


https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64091040Z10C20A9EA3000/

『平井卓也デジタル改革相は19日、都内で「デジタル庁」創設に向けた実務者による初の検討会を開いた。「菅義偉首相はやると言ったらやる。結果を出すしかない」と述べ、骨格づくりを急ぐ考えを示した。行政の縦割りを打破して進めるには新組織の権限をどこまで強めるかなどが焦点となる。
平井氏は検討会終了後、月内にも「デジタル庁設置準備室」を立ち上げると明らかにした。検討会に出た実務者を中心に内閣官房、総務省、経済産業省など関係省庁から40~50人規模を集める。
休日返上で開いた19日の検討会には内閣官房の職員を中心に出席し、一部はリモート形式で参加した。平井氏はスピード重視を訴えたうえで「スタートアップ企業のように小さく産んで大きく育てる」と語った。
行政のデジタル化を推進するためのデジタル庁創設に向けた準備の焦点は主に3つある。
1つ目は権限だ。首相はイメージを「複数の役所に分かれる政策を強力に進める体制」と説明する。平井氏は「設置法の中でどこまでの権限を持たせるか。今までにない権限を頂かないといけない」と強調した。
デジタル関連政策は内閣府や内閣官房、経産省、総務省などに担当が分かれ司令塔役がいない。政府内で内閣府設置法を改正して設置する案のほか、司令塔として機能させるために他省庁との横並びを避け、首相直轄の組織にする新法を制定する案もある。
検討会では出席者から「人事権を各省に持たせてはいけない」との意見が出た。平井氏は賛同したうえで「首相の強いリーダーシップでバックアップしてもらわないと抵抗に遭う」と言及した。
所管範囲の線引きも難しい課題となる。平井氏は最優先事項として「コロナ禍でできなかったこと」を挙げる。
行政のデジタル化が進んでおらず一律10万円の現金給付が遅れたことや、国が全国のPCR検査結果の集計に手間取ったことなどを念頭に置く。
各府省庁のシステムの仕様統一のほか、地方自治体や行政機関同士の連携強化も進める方針だ。
平井氏は成長戦略につなげるため、企業や公共インフラ部門のデジタル化もあわせて所管する方向で議論を始めた。
民間人の登用にどこまで積極的に取り組むかも新組織の実効性に関わる問題だ。デジタル庁のトップに民間人を据える検討を進める。社会全体でデジタル化を進めるには民間技術者らの力も必要だとの指摘は多い。
政府は検討会の議論を踏まえ、23日に全閣僚を集めた会議を開く。デジタル庁は2021年秋までに新設する方針で、21年1月に召集する通常国会への関連法案の提出をめざす。』
総裁選支えた「菅グループ」 無派閥・非世襲の若手集う
政界Zoom
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63999820X10C20A9000000/




『「無派閥・非世襲」の菅義偉氏が16日、第99代の首相に就任した。近年の自民党出身の首相は政治家一族で派閥に属する議員が多く、菅氏は異色の経歴である。派閥という党内基盤を持たずに宰相の座をつかんだ陰には、同じ「無派閥・非世襲」の若手議員による支持があった。
「自民党総裁選に出馬してください」
「ずっと付いていきます」 8月31日、衆院議員会館の菅氏の事務所に詰めかけた14人の若手議員が菅氏に一人ずつ思いを伝えた。菅氏はうなずきながら聞き終えると答えた。「その覚悟だ」
集まった議員には3つの共通点がある。(1)衆院当選4回以下で(2)派閥に属さず(3)親が国会議員ではない「非世襲」である――。
菅氏と同じ神奈川県選出の坂井学氏や山本朋広氏らが中心で「ガネーシャの会」というグループ名を持つ。この日は参加しなかった牧原秀樹氏もメンバーの一人だ。
翌9月1日には島村大氏や三宅伸吾氏ら参院議員11人が菅氏に出馬を要請した。こちらも全員が「無派閥・非世襲」で、参院当選2回以下が大半を占める。両グループとも菅氏を支持する議員の集まりで、定期的に会合を開く。
菅氏に出馬要請した参院の無派閥議員ら(1日、国会内)
ほかにも無派閥で個別に菅氏との結び付きが強い議員は複数いる。合計すると30~40人規模とされ、党内で「菅グループ」と呼ばれる。
