正方形がRC回路に入力された場合の出力信号波形を得るために、RC回路のインパルス応答と方形波の畳み込みを行っている。 黄色の領域で示されている面積が合成積である。 畳み込み(たたみこみ、英: convolution)とは、関数 g を平行移動しながら関数 f に重ね足し合わせる二項演算である。あるいはコンボリューションとも呼ばれる。
定義 一次元 連続 連続関数 f, g の畳み込み f ∗ g は以下のように定義される:
( f ∗ g ) ( t
)
∫ f ( τ ) g ( t − τ ) d τ {\displaystyle (f*g)(t)=\int f(\tau )g(t-\tau )\,d\tau } 積分を用いて2つの関数を合わせることから畳み込み積分、合成積、重畳積分とも呼ばれる。
積分範囲は関数の定義域に依存する。通常は区間 (−∞, +∞) で定義される関数を扱うことが多いので、積分範囲は −∞ から +∞ で計算されることが多い。一方 f, g が有限区間でしか定義されない場合には、g(t − τ) が定義域内に入るように f, g を周期関数と見なして計算される。この周期関数と見なして畳み込みをすることを循環畳み込み(じゅんかんたたみこみ、英: cyclic convolution)と呼ぶ。
離散 離散信号 f, g の畳み込み f ∗ g は以下のように定義される:
( f ∗ g ) ( m
)
∑ n f ( n ) g ( m − n ) {\displaystyle (f*g)(m)=\sum _{n}{f(n)\,g(m-n)}} すなわち積分のかわりに総和を使って同様に定義される。そのため畳み込み和・重畳和とも呼ばれる。
総和の範囲も関数の定義域に依存し、関数が有限区間でしか定義されていない場合は周期関数とみなして畳み込み演算が行われる。また定義域外の値を 0 と定義し直した関数での畳み込みがよく行われる。これを線形畳み込み(せんけいたたみこみ、英: linear convolution)あるいは直線畳み込み(ちょくせんたたみこみ)と呼ぶ。
高次元 Rd 上の複素数値函数 fと g の畳み込みは、それ自身が Rd 上の複素数値函数として
( f ∗ g ) ( x
)
∫ R d f ( y ) g ( x − y ) d
y
∫ R d f ( x − y ) g ( y ) d y {\displaystyle (f*g)(x)=\int {\mathbf {R} ^{d}}f(y)g(x-y)\,dy=\int {\mathbf {R} ^{d}}f(x-y)g(y)\,dy} で定義されるものであるが、右辺の積分が存在してこれが定義可能となるには、fと g が無限遠において十分急速に減少する(英語版)必要がある。とはいえ、たとえば g が無限遠において爆発するとしても、その影響は f が十分に急減少であれば容易に打ち消すことができるから、この積分の存在条件は込み入ったものも考え得る。この問題をクリアする函数の条件としてよく用いられる場合を以下に挙げる。
コンパクト台付き函数 函数 f と g がともにコンパクト台連続函数ならば、それらの畳み込みは存在して、やはりコンパクト台連続函数となる[1]。より一般に、一方がコンパクト台、他方が局所可積分函数ならば、畳み込み f ∗ g が定義されて連続である。
R 上では両者が局所自乗可積分の場合、あるいは両者がともに半無限区間 [a, +∞) (あるいはともに (-∞, a]) に台を持つ場合でも畳み込みが定まる。
可積分函数 函数 f と g がともにL1(Rd)に属するルベーグ可積分函数ならば、それらの畳み込み f ∗ g が存在してやはり可積分である[2]。これはトネリの定理の帰結である。このことは ℓ1 に属する数列の離散畳み込みや、より一般の群上の L1 の畳み込みでも成立する。
同様にして、 f ∈ L1(Rd) と g ∈ Lp(Rd) が 1 ≤ p ≤ ∞ のとき、 f ∗ g ∈ Lp(Rd) かつ
‖ f ∗ g ‖ p ≤ ‖ f ‖ 1 ‖ g ‖ p {\displaystyle |{f}*g|_{p}\leq |f|_{1}|g|_{p}} を満たす。特に p = 1 のとき、これにより L1 は畳み込みを積としてバナッハ代数を成す(また、等号成立は f と g がともに殆ど至る所非負のときである。)
1 r + 1 {\displaystyle {\frac {1}{p}}+{\frac {1}{q}}={\frac {1}{r}}+1} なる関係を満足するとして、
‖ f ∗ g ‖ r ≤ ‖ f ‖ p ‖ g ‖ q ( f ∈ L p ( R d ) , g ∈ L q ( R d ) ) {\displaystyle \lVert f*g\rVert {r}\leq \lVert f\rVert {p}\,\lVert g\rVert _{q}\quad (f\in L^{p}(\mathbb {R} ^{d}),\,g\in L^{q}(\mathbb {R} ^{d}))} となるから、畳み込み積は Lp × Lq → Lr なる連続双線型写像を定めている。
畳み込みに対するヤングの不等式、循環畳み込みや離散畳み込みなどほかの文脈でも成立する。また、 R 上では先に掲げた不等式はより厳しく評価できる: 先と同様の関係を持つ 1 < p, q, r < ∞ に対し、定数 Bp,q < 1 が存在して
‖ f ∗ g ‖ r ≤ B p , q ‖ f ‖ p ‖ g ‖ q ( f ∈ L p ( R ) , g ∈ L q ( R ) ) . {\displaystyle \lVert f*g\rVert {r}\leq B{p,q}\lVert f\rVert {p}\,\lVert g\rVert {q}\quad (f\in L^{p}(\mathbb {R} ),\,g\in L^{q}(\mathbb {R} )).} Bp,q の最適値は Beckner (1975) にある[3]。より強い評価として 1 < p, q, r < ∞ に対し
‖ f ∗ g ‖ r ≤ C p , q ‖ f ‖ p ‖ g ‖ q , w {\displaystyle \lVert f*g\rVert {r}\leq C{p,q}\lVert f\rVert {p}\,\lVert g\rVert {q,w}} も得られる。ただし、 ‖ g ‖q,w は弱 Lp-ノルムである。 1 < p, q, r < ∞ に対し弱い版のヤング不等式
‖ f ∗ g ‖ r , w ≤ C p , q ‖ f ‖ p , w ‖ g ‖ r , w {\displaystyle |f*g|_{r,w}\leq C_{p,q}|f|_{p,w}|g|_{r,w}} を考えれば、畳み込みは連続双線型写像 L p , w ( R ) × L q , w ( R ) → L r , w ( R ) {\displaystyle L^{p,w}(\mathbb {R} )\times L^{q,w}(\mathbb {R} )\to L^{r,w}(\mathbb {R} )} とも見られる[4]。
急減少函数 コンパクト台付きや可積分な函数と同様に、函数が無限遠で十分急速に減少(英語版)すれば畳み込みができて、それらの畳み込みもまた急速に減少することは重要な性質である。とくに f と g が急減少函数ならば、それらの畳み込み f ∗ g もまた急減少函数となる。このことを、畳み込みが微分と可換であるという事実と組み合わせれば、シュヴァルツ函数のクラスが畳み込みで閉じていることが導かれる[5]。
分布 →詳細は「シュヴァルツ超函数」を参照 適当な条件の下で、函数と分布あるいは分布同士の畳み込みが定義できる。 f がコンパクト台付き函数で G が分布ならば f ∗ G は、函数の畳み込みの式を分布版にした
∫ R d f ( x − y ) d G ( y ) {\displaystyle \int _{\mathbf {R} ^{d}}f(x-y)dG(y)} で定義される滑らかな函数である (G が密度函数 g を持てば通常の函数の畳み込みに書き直せる)。より一般に、試験函数 φ に対して結合律
f ∗ ( g ∗ φ
)
( f ∗ g ) ∗ φ {\displaystyle f(g\varphi )=(fg)\varphi } が成り立つような一意的な方法で畳み込みの定義を拡張することができて、それは f が分布、 g がコンパクト台付き分布のときには有効である[6]。
測度 二つの有界変動ボレル測度 μ と ν の畳み込みとは、
∫ R d f ( x ) d λ ( x
)
∫ R d ∫ R d f ( x + y ) d μ ( x ) d ν ( y ) {\displaystyle \int {\mathbf {R} ^{d}}f(x)d\lambda (x)=\int {\mathbf {R} ^{d}}\int _{\mathbf {R} ^{d}}f(x+y)\,d\mu (x)\,d\nu (y)} で定義される測度 λ を言う[7]。これは μ と ν を分布と見るとき、前節にいう分布の畳み込みに一致する。また μ と ν がルベーグ測度に関して絶対連続であるとき、それらの密度函数の L1-函数としての畳み込みとも一致する。
群上の畳み込み 適当な測度 λ を備えた群 G とその上の実または複素数値ルベーグ可積分函数 f と g が与えられれば、それらの畳み込みを
( f ∗ g ) ( x
)
∫ G f ( y ) g ( y − 1 x ) d λ ( y ) {\displaystyle (f*g)(x)=\int _{G}f(y)g(y^{-1}x)\,d\lambda (y)} で定義することができる。しかし一般には可換性が成り立たないことに注意すべきである。
局所コンパクト群上の不変積分の場合 典型的な場合として、 G が局所コンパクトハウスドルフ位相群で λ が左ハール測度(左不変測度)の場合である。右不変測度 ρ に対しても同様の積分
∫ f ( x y − 1 ) g ( y ) d ρ ( y ) {\displaystyle \int f(xy^{-1})g(y)\,d\rho (y)} を考えることができるが、 G が単模でないならば両者は一致しない。前者の定義では、固定した函数 g による畳み込みが群への左移動作用と可換:
L h ( f ∗ g
)
( L h f ) ∗ g {\displaystyle L_{h}(fg)=(L_{h}f)g} となることからよく選ばれる。さらにこの定義では後で述べる測度の畳み込みの定義と矛盾しない。一方、左不変ではなく右不変測度を取り、後者の定義を用いれば右移動作用と可換になる。
円周群 T にルベーグ測度を考えたものはよく知られた循環畳み込みの場合の例を与える: g ∈ L1(T) を固定して、ヒルベルト空間 L2(T) に作用するよく知られた作用素:
T f ( x
)
