カテゴリー: 地政学
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試論:「国力の方程式」再考
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/a96bdf90748269bc1d5a1762319c31aea840c153
『試論:「国力の方程式」再考
鈴木崇弘
政策研究アーティスト、PHP総研特任フェロー
2021/4/1(木) 9:00世界や国際社会をどう把握するか。(写真:アフロ)
皆さんは、「国力の方程式」というものを聞かれたことがあるだろうか?
国際政治などにおける議論ではたまに見かけるが、一般的にはそれほどは知られていないかもしれない。しかしながら、国際社会において、国家や国家間の関係性を考える上で参考になるものであると考えられるので、本稿で考えてみたい(注1)。
この「国力の方程式」には、実はいくつかのバリエーションがあるが、その中でも最も有名なのが、米国のCIA情報担当副長官や国務省情報調査局長、ジョージタウン大学教授などを歴任したレイ・クライン氏(Ray S Cline)が考案したものであろう。
同氏は、1980年代に出版した著書『世界の「軍事力」「経済力」比較―アメリカの世界戦略データ′80年代』(注2)”WORLD POWER TRENDS ’80s”の中で、同方程式を紹介し、国力比較をしている。本稿では、この方程式を基に考察していきたい。
世界はどういう方向に進むのか。そしてそこにおける国家の役割は。(写真:ロイター/アフロ)
まず国力とは、そもそも何なのであろうか? その定義はいろいろあるが、一般的に「経済,軍事,文化,資源,人口などを総合した国の力」(注3)であるといわれる。また、それと絡んで、国力ランキングというものがある。そのランキングも、国力の定義により様々なものがあるが、ここでは、米誌「USニューズ&ワールドレポート」が毎年発表している「世界で最も強い国のランキング」を基に考えていく(注4)。同ランキングは、政治力、経済力、軍事力、国家としての影響力に関する世界の約2万1000人を対象に行ったアンケート調査の結果から総合して決定されたものである。
2020年版の同ランキングは、次のとおりである。
第1位:アメリカ
第2位:ロシア
第3位:中国
第4位:ドイツ
第5位:イギリス
第6位:フランス
第7位:日本
第8位:イスラエル
第9位:韓国
第10位:サウジアラビア
さて、以上を受けて、本稿の主題である、「国力の方程式」について話を戻そう。
クラインの方程式は、次のとおりである。
国力=((基本指標:人口+領土)+経済力+軍事力)×(戦略目的+国家意思)
(注)国家意思=戦略目的を遂行する意思
要は、経済力以外は、基本的に、人口、領土、軍事力(ここでは主に旧来のハードの軍事力)など「ハード」あるいは物理的要素とそれを使用する国家の目的や意思から構成されている。
ところが、1990年代初頭の東西冷戦構造の崩壊後の世界のグローバル化やグローバルの経済の進展により、国際関係における相互依存関係の高まりや経済(国を超えた経済も含む)の重要性の急速な高まりにより、国家間の軍事的紛争や戦争状態は起きにくくなり、もちろん意味がなくなったわけではないが、従来のハード的な「軍事力」の重要性が低下してきているのである。他方、経済に関しては、量ばかりでなく質においても、飛躍的に拡大し、国際社会において影響力を増大させてきているのである。
またそのような非戦争状態が継続し、世界のグローバル化でヒト・モノ・カネ・情報等の国を超えた移動が容易化する中で、文化や社会の役割を重視する「ソフトパワー(注5)」、「パブリック・ディプロマシー(注6)」、「トラック2」や「トラック3」(注7)などが、国際社会や国家間の関係を決める上で重要性を増してきているのである。つまり、文化力や社会力が国力に影響するようになってきている。
近年のITをはじめとする、AI、IoT、XR、blockchain、仮想通貨、ロボット、電気自動車、自動運転車、ドローン、3Dプリンター、キャッシュレス、シェアリングエコノミーなど様々テクノロジーを活用した社会的ツールや仕組みなどが生まれ、社会や世界さらに私たちの日常生活を急速に変貌させてきている(注8)。また、中国などは、その国内市場等を活用して、テクノロジーなどを急速に発展させ、国際的な影響力を拡大させてきている。その顛末として、ファーウェイの問題や米国における中国人研究者・留学生の締め出しや数のコントロールなどに見られるように米中のテクノロジーや経済のぶつかり合い、せめぎ合いも起きてきているのである。つまり、このようにテクノロジーが、国家の影響力に大きな役割を果たすようになってきたのである。
テクノロジーの急激な進展が国や社会に大きな影響力を持つようになってきている(写真:アフロ)
上記の「文化力・社会力」や「テクノロジー」をまとめて、ここでは「新興要素」と呼ぶこととする。それらが強いほど、「国力」も増大することになる。そして地球温暖化、水や食料などの資源の制約、感染症などの諸々の問題(環境要素)も重要になってきているが、基本的には国力にとりマイナス要因と考えることができるだろう。
さらにGAFA(注9)やBATH(注10)などの、ある意味国家を超えたメガテック、国家とは異なるテロ組織などのアクターの出現、NGO/NPOなどの市民社会の役割の増大などのような非国家のアクターなども、国際関係などを考える上で重要な要素になってきているが、これらの力は、自己の目的や利益に従って行動や活動をしていくので、国家や社会にとっては、プラスにもなることも、マイナスに機能することもあるだろう。
以上の議論に基づくと、新しい国力の方程式は、次のようになる。
国力=([基本指標:人口+領土<含地理的位置・地勢>]+経済力+軍事力+新興要素-環境要素)
×(戦略目的+国家意思)±非国家アクター力
いかがだろうか。
いずれにしろ、世界に起きている様々な状況や事象を見ても、それらのことはこれまで以上に相互に関係し合い、複雑さを増してきている。私たちは、今後より益々複眼的で、多元的なものの見方が必要とされているといえるだろう。
(注1)本記事は、筆者が、船橋洋一氏の『地経学とは何か』という著書を読んでいた際に、国力の考え方を変えるべきだというインスパイアを受けて書いたものである。
(注2)『世界の「軍事力」「経済力」比較―アメリカの世界戦略データ′80年代』。
原題“World Power Trends And U.S. Foreign Policy For The 1980s”。
(注3)この定義の出典は、ブリタニカ国際大百科事典・小項目事典である。
(注4)「日本は何位?世界で最も「強い」国ランキング[2020年版]」(Sinéad Baker、Business Insider、2020年1月21日)参照。