官房長官として長期政権の要の役割を果たしてきたとはいえ、党内基盤が何もなければ首相になることは難しい。総裁選で党内7派閥のうち5派閥が菅氏を支持した背景には「菅グループ」という「基礎票」もあった。
若手議員は総裁選でSNS(交流サイト)の発信や地方議員とのオンライン懇談会などの調整を担った。菅氏にとっては他の派閥議員よりも信頼できる実動部隊である。
「菅グループ」はこれまで目立たないように活動してきた。菅氏が派閥政治に否定的だったことに加え、政権を支える官房長官として安倍晋三氏への対抗と誤解されかねない動きは控える必要があった。菅氏が総裁選への意欲を聞かれるたびに「全く考えていない」と答えてきたのと同じ文脈である。
派閥の活動とは一線を画す。たとえば派閥は政治資金パーティーなどで集めた資金を所属議員の支援にあてる。内閣改造・党役員人事では所属議員の希望をリストにまとめて首相官邸に渡す。「菅グループ」はこうした活動を少なくとも表だってはしない。
派閥では総会の冒頭や最後に領袖があいさつするのが一般的であるものの、菅氏が各グループの定例会合に出席することは原則ない。あくまで菅氏を慕う無派閥の有志議員による自発的な集まりという形式をとる。
菅氏に出馬要請したガネーシャの会の議員ら(8月31日、国会内)
「菅グループ」の代表格であるガネーシャの会は各派閥が総会を開く毎週木曜日に、昼食の定例会合を開く。派閥に属する国会議員が参加できないようにする仕組みだ。夏場の泊まり込みの視察や、政策テーマを絞った勉強会といった議員同士の交流を深める活動はしている。
ガネーシャの会を例に、グループができた経緯をみてみよう。起点は派閥に所属している人も含めて菅氏に近い若手議員が集まって「偉駄天(いだてん)の会」を発足させたことだ。
フットワーク軽く活動したいとの思いを込め、俊足のバラモン教の守護神「韋駄天」から名付けた。菅氏の名前から一文字取って「韋」を「偉」に置き換えている。
このメンバーのうち無派閥に限定して2015年ごろに結成したのがガネーシャの会である。ガネーシャは韋駄天の兄弟である「歓喜天」のサンスクリット語の呼び名だ。
菅氏の名前から「義」を借りて「歓義天の会」にする案が出て、菅氏が「あまり名前を使わないでほしい」と難色を示した経緯がある。
派閥のように正式な名簿は作成していないという。その代わり、ガネーシャの会にはメンバーであることを示す「証し」が一つある。ある議員が海外の土産として購入したガネーシャの小さな像だ。会合に集まる議員一人ひとりに配った。菅氏には少しサイズの大きい像を渡した。
複数のメンバーがグループに参加したのは菅氏から紹介されたからだと明かす。「こんな集まりがあるから連絡を取ってみるといい」「無派閥で(政治家の)2世や3世でもない人間が活動するのは大変だろう」と声をかけられたと語る。
菅氏はかつて小渕派(現竹下派)や古賀派(現岸田派)に在籍し、09年に古賀派を退会した後は無派閥を貫く。無派閥でいることの難しさを知るだけに、若手の活動に気配りしたようだ。山本氏は「我々が菅氏を支えてきたというよりも、むしろ支えてもらってきた」と語る。
菅氏は2日の総裁選への出馬記者会見で、無派閥の仲間への思いを吐露した。「派閥の連合に推されて今ここにいるわけではない。支えてくれる派閥に所属してない国会議員のエネルギーが私を押し上げている」
新内閣と党役員人事は再任の梶山弘志経済産業相のほか首相を補佐する官房副長官にガネーシャの会の坂井氏、経済・外交担当の首相補佐官に参院の支持グループメンバーである阿達雅志氏をあてた。
菅氏の総裁任期は安倍前首相の残り任期を引き継ぐため21年9月までとなる。1年後には総裁選を改めて戦わなければならない。他派閥からの支持をつなぎとめつつ自らを支える議員に報いるバランスは必要になる。
■無派閥、総裁選で影響力
自民党の派閥は衰えたとはいえ今なお資金やポスト配分で所属議員に一定の支援をする。人脈のない若手の無派閥議員では自分の希望を政権中枢に伝える機会さえ少ない。菅氏はそうした議員の面倒を見て党内基盤を築いた。
その「菅グループ」は総裁選で5派閥と一緒に菅氏を首相へ押し上げた。菅氏は過去の総裁選で派閥横断の議員グループをつくり、安倍晋三氏を首相に2度就けてきた経緯がある。自らの総裁選出馬も派閥ではない枠組みからの支持を足場にした。