1 2 π ∫ T f ( y ) g ( x − y ) d y {\displaystyle T{f}(x)={\frac {1}{2\pi }}\int _{\mathbf {T} }{f}(y)g(x-y)\,dy} がとれる。作用素 T はコンパクト作用素である。直接計算により、その随伴作用素 T* は g(−y) による畳み込みであることが示せる。上で掲げた可換性により、 T は正規作用素 (TT = TT である。また T は平行移動作用素とも可換である。そのような畳み込み作用素と平行移動作用素全体の成す作用素族を S とすれば、 S は正規作用素からなる可換族である。ヒルベルト空間上のスペクトル論に従えば、 S を同時対角化する正規直交基底 {hk} が存在して、これが円周上の畳み込みを特徴付ける。具体的には
h k ( x
)
e i k x ( k ∈ Z ) {\displaystyle h_{k}(x)=e^{ikx}\quad (k\in \mathbb {Z} )} がちょうど T の指標の全体の成す集合に一致する。この基底に属する各畳み込み作用素がコンパクト乗算作用素であることが、上で述べた循環畳み込みに対する畳み込み定理としてみることができる。
離散畳み込みの例は位数 n の有限巡回群をとる。この場合の畳み込み作用素は巡回行列によって表現され、離散フーリエ変換によって対角化することができる。
考える位相群が実数の加法群 (R, +) のとき、その上の確率測度 μ と ν をとれば、測度の畳み込み μ ∗ ν は、分布 μ および ν に従う独立確率変数 X および Y の和 X + Y の確率分布に対応する。
性質 積分演算に由来する性質として以下の性質がある。
交換律: f ∗
g
g ∗ f {\displaystyle fg=gf} 結合律: ( f ∗ g ) ∗
h
f ∗ ( g ∗ h ) {\displaystyle (fg)h=f(gh)} 分配律: f ∗ ( g + h
)
( f ∗ g ) + ( f ∗ h ) {\displaystyle f(g+h)=(fg)+(f*h)} スカラー倍: a ( f ∗ g
)
( a f ) ∗
g
f ∗ ( a g ) {\displaystyle a(fg)=(af)g=f*(ag)}, a は任意の複素数。 微分: D ( f ∗ g
)
D f ∗
g
f ∗ D g {\displaystyle {\rm {D}}(fg)={\rm {D}}fg=f*{\rm {D}}g}, D は微分演算子(離散系の場合は Df(n) = f(n + 1) − f(n)) 畳み込み定理(英語版): F ( f ∗ g
)
F ( f ) ⋅ F ( g ) {\displaystyle {\mathcal {F}}(f*g)={\mathcal {F}}(f)\cdot {\mathcal {F}}(g)}, F ( f ) {\displaystyle {\mathcal {F}}(f)} はフーリエ変換 畳み込み定理 畳み込み定理(英語版)は次の式で示される。
F ( f ∗ g
)
F ( f ) ⋅ F ( g ) {\displaystyle {\mathcal {F}}(f*g)={\mathcal {F}}(f)\cdot {\mathcal {F}}(g)} ここで F ( f ) {\displaystyle {\mathcal {F}}(f)} はフーリエ変換である。この定理によりフーリエ変換を使って畳み込み演算を単純な掛け算に変換することが出来る。この定理はラプラス変換・Z変換やメリン変換といった変換に対しても適用できる。
応用 確率測度における畳み込み 集合関数の一種である確率測度の畳み込みは次のように表現される。確率測度 μ1, μ2 において任意のボレル集合 B に対し、
( μ 1 ∗ μ 2 ) ( B
)
∫ 1 B ( x + y )
μ 1 ( d x ) μ 2 ( d y ) {\displaystyle (\mu {1}*\mu {2})(B)=\int 1_{B}(x+y)\ \mu {1}(dx)\mu {2}(dy)} と表現される。ここで1BはBの定義関数である。これは μ1, μ2 を集合関数として捉えて、変数変換することで求まる。これにより、μ1, μ2 を分布に持つ確率変数 X, Y においてその和 X + Y の分布が畳み込みにあたることが分かる。
多項式の掛け算 多項式の掛け算の結果の係数列は、元の多項式の係数列の線形畳み込みになる。実際
( ∑
i
0 m a i x i ) ( ∑
j
0 l b j x j
)
∑
k
0 m + l ( ∑ i +
j
k a i b j ) x
k
∑
k
0 m + l ( ∑
i
0 k a i b k − i ) x k {\displaystyle \left(\sum {i=0}^{m}a{i}x^{i}\right)\left(\sum {j=0}^{l}b{j}x^{j}\right)=\sum {k=0}^{m+l}\left(\sum {i+j=k}a_{i}b_{j}\right)x^{k}=\sum {k=0}^{m+l}\left(\sum {i=0}^{k}a_{i}b_{k-i}\right)x^{k}} であり、掛け算の結果の係数が a*b となる。
X + Y {\displaystyle S=X+Y} の確率密度関数は畳み込みによって与えられる。X, Y の確率密度関数をそれぞれ f X , f Y {\displaystyle f_{X},f_{Y}} と表記すると、S の密度関数は以下の式で与えられる。
f S ( s
)
∫ − ∞ ∞ f X ( x ) f Y ( s − x ) d x {\displaystyle f_{S}(s)=\int {-\infty }^{\infty }f{X}(x)f_{Y}(s-x)\,dx}
歴史 畳み込み積分が用いられた最初期の例の一つは d’Alembert (1754) Recherches sur différents points importants du système du monde におけるテイラーの定理の導出にある[11]。また
∫ f ( u ) ⋅ g ( x − u ) d u {\displaystyle \int f(u)\cdot g(x-u){\mathit {du}}} の形の式は Lacroix(英語版) Treatise on differences and series[注釈 1] の505頁で用いられ[12]、そのすぐ後にLaplace、Fourier、Poissonらの研究に畳み込み演算が現れている。名称自体が広く用いられるようになるには1950年代あるいは1960年代を待たなければならない。それに先立ってはドイツ語: faltung(「畳み込み」)、composition product(「合成積」)、 superposition integral(「重ね合わせ積分」)などとも呼ばれ、あるいはカールソンの積分 (Carson’s integral)[13] とも言った。現代的な定義がより古い用例に馴染むわけでもないが、それでも早くは1903年ごろには出現している[14][15]。
合成積の特別の場合としての演算
∫ 0 t φ ( s ) ψ ( t − s ) d s ( 0 ≤ t < ∞ ) {\displaystyle \int _{0}^{t}\varphi (s)\psi (t-s){\mathit {ds}}\quad (0\leq t<\infty )} は Volterra (1913) “Leçons sur les fonctions de lignes” にある[16]
脚注 [脚注の使い方] 注釈 ^ 百科辞典シリーズ Traité du calcul différentiel et du calcul intégral, Chez Courcier, Paris, 1797-1800. の最後の三巻 出典 ^ Hörmander 1983, Chapter 1. ^ Stein & Weiss 1971, Theorem 1.3. ^ Beckner, William (1975), “Inequalities in Fourier analysis”, Ann. of Math. (2) 102: 159–182. Independently, Brascamp, Herm J. and Lieb, Elliott H. (1976), “Best constants in Young’s inequality, its converse, and its generalization to more than three functions”, Advances in Math. 20: 151–173. See Brascamp–Lieb inequality ^ Reed & Simon 1975, IX.4. ^ Stein & Weiss 1971, Theorem 3.3. ^ Hörmander 1983, §4.2. ^ Rudin 1962. ^ “mode : {‘full’, ‘valid’, ‘same’}” NumPy. numpy.convolve. NumPy v1.24 docs. 2023-03-23閲覧. ^ “mode : str {‘full’, ‘valid’, ‘same’}” SciPy. scipy.signal.convolve. NumPy v1.10.1 docs. 2023-03-23閲覧. ^ “mode (str, optional) – Must be one of (“full”, “valid”, “same”).” TorchAudio. TORCHAUDIO.FUNCTIONAL.CONVOLVE. TorchAudio 2.0.1 docs. 2023-03-23閲覧. ^ Dominguez-Torres 2010, p. 2. ^ Dominguez-Torres 2010, p. 4. ^ R. N. Bracewell (2005), “Early work on imaging theory in radio astronomy”, in W. T. Sullivan, The Early Years of Radio Astronomy: Reflections Fifty Years After Jansky’s Discovery, Cambridge University Press, p. 172, ISBN 978-0-521-61602-7 ^ John Hilton Grace and Alfred Young (1903), The algebra of invariants, Cambridge University Press, p. 40 ^ Leonard Eugene Dickson (1914), Algebraic invariants, J. Wiley, p. 85 ^ Lothar von Wolfersdorf (2000), “Einige Klassen quadratischer Integralgleichungen”, Sitzungsberichte der Sächsischen Akademie der Wissenschaften zu Leipzig, Mathematisch-naturwissenschaftliche Klasse, volume 128, number 2, 6–7 参考文献 Dominguez-Torres, Alejandro (Nov 2, 2010). “Origin and history of convolution”. 