原油襲った2つのショック
20年回顧 揺れた市況① 4月に前代未聞の「マイナス37ドル」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODJ167HO0W0A211C2000000


『新型コロナウイルス下の2020年、商品市況は国内外で大きく揺れた。未曽有の需要減に見舞われたエネルギーや素材価格が下落した一方、あふれたマネーは貴金属などの相場を上向かせた。各市場の1年を振り返り、21年を展望する。
低迷が続いたニューヨーク原油先物価格は足元で1バレル48ドル前後まで上昇、3月上旬以来の高値を付けた。新型コロナのワクチンが欧米で実用段階に入り、来年以降の経済正常化を先取りした。金融市場のリスク選好姿勢が鮮明になり、原油相場も11月から上昇基調を強めた。
日本エネルギー経済研究所の小山堅専務理事は3月初旬を「原油価格暴落の始まり」と振り返る。コロナ禍でエネルギー需要が蒸発、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国の連合体「OPECプラス」が3月6日に開いた会合は4月以降の減産方針が焦点だった。だがサウジアラビアの減産強化案をロシアが拒否。協議は決裂した。
サウジは一転して大幅増産を宣言し、ロシアに「価格戦争」を仕掛けた。このショックで、3月6日時点で46ドルを上回っていた原油価格は9日に30ドル前後まで急落。米国のシェール企業が発行する低格付け債などの信用リスクも浮上し、世界の金融市場を揺さぶった。
4月にはコロナの本格的な流行が始まった欧米で都市封鎖(ロックダウン)が拡大。航空機燃料やガソリンの需要が急減した。産油国の一斉増産も重なり、世界で原油在庫が積み上がった。米国では原油先物の受け渡し拠点であるオクラホマ州クッシングで貯蔵能力の限界説が伝わり、現物を引き取るリスクに市場参加者が震え上がった。
ニューヨーク市場で期近物の売買最終日が迫った20日、取引を手じまう売り注文が殺到しても買い手が現れない。みるみる急落した価格は史上初めてゼロを下回り、終値がマイナス37ドル台を付ける前代未聞のショックに見舞われた。1年を通した価格の振れ幅は100ドルを上回った。
トランプ米大統領の介入もあり、OPECプラスは5月から世界需要の1割に当たる日量970万バレルの大幅減産に取り組んだ。中国などの経済回復で需給バランスは徐々に改善、価格も上向いた。各国の強力な金融緩和で投資マネーが商品市場にも流入し、相場を押し上げる環境は今も続く。
ワクチンが相場の潮目を変え、足元は3月ショックの直前の水準に戻った。だが新型コロナ感染再拡大が続く欧米では経済活動が再び制限され、短期的な需要環境はむしろ悪化している。日本総合研究所の松田健太郎研究員は「世界の在庫水準は依然高く、今の相場上昇は早すぎる」とみる。
12月のOPECプラスで21年1月から減産目標の小幅圧縮が決まった。2月以降の減産幅は毎月話し合う。その度に協議が難航すれば市場心理が悪化する可能性もある。「一本調子の値上がりは想定しづらい」(兼松の能崎光史エネルギー部長)との見方が多い。(小野嘉伸)』