今回の総裁選は派閥が勝負の流れをつくった一方で、無派閥議員が一定の影響力を示す舞台にもなった。いずれ総裁選に出ようと意欲を持つ次世代の議員も党内の15%を占める無派閥の重要性を認識したと語る。
(加藤晶也)』
規制改革で成長軌道へ 「幻の3%」を取り戻せ
菅新政権 政策を問う(1)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64002610X10C20A9MM8000/

『16日に発足した菅政権は政策運営のど真ん中に規制改革を据える。「いろいろな抵抗はあるのは分かっている。思い切ってやった方がいい」。菅義偉首相がまず号令をかけたのはオンライン診療の全面解禁だ。
これまでは初診時の対面義務といった規制に縛られ普及が進んでいない。パソコンやスマートフォンで医師がいつでも対応できれば、患者の利便性は高まる。せっかく新首相がゴーサインを出しても厚生労働省の中からは「オンラインは対面より診療の質が落ちる」といった声が漏れる。
「拙速に一律に進めるのではなく、丁寧な合意形成を」。17日の記者会見で日本医師会の中川俊男会長はけん制した。安全確保には対面が必要と主張する。地方の診療所などにはオンライン診療が広がれば都市部の病院に患者をとられるとの危機感がある。
菅義偉首相は17日午後、首相官邸に河野太郎行政改革・規制改革相を閣僚のなかで最初に呼び「しっかりやるように」と指示した。河野氏は同日午後、自身のツイッターで「行政改革目安箱(縦割り110番)」を新設した。本人がすべての意見に目を通すという。
長年維持される「岩盤規制」は簡単には崩れない。国民が得られるはずの利益を規制が奪うケースはいくつもある。
ネット企業のBotExpress(東京・港)は10日、総務省を相手に東京地方裁判所に訴えを起こした。同社が4月に始めたLINEアプリで住民票を取り寄せられるサービスに「待った」をかけられたからだ。
総務省は「国が求める電子署名で本人確認をしていない」として全国の自治体に導入しないよう通知を出した。しかしLINEは広く国民に普及し、新サービスでは顔認証など最新技術も導入している。
中島一樹社長は「国の規制は民間のアイデアや技術を阻害する。規制を解いてくれればイノベーションはもっと前進するのに」と憤る。
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政府はコロナ対策で大規模な財政出動に踏み切り2020年度の歳出総額は160兆円超に達する。公的債務の国内総生産(GDP)比率は21年度には250%を超える恐れがある。財政を立て直す原資は成長戦略で作り出すしかない。
「日本は潜在成長率を今より1.5~2ポイント程度高められる」。世界がリーマン・ショックに揺れていた08年、ペンシルベニア大学のクライン教授ら日米の経済学者がこんな共同研究をまとめた。米国のように規制緩和を進めてIT(情報技術)革新を進めれば3%成長を達成できると提言した。
その後、日本の潜在成長率は1%未満に落ち込み欧米各国を下回って推移した。この結果を見れば、革新を起こす努力を怠ったといわざるをえない。世界銀行が毎年公表するビジネスのしやすさに関するランキングで日本は29位にとどまる。
九州大学大学院の篠崎彰彦教授は「取り逃がした成長力を取り戻すには、今からでも医療や教育など公的サービスをもっと民間に開放すべきだ」と強調する。
◇
アベノミクスが掲げた「3本の矢」のうち成長戦略は尻すぼみに終わった。菅新政権が取り組むべき政策を検証する。』
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO63981990X10C20A9MM8000/
『政府は行政のデジタル化を推進する「デジタル庁」を2021年秋までに新設する方針だ。各省庁にある関連組織を一元化し、強力な司令塔機能を持たせる。新型コロナウイルス禍で露呈した行政手続きの遅さや連携不足に対応する。21年1月に召集する通常国会にIT(情報技術)基本法(総合2面きょうのことば)改正案などを提出する。
菅義偉首相は17日、平井卓也デジタル改革相にデジタル庁の検討を急ぐよう指示した。来週にも全閣僚を集めた会議を開いて早期の具体化を求める。平井氏は内閣官房や総務省、経済産業省、民間機関などから人を集めた準備委員会をつくり、制度設計に着手する。