41 pgs. http://www.slideshare.net/Alexdfar/origin-adn-history-of-convolution. Cranfield, Bedford MK43 OAL, UK. Retrieved Mar 13, 2013. Hörmander, L. (1983), The analysis of linear partial differential operators I, Grundl. Math. Wissenschaft., 256, Springer, ISBN 3-540-12104-8, MR0717035 Stein, Elias; Weiss, Guido (1971), Introduction to Fourier Analysis on Euclidean Spaces, Princeton University Press, ISBN 0-691-08078-X Reed, Michael; Simon, Barry (1975), Methods of modern mathematical physics. II. Fourier analysis, self-adjointness, New York-London: Academic Press Harcourt Brace Jovanovich, Publishers, pp. xv+361, ISBN 0-12-585002-6, MR0493420 Rudin, Walter (1962), Fourier analysis on groups, Interscience Tracts in Pure and Applied Mathematics, No. 12, Interscience Publishers (a division of John Wiley and Sons), New York–London, ISBN 0-471-52364-X, MR0152834. 関連項目 逆畳み込み ブラインド・デコンボリューション インパルス応答 – 伝達関数 フーリエ変換 – ラプラス変換 軟化子 基本解 自己回帰移動平均モデル 巡回行列 アナログ信号処理 コーシー積 積和演算 外部リンク 『合成積(畳み込み)の意味と応用3つ』 – 高校数学の美しい物語 Weisstein, Eric W. “Convolution”. mathworld.wolfram.com (英語). convolution – PlanetMath.(英語) Hazewinkel, Michiel, ed. (2001), “Convolution of functions”, Encyclopedia of Mathematics, Springer, ISBN 978-1-55608-010-4 Hazewinkel, Michiel, ed. (2001), “Convolution transform”, Encyclopedia of Mathematics, Springer, ISBN 978-1-55608-010-4 The Joy of Convolution Java Applet を使った視覚的な畳み込みの説明 Examples of sampled impulse responses to be used in convolution reverbs (Fokke Van Saane) Examples of impulse responses synthesized from oscillator spectra, to be used in convolution reverbs (Emmanuel Deruty) BruteFIR; A software for applying long FIR filters to multi-channel digital audio, either offline or in realtime. Freeverb3 Reverb Impulse Response Processor: DSP library with convolution engines. 表話編歴 データ圧縮方式 可逆 エントロピー符号 一進法算術Asymmetric numeral systems(英語版)ゴロムハフマン 適応型(英語版)正準(英語版)MHレンジシャノンシャノン・ファノシャノン・ファノ・イライアス(英語版)タンストール(英語版)ユニバーサル(英語版) 指数ゴロム(英語版)フィボナッチ(英語版)ガンマデルタレーベンシュタイン(英語版) 辞書式(英語版) BPEDeflateLempel-Ziv LZ77LZ78LZFSELZHLZJB(英語版)LZMALZOLZRW(英語版)LZS(英語版)LZSSLZWLZWL(英語版)LZXLZ4ROLZ(英語版)統計型(英語版)BrotliSnappyZstandard その他 BWTCTW(英語版)DeltaDMC(英語版)MTFPAQPPMRLE 音声 理論 ビットレート 平均(ABR)固定(CBR)可変(VBR)コンパンディング畳み込みダイナミックレンジレイテンシ(英語版)標本化定理標本化音質音声符号化サブバンド符号化変換符号化知覚符号化 コーデック A-lawμ-lawACELPADPCMCELPDPCMフーリエ変換LPC LARLSPMDCT音響心理学WLPC 画像 理論 クロマサブサンプリング符号化ツリーユニット(英語版)色空間圧縮アーティファクト解像度マクロブロックピクセルPSNR量子化(英語版)標準テストイメージ(英語版) 手法 チェインコード(英語版)DCTEZW(英語版)フラクタルKLT(英語版)ピラミッド(英語版)RLESPIHT(英語版)ウェーブレット 映像 理論 ビットレート 平均(ABR)固定(CBR)可変(VBR)画面解像度フレームフレームレートインターレース映像品質(英語版) コーデック(英語版) 重複変換(英語版)DCTデブロッキングフィルタ(英語版)フレーム間予測 理論 情報量複雑性非可逆量子化レート歪み(英語版)冗長性情報理論の年表(英語版) カテゴリ: 関数解析学制御工学信号処理フーリエ解析双線型演算数学に関する記事 最終更新 2024年2月8日 (木) 09:52 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。 テキストはクリエイティブ・コモンズ 表示-継承ライセンスのもとで利用できます。追加の条件が適用される場合があります。詳細については利用規約を参照してください。』
a ∼ b ⟺ a − b ∈ I {\displaystyle a\sim b\iff a-b\in I} によって二項関係 ~ を定義すると、これは同値関係になる。
この同値関係による商集合には自然に演算が定義できて、環になることが分かる。
新しく作られたこの環を R のイデアル I による剰余環と呼び、R/I と書く。商環と呼ばれる場合もある。
環の準同型の核はイデアルであり、逆にイデアルはある環準同型の核になる。
群の場合と同じように、環についても準同型定理が成り立つ。
すなわち、
f : R 1 → R 2 が準同型ならば、R 1 の核による剰余環 R 1/Ker f は準同型の像 Im f と同型である。
イデアルと合同関係
環構造と両立する同値関係である合同関係とイデアルとの間には一対一対応が存在する。 即ち、環 R のイデアル I が与えられたとき、x ~ y ⇔ x − y ∈ I で定義される関係 ~ は R 上の合同関係であり、逆に R 上の合同関係 ~ が与えられたとき I = {x : x ~ 0} は R 上のイデアルになる。
イデアルの生成
R を(必ずしも単位的でない)環とする。
R の空でない左イデアルの族の交わりはまた左イデアルになる。
R の任意の部分集合 X に対し、R の X を含む任意のイデアル全ての交わり I はやはり X を含む左イデアルであって、また明らかにそのようなイデアルの中で最小である。
R が単位的ならば、R の部分集合 X が生成する左、右、両側イデアルは内部的な演算によって記述することができる。即ち、X の生成する左イデアルは
{ r 1 x 1 + ⋯ + r n x n ∣ n ∈ N , r i ∈ R , x i ∈ X } {\displaystyle {r_{1}x_{1}+\dots +r_{n}x_{n}\mid n\in \mathbb {N} ,r_{i}\in R,x_{i}\in X}} によって与えられる。
実際これが左イデアルを成し、これらの元が X を含む任意のイデアルに属することは明らかであるから、確かにこれは X の生成する左イデアルである。同様に X の生成する右、両側イデアルはそれぞれ
{ x 1 r 1 + ⋯ + x n r n ∣ n ∈ N , r i ∈ R , x i ∈ X } , {\displaystyle {x_{1}r_{1}+\dots +x_{n}r_{n}\mid n\in \mathbb {N} ,r_{i}\in R,x_{i}\in X},} { r 1 x 1 s 1 + ⋯ + r n x n s n ∣ n ∈ N , r i ∈ R , s i ∈ R , x i ∈ X } {\displaystyle {r_{1}x_{1}s_{1}+\dots +r_{n}x_{n}s_{n}\mid n\in \mathbb {N} ,r_{i}\in R,s_{i}\in R,x_{i}\in X}} によって与えられる。
規約として、0 は0 項からなる和と見做すことにより、イデアル {0} は空集合 ∅ の生成する R のイデアルと考える。
R の左イデアル I が R の有限集合 F によって生成されるならば、イデアル I は有限生成であるという。有限集合で生成される右イデアル、両側イデアルについても同様である。
生成系 X が R の適当な元 a のみからなる単元集合 {a} とすると、X = {a} の生成する各イデアルは簡単に
R
a
{ r a ∣ r ∈ R } , {\displaystyle Ra={ra\mid r\in R},} a
R
{ a r ∣ r ∈ R } , {\displaystyle aR={ar\mid r\in R},} R a
R
{ r 1 a s 1 + ⋯ + r n a s n ∣ n ∈ N , r i ∈ R , s i ∈ R } {\displaystyle RaR={r_{1}as_{1}+\dots +r_{n}as_{n}\mid n\in \mathbb {N} ,r_{i}\in R,s_{i}\in R}} と言う形に書くことができる。
これらは a によって生成される左、右、両側の主イデアル(単項イデアル)と呼ばれる。a の生成する両側イデアルを簡単に (a ) と書くことも広く行われている。
上で述べたことは、単位的でない環 R に対しては少しく変更が必要である。