(注5)ソフトパワー(soft power)とは、「その社会の価値観、文化的な存在感、政治体制などが他国に好感を持って迎えられ、外交に有利に働くこと。米国ハーバード大教授ジョセフ=ナイの提唱」(出典:デジタル大辞泉(小学館))。その対になる言葉が「ハードパワー(hard power)」で、「他国の内政・外交に影響をおよぼすことのできる軍事力・経済力のこと。軍隊を動員しての示威行動や侵攻、経済制裁や経済援助など」(出典:デジタル大辞泉(小学館))を意味する。更に最近は、「軍事力・経済力による圧力と、文化・技術等を基にした国際協力を総合した新しい対外政策」(出典:デジタル大辞泉)を意味する「スマートパワー(smart power)」と言う言葉も使われることもある。
(注6)「パブリック・ディプロマシー(public diplomacy)」とは、「1 交渉経過を公開しながら進める外交。2 政府と民間が連携しながら、広報や文化交流を通じて外国の国民や世論に働きかける外交。広報文化外交。広報外交。対市民外交。」(出典:デジタル大辞泉(小学館))のことである。
(注7)これらに関しては、次の説明を参照のこと。「『トラック1外交(track 1 diplomacy)』は政府間の正式会合による外交。『トラック2外交(track 2 diplomacy)』は民間研究機関と大学の研究者を中心とする民間外交。『トラック3外交』は市民外交(people-to-people diplomacy)。」(出典:実用・現代用語和英辞典)
(注8)拙論「近未来『テクノロジーと社会の関係性』」(みらい 未来を創る財団 2021年10月 No.10 http://www.theoutlook-foundation.org/admin/wp-content/uploads/2014/05/a0b394595c17f0ac100ba5d84dc610ed.pdf)参照。
(注9)「GAFA」とは、「グーグル(Google)、アップル(Apple)、フェイスブック(Facebook)、アマゾン(Amazon)の4社のこと。頭文字を取って称される。いずれも米国を代表するIT企業であり、4社は世界時価総額ランキングの上位を占めている。また、世界中の多くのユーザーが4社のサービスをプラットフォームにしている。」出典:知恵蔵
(注10)BATHとは、「中国を代表する有名なIT企業であるBaidu(バイドゥ)・Alibaba(アリババ)・Tencent(テンセント)・Huawei(ファーウェイ)の頭文字をとったものです。読み方は「バース」。IT系の会社の中でも、アメリカのGAFA(ガーファ)に迫る勢いのある中国のBATH。」出典:「GAFAはわかるけど「BATH」って? 熱視線を浴びるBATHを理解しよう」(マイナビニュース、2020年12月21日)
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新しい視点鈴木崇弘
政策研究アーティスト、PHP総研特任フェロー
東京大学法学部卒。マラヤ大学、米国EWC奨学生として同センター・ハワイ大学大学院等留学。日本財団等を経て東京財団設立参画し同研究事業部長、大阪大学特任教授・阪大FRC副機構長、自民党系「シンクタンク2005・日本」設立参画し同理事・事務局長、米アーバン・インスティテュート兼任研究員、中央大学客員教授、国会事故調情報統括、厚生労働省総合政策参与(大臣付)、城西国際大学大学院研究科長・教授、沖縄科学技術大学院大学(OIST)客員研究員等を経て現職。新医療領域実装研究会理事等兼任。大阪駅北地区国際コンセプトコンペ優秀賞受賞。著書やメディア出演多数。最新著は『沖縄科学技術大学院大学は東大を超えたのか』』 -
国力
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E5%8A%9B
『出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
主に超大国とみなされる国
主に大国とみなされる国
主に地域大国とみなされる国
主に中級国家とみなされる国国力(こくりょく)は、国際関係においてある国家がもつ様々な力の総体。
概要
国際社会において、全ての国は国際法的に平等ではあるものの、実際のところ、国民・政治・経済・軍事・科学・技術・文化・情報などの能力と影響力は各国ごとに異なっている。
ゆえに、ある国のそのような要素を総合的に捉えるとき、それを「国力」として定義することができる。
ある国の国際的地位はその国力によって変化し、国力が特に高い国は、国際社会において大国として大きな存在感を示す。
モンゴル帝国のような陸上における軍事的覇権によるものから、ヴェネツィアやオランダ海上帝国のような海軍力によるもの、第二次世界大戦後の日本のような純粋な経済力によるものなど、国力を上げる方法は多様であり、また、国力の評価基準とその指標は時代や論客によって異なる。
二十一世紀の現代において、多くの識者がその国力が高いと評価する国(列強)としては、国際連合安全保障理事会の常任理事国であり五大国とも言われるアメリカ合衆国、英国、フランス共和国、中華人民共和国、ロシア連邦に加え、戦後に経済大国としてその頭角を現した日本国とドイツ連邦共和国が代表的である。
特に、米国は唯一の超大国と見なされ、経済や軍事など幅広い分野において世界トップクラスの影響力を有している。
定義
国力、力(power)の概念は政治学において重要であり、政治的関係の複雑性とも関連することから、その定義は長らく論争の対象となってきた。
ロバート・ダールは「Aの働きがなければBは行わなかったであろうということをBに行わせる限りにおいては、AはBに対して力を持つ」と定義し、タルコット・パーソンズは「政治において正当化された一般的交換機能を発揮するもの」と、ケネス・E・ボールディングは「欲するものを得る能力」と、ニコラス・スパイクマンは「説得、買い入れ、交換、強制などの手段で人を動かす力」と、チャーズル・キンドルバーガーは「強力さとそれを効果的に用いる能力」と、それぞれ定義している。
ただし、近年においては、国力の構成要素は軍事力だけではなく、前述の通り国力とはあくまでも様々な力の集大成なのだと一般的に理解されている。
国力の諸要素
国力の諸要素とは、国家のために利活用することが可能なあらゆる手段のことである。以下、主要なものを列挙する。
領域
領域は国力の地理的・経済的な側面を構成する。
地理的な側面として、位置・面積・地形・気候・植生などが国力に影響する。
例えば、海洋との相対的な位置関係は各国家を大陸国家と海洋国家とに大別し、交通や貿易の発展、文化交流の可能性、軍事的な安全性、海洋資源の利用などに影響する。
広大な領土は一般的に有利であり、軍事的に防衛しやすい他、土地は経済活動の基盤であり、戦略資源の産出地を多く確保することもできる。
ただし、地勢や水域によって分断された領土をもつ場合は、戦力運用の上で防衛の困難が生じてくる。