最新のデジタル化の動向に対応するため、民間人をトップに据える案を検討する。
新設するデジタル庁は各府省庁のシステムの一括調達を進め、データ様式を統一していく。省庁間だけでなく地方の自治体や行政機関の間でもスムーズにデータをやりとりし、行政手続き全般を迅速にする。ビッグデータの分析にも役立つため、政策効果の計測などにも使えるようになる。
マイナンバーカードの普及促進策も練る。健康保険証など個人を識別する様々な規格を統合する。カード1枚で手続きが済むよう改善する戦略を実行する組織にする。
オンライン診療や遠隔教育は厚生労働省と文部科学省が所管しているが、デジタル庁も推進策を示す。オンライン診療に必要な電子カルテは病院や診療科ごとに表記がバラバラで普及が遅れている。政官業が既得権益を守るためにデータ共有に消極的なケースがあるとの指摘もある。デジタル庁がデータ形式の統一や標準化を促す方針だ。
内閣府設置法を改正して設置する案や、首相直轄の組織にするため新法を制定する案がある。IT基本法改正案も提出し、政府のIT戦略のトップである内閣情報通信政策監(政府CIO)の立場も強化する予定だ。』
新政権はデジタル庁を本当に実現できるか、e-Japanの失敗を繰り返すな
木村 岳史 日経クロステック/日経コンピュータ
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00849/00032/

『突然の首相交代だった。「安倍1強体制」とも呼ばれ、7年8カ月に及んだ長期政権があっけなく幕を閉じ、新政権が発足することになった。
気になるのは、安倍晋三政権の政策がどれだけ新政権に引き継がれるかだ。もちろん大半の政策はそのまま継承されるだろう。新型コロナウイルスの感染防止対策が当面の最重要課題であることは変わらないし、経済の立て直しに向けた取り組みもそのまま引き継がれるのは間違いない。外交政策についても踏襲されるだろう。では、ITやデジタル関連の政策はどうか。
2020年7月17日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2020」(骨太方針)は、まさに「デジタル一色」に染まった。例えば「感染症対応策の実施を通じて(中略)特に行政分野でのデジタル化・オンライン化の遅れが明らかになった」と述べた上で、「デジタル・ガバメントの構築を、早急に対応が求められる、言わば一丁目一番地の最優先政策課題として位置付ける」とした。このほか企業や社会全体のDX(デジタル変革)の推進やデジタル化推進に向けた規制改革などについても明記した。
骨太方針は、首相が議長を務める経済財政諮問会議でまとめる経済財政の基本方針で、年末の予算編成や税制改正の指針となる。従って普通なら、骨太方針に多数盛り込まれたデジタル関連政策はこの先、順次具体化されていく。新政権でもそれは変わらないと考えるのが順当なところだ。
不安は「票にならないIT」
ただITやデジタル関連政策にとって突然の首相交代は不吉だ。前例がある。2001年1月に当時の森喜朗内閣が発表した「e-Japan戦略」である。「我が国が5年以内に世界最先端のIT国家となることを目指す」とぶち上げたものの、同年4月に森首相は退陣してしまう。e-Japan戦略は小泉純一郎内閣へと引き継がれたが、ネットバブル崩壊の余波もあり、徐々に推進力を失っていく。
その結果、目標にした「世界最先端のIT国家」の実現は夢のまた夢となった。「変化の速度が極めて速い中で、現在の遅れが将来取り返しのつかない競争力格差を生み出すことにつながる」とは、e-Japan戦略の中に記されていた警鐘だが、まさに今、その「取り返しのつかない競争力格差」を目の当たりにしているわけだ。
もちろん今は当時とは違う。ITやデジタルの重要性は格段に高まっているからだ。一律10万円を給付する特別定額給付金に絡むシステムトラブルなど、新型コロナ禍により日本のITの後進性が嫌というほど明らかとなり、政治家や官僚の問題意識も高まった。新型コロナ禍対策をはじめ地方創生、防災、教育などの政策でもデジタル活用が前提となっている。