X の元の有限積和に加えて、任意の自然数 n と X の元 x に対して、x の n-重和 x + x + … + x および (−x) + (−x) + … + (−x) を考えるのである。単位的環 R に対してはこの余分な仮定は過剰な条件になる。
整数環 Z はその任意のイデアルがただ一つの数で生成され(したがって Z は主イデアル整域)、主イデアル nZ の生成元は n または −n のちょうど二つである
(その意味ではイデアルと整数との差異はこの環ではほぼ分からない)。
任意の整域において aR = bR は、適当な単元 u が存在して au = b を満たすことを意味し、逆に任意の単元 u に対して aR = auu−1R = auR が満たされる。
故に可換主イデアル整域において、主イデアル aR を任意の単元 u に対する au が生成することができる。
Z の単元は 1 と −1 の二つのみであるから、これは Z の場合をも含んでいる。
イデアルの演算
I, J を環 R の左(右)イデアルとする。I, J の和を
I + J := { a + b ∣ a ∈ I , b ∈ J } {\displaystyle I+J:={a+b\mid a\in I,\,b\in J}} で定義すると、これは I, J を含む左(右)イデアルのうち最小のものである。
また、I と J の積集合 I ∩ J は I, J に含まれる左(右)イデアルのうち、最大のものである。
しかし、和集合 I ∪ J は必ずしもイデアルにならない。
I と J が共に両側イデアルのとき、それらの積を
I J := { a 1 b 1 + ⋯ + a n b n ∣ n ∈ N , a i ∈ I , b i ∈ J } {\displaystyle IJ:={a_{1}b_{1}+\cdots +a_{n}b_{n}\mid n\in \mathbb {N} ,\,a_{i}\in I,\,b_{i}\in J}} で定義すると、これはまた両側イデアルであり、I ∩ J に含まれる。
積の定義は、単なる I の元と J の元の積ではなく、その有限和全体の集合であることに注意する必要がある。
これらの間の包含関係をまとめると次のようになる。
I J ⊂ I ∩ J ⊂ I , J ⊂ I ∪ J ⊂ I + J {\displaystyle IJ\subset I\cap J\subset I,\,J\subset I\cup J\subset I+J}
ただし、最初の包含関係は、I, J が両側イデアルの場合である。
性質
任意の環 R において {0} および R はイデアルになる。
R が可除環または体ならば、そのイデアルはこれらのみである。
イデアル R は単位イデアル (unit ideal )、イデアル {0} は零イデアル (zero ideal ) と呼ばれ、これらは自明なイデアル (trivial ideal ) と総称される。イデアル I が真のイデアル (proper ideal ) とはそれが R の真の部分集合となること、つまり R と異なるイデアルとなることを言う[1]。 正規部分群が群準同型の核となることとまったく同じように、イデアルを準同型の核として捉えることができる。R の空でない部分集合 A について A が R のイデアルとなる必要十分条件はそれが適当な環準同型の核となることである。 A が R の右イデアルとなる必要十分条件はそれが右 R –加群 RR から別の適当な右 R –加群への適当な加群準同型の核となることである。 A が R の左イデアルとなる必要十分条件はそれが左 R –加群 RR から別の適当な左 R –加群への適当な加群準同型の核となることである。 剰余類とイデアルとの間の関係は、乗法と加法を剰余環へ写せることとして理解することができる。 環が単位元を持つとき、イデアルが真のイデアルとなる必要十分条件は、それが単位元を含まないこと、従って任意の単元を含まないことである。 任意の環において、そのイデアル全体の成す集合は包含関係に関して半順序集合を成す。実はこれはさらに、完備モジュラー束でイデアルの和を結び演算(英語版)に、集合の交わりを交わり演算(英語版)に持つ。このとき自明なイデアルは最小元(零イデアル)と最大元(単位イデアル)を与える。この束は一般には分配束(英語版)にならない。 R の真のイデアル全体の成す集合を考えるのにはツォルンの補題を必要としないが、R が単位元 1 を持つとき「1 を含まないイデアル全体の成す集合」を考えるならば、ツォルンの補題を適用して、帰結として真の極大イデアルの存在を確かめることができる。より明確に言えば、任意の真のイデアルに対して、それを含む極大イデアルが存在することが示せる(極大イデアルの項のクルルの定理を参照)。 環 R をそれ自身左 R-加群と見做すことができるが、このとき R の左イデアルはその R に含まれる左 R-部分加群と見做される。同様に右イデアルも、自身の上の右加群と見た R の右 R-部分加群であり、両側イデアルは R-両側加群としての R の R-部分加群である。R が可換の時はイデアルがそうであるように、これら三種の加群はすべて一致する。 任意のイデアルは擬環である。 環 R のイデアル全体はイデアルの和と積に関して(R を単位元とする)半環になる。 イデアルの種類 以下簡単のため可換環でのみ考えることにして、非可換版の詳しい話は各項に譲る。 イデアルの重要性は、それが環準同型の核となることであり、また剰余環を定義することができることにある。異なる種類の剰余環が定義できると言うことに従って、様々な種類のイデアルが考えられる。
極大イデアル 真のイデアル I が極大イデアル (maximal ideal) であるとは、I を真に含む真のイデアル J が存在しないことを言う。極大イデアルによる商は一般には単純環、可換環の場合は体になる[2]。 極小イデアル ゼロでないイデアルが極小 (minimal) であるとは、それが零でも自身でもないイデアルを含まないことを言う。 素イデアル 真のイデアル I が素イデアル (prime ideal) であるとは、R の元 a, b が ab ∈ I を満たすならば必ず a と b の少なくとも一方が I に属すことを言う。素イデアルによる商は一般には素環、可換の場合は整域となる。 根基イデアルまたは半素イデアル 真のイデアル I が根基 (radical) または半素 (semiprime) であるとは、R の任意の元 a に対してその適当な冪 an が I に属すならば a ∈ I となることを言う。根基イデアルによる商は、一般には半素環であり、可換の場合は被約環になる。 準素イデアル イデアル I が準素イデアル (primary ideal) とは、R の元 a, b が ab ∈ I を満たすとき、a ∉ I ならば bn ∈ I が適当な正の整数 n に対して成り立つことを言う。任意の素イデアルは準素イデアルだが逆は必ずしも成り立たない。半素な準素イデアルは素イデアルである。 主イデアル 単項生成なイデアル。 有限生成イデアル 加群として有限生成なイデアル。 原始イデアル 左単純加群の零化域を左原始イデアルと呼ぶ。右原始イデアルも同様。しかしその名称にも拘らず、左または右原始イデアルは実は常に両側イデアルになる。原始イデアルは素イデアルである。左(または右)原始イデアルによる商は左(または右)原始環と言う。可換環の場合は原始イデアルは極大であり、従って原始環は体になる。 既約イデアル イデアルが既約 (irreducible) であるとは、それがそれを真に含むイデアルの交わりに書けないことを言う。 互いに素なイデアル 2つのイデアル I, J が互いに素 (coprime または comaximal) であるとは I + J = R となることを言う。 正則イデアル(英語版) いくつか異なる流儀がある。 冪零元イデアル(英語版) イデアルが冪零元イデアル (nil ideal) とは、その任意の元が冪零であることを言う。 必ずしも環の中で閉じているわけではないが、「イデアル」と呼ばれる重要な例を二つ挙げる。詳細はそれぞれの項を参照。
分数イデアル:通常は R が商体 K を持つ可換整域である場合に定義される。名前が示唆する通り、分数イデアル (fractional ideal ) は K の特別な性質を持つ R –部分加群である。分数イデアルが完全に R に含まれる時には、真に R のイデアルを成す。 可逆イデアル:通常は、可逆イデアル (invertible ideal) A は分数イデアルであって、別の分数イデアル B で AB = BA = R を満たすものが取れるものと定義される。文献によっては、R が整域ではなく一般の環で、通常のイデアル A, B が AB = BA = R を満たすときに、「可逆イデアル」と言う呼称を用いるものがある。 歴史 通説にしたがってイデアルの成立史を述べる[3][注釈 1]。19世紀のドイツの数学者であるクンマーはフェルマーの最終定理を証明しようと研究していた[注釈 2]。その中で彼は、代数的整数に関しては有理整数の場合のような素因数分解の一意性が必ずしも成り立たないという問題に直面した。
関連項目 合同算術 ネーターの同型定理 ブールの素イデアル定理(英語版) イデアル論(英語版) イデアル商 イデアルノルム(英語版) アルティンイデアル(英語版) 可換環 非可換環 正則イデアル(英語版) イデアル化半群(英語版) 束 (束論) 脚注 [脚注の使い方] 注釈 ^ ここで述べる通説には細部において批判的意見も提出されているが、それについては適宜脚注にて記載する。理想数も参照のこと。 ^ クンマーの主な動機は高次相互法則であり、フェルマーの最終定理ではなかった、という指摘がある。Harold M. Edwards, Fermat’s Last Theorem: A Genetic Introduction to Algebraic Number Theory, p. 79, – Google ブックス ^ クンマーの論文は「理想数」を「イデアル」に置き換えることで容易に読むことができる、という主張もある。Lemmermeyer, Franz (2011). “Jacobi and Kummer’s Ideal Numbers”. p. 2. arXiv:1108.6066。また、アンドレ・ヴェイユによれば、クンマーの論文は驚くほど間違いが少ない。Mazur, Barry (1977). page = 980 “Review: André Weil, Ernst Edward Kummer, Collected Papers”. Bulletin of the American Mathematical Society 83 (5): 976–988. 出典 ^ Lang 2005, Section III.2 ^ 可換単純環は体である。