領土の形は緊縮型、伸長型、分断型に分類され、領土が狭く細い場合には安全保障上の危険性が高まり、経済的な発展も制約される。
また、気候は国民の生活や戦略産業に大きな影響を与え、特に、寒冷地においては農業や交通を阻害することさえある。
これらを研究する科学の分野として地政学が存在する。
国民
国家システムを構成する人的な要素として国民がある。
まず人口はその国の国土と関係し、軍事・経済・技術などほぼ全ての分野において影響する。
クラインによると人口規模が1500万人以下の国は労働力人口の面から考えて国力に劣り、大国の勢力下に入らざるを得ない。
また歴史的に人口増減は国力増減と相関関係にあると見られている。
また人口規模だけでなく人口構成も大きな問題であり、青年・壮年の比率が高ければ就労人口も多く、経済規模や軍隊規模の拡大に有利である。
ただし量的な観点だけでなく、国民の質的な要素も大きく、教育水準が高くなければ高度に近代化された軍事力・技術力・経済力を維持することができない。
また国民性や民族の統一性という要素も含まれて考えられなければいけない。
軍事力
軍事力は現代の国際システムにおいて唯一の力ではなくなったものの、軍事力は国力の重大な柱の一つであり続けている。
軍事力を主に構成する軍隊の戦闘能力は兵員数、兵器の性能、兵站基盤などの量的な要素と、軍事戦略、部隊編制、訓練度、士気、リーダーシップ、情報などの質的な要素を総合して考慮しなければならない。
クノールは第一に軍事力を整備された軍隊、第二に軍事的な潜在力、第三に軍事力に対する国民的な性行、の三つから構成されるとし、第一と第二の要素は経済力と関係していると指摘した。(軍事力を参照)
経済力
国力としての経済力とは国家の経済的な能力または国富そのものであり、経済戦を遂行する能力として考えられる。
これは国内総生産、食糧自給、労働力人口などの経済基盤に基づいた戦略産業の構成、戦略資源の分量、外貨準備、自国通貨の信頼性などから構成される。
経済力の指標としてはGNP、GDP、エネルギー生産消費量、国民1人当たりのGNP比率などで示されるが、これら指標が高い国が大国であるとは限らず、資本主義経済においては民間の企業によって経済活動が行われており、政府とは直接的な関係があるわけではない。
また国力の機能の一側面である「対立的関係においてでも自国の意思を実現する能力」を考えた場合、経済力は国際社会に影響力を発揮できても実質的な強制力がなく、危機的な状況や戦時においては無力化される。
それ故に経済大国とは真の意味で大国ではない。
ただし軍事力は経済基盤の上に成り立っているため、高度な経済力は国力の育成にとって欠かせない。
技術力
技術力はその国の科学技術がもたらす各種能力であり、経済発展・成長に大きく影響する。
また軍事力の質を向上させるためには欠かせない力である。
他国を圧倒する技術力はそれ自体が優位となりうるため、科学技術を海外に移転することが規制されることもある。
例えば冷戦期においてアメリカは輸出管理法第五条及び第六条において安全保障の観点から技術の輸出規制を設けた。
国力要素としては経済力の一部と見る場合もあるが、その独立性した性格から分離して認識される。また教育はこの技術力を維持するためになくてはならない要素であると考えられている。
指標
国力の伝統的な指標として、ジョージタウン大学のレイ・クライン教授は国力を軍事力や経済力などが合理的に組み合わさったものであるとして、各種要素を数値化し、次のような方程式を考案した。
国力=((基本指標:人口+領土)+経済力+軍事力)×(戦略目的+国家意思)
またコックスとジャコブソンは国力をGNP、1人当たりのGNP、人口、核戦力、国際的威信に指標化した式を考案した。
国力=GNP+一人当たりのGNP+人口+核戦力+国際的威信
ただし国力は多くの質的要素も含んでおり、加えて国力は平時と戦時においても異なり、国際法による軍事力行使への制限強化、外交交渉技術などの流動的な要素もあり、それら全てが数値化されない限り国力の客観的な測定は不可能である。
そのためクラインの方程式を見直した国力概念を唱えるものも多い。
ただしハンス・モーゲンソウは国力評価において以下のような指摘をしている。
(1)特定の国民の力を絶対視して相対性を無視すること。(2)過去に重大な役割にあった要素を永久のものであると考え、その変動を無視すること。(3)特定の要員を決定的なものであると考え、その他の要因を無視すること。
参考文献
西川吉光『現代国際関係論』晃洋書房(2001年4月20日初版)
関連項目
国際関係
軍事力
ソフト・パワー
表話編歴
国際関係における大国
国力
経済エネルギー(英語版)農業(英語版)軍事パワーポリティクスレアルポリティークハードパワーソフトパワースマートパワー(英語版)シャープパワー
地位
小国ミドルパワー地域大国新興国準列強(英語版)列強後発開発途上国開発途上国先進国大国五大国潜在的な超大国超大国極超大国
地政学
パクス・ブリタニカパクス・アメリカーナ(アメリカの世紀)ソビエト帝国中国の世紀アジアの世紀(英語版)インドの世紀(英語版)太平洋の世紀(英語版)米中二極体制 (G2)
理論
勢力均衡 (ヨーロッパ)覇権国覇権安定論権力多極体制戦力投射権力移行理論(英語版)第二の超大国(英語版)勢力圏超大国の崩壊(英語版)超大国からの解放(英語版)南北問題(グローバルサウス)
研究
総合国力指数(英語版) (CINC)総合国力 (CNP)
カテゴリ: 国家国民経済国際関係軍事学
最終更新 2024年3月25日 (月) 08:06 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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・世界のモデル国・日本を、他国が見習うことができないのはなぜ?
・エネルギーや資源の調達は、今後も可能なのか?
・グリーン・テクノロジーでは未来を支えられない、その理由。
・日本が食糧危機から逃れるために、すべきこと。
・「アメリカの世紀」のあと、覇権を握る国はどこなのか。
【上巻・目次】
第1部 一つの時代の終わり
第2部 輸送
第3部 金融【プロフィール】
著者:ピーター・ゼイハン
地政学ストラテジスト。在オーストラリア米国務省、民間諜報会社ストラトフォーのバイス・プレジデントなどを経て、2012年に自身のコンサルティング会社ゼイハン・オン・ジオポリティックスを設立。エネルギー大手企業、金融機関から米軍まで、幅広い分野のクライアントを抱える。主な著作に『地政学で読む世界覇権2030』など。
訳者:山田美明 やまだ・よしあき
英語・フランス語翻訳者。主な訳書に『つくられた格差』『喰い尽くされるアフリカ』『大衆の狂気』『プランタ・サピエンス』、共訳書に『約束の地』など。』『 あずみ
5つ星のうち3.0 秩序が崩れ、戦国時代が始まるか?