だが安心はできない。骨太方針では省庁や地方自治体のシステムの標準化や相互連携を推進するとあり、「デジタル庁」構想も浮上しているが、実現のためには強力な指導力が必要であるのは周知の通りだ。規制改革もしかり。例えば、新型コロナ禍により初診患者にもオンライン診療が認められることになったが、感染収束までの特例措置にすぎない。日本医師会などの慎重論を押し切って恒久化するにも強い指導力が不可欠だ。
新政権にそうしたリーダーシップを期待できるかは不透明だ。以前、複数の政治家から「ITは票にならない」との話を聞いたことがある。衆議院選挙が近いとなれば、内閣支持率にもよるだろうが、デジタル関連政策の優先度は大きく下がる可能性もある。だが世界レベルでのデジタル革命が進行する中、日本のDXが失速する事態になれば、今度は「取り返しのつかない遅れ」程度では済まなくなる。』
田崎史郎氏「今回の総裁選はそもそも“石破潰し”」その背景となった積怨とは
https://news.radiko.jp/article/station/LFR/46124/

『2020.09.16 up ニュース/報道
提供:ニッポン放送
政治ジャーナリストの田崎史郎氏が9月15日(火)、ニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に電話出演。菅新総裁に決定した今回の自民党総裁選における票の動きと、その背景を解説した。
自民党石破派の政治資金パーティーで講演する石破茂元幹事長=2018年5月30日午後、東京都内のホテル ©共同通信社
安倍首相の周りの人々が岸田という名前を書いた
辛坊)14日の投票行動で言うと、事前に想定されていたよりも岸田さんに国会議員票が20票くらい上乗せされていますよね。
田崎)24票ですね。
辛坊)私は思うのですが、この24票の正体っておそらく永遠に明らかにならないと思うのですが、例えば安倍さんとか森さんとかは最後に岸田さんに入れたのではないかと思うのですけれども。
田崎)そこまでは言いませんが、安倍さんの周りの人たちが入れた可能性は高いですね。
辛坊)そこで私が思うのは、岸田さんを応援したいというよりも、とにかく石破さんを余程嫌いなのだと思うのです。
田崎)両方ですよ。今回の総裁選はそもそも石破潰しなのですよ。安倍総理が岸田さんではなくて菅さんの擁立に動き出したというのも、あの段階では岸田さんは石破さんに勝てないと。だから、石破さんに勝てる候補を探さなくてはいけないということで、菅さんを擁立していく方向に流れていくのです。そして、今回いざ投票になったときに菅さんがとるのはいいのですけれども、石破さんが岸田さんよりたくさんとりそうだとなったときに、これは岸田さんの票を上乗せするしかないということで、安倍さんの周りの方々が岸田という名前を書いたのだと思います。
辛坊)これはどうなのでしょう。組織的に誰かが主導して行われたのか、かなり自発的に行われたのかどちらだと思いますか。
田崎)僕は、幾分、誰かがやろうと言ったのだと思いますよ。
辛坊)こういうときに音頭を取れるのは限られていますよね。誰ですかね。
田崎)限られていますね。しかし、安倍総理自らそれをやるのはリスキーですから。安倍さんの意思を体現できる誰かがやって、一方で自主的に岸田さんに投票された方もいるのだろうと思いますね。
自民党総裁選の投票結果=2020年9月14日午後、東京都港区 ©産経新聞社
石破氏は総理の人事権を全面的に否定してしまった
辛坊)背景にあるのは、石破さんがそれだけ国会議員に嫌われているということなのでしょうけれども。これ田崎さんは言いにくいかもしれませんし、私もいろいろなところで話を聞くのですが、田崎さんが見るところで石破さんがここまで嫌われている理由はなんだと思いますか。
田崎)やはり批判しすぎたことですね。安倍総理は2012年の総裁選の後、石破さんを幹事長に据えるわけです。処遇したわけです。そして、幹事長を2年やらせているのです。その後、ちょうど平和安全法制を前にして安全保障担当で防衛大臣をやってほしいと。そのときに石破さんは安全保障に対する考え方が違うからと断るのです。そして次に地方創生担当大臣をやってくださいと言われてそれを受けるのです。そして、今度地方創生担当大臣をもう1回やってくださいと言われたらそれを断ってしまったのですね。安倍さんの人事権を断るということで総理の人事権を全面的に否定してしまったわけです。そしてやめた後、ずっとことあるごとに政権批判を繰り返しているのです。だから、ある社の社長が言われていたのですが、どこの会社でも自分を批判ばかりしている人を後見に据えたりしないと。そういうことだろうと思いますね。
