香港行政長官に李家超氏 警察出身の強硬派

香港行政長官に李家超氏 警察出身の強硬派
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『【香港=木原雄士】香港政府トップを決める行政長官選挙が8日投開票され、唯一の候補者である李家超(ジョン・リー)前政務官(64)が投票総数の99%の支持を得て当選した。警察出身の李氏は民主派に厳しい姿勢で知られ、政治的な締め付けが強まる可能性がある。

李氏は香港返還25年を迎える7月1日に就任する。任期は5年。警察出身者が経済都市香港のトップに就くのは初めて。

行政長官選挙は業界団体の代表など「愛国者」の選挙委員1500人が選ぶ間接選挙。今回は欠員を除く1461人が「支持」か「不支持」かを投票し、751票以上の支持で当選が決まる。投票総数1428票のうち、支持は1416票、不支持は8票、残り4票は無効票だった。

李氏は警察官として30年以上のキャリアを持ち、2019年の大規模デモを治安対策の責任者として取り締まった。21年には中国共産党に批判的な香港紙・蘋果日報(アップル・デイリー)を廃刊に追い込み、直後に政府ナンバー2の政務官に就いた。

林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官の再選不出馬を受けて4月に出馬を表明した。習近平(シー・ジンピン)指導部の後ろ盾を得たとの見方が広がり、政財界などの選挙委員が雪崩を打って李氏の支持を打ち出した。

李氏は選挙公約に国家への反逆や国家機密を盗み取る行為を罰する国家安全条例の制定を盛り込んだ。同条例は香港国家安全維持法(国安法)を補完するもので、「一国二制度」のもとで保障されてきた言論の自由がさらに後退する恐れがある。李氏は経済や金融分野の経験が乏しく、経済政策の手腕は未知数だ。

今回の選挙は候補者1人の形式的なものとなり、民意を問う選挙システムの形骸化が鮮明になった。21年に中国主導で選挙制度を見直した結果、中国に批判的な勢力は立候補できなくなった。

選挙委員も親中派が99.9%を占め、民主派の声が反映される余地はほぼない。自らを親中派でないと主張する唯一の選挙委員である狄志遠氏も7日「対立は弊害をもたらすだけだ」として李氏への支持を表明した。

香港の憲法にあたる香港基本法は一般市民が投票でリーダーを選ぶ普通選挙の導入を目標に掲げる。香港の民主化運動は普通選挙を求め続けてきたが、中国への返還25年の節目を前に事実上、挫折した。香港メディアによると、香港警察は8日、テロを警戒して7000人体制で警備にあたった。

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