ロシアの脅威再び NATO75周年、加盟32カ国揺らぐ結束
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR01D3I0R00C24A4000000/
『2024年4月4日 5:32
【ブリュッセル=辻隆史】北大西洋条約機構(NATO)は4日、設立75周年を迎えた。
旧ソ連に対抗するために発足したが、東西冷戦後はその任務を変えた。
加盟国を当初の12カ国から32カ国にまで増やし、宇宙・サイバーなどに作戦領域を広げてきた。加盟国の結束が揺らぐなか、再び脅威となったロシアとの対峙を迫られる。
NATOは北大西洋条約第5条をその根幹とする。「1つの加盟国への攻撃は全ての加盟国への攻撃と…
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『NATOは北大西洋条約第5条をその根幹とする。「1つの加盟国への攻撃は全ての加盟国への攻撃という、たった1つの厳粛な約束のもとにNATOは創設された」。ストルテンベルグ事務総長は3日、ブリュッセルの本部での外相会合で記者団にこう強調した。
4日には記念式典を開く。ストルテンベルグ氏は「NATOの功績をたたえつつも、それに安住してはならない」と指摘した。
NATOは1949年4月4日、旧ソ連を中心とする共産圏の脅威を受けて米欧12カ国で立ち上げた。
その後、大きく姿を変えてきた。冷戦終結後の1991年にまとめた「戦略概念」では、集団防衛だけでなく民族対立や領土紛争による地域的不安定性にも対処するとうたった。ボスニア紛争にも介入した。
「平和のためのパートナーシップ(PfP)」と呼ぶ枠組みを設け、非加盟国と協力して平和維持活動を進めた。
2022年のロシアのウクライナ侵攻が、NATOが軍事同盟として再び活性化する転機となった。NATO全体が再びロシアの脅威を認識した。同年の戦略概念でロシアを「最も重大かつ直接の脅威」と明記し、部隊や装備をバルト諸国などに配備する「前方防衛」の推進を強調した。
中国についても初めて「体制上の挑戦」と名指し、対処する必要性を指摘した。
これまで軍事的な中立を掲げてきたフィンランドとスウェーデンは22年5月に同時に加盟申請した。フィンランドは23年、スウェーデンは24年3月に正式加盟した。NATOは32カ国体制となった。
作戦領域も、伝統的な陸海空から広げた。16年の首脳会議でサイバー空間を第4の作戦領域に、19年の首脳会議では宇宙を第5の領域として認めた。
ロシアや中国がもたらすサイバーや宇宙での安全保障リスクは、日本などインド太平洋の国々との協調機運をもたらした。23年には日本と新たな協力計画をまとめた。
NATOは日本に対し、新興・破壊技術(EDT)と呼ぶ技術でも組めないか模索する。極超音速ミサイルや人工知能(AI)、量子コンピューティングといった先端技術が軍事面で用いられると、既存の防衛技術が無効化されかねない。
NATOは中国発の偽情報でも日本の知見に期待する。日本や韓国など非加盟国とも積極的に交流し、最新の課題に取り組む。
「歴史上最も強力で成功した軍事同盟」(ストルテンベルグ事務総長)となったNATOだが、加盟国の結束は揺らぎ始めた。
トランプ前米大統領は24年2月10日の演説で、NATO加盟国への防衛義務を守らない可能性に言及した。「米国の関心はインド太平洋地域に移りつつある」。ドイツのピストリウス国防相は2月17日のミュンヘン安保会議で指摘した。
オランダのルッテ首相は「トランプに対する不平や泣き言はやめよう」と同会議で語り、欧州加盟国が国防支出を増やして域内防衛に備えるべきだと提起した。前大統領が11月の米大統領選で返り咲くリスクはNATO内でも議論されている。
NATOは欧州連合(EU)と同様、加盟国に権威主義国やロシア、中国と近い国を抱える。トルコのエルドアン大統領やハンガリーのオルバン首相はフィンランドとスウェーデンの加盟交渉を停滞させた。
NATOの意思決定は全ての加盟国の同意が必要な「コンセンサス方式」を採用する。一国でも反対に回れば重要な決定は難しい。
「より危険な世界に直面する今、欧州と北米の絆はかつてないほど重要だ」。ストルテンベルグ氏は3日の記者会見で訴えた。同日の外相会合ではウクライナに1000億ドル(15兆円)規模の支援をするための基金創設の議論に着手した。
7月の首脳会議までに決着できれば、対ロシアで強い団結力をアピールする好機となる。ハンガリーなどが慎重姿勢を示しているとみられ、ストルテンベルグ氏らが説得を続ける。交渉の成否は同盟の今後を占う試金石となる。
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広瀬陽子
慶応義塾大学総合政策学部 教授
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ひとこと解説 NATOは冷戦の所産であり、冷戦終結後、その存在意義が疑問視されることもあったが、欧州や周辺の危機が起こる度にその存在意義が確認されてきた。
ウクライナ戦争もその重要な契機となったが、同時に加盟国の足並みのブレを示す機会にもなった。
だが、足並みを乱したとされるトルコはむしろ自国こそがNATOを結束させてきたと自信を持つ。
特にNATOのPfP(実はロシアも加盟国である事は死角になりがち)加盟国をトルコの枠組みでNATOのPKO活動に従事させたり、周辺国の軍事的レベルアップを図り、NATO周辺の安全を確保してきたのはトルコだと言う。
その一面は間違いなくあり、NATOの様々な面を検討する必要がある。
2024年4月4日 11:01いいね』