閣議等議事録の作成・公開制度の方向性について(修正案)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gijiroku/sagyou3/3siryou3.pdf
『資料3
閣議等議事録の作成・公開制度の方向性について(修正案)
閣議議事録等作成•公開制度検討チーム作業チーム
閣議の議事録等については、閣僚同士の議論は自由に忌憚なく行われ
る必要があること、また、内閣の連帯責任の帰結として、対外的なー
体性、統一性の確保が要請されていることから、これを作成し公開す
ることは適当でないとされてきた。
昨年4月に施行された公文書等の管理に関する法律(平成21年法律
第66号。以下「公文書管理法」という。)は、閣議等の政府の重要な
会議について一律に議事録等の作成を義務付けるものではない。
しかし、原子力災害対策本部を始め東日本大震災に対応するために設
置された会議において議事録等が作成されていなかった問題を契機と
して、政府の重要な意思決定にかかわる会議については、「行政が適正
かつ効率的に運営されるようにする」とともに、「現在及び将来の国民
に説明する責務が全うされるようにする」という同法第1条に掲げら
れた公文書管理制度の目的に照らし、議事録等を作成し、保存してい
<ことが望ましいのではないかと考えられるようになってきている。
なかでも閣議は、内閣の最高かつ最終的な意思決定の場であるため議
事録等を作成することが望ましいと考えられるが、その一方で、議事
録等が比較的短期間のうちに公開されれば、憲法上の連帯責任を負う
内閣の一体性、統一性を確保しつつ自由な意見交換を行うことができ
なくなるという問題がある。
この点について、我が国と同様に議院内閣制を採用するイギリスやド
イツにおいては、記録の作成・保存と公開は分けて考え、閣議の議事
録等を作成・保存した上で、一定期間は原則非公開とすることにより、
このような問題を回避している。
このため、当作業チームとしては、このような制度を参考にしつつ、
以下の方向性により、閣議の議事録を作成し一定期間後に公開する仕
組みを制度化することとし、公文書管理法を改正して所要の規定を置
くことを提案する。
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〇公文書管理法
(目的)
第1条この法律は、国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実の記録である公文書等
が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主
体的に利用し得るものであることにかんがみ、国民主権の理念にのっとり、公文書等の
管理に関する基本的事項を定めること等により、行政文書等の適正な管理、歴史公文書
等の適切な保存及び利用等を図り、もって行政が適正かつ効率的に運営されるようにす
るとともに、国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明す
る責務が全うされるようにすることを目的とする。
第4条行政機関の職員は、第一条の目的の達成に資するため、当該行政機関における経
緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に
跡付け、又は検証することができるよう、処理に係る事案が軽微なものである場合を除
き、次に掲げる事項その他の事項について、文書を作成しなければならない。
ー法令の制定又は改廃及びその経緯
二 前号に定めるもののほか、閣議、関係行政機関の長で構成される会議又は省議(こ
れらに準ずるものを含む。)の決定又は了解及びその経緯
三 複数の行政機関による申合せ又は他の行政機関若しくは地方公共団体に対して示
す基準の設定及びその経緯
四個人又は法人の権利義務の得喪及びその経緯
五職員の人事に関する事項
1.議事録の作成義務
閣議(閣僚懇談会を含む。以下同じ。)については、政府における意
思決定に至る過程として特に重要であることに鑑み、議事録の作成を
法律上、義務付けることとする。
意思決定に至る過程の記録としての議事録は、各種政策判断に当た
っての参考資料として「行政の適正かつ効率的な運営」に資するとと
もに、現在の国民への説明のためのバック・データとして、また、後
世の国民が政策を検証するための歴史資料として「現在及び将来の国
民に説明する責務」を全うすることに資すると考えられる。
([)議事録の記載事項
意思決定に至る過程の記録として法律上の作成義務を課すという
趣旨を踏まえ、議事録には、閣議における主要な発言を記載する。
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- 一定期間経過後の国立公文書館等への移管義務
公文書管理法では、一般的な文書の保存期間や移管・廃棄について
は、行政機関の長が判断することとしている。
しかし、閣議の議事録については、歴史公文書等としての重要性に
鑑み、作成から法律で定める一定期間を経過した時点で国立公文書館
への移管を義務付ける。
国立公文書館への移管後は、公文書管理法に基づき、一般の利用に
供し、利用の促進を図る。
〇公文書管理法
(整理)
第5条 行政機関の職員が行政文書を作成し、又は取得したときは、当該行政機関の長は、
政令で定めるところにより、当該行政文書について分類し、名称を付するとともに、保
存期間及び保存期間の満了する日を設定しなければならない。
5 行政機関の長は、行政文書ファイル及び単独で管理している行政文書(以下「行政文
書ファイル等」という。)について、保存期間(延長された場合にあっては、延長後の
保存期間。以下同じ。)の満了前のできる限り早い時期に、保存期間が満了したときの
措置として、歴史公文書等に該当するものにあっては政令で定めるところにより国立公
文書館等への移管の措置を、それ以外のものにあっては廃棄の措置をとるべきことを定
めなければならない。
(移管又は廃棄)
第8条 行政機関の長は、保存期間が満了した行政文書ファイル等について、第5条第
5項の規定による定めに基づき、国立公文書館等に移管し、又は廃棄しなければならな
い。
(1)移管までの期間
移管までの期間については、①公文書管理法に基づく閣議資料の