辛坊)今回党員票でも菅さんへの流れができて、あれを見る限り石破人気というものの正体は結局アンチ安倍の受け皿だったということで、安倍さんがいなくなるとアンチ安倍の存在感自体がなくなっていくという、結局そういうことだったのではないかと。
田崎)そういうことですね。それがよりはっきり現れているのは国会議員票ですよね。2年前の総裁選のときに安倍総理と石破さんが1対1で争って、石破さんには73人の国会議員が投票したのです。しかし、今回は26人なのですよ。そうすると3分の1くらいに減っているのです。おそらく73人から26人引いた人たちはアンチ安倍の人たちで、その人たちが石破さんに乗っていた。それを本人が少し勘違いしたのではないかと思いますね。
辛坊)なかの1人に、例えば小泉進次郎さんは前回石破さんに入れて今回菅さんに入れたまさにその1人ですよね。』
https://diamond.jp/articles/-/248937
「スガノミクス」の本丸は労働市場改革、待ったなしの最重要課題とは
永濱利廣:第一生命経済研究所 調査研究本部 経済調査部 首席エコノミスト
https://diamond.jp/articles/-/248937
連載 政策・マーケットラボ
2020.9.17 3:40 会員限定今月残り3記事(※無料会員登録で、5本までは読める)






※ マクロ経済的には、課題は明らかだ…。アベノミクス(形を変えた「円安政策」)で、日本の「大企業(=輸出産業)」を支援した…。だから、「大企業(=上場企業)」は、息を吹き返した…。
※ しかし、「利益」は「内部留保」として、企業内に積まれて、さっぱり「経済循環」の方に回らなかった…。「株高」で、「資産家層」は潤ったが、そういう層の「贅沢消費」だけでは、「経済の好循環」回すには、力不足だった…。
※「経済の好循環」を回すには、「小規模零細企業」に雇われている層の消費活動を活発にする必要がある…。しかし、それがなかなか難しい…。将来の「生活設計」「人生設計」にも、関わる話しだ…。無闇に、お上が「消費しろ!」と叫んだところで、空しいだけだ…。
※ しかも、税制的には、「消費税」頼みだから、ここの消費を直撃する…。
※ それでもなんとか、IFRSとか、デジタルトランスフォーメーションとか、「貯蓄から、投資へ!」とか、待機児童ゼロとか、働き方改革とか、言い立てて、「消費喚起策」に出ているが、なかなか効果は出ない…。
『菅新政権の経済政策
最優先はコロナ対策
16日、発足した菅新政権は、「アベノミクス継承」を強調しており、さらにそれを前進させると明言している。
当面は、すでにコロナ対策として強化されている金融・財政政策の継続に加えて、安全性の高いワクチンや治療薬の普及などで、新型コロナウィルスに対する国民の不安心理を軽減することで需要喚起を図ることが最重要課題だ。
新型コロナウィルス発生前も米中摩擦や消費増税の影響などにより日本経済は景気後退局面にあり、経済は正常化していなかった。
こうしたことからすれば、コロナ後も需要喚起策は最重要課題になる。
アベノミクスの進化版となるであろう「スガノミクス」は、アベノミクスで道半ばとなった成長戦略の中でもほとんど進まなかった労働市場改革を前進させなければならない。
リーマンショック時を上回る
過去最大の需要不足状態
そもそも、なぜアベノミクスで経済が正常化まで到達しなかったのかというと、円安などで好況を謳歌した企業の儲けが十分に投資や従業員などへの配分に回らず、企業が貯蓄超過主体から脱することができなかったことが主因だ。
図表1:国内ISバランスの推移
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アベノミクス以前に長期デフレが放置されてきたことにより、企業や家計のマインドが過度に委縮していたことが軽視されていた。
さらに企業業績の回復が賃金上昇→消費拡大→企業の売り上げや利益拡大といった経済の好循環が機能する前の2014年4月に消費増税をしたことや、結果的にすでに景気後退局面入りしていた2019年10月にも消費増税を実施したことで、経済の正常化を遠のかせてしまった。
