利を獲得できる企業

防衛装備庁が挙げた条件の中には、国内開発という制限がなく、これは事実上、後継車両の国内開発を断念、もしくは海外企業へ門戸を開いたという意味として受け取れ、2019年5月に開催された後継車両に関する説明会は、海外の装甲車開発企業向けの説明会だった可能性が高いと見られていた。

試験用車種に選ばれたのは日本提案と、海外提案が2案の3車種

今回、96式装輪装甲車の後継車両(次期装輪装甲車)に提案を行ったのは、日本の三菱重工業、フィンランドのパトリア、カナダのGDLSに加え、ドイツのARTEC GmbHの4社だ。

しかし、ARTEC GmbHが提案した装輪装甲車「ボクサー」は、他の3車種との比較の結果、試験用車種の選定から脱落してしまい、次期装輪装甲車の座を巡って争うのは、三菱重工業提案の「機動装甲車」、パトリア提案の「AMV」、GDLS提案の「LAV6.0」の3車種だけとなった。

三菱重工業提案の「機動装甲車」については正式な情報がまったくないが、恐らく三菱重工業が開発した16式機動戦闘車の技術を流用して自主的に開発を進めていたMAV(Mitsubishi Armored Vehicle)をベースにしたものを出してくる可能性が高い。

MAV自体は2014年、フランスで開催された展示会「ユーロサトリ」で発表されている。

出典: Ex13 / CC BY-SA 3.0 AMV

パトリア提案の「AMV」は、八輪式または六輪式の多目的装輪装甲車で、主な主要コンポーネントはモジュール設計を採用しているので、採用国の要求に応じて異なる砲塔、武器、センサー、通信システムを組み込むことができ、特に「AMV」は地雷攻撃に対する保護に優れており、最大でTNT火薬10kgの爆発に耐えることが可能と言われている。

AMVは、開発国であるフィンランド陸軍以外にも、ポーランドやスウェーデンなど8ヶ国の陸軍が採用し、計1,900輛以上を受注実績を誇る装輪装甲車だ。

出典: New Zealand Defence Force / CC BY 2.0 ニュージーランド陸軍のLAV III

GDLS提案の「LAV6.0」は、F-16開発で有名な、米国のジェネラル・ダイナミクスの子会社「ジェネラル・ダイナミクス・ランド・システムズ(General Dynamics Land Systems)Canada」が開発した装輪装甲車「LAV/ピラーニャ III」の近代改修型と同じでもので、カナダ陸軍以外にも、ニュージランドやサウジアラビア、コロンビアなどが採用しているが、何と言っても米陸軍が同車を4,000輛近く採用しているため、特に有名な装輪装甲車だ。

補足:ピラーニャを元々開発したのはスイスのモワク社で、同社をジェネラル・ダイナミクス・ランド・システムズが傘下に収めため、現在はカナダ製/LAVとなっている。

日本に提案された「LAV6.0」は、ベースとなった「LAV/ピラーニャ III」の近代改修型なので、地雷や即席爆発装置(IED)に対する保護力が強化され、射撃管制や火力、センサーシステムもアップグレードが行われているため、重量25トンと「LAV/ピラーニャ III」よりも8トン近く重くなってしまい、350馬力のエンジン出力を450馬力へと強化してある。
選ばれるのは国産か?それとも「実績」と「経験」に優れる海外勢か?

防衛省は選定した3種類の試験用車種を各2輛づつ購入し、2021年から1年間、評価試験を行い最終選定を行う予定だが、この中に三菱重工業提案の「機動装甲車」が含まれているため、国産装輪装甲車誕生の可能性も残っている。

しかし、実戦で培われた「実績」と「経験」を元に改良が重ねられてきた海外勢の装甲車に対し、どれだけ技術で三菱案が勝ったところで「実績」と「経験」だけは、どうにもならないだろう。

国産開発の意義については十分に理解しているつもりだが、このように海外企業に門戸を開いた以上、公平に評価しなければ、今後、日本がコンペティションを行っても「どうせ国産」という目で見られてしまうことに成りかねない。

国産兵器では、どうしても得難い「実戦・実績・経験」を持つ海外勢の装甲車より、日本の国情に見合った「機動装甲車」の方が優れているのなら三菱案を採用すればいいが、安易に「国産」を優先させるために三菱案を採用するぐらいなら、端から後継車両の条件に「国内開発」をつけておけば良いのだ。

今回、国内開発という枷を外して行われた「次期装輪装甲車」選定は、三菱重工業にとっても、国産という大義名分がない環境で、本当の実力を試せる絶好のチャンスだと考え、是非とも頑張ってほしい。

出典: Graham Robson-Parker / CC BY-SA 4.0 オーストラリア陸軍のボクサー

余談だが、試験用車種の選定で、ドイツの「ボクサー」だけがなぜ脱落したのか詳細は明らかになっていないが、管理人の予想では価格が高すぎたのと、重量が重すぎるからではないかと思っている。

ドイツ国内でも「ボクサー」は高価だと批判(高価になった理由については失念)されている記事を読んだことがあり、実際、スロベニアが48輛のボクサー調達に3億600万ユーロ(約367億円)を要求されており、1輛あたりの導入単価は約7.6億円で、オーストラリアは、211輛のボクサー調達に21億600万ユーロ(約2,510億円)も支払っており、1輛あたりの導入単価は約12億円に達する。

一方、AMVを4億ユーロ(約480億円)で81輛調達するスロバキアはの場合、1輛あたりの導入単価は約5.9億円で、LAV6.0の価格は不明だが、米国が導入したLAV/ピラーニャ IIIの派生型「ストライカー」の単価は500万ドル前後(約5.4億円)だと言われている。

導入条件が異なるため一概に比較は出来ないが、それでも「ボクサー」が非常に高価な装輪装甲車だというのは事実だろうし、もう一つの問題は、ボクサーは戦車並の防護力を要求された結果、戦闘時の重量が36トンから38トンもあり、あまりにも重すぎるのだ。

もし日本がボクサーを導入すれば、約26トン程度の16式機動戦闘車も重い装輪装甲車が誕生することになっていた。

かなり話は脱線してしまったが、2年後、日本の次期装輪装甲車の座を獲得しているのは、果たして日本企業か、海外企業か、非常に興味深い。

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※アイキャッチ画像の出典:陸上自衛隊 96式装輪装甲車
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投稿者: 航空万能論GF管理人 日本関連 コメント: 10  』