2024年8月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入現在のG20の豊かさは、戦後アメリカが創った国際的な「秩序」がベースとなっている。
その秩序維持を、アメリカが降りるとしたら、世界は再び世界大戦よりも前の緊張状態と、混乱に陥るという事が上巻の主張である。少なくとも、現状の豊かさを人類史上のピークとして、今後は生命の安全が危うい各国が闘争状態に突入するらしい。日本は中国を牽制しつつ、うまく東南アジアの秩序をコントロール事が必須となる、非常に危うい立場になるだろうとの事である。
歴史的な背景の説明は、軽快なタッチで非常に読み易く納得感のある記述が多い一方、どの切り口からも最終的には「アメリカは唯一の例外で、今後も盤石である」という結論に辿りつくあたり、大いに偏った主張である事は念頭に置いて読むべきかと思う』
『 蜂蜜
5つ星のうち5.0 グローバル経済がどのように崩壊し得るのかを地政学的な観点から解明した本
2024年10月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入ビジネスや経済活動は人文学的、社会学的、技術的、地政学的ファクターに影響を受ける。その中で、物流、金融、エネルギー、素材、農業といったインフラ部分は、特に地政学的要素に大きな影響を受ける。
ルネッサンス以前は、地理的条件が人や物の移動可能な範囲を大きく規定してきた。交易の道ができる場所は限られ、その代表例がシルクロードであった。
ところが、大航海時代になって、羅針盤と風力の活用により、物流と金融のグローバル化が始まった。
その後、産業革命による化石エネルギーの活用と、アメリカによる平和のおかげで、物流、金融、エネルギー、素材、農業といった経済のインフラ部分が一気にグローバル化した。
そして、資源の無い国でも世界中の物を格安で入手できる時代が訪れた。日本や中国はそこから最も恩恵を受けた国と言ってもいいだろう。
しかし、地政学者である著者は、パックス・アメリカーナの終焉によって、グローバル化の逆回転が始まることを説く。そのシナリオの中には、食糧危機による大規模な人口減少も含まれる。パックス・ロマーナが崩壊した後、暗黒の中世に入り歴史が逆回転したように。
これまでのグローバル化は、ある面で地理的制約が問題にならなくなる過程でもあったことを考えると、再び地政学者の時代が来ることを待ち望んでいるようにも見える。読みながら、それを不快に感じる読者も多いかもしれない。
ただ、複雑な要因のバランスの上に成り立っているグローバル経済が、一つのピースが抜けただけで大きく崩壊することは、あり得ない話ではない。グローバル経済がどのように崩壊し得るのかを、地政学的な観点から解明しようとした本として一読に値すると思う。』
『 Amazon カスタマー
5つ星のうち2.0 学術書ではない
2024年12月12日に日本でレビュー済みタイトルが気になったのでとりあえず図書館で借りて読もうとした。しかし、序盤で読むのを止めた。
非常に大きな視点で、いくつもの学問分野にまたがる内容をテーマとしているが、妙に文章が軽い。違和感の理由がはじめはわからなかったが、第1章の途中で、註釈や参考文献の提示が無いからだということがわかった。(もしかしたら参考文献は下巻の方にまとめてあるのかもしれないが、下巻目次に参考文献の項は無かった。)
自分が何に基づいてこの文章を書いたのかを明示しないというのは、専門家から内容を吟味される余地を残さないということであり、それは『学術書』とは呼べない。そして、そういう筆者は信用に値しない。
内容に目を通す前に買わなくて良かったと思った。
2人のお客様がこれが役に立ったと考えています』『 UKIUKI
5つ星のうち4.0 前提に疑念あり
2024年8月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入米が世界貿易を保証する庇護者になったのは第二次大戦後で、資源確保の目処がたったから全世界の庇護者から撤退し、国際貿易は殆ど消滅するという前提でその後の世界を考察した本。
運送を初め諸々の産業について詳細な分析が提示され一読の価値はあるが、自国のイデオロギーや歴史の分析に疎い感がある。
米はリアリズムに徹する国ではなく、イデアリズムを引きずっており、そう簡単に総撤退とはならないし、撤退してもまた出てきたりするだろう。
また、戦前からフィリピンを植民地化したり、満州の門戸開放を執拗に要求したり、東アジアには粘着していた。徐々に撤退するとは言え、そう簡単にどうでもいいとはならないだろう。』
『 みみずく
5つ星のうち5.0 アメリカ礼賛の終末論、地政学で読む野蛮化する経済
2024年9月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入アメリカが「世界の警察」の役割を捨て、孤立主義のもと西半球防衛を重視する、この流れは、今に始まったことでなく、建国当初からあった。
グローバルな関与主義でなく孤立、単独主義。脱グローバル化とネーミングをするから珍しくなる。
ブレトンウッズ体制を崩壊させ、いわゆる戦後「秩序」を変質させる。具体内容は本書をお読みください。
「秩序」が崩壊していく中で、世界経済に起きるリスクを、系統地理的に解析していく、物流を支配する海運、製造業がこうむるダメージ、世界的な人口減少。
少子高齢化で生産人口が減り、高福祉に喘ぐ西洋先進国。日本人が見落としていた壁。
一方、モデル国は日本で、他国が見習う要素があるという。
ただし、日本はグローバル経済にかなっているだけに、食糧危機に直面する。
大まかに言って、農村、工業、情報社会の成立、資源エネルギーの調達、人口動態といった系統地理の記述が述べられ、説得的、自然地理をベースに諸国を系統地理で分析する、とくに人口動態統計による解析は流石にプロフェッショナル、地政学といえば、地政学と言えなくもない。』
『 グルジアのスープレックス男
5つ星のうち4.0 地理的な視点で都市の発展について考察した視点は参考になります
2024年8月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入古代文明から現代に至るまで、都市の勃興と衰退や、巨大都市圏はどの様に誕生したかなど、地理的な制約条件や、それに打ち勝つ輸送技術の発達など、ポイントが明確で分かりやすい。
面白い視点を与えてくれる本だと思います。
マイナスポイントは、「日本人は古来から官民あげて借金好きの国民性」と、日本に対する理解がかなり浅薄であること。
あと、和訳がとても悪文で、前後の文脈が通じなかったり言葉使いが変だったりする箇所が多いです。これは翻訳者の責任でしょうが。
3人のお客様がこれが役に立ったと考えています』 -
書評『「世界の終わり」の地政学(上・下)』ピーター・ゼイハン著
脱グローバル化 衝撃の未来
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD273GS0X20C24A9000000/『2024年10月12日 2:00 [会員限定記事]
グローバル化の時代は終わった。2020年代以降、我々は第2次世界大戦前の「無秩序」な世界に逆戻りしている。こう現状を分析した上で、本書は、世界市場の縮小と分断による、輸送、金融、エネルギー、生産、食糧の同時崩壊という衝撃的な未来を予測する。