See Lam (2001), p. 39. ^ 高木 1931, pp. 321-323. ^ a b 高木 1931, p. 323. ^ The Story of Algebraic Numbers in the First Half of the 20th Century: From Hilbert to Tate, p. 43, – Google ブックス ^ Dirichlet; Dedekind (1871). Vorlesungen über Zahlentheorie (2 ed.). p. 452 参考文献 Serge Lang (2005). Undergraduate Algebra (Third ed.). Springer-Verlag. ISBN 978-0-387-22025-3 Michiel Hazewinkel, Nadiya Gubareni, Nadezhda Mikhaĭlovna Gubareni, Vladimir V. Kirichenko (2004). Algebras, rings and modules. 1. Springer–Verlag. ISBN 1-4020-2690-0 高木貞治『初等整数論講義』共立社書店、1931年。NDLJP:1174277。 Marco Fontana, Evan Houston, Thomas Lucas: “Factoring Ideals in Integral Domains”, Springer, ISBN 978-3-642-31711-8 (2013). 典拠管理データベース ウィキデータを編集 全般 FAST 国立図書館 フランスBnF dataドイツイスラエルアメリカ カテゴリ: 環論代数的整数論数学に関する記事 最終更新 2024年2月20日 (火) 12:52 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。 テキストはクリエイティブ・コモンズ 表示-継承ライセンスのもとで利用できます。追加の条件が適用される場合があります。詳細については利用規約を参照してください。』
最もよく知られた環の例は整数全体の成す集合 Z に、通常の加法と乗法を考えたものである。すなわち Z は所謂「環の公理系」と呼ばれる種々の性質を満たす。
整数の集合における基本性質
加法 乗法
演算の閉性 a + b は整数 a × b は整数
結合性 a + (b + c) = (a + b) + c a × (b × c) = (a × b) × c
可換性 a + b = b + a a × b = b × a
中立元の存在性 a + 0 = a (零元) a × 1 = a (単位元)
反数の存在性 a + (−a) = 0
分配性 a × (b + c) = (a × b) + (a × c), および (a + b)× c = a × c + b × c 乗法が可換律を満たすから、整数の全体は可換環である。
厳密な定義
環とは、集合 R とその上の二つの二項演算、加法 +: R × R → R および乗法 ∗: R × R → R の組 (R,+,∗) で、「環の公理系」と呼ばれる以下の条件を満たすものを言う[3](環の公理系にはいくつか異なる流儀があるが、それについては後で触れる)。
加法群:(R, +) はアーベル群である
加法に関して閉じている:任意の a, b ∈ R に対して a + b ∈ R が成り立つ[注 2]。 加法の結合性:任意の a, b, c ∈ R に対して (a + b) + c = a + (b + c) が成り立つ。 加法単位元(零元)の存在:如何なる a ∈ R に対しても共通して 0 + a = a + 0 = a を満たす 0 ∈ R が存在する。
加法逆元(反元、マイナス元)の存在:各 a ∈ R ごとに a + b = b + a = 0 を満たす b ∈ R が存在する。
加法の可換性:任意の a, b ∈ R に対して a + b = b + a が成立する。
乗法半群:(R,∗) はモノイド(あるいは半群)である
乗法に関して閉じている:任意の a, b ∈ R に対して a ∗ b ∈ R が成り立つ[注 2]。
乗法の結合性:任意の a, b, c ∈ R に対して (a ∗ b) ∗ c = a ∗ (b ∗ c) が成立する。 乗法に関する単位元を持つ[注 1]。
分配律:乗法は加法の上に分配的である
左分配律:任意の a, b, c ∈ R に対して a ∗ (b + c) = (a ∗ b) + (a ∗ c) が成り立つ。
右分配律:任意の a, b, c ∈ R に対して (a + b) ∗ c = (a ∗ c) + (b ∗ c) が成り立つ。
が成り立つものをいう。乗法演算の記号 ∗ は普通省略されて、a ∗ b は、ab と書かれる。
よく知られた整数全体の成す集合 Z, 有理数全体の成す集合 Q, 実数全体の成す集合 R あるいは複素数全体の成す集合は通常の加法と乗法に関してそれぞれ環を成す。
1880年代にデデキントが環の概念を導入し[2]、1892年にヒルベルトが「数環」(Zahlring) という用語を造って「代数的数体の理論」(Die Theorie der algebraischen Zahlkörper, Jahresbericht der Deutschen Mathematiker Vereinigung, Vol. 4, 1897.) を発表した。
0 for all but finitely many i ∈ N } {\displaystyle S={{(f_{i})}{i\in \mathbb {N} }:f{i}\in R{\text{ and }}f_{i}=0{\text{ for all but finitely many }}i\in \mathbb {N} }}とおく。ただし、ここでは非負整数(特に 0 を含む)の意味で N を用いているものと約束する。S の演算 +S : S × S → S および ·S : S × S → S を、a = (ai)i∈N および b = (bi)i∈N を S の任意の元として、 a + S
b
( a i + R b i ) i ∈ N a ⋅ S
b
( ∑
j
0 i a j ⋅ R b i − j ) i ∈ N {\displaystyle {\begin{aligned}a+{S}b&=(a{i}+{R}b{i}){i\in \mathbb {N} }\a\cdot {S}b&={\Bigl (}\textstyle \sum \limits {j=0}^{i}a{j}\cdot {R}b{i-j}{\Bigr )}_{i\in \mathbb {N} }\end{aligned}}} と定めると、(S, +S, ·S) は環となる。これを環 R 上の多項式環と呼ぶ。
S の元 (0, 1, 0, 0, …) を X とすれば、多項式環としての S は R[X] と書くのが通例である。これにより、S の元 f = (fi) は
f
∑ c ∈ C f c ⋅ S X c ,
C
{ i ∈ N : f i ≠ 0 } {\displaystyle f=\textstyle \sum \limits {c\in C}f{c}\cdot {S}X^{c},\quad C={i\in \mathbb {N} :f{i}\neq 0}}と R に係数を持つ多項式の形に書ける。
したがって S は R 上の X を不定元とする多項式全体に、標準的なやり方で加法と乗法を定義したものと見なすことができる。
通常はこれを同一視して、ここでいう S を R[X] と書いて、R における演算も S における演算も特に識別のための符牒を省略する。
行列環 →詳細は「行列環」を参照
r を固定された自然数とし、(R, +R, ·R) を環として、 M r ( R
)
{ ( f i j ) i , j : f i j ∈ R for every i , j ∈ { 1 , 2 , 3 , … , r } } M_{r}(R)={{(f_{ij})}{i,j}:f{ij}\in R{\text{ for every }}i,j\in {1,2,3,\dots ,r}} とおく。演算 +M : Mr(R) × Mr(R) → Mr(R) および ·M : Mr(R) × Mr(R) → Mr(R) を、任意の元 a = (aij)i,j, b = (bij)i,j に対して、 a + M
b
( a i j + R b i j ) i , j a ⋅ M
b
( ∑
k
1 r a i k ⋅ R b k j ) i , j {\displaystyle {\begin{aligned}a+{M}b&=(a{ij}+{R}b{ij}){i,j}\a\cdot {M}b&={\Bigl (}\textstyle \sum \limits {k=1}^{r}a{ik}\cdot {R}b{kj}{\Bigr )}_{i,j}\end{aligned}}} で定めると (Mr(R), +M, ·M) は環となる。これを R 上の r×r 行列環あるいは r次正方行列環という。
環の遍在性
極めて様々な種類の数学的対象が、何らかの意味で付随する環を考えることによって詳しく調べられる。
位相空間のコホモロジー環
任意の位相空間 X に対して、その整係数コホモロジー環
H ∗ ( X , Z
)
⨁
i
0 ∞ H i ( X , Z ) {\displaystyle H^{*}(X,\mathbb {Z} )=\bigoplus {i=0}^{\infty }H^{i}(X,\mathbb {Z} )} を対応させることができる。これは次数付き環になっている。ホモロジー群 H i ( X , Z ) {\displaystyle H{i}(X,\mathbb {Z} )} も定義され(実際にはこちらの方が先に定まるのだが)、球面とトーラスのような点集合位相ではうまい具合に区別することが難しい位相空間の区別に非常に有効な道具として利用される。
すなわち、和と積をとる写像 + : X × X → X , {\displaystyle +:X\times X\to X,} ⋅ : X × X → X {\displaystyle \cdot :X\times X\to X}がともに連続写像となる(ただし、X × X には積位相を入れるものとする)。
したがって明らかに、任意の位相環は加法に関して位相群である。
実数全体の成す集合 R は通常の環構造と位相に関して位相環である。 二つの位相環の直積は直積環の構造と積位相に関して位相環になる。
可換環 →詳細は「可換環」を参照
環は加法に関しては交換法則が成り立つが、乗法に関しては可換性は要求されない。
乗法に関しても交換法則が成り立つならば可換環という[注 5]。
すなわち、環 (R, +, · ) に対して、(R, +, · ) が可換環であるための必要十分条件は R の任意の元 a, b に対して a · b = b · a が成り立つことである。
言い換えれば、可換環 (R, +, · ) は乗法に関して可換モノイドでなければならない。
整数全体の成す集合は通常の加法と乗法に関して可換環を成す。
可換でない環の例は、n > 1 として、非自明な体 K 上の n次正方行列の成す環で与えられる。
特に n = 2 で K = R のときを考えれば、 [ 1 1 0 1 ] ⋅ [ 1 1 1 0
R は整域である。 R の零元でも単元でもない元は、有限個の既約元の積に書ける。 各 ai および bj を R の既約元として ∏
i
1 n a
i
∏
