EU、巨大ITの寡占防止 6社のサービスを規制対象に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR065OB0W3A900C2000000/
『【ブリュッセル=辻隆史】欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は6日、巨大IT(情報技術)企業を規制するデジタル市場法(DMA)の適用対象となる企業を初めて公表した。米アップルや米メタ、米アマゾン・ドット・コムなどのプラットフォーマー6社を指定した。
対象企業には競合アプリとの相互運用やデータの開放などを義務付ける。EUは大手による支配的地位の乱用を防ぎ、欧州のスタートアップとの公平な競争環境を整える。
EUは2024年春に同法の全面適用を予定する。域内での過去3年間の年間売上高が75億ユーロ以上か、時価総額750億ユーロ以上であることに加え、EU域内の月間アクティブユーザー数が4500万人以上といった要件を満たすプラットフォーマーが対象になる。
今回、初めて対象企業を公表した。アップルやメタ、アマゾンのほか、米マイクロソフト、米グーグルの親会社であるアルファベット、中国の字節跳動(バイトダンス)の6社が対象となる。
6社が手掛けるサービスも含まれる。例えばメタの画像共有アプリ「インスタグラム」やグーグルの検索エンジン、バイトダンスの動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」などが指定された。
規制対象となったプラットフォーマーには、多くの義務が課される。定額サービスなどの解約を、登録と同程度に容易にする必要がある。異なるアプリ間のメッセージのやりとりや通話を可能にするため、サービスの互換性も求められる。
利用者には、プラットフォーマーのサービスを使うことで生まれる広告データなどにアクセスできるようにする。対象企業が他のデジタル企業を買収する場合は欧州委に事前に通知させる。
さらに同法はプラットフォーマーに自社サービスの優遇を禁じる。あるサービスで得られた個人情報を、別のサービスに活用することも認めない。
対象企業が同法の義務や禁止事項に違反した場合、欧州委は前年度の全世界総売上高の10%を上限に制裁金を科すことができる。違反が繰り返されれば、制裁金の上限は最大20%に引き上げられる。
EUは近年、米国などの巨大ITへの規制を強めている。独占禁止法に相当する従来のEU競争法に加えて強力な法的ツールとして成立させたのが、DMAとデジタルサービス法(DSA)だ。
DSAは指定企業に対し、ヘイトスピーチや偽情報、児童ポルノといったインターネット上の有害情報を迅速に取り締まるよう義務付ける。利用者の人種や政治的意見などに基づいた広告も禁じる。
欧州委関係者は「米国や中国などの巨大テックは地域をこえてEU域内の企業のビジネスや消費者の暮らしに影響を及ぼす。規制なしに放置するという選択肢はない」と強調する。DMAで欧州企業がテック分野で成長できる下地をつくり、DSAで健全なネット環境の維持をめざす。
DMAをめぐっては米アップルや米マイクロソフトは一部の自社サービスが適用対象にあたらないと主張していた。アップルの対話アプリ「iMessage(アイメッセージ)」は除外された一方、同社の「App Store」は指定された。EUは今後、調査の進捗に応じて指定対象を増やしていく方針だ。反発する企業との訴訟に発展するリスクもある。
DSAでは起業家イーロン・マスク氏率いる米X(旧ツイッター)が適切なコンテンツの管理をするか見通せない。厳しい規制を掲げてグローバルスタンダードをつくろうとするEUの戦略が奏功するかが注目される。』