図表2:実質個人消費と実質公共投資
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こうした中で起きたコロナショックにより日本経済のデフレギャップはリーマンショックを上回る過去最大の需要不足状態に陥ってしまったわけだ。
図表3:GDPギャップの推移
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不安心理が払しょくされないと
需要は元に戻らない
リーマンショック時は金融危機が原因だったため、大規模な金融・財政政策で経済の立て直しは可能だった。
しかし、コロナショックはウイルス感染が原因のため、どんなに大規模な金融・財政政策を講じても、感染拡大に対する不安心理が払しょくされない限り、需要は元に戻らない。
新政権は、国民のコロナ感染に対する不安心理を一刻も早く軽減させることが最優先の課題となる。
具体的には、いかに早く日本国民全員に安全性の高いワクチンや治療薬を普及させるかが重要だ。
それと並行して、予備費なども有効に活用してウィズコロナの中でも少しでも国民の不安心理軽減に貢献するようなメリハリの利いた検査・医療体制の充実や、自治体の裁量などを拡げるコロナ特措法の改正なども急ぐべきだろう。
実質賃金拡大が明確になるまで
財政・金融は拙速な「出口」回避
そして感染収束後の政策対応として最も重要なのが、金融財政政策の正常化をあせらず、拙速に政策が「出口」に向かわせないことだ。
アベノミクスの期間、日本経済が「戦後2番目」に長い景気拡張期だったにもかかわらず、景気の力強い回復を実現できなかった最大の要因は、経済の好循環が機能し始める前に消費増税と公共事業削減を行い、せっかくの金融緩和の効果を相殺してしまったからだ。
コロナ対策で巨額の国債発行をしたことで、財政健全化を重視する緊縮財政派からはコロナ増税の議論が出てきている。しかしスガノミクスでは、コロナ感染が収束、消費などが回復してデフレギャップが縮小したとしても、好循環が持続して雇用者の実質賃金が明確に拡大基調になるまでは、緊縮財政はできるだけ避けるべきだ。
需要刺激という面では、所得の海外流出を防ぐこともこれに貢献する。
アベノミクス以前、リーマンショック後、超円高などに見舞われ「産業の六重苦」が言われたが、その中に「高い電気料金」問題があった。
電気料金に反映されている天然ガス価格を日米欧で比較すると、日本では東日本大震災後に中東諸国と高値で長期契約してしまった影響もあり、アベノミクス以降も高止まりしている。
シェール革命で国内調達ができる米国は低水準であることに加え、輸入にも依存している欧州でもだぶついた米国のシェールを大量に輸入して貯蔵することなどにより、近年、急激に天然ガスの価格を下げている。
図表4:天然ガス価格の推移
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スガノミクスではオールジャパンでエネルギーの調達先を多様化することなどに積極的に取り組み、天然ガス価格の抑制を通じて所得の海外流出を最小限に抑えることにも取り組むことだ。
抜本的労働市場改革に踏み込め
流動化とあわせ就業支援
コロナ後の経済正常化を考えれば、労働市場改革が「一丁目一番地」だ。
日本の人口動態を考えれば、特に2020年代後半以降の人口減少がかなりの勢いで加速し経済成長も非常に厳しくなることを考えると、労働市場改革は経済構造の改革では最も重要と言える。
実際に足元でも、本当は働きたいが何がしかの理由で求職活動をしていない、いわゆる就業希望の非労働力人口が300万人以上(2020年4-6月期時点)、存在している。
図表5:就業希望の非労働力人口
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その理由の内訳をみると、「適当な仕事がありそうにない」と回答する女性が最も多く、続いて「出産・育児のため」とする女性が多い。これを考えると、就業のミスマッチ解消や出産・育児などの支援が引き続き喫緊の課題と言える。
また、コロナ後は女性のシニアだけではなく、外国人の活躍も重要と考えられる。