著者は、米国のインテリジェンス企業ストラトフォーの副社長を経て2012年に独立。現在は地政学ストラテジストとして米軍、CIA、各種企業にコンサルティングを行…
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。』
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「戦争の時代」となってしまった「2024年」を「地政学」の観点から振り返る
https://gendai.media/articles/-/143860?imp=0
『篠田 英朗東京外国語大学教授 国際関係論、平和構築 プロフィール
2024.12.26
2024年も数多くの戦争が世界中で続いた。過去数年の間に、世界の戦争の数は、急激に増えた。それを受けて、2024年にも、多くの戦争が続いた。
ヨーロッパにおけるロシア・ウクライナ戦争、中東におけるガザ危機やその他の複合的に重なり合う戦争、アフリカにおける東から西に貫くアフリカの角からサヘルにかけての一帯で多発している数々の戦争、などが甚大な被害を出している。もちろん、アジアではミャンマーの状況が深刻だ。凶悪犯罪の犠牲者数を考えると、ラテンアメリカ諸国の状況も深刻である。
10年ほど前までは、まだ国際的な平和活動も活発だった。戦争の数もなんとか抑え込まれていた。だが2010年代以降、戦争の数は増加し続け、国際的な平和活動の数のほうは減少し続けている。厳しい状況に、対応が追い付いていないだけでなく、追いつこうとする政策的意欲も萎えてしまっているような事態だ。
この現代の戦争の時代を、どう見ればいいだろうか。本稿では地政学の理論の観点を用いて、大局的な視点から、整理を試みてみたい。
英米系地政学理論に依拠した「海洋国家」連合と「リベラル国際秩序」
35年ほど前、冷戦が終わった時、「自由民主主義の勝利」を前提にした「新しい国際秩序」なるものが語られた。あれはいったい何だったのか。冷戦終焉は、東欧の共産主義政権の崩壊と、ソ連の崩壊によって、引き起こされた。
自由主義陣営と共産主義陣営の対立が、冷戦だったとすると、一方の陣営の崩壊によって、それは終わった。そこで、国際社会が標榜する価値観は、自由民主主義の価値観に収斂していき、それによって各国の政治体制も、国際的な経済体制も、より普遍主義的で一元的なものに刷新されていく、と感じられるようになった。
もちろん、共産主義陣営が崩壊したからと言って、自由主義陣営が普遍的に万全で問題がないことが保証されたわけではない。だが当時は、「自由民主主義の勝利」の物語にそって、「新しい国際秩序」=「リベラル国際秩序」が、イデオロギー対立のない冷戦終焉後の世界にも広がっていく可能性が高い、と広範に信じられた。
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確かに、旧ワルシャワ条約機構の東欧諸国は、その後、NATO(北大西洋条約機構)の同盟網に加わり、自由主義陣営は、拡大した。だが、だからといって、世界全体が自由主義を標榜するようになったわけではなかった。まして全ての諸国が欧米諸国の同盟国になったわけでもなかった。
「リベラル国際秩序」とは、自由民主主義が普遍化した国際秩序というよりは、自由主義陣営諸国の影響力が高まった国際社会の秩序のことであった。それは、欧米諸国の介入主義的行動を強く要請して、成り立つものであった。
アメリカを中心とする自由主義陣営の諸国の結びつきは、地政学理論にそって言えば、「海洋国家」が結びついたネットワークのことだ。ハルフォード・マッキンダーに代表される「英米系地政学理論」の伝統にそって言えば、冷戦構造とは、ユーラシア大陸中央部の「ハートランド」に位置しつつ、海に向かって膨張政策をとってくる「陸上国家」を、「海洋国家」連合が封じ込めていく構造のことであった。冷戦終焉後の「リベラル国際秩序」とは、「陸上国家」の膨張が止まった後、「海洋国家」諸国がより自由にグローバルに影響力を行使するようになった時代の秩序のことであった。』
『大陸系地政学理論に依拠した「圏域(勢力圏)」思想の巻き返し
21世紀に入ると、介入主義が極まって、アメリカやその同盟諸国が、アフガニスタンやイラクで大々的な軍事介入を行い、結果として国力を疲弊させていくようになった。代わって「陸上国家」の代表であるロシアは、国力を立て直していった。加えて、中国が、超大国として台頭した。さらに、インド、ブラジル、インドネシア、トルコなどが国力を充実させ、それぞれの地域での存在感も高めていった。これらの国々の台頭は、アメリカが中心となった「海洋国家」連合が主導する国際秩序に、変化をもたらすものであった。地政学理論の観点から、これらの諸国の台頭の意味を考えてみよう。これらの国々は、単純に「陸上国家」として、「海洋国家」連合の覇権に挑戦したわけではなかった。ただ、「陸上国家」と「海洋国家」の二元的対立関係を強調する「英米系地政学理論」の世界観を、相対化した。つまり、二元的なものではない、より「多元的」な世界観を求めた。
たとえば、ロシアで代表的な思想家であるアレクサンドル・ドゥーギンが標榜する「ユーラシア主義」の思想などを見ると、「英米系地政学理論」の特徴である「陸上国家」と「海洋国家」の二元的な対立とは異なる世界観が内包されていることがわかる。より「大陸系地政学理論」に近い「多元主義」を志向する内容だ。
ナチス時代のドイツで活躍した理論家のカール・ハウスホーファーに代表される「大陸系地政学理論」によれば、世界は、いくつかの主要な「圏域」に分かれる。そしてそれぞれの「圏域」に、覇権国というべき存在がある。たとえばユーラシア大陸中央部の「圏域」は、ロシアが君臨する地域だ。ドゥーギンが代表する「ユーラシア主義」の地政学理論は、明らかに「大陸系地政学理論」の系譜に属する。
このように大陸系地政学理論では、「圏域(勢力圏)」の存在が重視される。そして異なる「圏域」の有力国が、「勢力圏」の線引きの調整を通じて、共存を図っていく姿勢が模索される。
この考えの延長線上で、欧州と北米以外のそれぞれの地域から、代表的な有力国を集まってくる仕組みで、G20、そしてBRICSが形成された。特にBRICSは、「海洋国家」連合の構成国を含まないで形成され、「圏域」思想を重視する「大陸系地政学理論」を意識した「多元主義」を標榜する国際フォーラムとして存在感を高めた。
グローバリズムとも特徴づけられる「英米系地政学理論」にのっとった世界観を標榜するのが「海洋国家」連合のネットワークだとすると、非欧米諸国の有力国は、「圏域」思想に依拠した「多元主義」を標榜する。21世紀に入ってからの欧米諸国が形成する「リベラルな国際秩序」の減退は、他の有力国の台頭を通じた「多元主義」の国際秩序の世界観の広がりと、密接不可分な関係にある。』
『ロシア・ウクライナ戦争と二つの異なる地政学理論
現代世界を揺るがせ続けているロシア・ウクライナ戦争では、「英米系地政学理論」の世界観と、「大陸系地政学理論」の世界観が、ぶつかりあっている。「リベラル国際秩序」を推進する「英米系地政学理論」の見方では、ロシアの東欧への拡張政策に対して、封じ込め政策をとる必要性が強調される。これに対して「大陸系地政学理論」の見方では、ウクライナはロシアの「圏域(勢力圏)」であり、他の「圏域(勢力圏)」の浸食は、地域の安定を損なう。
