経済安保、2段階で法整備 21年は土地取引規制、22年までに機密保護
経済安保政策を追う
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFS15BT90V11C20A2000000


『政府・自民党は経済安全保障に関する法整備を2段階で実行する。2021年1月召集の通常国会に安保上重要な施設周辺の土地取引を規制する新法案を出す。機密情報の漏洩を防ぐ一連の法案は22年までの成立をめざす。新型コロナウイルス対応などで作業が遅れ、期限を定めて検討する。
自民党の新国際秩序創造戦略本部(下村博文本部長)は16日、経済安保戦略に関する政府への提言をまとめた。提言は外資による安保上重要な土地の取引実態を把握するため、関連法案を来年の通常国会に提出するよう求めた。
政府は国内外を問わず企業や個人が土地の取得目的を届け出る義務を設け、虚偽だと分かれば罰金を科す新法案をつくる。自衛隊の基地周辺や原子力発電所周辺などが念頭にある。
韓国系企業は2013年、長崎県・対馬で島内の海上自衛隊施設の隣接地を買い取った。水源地になる森林を中国資本などが買収する事例も増え、近隣住民らに警戒の声がある。
菅義偉首相は10月、領土問題を担当する小此木八郎国家公安委員長に土地取引の実態把握に向けた法整備の検討を急ぐよう指示した。
自民党の甘利明氏(中)は記者会見で提言を説明した(16日、党本部)
土地規制以外の法案は通常国会での提出を見送る。当初は先端技術など機密情報の流出防止のため、研究者らに資格を付与する制度などの導入に向けた法整備も同じタイミングを想定していた。
経済安保政策は安倍前政権が検討を急いだ分野だ。米国を中心とした中国への警戒の高まりが背景にある。各国がしのぎを削る人工知能(AI)などの技術で海外との共同研究に取り組めるよう流出防止策の設計に力を入れてきた。
政府では4月に国家安全保障局(NSS)に発足した経済班が司令塔となり制度設計を議論した。一方で世界的なコロナの感染拡大に伴う水際戦略をNSSが担うことで手が回らなくなった面がある。政府は必要な環境整備を急ぐため、水際対策をNSSから内閣官房副長官補室に移管した。
米英やカナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国で機密情報を共有する枠組み「ファイブ・アイズ」は中国への警戒を高める。最先端技術開発で日本が海外との共同研究に参加するには、漏洩への疑念を払拭する制度が必要になる。
党の提言は22年の通常国会に「経済安全保障一括推進法(仮称)」の制定を目指すよう明記した。経済政策をはじめあらゆる国家戦略に経済安保の観点を盛り込み、官民で連携していくために必要な法改正やその進め方を示す内容となる。
方策として米欧でセキュリティー・クリアランス(適格性評価、SC)と呼ばれる制度を検討項目にあげた。政府は大学の研究者や企業の技術者を対象に、国際共同研究への参加や他国との機密情報の共有を希望する場合に申請してもらう。
政府は審査で信用度を評価し、漏洩の心配がないと判断した人に資格を与えるしくみを詰めている。関係省庁間で、対象となる研究分野の範囲や秘密を漏らした場合の罰則の有無などで意見が割れた経緯があり、調整を続ける。
党提言は他国で「秘密特許」と呼ばれる制度がないことを背景に、特許の公開を制限できる制度も盛った。日本では特許を出願すると1年半でインターネット上で公開される。防衛装備品や原子力に関連する特許を公開すれば他国の兵器開発などに使われかねない。
政府は先行者の権利を保護するため、非公開の特許に類似した出願を認めないようにする。安保上の懸念がなくなったと判断した段階で公開し、発明者がいずれ特許料を得られるようにする案も浮かぶ。
甘利明座長は「提案を受けて1年間、各方面に向けて経済安保全般の政策をしっかりと練ってもらいたい」と語った。政府は党が一括法制定を求める22年までに必要な関連法改正案や新法案を提出する方向で調整する。』