j
1 m b j {\displaystyle \textstyle \prod \limits {i=1}^{n}a{i}=\prod \limits {j=1}^{m}b{j}} と書けるならば n = m かつ、適当な番号の付け替えによって、bi = aiui が全ての i について成立させることができる。
ただし、ui は R の適当な単元である。
2番目の条件は R の「非自明」な元の既約元への分解を保証するものであり、3番目の条件によってそのような分解は「単元を掛ける違いを除いて」一意的である。
一意性について、単元を掛けてもよいという弱い形を採用するのは、そうしないと有理整数環 Z が UFD とならないからというのが理由のひとつとしてある(単元を掛けてはいけないとすると (−2)2 = 22 = 4 は 4 の「相異なる」二つの分解を与えるが、−1 と 1 は Z の単元だから、二つの分解は同値になる)。
ゆえに、整数環 Z が UFD となるというのは、自然数についての(本来の)算術の基本定理からの簡単な帰結である。
^ a b 乗法に関しては半群となることのみを課す(乗法単位元の存在を要求しない)こともある。#定義に関する注意を参照 ^ a b 二項演算の定義に演算の閉性を含める場合も多く、その場合二項演算であるといった時点で閉性も出るから、特に断らないことも多い。 ^ 自明環の意味で「零環」という語を用いることもあるが、零環は一般に「任意の積が 0 に潰れている(擬)環」の意味でも用いるので、ここでは明確化のために自明環を零環と呼ぶのは避けておく。 ^ 逆に任意の環は適当なアーベル群の自己準同型環における部分環として実現できる[8]。これは群論におけるケイリーの定理の環論的類似である。 ^ 文献によっては、可換性まで環の公理に含めて、単に環といえば可換環のことを指しているという場合がある。 出典 ^ Herstein 1964, §3, p.83 ^ a b c d The development of Ring Theory ^ Herstein 1975, §2.1, p.27 ^ Herstein, I. N. Topics in Algebra, Wiley; 2 edition (June 20, 1975), ISBN 0-471-01090-1. ^ Joseph Gallian (2004), Contemporary Abstract Algebra, Houghton Mifflin, ISBN 9780618514717 ^ Neal H. 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Mathematical Surveys and Monographs, 65. American Mathematical Society, Providence, RI, 1999. xxxiv+422 pp. ISBN 0-8218-0993-8 Itô, K. (Ed.). “Rings.” §368 in Encyclopedic Dictionary of Mathematics, 2nd ed., Vol. 2. Cambridge, MA: MIT Press, 1986 Kleiner, I. “The Genesis of the Abstract Ring Concept.” Amer. Math. Monthly 103, 417-424, 1996 Renteln, P. and Dundes, A. “Foolproof: A Sampling of Mathematical Folk Humor.” Notices Amer. Math. Soc. 52, 24-34, 2005 Singmaster, D. and Bloom, D. M. “Problem E1648.” Amer. Math. Monthly 71, 918-920, 1964 Van der Waerden, B. L. A History of Algebra. New York: Springer-Verlag, 1985 Wolfram, S. A New Kind of Science. Champaign, IL: Wolfram Media, p.1168, 2002 関連項目 環論 環の圏 環上の多元環 代数的構造 中国の剰余定理 半環 環のスペクトル
G を生成系とする R-係数の形式的な(「有限」)線型結合の全体(G 上の R-自由加群、特に R が体のときは自由ベクトル空間)を R[G] と書く(RG とも書かれる[1])。即ち、任意の元 x ∈ R[G] は
x
∑ g ∈ G a g g ( a g ∈ R ) {\displaystyle x=\sum {g\in G}a{g}\,g\quad (a_{g}\in R)} の形に書ける。
ただし、右辺の和において有限個の例外を除く全ての g に対して ag = 0 でなければならない。G の元と R[G] の元との区別を明確にする場合には、各元 g ∈ G に対応する生成元を eg などと書いて
x
∑ g ∈ G a g e g {\displaystyle x=\sum {g\in G}a{g}\,e_{g}} のようにも書く[2][注 2]。この集合 R[G] 上に項ごとの和
( ∑ g ∈ G a g g ) + ( ∑ g ∈ G b g g ) := ∑ g ∈ G ( a g + b g ) ⋅ g {\displaystyle (\sum {g\in G}a{g}\,g)+(\sum {g\in G}b{g}\,g):=\sum {g\in G}(a{g}+b_{g})\cdot g} を加法とし、G の積を線型に拡張した
( ∑ g ∈ G a g g ) ( ∑ g ∈ G b g g ) := ∑ g , h ∈ G ( a g b h ) ⋅ g
h
∑ g ∈ G ( ∑ h ∈ G a h b h − 1 g ) ⋅ g {\displaystyle (\sum {g\in G}a{g}\,g)(\sum {g\in G}b{g}\,g):=\sum {g,h\in G}(a{g}b_{h})\cdot gh=\sum {g\in G}(\sum {h\in G}a_{h}b_{h^{-1}g})\cdot g} を乗法とする環を成し、さらにスカラー倍
r ⋅ ( ∑ g ∈ G a g g ) := ∑ g ∈ G ( r a g ) ⋅ g {\displaystyle r\cdot (\sum {g\in G}a{g}\,g):=\sum {g\in G}(ra{g})\cdot g} により R 上の多元環(線型環)を成す。この多元環 R[G] を G 上の R-係数の群環、G で生成される R 上の群環などと呼ぶ。
(離散位相に関して)群 G 上の R-値コンパクト台付き連続函数全体の成す空間 Cc(G; R) の元 f は、群 G から可換環 R への写像 f: G → R であって、有限な台を持つ(つまり有限個の例外を除き f(g) = 0 (g ∈ G) となる)ようなものである。点ごとの和 ( f + h ) ( g ) := f ( g ) + h ( g ) ( g ∈ G ) {\displaystyle (f+h)(g):=f(g)+h(g)\quad (g\in G)} と畳み込み ( f ∗ h ) ( g ) := ∑ γ ∈ G f ( γ ) h ( γ − 1 g ) {\displaystyle (f\ast h)(g):=\sum _{\gamma \in G}f(\gamma )h(\gamma ^{-1}g)} およびスカラー倍 ( r f ) ( g ) := r ( f ( g ) ) ( r ∈ R ) {\displaystyle (rf)(g):=r(f(g))\quad (r\in R)} のもと Cc(G; R) は R 上の多元環となる。 G の各元 g に対して、一点集合 {g} の R-値指示函数(ディラックのデルタ函数)
δ g ( h ) := {
1
1 R (
h
g )
0
0 R ( h ≠ g ) {\displaystyle \delta {g}(h):={\begin{cases}1=1{R}&(h=g)\0=0_{R}&(h\neq g)\end{cases}}} を考えるとき、Cc(G; R) は R 上の標準基底として {δg | g ∈ G} を持ち、
R [ G ] → C c ( G ; R ) ; ∑ g ∈ G a g g ↦ ∑ g ∈ G a g δ g {\displaystyle R[G]\to C_{c}(G;R);\;\sum {g\in G}a{g}\,g\mapsto \sum {g\in G}a{g}\delta _{g}} は多元環の同型である。しばしばここでいう Cc(G; R) を(1. の場合と同じく) R[G] などとも書き、G の R 上の群環と呼ぶ[2]。
G が有限群ならば、この Cc(G; R) は G から R への写像全体の成す空間 RG (= R(G) = Hom(G, R)) に他ならない。これは無限群の場合には一般には成り立たないが、それでも以下に示すような意味で群環 R[G] と写像空間 RG は互いに双対の関係にある:
群環の元
x
∑ g ∈ G a g g {\displaystyle x=\sum {g\in G}a{g}\,g} と R-値写像 f: G → R の対に対して、内積
( x , f
)
∑ g ∈ G a g f ( g ) ∈ R {\displaystyle (x,f)=\sum {g\in G}a{g}f(g)\quad \in R} が矛盾なく定まる(右辺が実質有限和であることに注意せよ)。
例 位数 3 の巡回群 G = ⟨ g | g3 = 1 ⟩ を取り、ω = exp(2πi/3) とおく。 このとき
e 1 C G ⊕ e 2 C G ⊕ e 3 C G ≅ ( C 0 0 0 C 0 0 0 C ) {\displaystyle \mathbb {C} G=e_{1}\mathbb {C} G\oplus e_{2}\mathbb {C} G\oplus e_{3}\mathbb {C} G\cong {\begin{pmatrix}\mathbb {C} &0&0\0&\mathbb {C} &0\0&0&\mathbb {C} \end{pmatrix}}} 群環上の加群 →詳細は「群上の加群」を参照 環 K 上の群環 K[G] を環と見るとき、環 K[G] 上の加群は、群 G 上の加群と呼ばれる。群 G の表現は G-加群の言葉で読みかえることができる。特に
単純 G-加群は G-既約表現のことである。 G の表現空間が K-加群 V1, V2 であるとき、表現の間の準同型は、G-加群 V1, V2 の間の K-線型準同型のことであり、その全体は HomG K(V1, V2) などで表される。 古典的な結果として、もともとは係数環 K が複素数体 C で、群 G が有限群の場合に得られたものだが、そのような条件のもとで群環 K[G] が半単純環となることを示すことができて、それは有限群の表現において深い意味を持つ事実である。より一般に、マシュケの定理と呼ばれる以下の定理が成り立つ:
定理 (Maschke) 有限群 G の位数が体 F の標数と互いに素なとき、あるいは標数 0 のとき、群環 FG は半単純である。 特に、群環 C[G] が半単純であることは、それが C に成分をとる行列環の直和として理解することができることを意味する。
G が有限アーベル群ならば、群環は可換環であり、その構造は 1 の冪根を用いて容易に記述することができる。係数環 R が標数 p の体で、その素数 p が有限群 G の位数を割るならば、群環は半単純でなく非自明なジャコブソン根基を持つ。このことは、そのような条件下でのモジュラー表現論における対応する主題において重要な意味を示す。
性質 基本性質 環 R が乗法単位元 1 = 1R を持つとき(群 G の単位元は 1 = 1G と書くことにする)、群環 R[G] は R に環同型な部分環を持ち、またその単元群は G に群同型な部分群を含む。実際、
R → R [ G ] ; r ↦ r ⋅ 1 G ( or r ↦ r δ 1 G ) {\displaystyle R\to R[G];r\mapsto r\cdot 1_{G}\quad ({\text{or }}r\mapsto r\delta {1{G}})} は単射環準同型であり、同様に
G → ( R [ G ] ) × ; g ↦ 1 R ⋅ g ( or g ↦ δ g ) {\displaystyle G\to (R[G])^{\times };\;g\mapsto 1_{R}\cdot g\quad ({\text{or }}g\mapsto \delta _{g})} は乗法群に関する単射群準同型になる。特に、1R⋅1G は R[G] の乗法単位元である。
R が可換環であり、かつ G がアーベル群であるとき、群環 R[G] は可換多元環である。 H が G の部分群ならば、群環 R[H] は R[G] の部分環である。同様に、S が R の部分環であるとき、群環 S[G] は R[G] の部分環である。 群環の中心 →「類函数」も参照 環 K[G] の積の定義の仕方から、その環としての中心は G 上で定義されたK-値類函数(つまり、G の各共軛類上で定数となる函数)の全体に一致する。これは配置集合 KG の部分線型空間で、各共軛類 c ∊ C の指示函数の族 (1c)c∊C を標準基底に持つ(これらの指示函数は KG の標準基底によって1c = ∑s∊cδs と分解できる)。
また、KG 上の非退化な対称双線型形式(内積)を
( f ∣ h
)
1 g ∑ s ∈ G f ( s ) h ( s − 1 ) {\displaystyle (f\mid h)={\frac {1}{g}}\sum _{s\in G}f(s)h(s^{-1})} で定義することができる。
既約指標の全体はこの類函数の空間の正規直交基底を成す これにより、(この部分空間の次元を考えて)
既約表現の(同型類の)総数は、群の共軛類の数 h に等しい ゆえに、群 G の K 上の既約表現 (S1, ρ1), … (Sh, ρh) が(同型を除いて)存在して、それらの指標 χ1, …, χh が群環 K[G] の中心の基底を成す。
アルティン–ウェダーバーンの定理 前節の記号を引き続き用いて以下の基本的な定理が直接的に示せる。
群環 K[G] は群 G の h-個の既約表現 Si の K-自己準同型環 EndK(Si) の直和に同型である: K [ G ] ≃ ⨁
i
1 h End K ( S i ) . {\displaystyle K[G]\simeq \bigoplus {i=1}^{h}\operatorname {End} {K}(S_{i}).} さらに K が代数閉体と仮定すれば、有限次元半単純環に関するアルティン・ウェダーバーンの定理から同じ結果が得られる。 群環 K[G] は KG の部分空間であるから、各Si の次元を di とすれば、群環自身の次元は
g
∑
i
1 h d i 2 {\displaystyle g=\sum {i=1}^{h}d{i}^{2}} で与えられる(K が正標数の場合はfr:Représentation régulière#Identités remarquablesを見よ)。 K[G] の元 f が中心に属するための必要十分条件は、その成分が Si 上の相似拡大 (homothety) となることである。さらに類函数に関する結果を用いれば、その Si における相似比 λi が λ
i
1 d i ∑ s ∈ G f ( s ) χ i ( s ) {\displaystyle \lambda {i}={\frac {1}{d{i}}}\sum {s\in G}f(s)\chi {i}(s)} で与えられる。 正則表現 →詳細は「正則表現 (数学)」を参照 群 G の正則表現 λ は、既に述べた対応により自然に群環 K[G] 上の左 K[G]-加群の構造に対応する。前節で述べた群環の分解に従えば:
G の正則表現は G の既約表現 ρi をその次数 di と同じ数だけ重複したものの直和 ( K G , λ ) ≃ ⨁
i
1 h d i ( S i , ρ i ) {\displaystyle (K^{G},\lambda )\simeq \bigoplus {i=1}^{h}d{i}(S_{i},\rho _{i})} に分解される。即ち、この λ に付随する半単純加群の等型成分(英語版)は d i ( S i , ρ i
)
( S i , ρ i ) ⊕ ⋯ ⊕ ( S i , ρ i ) ⏟ d i summand ( d
応用 フロベニウス相互律 →詳細は「フロベニウス相互律(フランス語版)」を参照 群環の構造を用いるよい例としてフロベニウス相互律を挙げられる。これは G-加群の誘導表現(英語版)を構成する方法とも理解される。有限群 G の部分群 H と K[H]-加群 W に対して、W から誘導される G-加群とは
V ≃ K [ G ] ⊗ K [ H ] W {\displaystyle V\simeq K[G]\otimes _{K[H]}W} のことを言う(⊗K[H] は K[H]-加群としてのテンソル積である)。この誘導表現は、H-加群 W の(環 K[H] から K[G] への)係数拡大に対応する。H が G の正規部分群のときは、この誘導表現は H による半直積に同値である。
フロベニウス相互律は、誘導表現の指標に関する内積を計算するための便法を与える。ψ を H の表現 θ としての H-加群 W の指標とし、χ を G の表現 ρ の指標とする。ψ の G への誘導表現の指標を Ind ψ、ρ の H への制限の指標を Res χ とすれば、フロベニウス相互律とは
⟨ Ind H G ψ ∣ χ ⟩
G
⟨ ψ ∣ Res H G χ ⟩ H {\displaystyle \langle \operatorname {Ind} {H}^{G}\psi \mid \chi \rangle {G}=\langle \psi \mid \operatorname {Res} {H}^{G}\chi \rangle {H}} なる関係が成り立つことを主張するものである。これはそれぞれの付随する K-多元環準同型の空間の同型 HomG(Ind θ, ρ) ≅ HomH(θ, Res ρ) を構成することで(次元を見れば)示される。
代数的整数 →詳細は「整元」を参照 u ∈ K[G] の標準基底に関する座標成分が全てℤ 上で整ならば、u は ℤ 上整である。 実際に標準基底としての G の元 δs は ℤ 上整であり、これらの生成する有限生成 ℤ-加群は実際には ℤ-多元環を成す。
前節からの記号を引き続き使用して、以下が成り立つ:
u が K[G] の中心に属する元で、その座標成分が ℤ 上整ならば以下の K の元 λ
i
1 d i ∑ s ∈ G u s χ i ( s ) {\displaystyle \lambda {i}={\frac {1}{d{i}}}\sum {s\in G}u{s}\chi _{i}(s)} もまた ℤ 上整である。 実際、上記の節によれば、この数は Si 上での相似比 ρi(u) である。先に掲げた命題によりこの相似比は ℤ 上の整元であり、相似拡大の結合は多元環の準同型となるから、もとの数もそうである。
K が標数 0 ならば以下の性質が導かれる:
既約表現の次数 di は群の位数 g を割り切る。 可換群上の調和解析 →詳細は「有限可換群上の調和解析」を参照 有限群 G がアーベル群ならば、その双対群もまた有限で G に(自然でない)同型である。故に(複素係数)群環上の調和解析の道具は有効で、フーリエ変換や畳み込みを定義し、パーシヴァルの等式、プランシュレルの定理、ポントリャーギン双対性などの定理を適用することができる。
注釈 ^ これは少々紛らわしいが、任意の群環は係数環の中心上の群多元環となるから、その文脈で何を係数環としているかが明らかならば混乱の虞は無いであろう。 ^ 特に群 G が加法的に書かれている場合、群環における乗積表は eg⋅eh = eg+h から得られるが、群の元 g を生成元 eg と同一視する記法では、群の演算と群環の形式和の区別が紛らわしい。 出典 ^ Polcino Milies & Sehgal 2002, p.129 and 131. ^ a b Polcino Milies & Sehgal 2002, p. 131. 参考文献 Alperin, J. L.; Bell, Rowen B. (1995). Groups and Representations. Graduate Texts in Mathematics. 162. Springer-Verlag. doi:10.1007/978-1-4612-0799-3. ISBN 0-387-94525-3. MR1369573. Zbl 0839.20001 N. Bourbaki, Éléments de mathématique, Algèbre, chap. VIII Curtis, Charles W.; Reiner, I. (2006) [1962]. Representation Theory of Finite Groups and Associative Algebras. AMS Chelsea Publishing. doi:10.1090/chel/356. ISBN 0-8218-4066-5. MR2215618. Zbl 1093.20003 Hall, Marshall, Jr. [in 英語]. The Theory of Groups (英語). Lang, Serge. Algèbre. Passman, Donald S. (1985) [1977]. The Algebraic Structure of Group Rings. Robert E. Krieger Publishing. ISBN 0-89874-789-9. MR0798076. Zbl 0654.16001 Polcino Milies, C.; Sehgal, Sudarshan K. (2002). An Introduction to Group Rings. Kluwer Academic Publishers. doi:10.1007/978-94-010-0405-3. ISBN 1-4020-0238-6. MR1896125. Zbl 0997.20003 Serre, Jean-Pierre. Représentations linéaires des groupes finis. 