NATO(西大西洋条約機構)の東方拡大が、ロシア・ウクライナ戦争の原因であるか否かについては、論争がある。欧米諸国は、否定しているが、ロシアのプーチン大統領は、NATOのほうが最初に挑発をしてきた、という見解を示している。国際法上は主権国家の独立は尊重されなければならない、という原則は当然である。ただ、それとは別に、脅威の認識は、いわば主観的な問題になる。また安定した安全保障の仕組みの構築も、国際法だけでは達成できない課題だ。
NATOは、劇的で急速な拡大にもかかわらず、これまで旧ソ連地域の国を加盟させたことはない。例外はバルト三国だが、NATO構成諸国は、バルト三国のソ連への併合を無効とみなし、冷戦期を通じても承認していなかった。またバルト三国は、ソ連崩壊前に独立を果たしたという点でも、ウクライナをはじめとする他の旧ソ連地域の諸国とは、位置づけが異なる。
大国間のバランス・オブ・パワー(勢力均衡)が秩序維持の原理であると信じられていた時代のヨーロッパで、大国に浸食されずに独立を維持できた国は、東欧には存在しなかった。第一次世界大戦までの時代の東欧は、ロシア、ドイツ、またはオーストリアによって分割支配されていた。第一次世界大戦後、国際連盟が設立され、集団安全保障の謳い文句で、東欧に数々の独立国が作られた。ウクライナは、その際に独立を宣言したが、すぐにソ連に吸収されてしまった地域である。その後、第二次世界大戦を経て、東欧の政治地図はたびたび変わったが、ソ連が縮小することはなかった。
1991年にソ連が崩壊してウクライナは独立国となったが、親ロシア派と親欧州派との間の政治闘争が繰り返された。2014年以降は、クリミアがロシアによって占領されただけでなく、東部のドネツク州とルハンスク州が、戦争に陥り、キーウの中央政府の実効支配から外れた。
「リベラル国際秩序」を標榜する欧米諸国は、主権国家の領土的統一性の原則を参照する。日本もそうである。だがロシアのプーチン大統領の主観では、欧米諸国の態度は、ロシアの封じ込め政策でしかなかった。NATOの歴史的な「圏域」を度外視した行動こそが、地域の安定を損なうものだ、という主張を、プーチン大統領は繰り返している。
地政学理論の二つの伝統から見れば、ロシアの主張は、「大陸系地政学理論」にそったものである。もちろんそれは現代の国際法の原則を尊重した理論ではない。だが欧米諸国の「二重基準」に不信感を持っているロシアから見れば、欧米諸国の指導者たちは機会主義的に都合よく国際法を解釈しているだけで、実態は、「英米系地政学理論」にもとづいたロシアの封じ込めを継続して行っているにすぎない、ということになる。
ロシア・ウクライナ戦争だけを見れば、国際法の観点から見て、ロシアの主張が弱い。しかし他の地域の事例を参照するならば、欧米諸国は恣意的に国際法を参照する「二重基準」に陥っている、という主張にも、妥当性があるように見えてくる。そのため、ロシアに対する国際的な非難は盛り上がりを欠く結果になっている。対ロシア経済制裁に参加しているのは、アメリカの軍事同盟国のみである。2022年2月の全面侵攻発生直後は、国連総会において141カ国がロシアの侵略を非難する決議に賛成した。
文言調整のうえで、翌年にも一応は同趣旨の決議が141カ国の賛成で採択された。だが、その後は、決議提出がなされなくなった。141カ国の賛同を得ることが不可能になっているからである。2024年6月に開催された「平和サミット」の共同宣言に署名した諸国の数は80カ国ほどにとどまった。サミット後しばらくの間、ウクライナ政府は、「グローバルサウス」諸国の賛同を取り付けて第二回サミットを開催する、と強調していた。だがそのような発言は、最近ではなされなくなっている。』
『中東における勢力圏思想のせめぎあい
2024年を通じて戦火が広がり続けたのが、中東だ。昨年から始まったイスラエルのガザでの軍事作戦は、終わりが見えない。それに加えて、イスラエルは周辺国の勢力との交戦を続け、レバノン、イエメン、シリア、イランで、軍事行動を行ってきている。
この状態を、大局的に、地政学理論の観点から見るならば、イスラエルは、「英米系地政学理論」における「海洋国家」連合の代理勢力として、中東における敵対者の勢力の拡大を防ぐ行動に出ている、と描写することができる。そのため明白な国際法違反行為が繰り返しているにもかかわらず、欧米諸国から、手厚い保護を受けている。
地政学理論の観点から言えば、イスラエルは、米国を中心とする勢力が、中東に打ち込んだくさびである。イスラエルの存在を通じて、アメリカは、敵対的な勢力が中東を支配下に置いてしまうことを防ぐことができる。国内事情に加えて、地政学的な計算の観点からも、アメリカはイスラエルを見放さない。
この事情の余波が新たな展開を見せたのが、2024年末のシリア情勢の急変であった。アサド政権崩壊の流れの中で、側面支援を、シリア駐留のアメリカと、アサド政権軍に空爆を繰り返したイスラエルが、遂行した。アサド政権崩壊後、間髪を入れず、イスラエルはゴラン高原に侵攻して、一帯を占領下に置いた。
そしてシリア南部のドゥルーズ派を懐柔し、アメリカ軍の基地の存在も念頭に置きながら、北部のクルド人勢力と連携することを狙っている。これらの勢力の連携が果たせれば、シリア東部にイランの影響力の浸透を遮断する回廊を形成することができるからだ。
イスラエルにとって最大の脅威はイランであり、あらゆる行動は、イランの脅威の除去に向かって進んでいる。同じ目標を持ってイスラエルを支援しているのは、アメリカやイギリスを中心とする欧米諸国である。それらの諸国は、イランと連携の度合いを深めるロシアも敵国とみなして、中東における影響力の拡大を封じ込めようとしている。イランとロシアが支援していたシリアにおけるアサド政権の崩壊は、そのような政策的態度がもたらした成果の一つだと言えるだろう。
ロシアは「ユーラシア主義」を標榜し、自らの「圏域(勢力圏)」を固めつつ、中東を経由してアフリカにまで影響力を伸ばす政策をとっている。アラビア半島の付け根に位置する地域の交通の要であるシリアを友好国とすることも、ロシアの利益に資する。その観点から、ソ連時代から続くシリアとの友好関係を維持し、アサド政権を支援して、軍事基地をシリア領内に維持していた。
ただし「ユーラシア主義」の地政学理論から見れば、より重要で強い関心の対象となるのは、イランとの歴史的な蜜月関係を維持し、冷戦時代にアフガニスタンに侵攻までしながら、果たせなかったインド洋に通じる「南北輸送回廊」を発展させることだ。また黒海から地中海を経由して伸びるロシアの影響力は、トルコとの関係さえ良好であれば、直接的にアフリカに通じさせることができる。』
『ロシアとトルコの緊張関係
ロシアとトルコは、これまで、三つの地域で、敵対しあう代理勢力を支援する緊張関係に置かれてきた。ナゴルノ・カラバフ紛争をめぐるアルメニアとアゼルバイジャン、シリアにおけるアサド政権と反アサド勢力のジハード主義勢力、そしてリビアにおけるハフタル将軍のLNAとトリポリの暫定政府GNUである。
これら三つの戦争のうち、ナゴルノ・カラバフとシリアの二つの戦争は、トルコが支援する勢力が勝利を収める形で、収斂をしてきた。ロシアは、いずれの場合でも、トルコと「圏域」を調整する動きを続けつつ、最後は自らが支援してきた現地勢力を見放す形で、トルコの勢力圏の拡大を黙認する態度をとった。それはロシアが、トルコの「圏域」に配慮をしてトルコとの関係維持に努めつつ、優先順位の見定めをしているからだろう。オスマン帝国の復活を目指しているとまで言われるエルドアン大統領は、コーカサスから中東にかけて、影響力を広げている。
