https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM101220Q0A211C2000000

『東南アジア諸国連合(ASEAN)と日本、米国、中国など18カ国は10日、拡大ASEAN国防相会議をオンライン方式で開いた。南シナ海問題を念頭に国際法尊重の重要性を記した共同宣言を7年ぶりに採択した。自国の海洋権益を強く主張する中国が国際社会に同調する動きをみせた。
米国からはミラー国防長官代行、中国からは魏鳳和国防相が参加し、互いの主張を繰り返した。同会議は7回目の開催だが、共同宣言は各国の閣僚が署名する方式で2013年の第2回会合以来の採択となった。
共同宣言ではアジア太平洋やインド洋を含めた地域での自由、開放性の重要性を提起し「国際法の尊重」にも言及した。海洋の秩序に関しては航行や上空飛行の自由に触れ、国連海洋法条約を含めた国際法にのっとった紛争解決が必要との立場を示した。
各国は中国による南シナ海の軍事拠点化は国際法を逸脱していると懸念する。共同宣言で「自由」や「国際法」に触れることで、中国の動向をけん制する意味合いがある。
中国が共同宣言に同調したのは、米国が事実上の「政治空白」の状況にあることが関係している。米国では大統領選で当選を確実にしたバイデン前副大統領による新政権が発足する見通し。中国は孤立を避ける一方で、その間隙を突き国際社会への関与を強め、秩序づくりを主導する思惑が透ける。
中国は自由貿易を巡り東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)に署名し、習近平(シー・ジンピン)国家主席が環太平洋経済連携協定(TPP)への参加意欲を表明した。安全保障面でも地域の秩序づくりに足並みをそろえる姿勢を見せる。
岸信夫防衛相は会議で「法の支配は自由で開かれた海を確保するうえで必要な条件だ」と語った。中国の名指しを避けつつ「それとは逆行するような緊張を高める行動が見られる」と批判した。「深刻な現状に対してASEANと懸念を共有する」とも言及し、日本の立場を訴えた。
日本はバイデン氏による新政権とも「自由で開かれたインド太平洋」の理念を共有しようとしている。オーストラリア、インドやASEANとの連携を深めて、インド太平洋地域へ米国を引き寄せたい考え。岸氏は会議で「自由で開かれた国際秩序の形成に全力で取り組む決意だ」と訴えた。(ハノイ=大西智也、甲原潤之介)』