保存期間(業務上必要な期間及び歴史公文書等として国立公文書館
に移管し公開されるまでの期間)が3 0年とされていること、②諸
外国の閣議等の議事録が移管・公開されるまでの期間が内閣の一体
性、統一性を確保しつつ自由な意見交換を行う必要性に鑑みて3 0
年とされていること(イギリスは、現行は原則3 0年だが、2013年
から10年をかけて2 0年に移行。ドイツは原則3 0年)などを踏
まえ、原則として3 0年とする。
ただし、諸外国の例なども踏まえ、特に必要な場合にはこの期間
を延長することができる仕組みについて検討する。
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〇いわゆる「30年ルール」について
公文書の一般的な非公開期間は、作成から3 0年を超えないものとすべきという国際的
な慣行(1968年国際公文書館会議(ICA)マドリード大会決議)
〇公文書管理法施行令の別表に定める文書の保存期間
•「閣議を求めるための決裁文書及び閣議に提出された文書」-30年
•「外国との交渉に関する文書」ー 3 0年
〇諸外国の閣議等の議事録が移管・公開されるまでの期間
•イギリス:3 0年(情報自由法、公記録法)
2010年に30年から20年に改正され、2013年から10年かけて20年に移行する予定
ただし、国家安全保障上の理由から、一部の文書は、大法官(公文書管理担当の大臣)
の承認を得て、30年以上移管しないことができる。
・ドイツ:3 0年(連邦公文書の保全及び利用に関する法律、連邦省庁における記録の
処理及び管理のためのガイドライン)
(2)公文書管理法に基づく 一般の利用等
移管後は、公文書管理法に基づき、国立公文書館において一般の
利用に供するとともに、デジタル化してホームページ上で公開する
などにより利用の促進を図る。
〇公文書管理法
(特定歴史公文書等の利用請求及びその取扱い)
第16条 国立公文書館等の長は、当該国立公文書館等において保存されている特定歴史
公文書等について前条第四項の目録の記載に従い利用の請求があった場合には、次に掲
げる場合を除き、これを利用させなければならない。
ー当該特定歴史公文書等が行政機関の長から移管されたものであって、当該特定歴史
公文書等に次に掲げる情報が記録されている場合
イ 行政機関情報公開法第5条第1号に掲げる情報
口 行政機関情報公開法第5条第2号又は第6号イ若しくはホに掲げる情報
八 公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信
頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るお
それがあると当該特定歴史公文書等を移管した行政機関の長が認めることにつき
相当の理由がある情報
二 公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他
の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると当該特定歴史公文書等
を移管した行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報
(利用の促進)
第23条 国立公文書館等の長は、特定歴史公文書等(第16条の規定により利用させる
ことができるものに限る。)について、展示その他の方法により積極的に一般の利用に
供するよう努めなければならない。
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3 .移管までの期間の非公開
内閣は、憲法上、国会に対して連帯責任を負い、外部に対してはー
体として行動する義務を負っているため、意思決定に至る過程の閣僚
間の議論は外部に漏れてはならないものとされている。
閣議における閣僚間の議論が公開された場合、憲法上の連帯責任を
負う内閣の一体性、統一性を確保しつつ自由な意見交換を行うことが
できなくなることにより、連帯責任を負うことを前提とした意見のー
致が困難となり、行政権の帰属する内閣の政策決定の質を著しく低下
させるおそれがある。
このため、閣議の議事録については、国立公文書館に移管されるま
での間は、非公開とする。
〇日本国憲法
第6 6条
3 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。
(1)議事録の公開禁止
議事録は、法律上、国立公文書館に移管するまでの間は、保有す
る行政機関が公にすることを禁止する。
(2)行政機関情報公開法との関係
【案A】行政機関情報公開法を適用
行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第
42号。以下「行政機関情報公開法」という。)を適用し、同法の開示
請求権の対象とする。
(ア)不開示情報に該当することを明確化
閣議の議事録に記録されている情報は、行政機関情報公開法の
「不開示情報」として取り扱うこととし、同法第5条第6号の「公
にすることにより、事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすお
それのある情報」等に該当することを法的に明確にするための措
置について検討する。
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〇行政機関情報公開法
(行政文書の開示義務)
第5条行政機関の長は、開示請求があったときは、開示請求に係る行政文書に次の各号
に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き、
開示請求者に対し、当該行政文書を開示しなければならない。
三 公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼
関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれ
があると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報
四 公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の
公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めること