トルコは、最近のエチオピアとソマリア連邦政府の関係改善合意の調停者となったことで、アフリカの角地域にも大きな関心を持っていることを示した。ロシアは、イランの「圏域」とともに、トルコの「圏域」を認める「大陸系地政学理論」を応用した「多元的」な世界観にもとづく調整を模索するはずである。
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トルコにとって、支援してきたHTS中心の暫定政権ができたことは、大きな成果である。アサド政権が崩壊していく時期にも、ロシアやイランとの調整を欠かさず、成し遂げた。今後も「圏域」の調整を図っていくだろう。
トルコのシリアにおける最大の目標は、クルド勢力の封じ込めである。この目標の達成の障害になるのは、ロシアやイランではなく、アメリカやイスラエルである。アメリカにとってクルド人勢力は中東における有力な代理勢力であり、イスラエルにとっては反イスラエル勢力の影響力の拡大を食い止める障壁である。そこでトルコは、優勢になった立場を活かして、アメリカやイスラエルとの「勢力圏」の調整を図りたいだろう。
「リベラル国際秩序」の普遍主義を掲げていたバイデン政権であれば、調整はより難しかったと思われる。ただしトランプ政権は異なる姿勢をとっていく可能性もある。もっともイスラエルは、妥協的な調整を嫌うだろう。異なる地政学理論がもたらす確執は、シリア情勢の混沌を示唆する。』
『アフリカにおける橋頭堡と砂漠の海の沿岸部
アフリカでは、東部アフリカの角のソマリアから、西アフリカのサヘル地域に至るまでの帯状の地域で、戦争が多発している。アデン湾や紅海をはさんで中東に向き合うソマリアなどのアフリカの角地域は、地政学理論でいう「橋頭堡(bridgehead)」としての性格を持っている。大陸から海洋に突き出した半島部が、港の埠頭のように機能する、というイメージである。アフリカ大陸がインド洋に突き出たアフリカの角の地域は、アフリカ大陸有数の「橋頭堡」である。
こうした地域では、様々な勢力がぶつかり合う。「英米系地政学理論」にそって言えば、「陸上国家」と「海洋国家」の確執が、先鋭化する地域だ。実際に、ソマリアは、冷戦期から今日に至るまで、戦争の連続の歴史をへてきている。その背後には様々な外国勢力の暗躍もある。
砂漠は海のようなものである。そう考えると、サヘルは、沿岸部に似た地理的性格を持っている。サハラ砂漠を、東西に伸びる海と同じだと考えて、地図を見てみよう。そうすると、砂漠の海の南側の「沿岸部」で、戦争が連なり合って発生していることがわかる。砂漠の海の対岸にあう北アフリカ・中東の騒乱の影響を、正面から受け止めなければならないのが、サハラ砂漠の南側に帯状に広がるサヘルだ。サブサハラ・アフリカの「沿岸部」としてのサヘルは、地政学理論から見れば、様々な勢力の浸透が、確執を引き起こしやすい。
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この地理的事情を反映して発生していると言える目に見えた現象の一つが、中東を起源とするテロ組織ネットワークのアフリカへの浸透だ。東のソマリアで長年にわたる戦争を引き起こしているのは、アルカイダ系のアルシャバブである。西のマリで活発な反政府軍事活動を行っているのは、やはりアルカイダ系のJNIMである。もっともナイジェリア北部を中心としたチャド湖周辺地帯で勢力を誇っているのは、イスラム国(IS)系のボコハラムやISWAPである。
アフリカの特徴の一つは、大陸内に覇権的な影響力を持つ土着の有力国が少ないことだ。南部の南アフリカ、西部のナイジェリアが、例外的な存在だろう。しかしサヘルの騒乱のため、西アフリカにおけるナイジェリアの覇権は揺らいでいる。相次いでクーデターが起こったマリ、ブルキナファソ、ニジェールは、フランス軍と米軍及び国連PKOを追い出し、ロシアのワグネルを招き入れて、テロ組織との戦争を遂行している。ナイジェリアを盟主とする準地域機構のECOWAS(西アフリカ諸国経済共同体)からは脱退する。「大陸系地政学理論」と「英米系地政学理論」の世界観の確執は、アフリカ独特の混沌を伴って、大陸内の各準地域で、展開している。』
『トランプ大統領とモンロー・ドクトリン
こうした2024年の現実を見たうえで、2025年の世界情勢を展望すると、アメリカのトランプ政権がどのような政策をとってくるかが、やはり一番の着目点になる。地政学理論の観点からの最大の焦点は、アメリカが「英米系地政学理論」にそった「海洋国家」連合の盟主として、どこまで本当に行動していくか、であろう。すでにトランプ大統領は、ロシア・ウクライナ戦争の停戦を果たして、ヨーロッパでのロシアの封じ込め政策に終止符を打ちたい姿勢を明確にしている。中東でのイスラエル擁護の立場は強いものであり続けるだろうが、和平を達成したいという意図の発言もしており、他の「圏域」確保を志向する国家群と調整の可能性もあるだろう。
トランプ次期大統領は、中国との超大国間競争関係に注力していく意図を表明している。パナマ運河の運営が中国有利で米国不利になっているという理由で、パナマ政府に運河の返還を求める可能性があるとトランプ氏が示唆したことが、最近でも話題となった。
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特に警戒しているのが、経済的権益にも直結している中国の東アジアの外での影響力の高まりだ。ただしバイデン政権とは異なり、「民主主義vs権威主義」のようなイデオロギー的な装いで政策を説明する姿勢をとっていくことはないだろう。トランプ氏は高関税政策を多用する意図を表明しているが、政治的に中国を敵対視したいわけでもないだろう。
実はアメリカは、第一次世界大戦までの時代は、ヨーロッパ列強との間の「相互錯綜関係回避」の原則を固めていた。いわゆる「モンロー・ドクトリン」の外交政策である。トランプ氏の政策が、単純な19世紀の「モンロー・ドクトリン」への回帰だけに終わることはないだろう。しかし、グローバリズムを標榜する普遍主義的な「英米系地政学理論」の伝統から離れて、「大陸系地政学理論」に近づく「圏域」間の調整を一定程度は認める方向に、アメリカの外交政策を転換させていく可能性はあるかもしれない。もしそのような転換が図られるならば、世界の戦争の状況にも、少なからぬ影響が及んでいくだろう。』
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※ 今日は、こんな所で…。
上記のような歴史の層の積み重ねが、「エルサレムの丘陵」を中心に中東地域にいくつもの異なる対立の地政学的断層線を形成している。
宗教の断層線
第1に、宗教の断層線である。イスラム教と
ユダヤ教の断層線は、イスラエルの国境線と重なる。イスラエルの隣国レバノンでは、マロン派、ギリシア正教、カトリックなどのキリスト教、シーア派、スンニ派、ドルーズ派などイスラム教のさまざまな宗派が混在し、活断層のように小さな対立の断層線が狭隘な国内にいくつも走り、1970年代半ばから10年以上にわたる内戦を引き起こす原因ともなった。
またイスラム内部では、シーア派とスンニ派の宗派の大きな断層線がイランとイラクの境界を流れるシャットルアラブ川からペルシア湾上に走り、シーア派イラン対スンニ派イラク、サウジアラビアの対立の原因の一つになっている。