関連項目 モノイド代数 フロベニウス代数 外部リンク A. A. Bovdi (2001), “Group algebra”, in Hazewinkel, Michiel, Encyclopedia of Mathematics, Springer, ISBN 978-1-55608-010-4 Weisstein, Eric W. “Group Ring”. mathworld.wolfram.com (英語). Barile, Margherita; Moslehian, Mohammad Sal; Weisstein, Eric W. “Group Algebra”. mathworld.wolfram.com (英語). group ring – PlanetMath.(英語) group algebra in nLab カテゴリ: 群の表現論調和解析多元環論数学に関する記事 最終更新 2021年10月12日 (火) 00:18 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。 テキストはクリエイティブ・コモンズ 表示-継承ライセンスのもとで利用できます。追加の条件が適用される場合があります。詳細については利用規約を参照してください。』
環 R 上の左 R-加群もしくは R-左加群とは、アーベル群 (M, +) とスカラー乗法と呼ばれる作用 R × M → M の組であって、その作用(通常は、r ∈ R と x ∈ M に対して x のスカラー r-倍を単に文字を併置して rx と記す)は、r, s ∈ R, x, y ∈ M は任意として、条件
r ( x + y
)
r x + r y , {\displaystyle r(x+y)=rx+ry,} ( r + s )
x
r x + s x , {\displaystyle (r+s)x=rx+sx,} ( r s )
x
r ( s x ) , {\displaystyle (rs)x=r(sx),} 1 R
x
x {\displaystyle 1_{R}x=x} を満足するものでなければならない
(最後の条件は R が乗法単位元を持つときで、それを 1R で表している。環が単位的であることを仮定しない文脈では、R-加群の定義においてこの最後の条件も課されず、特にこの条件をも満足することで定まる構造を単位的左 R-加群、単型 R-左加群などと呼んで区別する。本項では用語の一貫性を図るため、特に断りの無い場合は環も加群も単位的であると仮定する)。
しばしば、スカラーの作用を fr のような形に書くこともあり、もちろん fr(x) = rx なのだが、このように書くと f を R の各元 r を対応する作用素 fr へ移す写像とみることもできて、たとえば先ほどの加群の公理の最初の条件は fr が M 上の自己準同型となることを述べていて、残りの条件は f が R から自己準同型環 End(M) への環準同型となることを要請するものになっている。
通常は演算を省略して、単に「左 R-加群 M」とか、係数環を明示するために RM のように記す。環の作用の向きだけ右からに変更して(つまり M × R → M の形のスカラー乗法があって、左加群の公理でスカラーを左に書いていたところを、スカラー r や s を x, y の右側に書くようにして)、同様に右 R-加群 M, MR が定義される。
R を勝手な環とし n を自然数とするとき、直積 Rn は成分ごとの演算で R 上の左および右加群となる。
したがって特に n = 1 のとき R 自身は環の乗法をスカラー乗法として R-加群であり、これを(左/右)正則加群と呼ぶ。n = 0 とすれば、R の加法単位元のみからなる自明な R-加群 {0} が得られる。
これらの加群は自由加群と呼ばれ、R が(たとえば可換環や体のような)不変基底数を持つ環ならば、直積の個数 n が自由加群の階数となる。
S が空でない集合で M が左 R-加群、MS を写像 f: S → M 全体の成す集合とするとき、MS における加法とスカラー倍を (f + g)(s) = f(s) + g(s) および (rf)(s) = rf(s) で定めると MS は左 R-加群となる。
右 R-加群の場合も同様。特に R が可換ならば R-加群の準同型 h: M → N の全体は R-加群になる(実は NM の部分加群となる)。
X が可微分多様体のとき、X 上の実数に値をとる滑らかな函数の全体は環 C∞(X) を成す。X 上で定義される滑らかなベクトル場全体の成す集合は C∞(X) 上の加群を成す。
X 上のテンソル場の全体や微分形式の全体についても同様である。
もっと一般に、任意のベクトル場の切断の全体は C∞(X) 上の射影加群であり、スワンの定理により、逆に任意の射影加群はあるベクトル束の切断全体の成す加群に同型になる。 すなわち、C∞(X)-加群の圏と X 上のベクトル束の圏は同値である。
成分が実数の n-次正方行列の全体は環を成す。
それを R とし、n-次元ユークリッド空間 Rn(元は縦ベクトルで考える)に対して行列の乗法によって R の作用をさだめれば、これは左 R-加群となる。
R を任意の環、I を R の任意の左イデアルとすると、I は R 上の左加群である。もちろん同様に右イデアルは右加群である。
R を環とし、環 Rop を R から台となる集合と加法はそのままで乗法だけを逆にして得られる環(反対環)とする。つまり、R において ab = c ならば Rop において ba = c である。このとき、任意の左 R-加群 M はそのまま右 Rop-加群と見ることができ、R 上の任意の右加群は Rop 上の左加群と考えることができる。
部分加群と準同型
M を左 R-加群、N を M の部分群とするとき、N が M の部分加群 (submodule) あるいはより明示的に R-部分加群(または部分 R-加群)であるとは、任意の r ∈ R と n ∈ N に対して積 rn がふたたび N に属するときに言う。M が右加群の場合は nr が N に属するとき同様に部分加群という。
与えられた加群 M の部分群全体の成す集合は、ふたつの二項演算 “+” および “∩” に関して束を成しモジュラー法則
M の部分加群 U, N1, N2 で N1 ⊂ N2 が成り立つとき、 (N1 + U) ∩ N2 = N1 + (U ∩ N2) が成立する を満たす。
M および N が左 R-加群のとき、写像 f: M → N が R-加群の準同型であるとは、任意の m, n ∈ M, r, s ∈ R に対して
f ( r m + s n
)
r f ( m ) + s f ( n ) {\displaystyle f(rm+sn)=rf(m)+sf(n)} が満たされるときに言う。ほかの数学的対象に関する準同型が対象の構造を保つのと同じく、加群の準同型も加群の構造を保つ。
有限生成加群 加群 M が有限生成あるいは有限型であるとは、M の有限個の元 x1,…,xn で、それらの R-係数線型結合によって M の任意の元が書き表されるときに言う。 巡回加群 加群が巡回加群であるとは、それが唯一つの元で生成されるときにいう。 自由加群 自由加群は基底を持つ加群である。これは係数環 R のいくつかのコピーの直和に同型である加群といっても同じである。自由加群はベクトル空間とかなり同じように振舞う。 射影加群 射影加群は自由加群の直和因子であり、自由加群とよい性質をたくさん共有している。 入射加群 入射加群は射影加群の双対として定義される。 平坦加群 平坦加群はテンソル積で単射が保たれるような加群である。 単純加群 単純加群 S とは {0} と S 自身しか部分加群を持たないような {0} でない加群のことである。単純加群はしばしば既約加群とも呼ばれる[1]。 半単純加群 半単純加群は単純加群の直和である。 直既約加群 直既約加群とは、{0} でないふたつの部分加群の直和に書くことができない加群のことをいう。任意の既約加群は直既約加群だが逆は必ずしも成立しない。 忠実加群 忠実加群 M とは、R の 0 でない各元 r に対して r の M への作用が自明でない(すなわち、M の元 x で rx ≠ 0 となるものがある)ときに言う。これは M の零化域 (annihilator) が零イデアルであるときといっても同じである。 ネーター加群 ネーター加群は任意の部分加群が有限生成となる加群である。同じことだが、ネーター加群の部分加群からなる任意の昇鎖列は有限の長さで止まる。 アルティン加群 アルティン加群とは、その部分加群からなる任意の降鎖列が有限の長さで止まるような加群をいう。 次数加群 次数付き加群とは、直和分解 M = ⊕x Mx を持つ、次数付き環 R = ⊕x Rx 上の加群であって、任意の添字 x, y に対して RxMy ⊂ Mx+y と成るようなものを言う。
表現論との関係
M を左 R-加群とすると、R の元 r の作用が x を rx へ(右加群の場合は xr へ)うつす写像として定まり、その写像はアーベル群 (M, +) 上の群の自己準同型となる必要がある。EndZ(M) で表される、M の群自己準同型の全体は、加法と合成に関して環となるが、R の元 r にその作用を対応させることにより、R から EndZ(M) への環準同型が定義される。
このような環準同型 R → EndZ(M) は M における R の表現 (representation) と呼ばれる。左 R-加群を定義するもう一つの同値な方法は、アーベル群 M にその上の環 R の表現を考えることである。
表現が忠実 (faithful) であるとは、写像 R → EndZ(M) が単射となることをいう。加群の言葉で言えば、これは R の元 r が M のすべての元 x に対して rx = 0 を満たすならば r = 0 と成ることを言っている。任意のアーベル群は有理整数環または適当な剰余類環 Z/nZ 上の忠実加群である。
一般化
任意の環 R をただひとつの対象から成る前加法圏と看做すことができる。この観点で言えば、左 R-加群とは R からアーベル群の圏 Ab への共変加法的函手に他ならない。右 R-加群は反変加法的函手である。このことが示唆するのは、任意の前加法圏 C に対し、C から Ab への加法的函手は C 上の一般化された左加群と考えるべきであるということである。このような函手の全体は、環上の加群の圏 R-Mod の一般化となる函手圏 C-Mod を成す。
可換環上の加群は別な方向に一般化することができる。まず、環付き空間 (X, OX) をとり、OX-加群の層を考える。これらの全体は代数幾何学のスキーム論的取り扱いで重要な圏 OX-Mod を成す。 X がただ一点からなるならば、これは可換環 OX(X) 上の通常の意味での加群の圏である。