にっき相当の理由がある情報
六 国の機関、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人が行う事務又は事
業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又
は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの
イ〜ホ(略)
(審査会への諮問)
第18条 開示決定等について行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)による不
服申立てがあったときは、当該不服申立てに対する裁決又は決定をすべき行政機関の長
は、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、情報公開•個人情報保護審査会(不服
申立てに対する裁決又は決定をすべき行政機関の長が会計検査院の長である場合にあっ
ては、別に法律で定める審査会)に諮問しなければならない。
ー 不服申立てが不適法であり、却下するとき。
〇情報公開•個人情報保護審査会設置法
(審査会の調査権限)
第9条 審査会は、必要があると認めるときは、諮問庁に対し、行政文書等又は保有個人
情報の提示を求めることができる。この場合においては、何人も、審査会に対し、その
提示された行政文書等又は保有個人情報の開示を求めることができない。
2 諮問庁は、審査会から前項の規定による求めがあったときは、これを拒んではならない。
〇諸外国の閣議の議事録の情報公開法における位置付け
(1) イギリス:情報自由法を適用した上の不開示情報に近い位置付けの一方、不服審査
機関への大臣拒否権を付与
•閣議の議事録は、情報自由法の「除外情報」(Exempt Information)の一つに掲げられ
ているが、これは無条件に不開示となる「絶対的除外(Absolute Exemption)」ではな
く、公益性審査(Public Interest Test)を行った上で不開示となる「条件付き除外
(Qualified Exemption) J である。
•不開示決定への不服申立ては、行政機関への命令権をもつ「情報コミッショナー」や「情
報権審判所」において審査される。
•その一方、これらの機関の裁決に対しては「大臣拒否権」制度があるため、実際には、
閣議の議事録については、ごく例外的な事例を除いて「大臣拒否権」が発動され、30年
経過前には開示はなされていない。
(2) ドイツ:適用除外に近い位置付け
連邦情報公開法では秘密指定されている文書については開示請求権が存在しないこと
とされており、閣議の議事録は秘密指定されているため(現在1982年以前のものまで
は秘密指定が解除)、30年経過前には開示はなされない。
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(イ)公益裁量開示の取扱い
行政機関情報公開法第7条(公益裁量開示)の規定が適用され、
行政機関の長(閣議の議事録の場合は内閣総理大臣)は開示請求
に対して公益上特に必要があると認める場合には議事録を開示す
ることができる。
ただし、閣議の議事録について開示の判断を行おうとするとき
には、閣議の議事録の作成•公開制度の適正な運用•維持の観点
から、第三者機関の意見を聴く仕組みを設けることについて検討
する。
〇行政機関情報公開法
(公益上の理由による裁量的開示)
第7条行政機関の長は、開示請求に係る行政文書に不開示情報が記録されている場合で
あっても、公益上特に必要があると認めるときは、開示請求者に対し、当該行政文書を
開示することができる。
〇イギリスにおける閣議の議事録の開示・不開示の判断の仕組み
•情報自由法において、「大臣拒否権」は、「閣内大臣」又は「法務総裁」(Attorney General
閣議に出席する法律顧問であり、法廷弁護士の資格をもった国会議員の中から選ばれる。)
の権限とされている。
•実際の発動に当たっては、閣議の決定を経ることとされるとともに、前政権の議事録に
ついては法務総裁が担当し、法務総裁は当時の大臣等の意見を聴いて判断することとさ
れている。(現職の首相•大臣は前政権の閣議の議事録を見ることが慣行により禁止され
ている。)
【案β】行政機関情報公開法を適用除外
一定期間が経過する前に閣議の議事録が開示される余地を残すこ
とは、閣議における議論を萎縮させるおそれがあり、議事録の作成・
公開を制度化する趣旨を損なうと考えられるため、行政機関情報公
開法は全て適用除外とする。
〇行政機関の保有する情報の公開に関する法律(仮称)の立案に伴う関係法律との調整方針
(平成9年12月12日総務庁行政管理局情報公開法制定準備室)
2方針
(1)登記・特許等、戸籍及び刑事訴訟手続の制度における開示等規定に係る行政文書の
適用除外
登記、特許その他の専ら私法上の権利を保護するための公証制度における公簿等の
謄本・抄本の交付又は閲覧、戸籍に関する届書等の閲覧及び刑事訴訟手続における事
件記録の閲覧等の規定に係る行政文書については、情報公開法の適用除外とする。
(3)特定の行政文書の公開を禁止している規定に係る行政文書の適用除外
特定の行政文書の公開を禁止している規定であって、情報公開法を適用したとして
も当該行政文書が開示される余地が全くなく、かつ、情報公開法を適用することによ
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り当該行政文書に係る事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある行政文書につい
ては、情報公開法の適用除外とする。
〇刑事訴訟法
第53条の2 訴訟に関する書類及び押収物については、行政機関の保有する情報の公開
に関する法律(平成11年法律第42号)及び独立行政法人等の保有する情報の公開に関
する法律(平成13年法律第140号)の規定は、適用しない。
4.閣僚会議の取扱い
閣僚会議は、法律上の設置根拠を有しないものも多く、また、所掌事
務、出席者、運営方法等も多様であるため、閣議に準じた議事録等の作
成及び必要がある閣僚会議に係る議事録等の一定期間非公開について、
運用上措置することも含めて検討を行う。
』