またイラクをはじめレバノン、アフガニスタンなどイスラム諸国の国内でもシーア派とスンニ派の断層線が走っている。
民族の断層線
第2に、民族の断層線である。
中東地域のいわゆる北層地帯に、アラブと非アラブの断層線が走っている。
北層地帯に位置するトルコ、イラン、アフガニスタンはいずれも非アラブ民族である。
この三国の歴史的特徴は、モンゴルの支配の後にイスラムのユダヤ教の断層線は、イスラエルの国境線と重なる。
イスラエルの隣国レバノンでは、マロン派、ギリシア正教、カトリックなどのキリスト教、シーア派、スンニ派、ドルーズ派などイスラム教のさまざまな宗派が混在し、活断層のように小さな対立の断層線が狭隘な国内にいくつも走り、1970年代半ばから10年以上にわたる内戦を引き起こす原因ともなった。
またイスラム内部では、シーア派とスンニ派の宗派の大きな断層線がイランとイラクの境界を流れるシャットルアラブ川からペルシア湾上に走り、シーア派イラン対スンニ派イラク、サウジアラビアの対立の原因の一つになっている。
またイラクをはじめレバノン、アフガニスタンなどイスラム諸国の国内でもシーア派とスンニ派の断層線が走っている。
繰り返し、とりわけトルコ、イラクで大きな治安問題となっている。 クルド人の越境武装闘争がトルコ、イラン、イラク、シリアの国境問題を誘発し、イランイラク戦争の遠因ともなった。最近ではイラク北部のクルディスタン自治政府が、イラク戦争によるイラク中央政府の弱体化や内戦によるシリアの混乱に乗じてクルド人地域の支配を強めている。
政治の断層線
第3に、政治の断層線である。
イスラエルを国家として承認するか否かをめぐって、アラブ、イスラム諸国の間に断層が走っている。それは、パスポートにイスラエル入国のスタンプのある者の入国を認めるか否かで判別できる。
認めるのはイスラエルと国交のあるエジプト、ヨルダンそしてトルコ、認めないのは国交のないサウジアラビア、シリア、レバノンなどのアラブ諸国やイランである。
このように「エルサレムの丘陵」を中心に中東地域は、文明、王朝、帝国、国家の歴史の層が幾重にも積み重なり、その歴史の地層を引き裂くように宗教、宗教、民族などの断層が走り、各国内には宗教、民族、政治の活断層が伏在している。
庄司潤一郎; 石津朋之. 地政学原論 (日本経済新聞出版) . 日経BP. Kindle 版. 』











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中東の地政学の歴史的変遷
庄司潤一郎; 石津朋之. 地政学原論 (日本経済新聞出版) . 日経BP. Kindle 版.
『中東地域はまるで地層のように歴史が層となって積み重なっている。
歴史の最深部で古層を成すのは、エジプト、メソポタミア文明である。
その上にシュメール、アッシリアの都市国家やアケメネス朝、ササン朝ペルシア等のオリエントの統一王朝などの帝国という歴史の新層が、積み重なった。
やがて「エルサレムの丘陵」ではユダヤ教、キリスト教が、さらに時代は下ってアラビア半島でイスラム教が誕生し、これらの一神教を信奉する部族、民族、国家の興亡が「エルサレムの丘陵」を中心に繰り広げられ、歴史の層がさらに積み重ねられていく。
その闘争の過程で、バビロン捕囚によってユダヤ人は「エルサレムの丘陵」から追放され、世界各地に離散してユダヤ教徒として生きていく。
キリスト教は392年にローマ帝国で国教化され勢力を拡大していく。
7世紀に勃興したイスラム勢力はウマイヤ朝、アッバース朝等のイスラム帝国を建設し、その後ビザンツ帝国、フランク王国などキリスト教勢力を圧倒していく。
15世紀以降海洋を制し新大陸を開拓したスペイン、ポルトガルの拡大を契機にキリスト勢力が興隆し、経済力、軍事力でイスラム勢力を圧倒していく。
やがて19世紀の産業革命を経て大国となった大英帝国やフランス、ロシア等の西洋列強の力の前にイスラム国家オスマン帝国は第一次世界大戦で解体、滅亡した。
第一次世界大戦後の戦後処理で中東地域は、イギリスおよびフランスの帝国主義国家によって切断され、数多くの被保護国や植民地国家が誕生した。
そして中東地域の歴史の表層には、国境線によって切断・包囲された文明、宗教、宗派、民族の対立が刻み込まれた。
第二次世界大戦後、中東地域の歴史の表層に刻まれた対立は、米ソ冷戦という氷河に覆われた。
1989年に冷戦が終わると氷河は溶け、歴史の表層が露になった。
そして今再び歴史の表層に刻み込まれたさまざまな対立が中東地域各地で、時に武力紛争として露出してきたのである。
庄司潤一郎; 石津朋之. 地政学原論 (日本経済新聞出版) . 日経BP. Kindle 版. 』
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地政学の本質は、…。
『地政学の本質は、モノ(資源・兵器等のハードウエア)とコト(情報・思想等のソフトウエア)およびそれらを直接、間接に運ぶヒトの流通の接続と切断を誰が支配するかにある。
中東地域では、今も昔も「エルサレムの丘陵」を支配する者が石油などのモノや宗教などのコトの流通を支配する。
今その支配をめぐってイスラエル、イラン、トルコなど中東諸国のみならず、域外のアメリカ、中国、ロシアなどが争っている。
庄司潤一郎; 石津朋之. 地政学原論 (日本経済新聞出版) . 日経BP. Kindle 版. 』
『パラグ・カンナは、『「接続性」の地政学──グローバリズムの先にある世界』(尼丁千津子、木村高子訳、原書房、2017年)で、技術的な「接続性」が世界を変革すると主張し、接続性を決定する条件として次の三つを挙げている。
①地政学的意味を決定する地理的条件(地勢、気象、海象等の自然環境)
②地理的条件を変え地政学的意味を変える技術的条件(道具、機械、装置等の人工物)
③技術を創造し地理的条件に地政学的意味を与える情報(宗教や哲学、科学、政治等の思想)庄司潤一郎; 石津朋之. 地政学原論 (日本経済新聞出版) . 日経BP. Kindle 版. 』
『この接続性をめぐる政治を、帝国主義諸国が群雄割拠していた19世紀末にスウェーデンの法律家ルドルフ・チェレーンが体系化し「地政学」と命名した。
そして地政学の名を世に知らしめるために多大なる貢献を果たしたのが、大英帝国の地理学者にして政治家であったハルフォード・マッキンダーである。
庄司潤一郎; 石津朋之. 地政学原論 (日本経済新聞出版) . 日経BP. Kindle 版. 』
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ジョージア (国)(再掲)
https://http476386114.com/2022/05/31/%e3%82%b8%e3%83%a7%e3%83%bc%e3%82%b8%e3%82%a2-%e5%9b%bd/『※ 途中までは、読んだ…。
※ あまりに長いので、止めておく…。
※ 時間がある時に、また読もう…。
※ ただ、「タマル」は、civ6に出てくる…。「女王ではなく、王なのです。」とか言っていた…。』という感じだったな…。
※ そうは言っても、オレ自身の「知識体系」も、進化している…。
※ 「地政学」的に、特に注目した部分を、析出しておこう…。




