しかし、こうした女性・シニア・外国人の就業をこれまで阻害してきた最大の要因が日本特有の雇用慣行だ。
同じ会社に長く勤めるほど賃金などで恩恵が受けやすい就業構造を変えていくことが必要だろう。これが変わらない限り、なかなか労働市場の流動化は難しい状況だと思われる。
象徴的なのが、正社員の賃金構造がいまだ年功序列となっていることだ。これを打破すべく一刻も早く踏み込む必要があるのが、正社員の解雇ルールの明確化やホワイトカラー・エグゼンプション制度の導入だ。
安倍政権でも導入が図られたが、結局はとん挫した。しかし日本経済の生産性をあげるためにも労働市場の流動化を促す政策が重要だ。
参考にしたいのが、スウェーデンやデンマークなどの積極的労働市場政策である。
スウェーデンやデンマークなどの労働市場が流動的であるため、企業はその時々で必要な労働力を確保し、積極的に従業員を採用できる。
ただ見落とされがちなのは、労働市場の流動化とあわせて、政府が失業者に対し、新たなスキルを得て労働市場に戻れるようなさまざま就業支援をしていることだ。
失業しても学び直して、前職より条件のいい仕事に就くことが普通に行われている。
これを日本でも「スガノミクス」の一環として実践すれば、人手不足となりがちなデジタル関連産業なども優秀な人材を確保しやすくなるだろう。
コロナショックを受けた産業構造の変化に対応して迅速に労働力がシフトする効果が見込めるだけでなく、手厚い職業訓練などで労働力のスキル向上にもつながる。
こうして労働市場が流動化すれば、企業が人材引き留めのために賃上げを積極的にするといった好循環が生まれる。
「デジタル庁」は
新しい話ではない
労働市場改革は菅氏が重視するデジタル化とも関係する。
コロナ禍で海外諸国との遅れが改めて浮き彫りになったデジタル化をいかにキャッチアップするかも優先して取り組むべき政策課題だ。
民間のデジタル化を進めるには、行政のデジタル化を進めることが欠かせない。
菅氏はアベノミクス継承を基本にIT推進や省庁の縦割り排除などを掲げるが、行政のデジタル化は「骨太2020」でも最優先課題とされていた。
特に、官邸に司令塔機能を作り、今後一年間を集中改革期間として、マイナンバー制度の抜本改革や地方自治体のシステム標準化に取り組むとされているが、スガノミクスではそれをキャッチフレーズ倒れにするのでなく具体化することが問われる。
何よりも期待したいのは、政府がデジタル化にかかわるソフトウェアや研究開発投資など無形資産への投資を拡大することだ。
政府がデジタル化を後押しすることによって、産業構造が高度化し、労働市場改革との相乗効果でハイテク人材などの雇用も増える。
政府のデジタル化を含む無形資産投資を国際比較すると、日本は無形資産の割合が低く、建設投資がほとんどを占めている。
図表6:政府固定資産に占める無形固定資産比率
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政府の無形資産投資を拡大するには、デジタル化投資が投資とみなされない財政法を大胆に見直し、無形資産投資の財源を赤字国債発行でもできるようにする法改正が欠かせない。
また電子政府についても、加速が必要だ。日本政府は2000年代からさまざまな計画を立て、電子政府に取り組んできた。日本は電子政府の取り組みに無策との批判もあるが、国連の電子政府ランキングでも上位に食い込んでいる。
しかし、個人の電子申請利用率は最下位だ。それを考えると、行政のデジタル化の実効を上げるには、利用者の目線での取り組みが大事だ。
(第一生命経済研究所 経済調査部首席エコノミスト 永濱利廣)』
https://www.47news.jp/politics/5266107.html

※ そういう「細かいこと」の話しじゃ無いのでは…。
国政の舵取りとは、「国際情勢」に立脚した、骨太い「グランドデザイン」が据えられるべきものなのでは…。
菅治世は、「細かいこと」中心で、「細かいことの積み重ねで」行くことになるんだろうか…。
『菅義偉首相は16日夜の記者会見で、規制改革のアイデアとして「縦割り110番」の検討を河野太郎行政改革担当相に指示したと明かした。国民から、行政縦割りの弊害について通報を受け、対応の参考にする取り組みと説明した。「規制改革を政権のど真ん中に置いて大臣と首相でしっかりやってきたい」と意気込んだ。』