中東情勢分析
ロシアの中東戦略とウクライナ戦争のインパクト
東京大学先端科学技術研究センター 准教授 小泉 悠
https://www.jccme.or.jp/11/pdf/2024-05/josei02.pdf
『はじめに
本稿に先立つこと4年前の2020年,『中東協力センターニュース』に拙稿を掲載いただ
く機会があったしロシアの中東戦略を,主として軍事的な観点から分析したものである。
本稿は,当時の筆者の見立てがどれだけ妥当であったかを事後検証することを目的として
いる。
通常,この種の事後検証は,もっと時間を置いて行うものであろう。しかし,この4年
の間には,ロシアによるウクライナへの全面侵攻(第二次ロシア・ウクライナ戦争)とい
う事態が起きた。当初,ロシアはウクライナをごく短期間で降伏させられるとの見通しの
下に侵略を開始したと見られているが,ウクライナ側はロシアの(あるいは西側の)予想
を上回る頑強な抵抗を示した。この結果,ロシアと西側の政治•経済•軍事的な対立関係
は(おそらく ロシア側の予想を大きく上回る形で)長期化し,ロシアの外交的•経済的孤
立化,スウェーデン・フィンランドのNAT〇加盟,旧ソ連諸国のロシア離れといった広
範な影響を引き起こした。
当然,その影響は中東にも及んでいるはずだ。では,その範囲や規模はどの程度のもの
か。さらには背景にあるロシアの中東戦略はどう変わったのか。本稿では,これらの点に
ついて考えてみたい。
4年前の議論
そこでまず,4年前に筆者が展開した議論を簡単にまとめておこう。この際,中心的な
問いとして掲げたのは,そもそもロシアはなぜ中東に関与するのか,特に2015年9月末に
シリアへの軍事介入を開始したのはなぜかという点であった。ロシアが中東において持つ
経済的•軍事的な利権は相対的にも絶対的にも大きなものではなく,またシリア紛争以前
には大規模な軍事介入を行なってきたわけでもないのに,シリアはなぜ例外であったのか,
!「ロシアの中東戦略 ユーラシア大陸から見た中東」参照。https://www.jccme•〇r.jp/l 1/pdf/2020-
02/josei02.pdf
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と言い換えてもよい。これに対して筆者は,
タラル・ミザメディン2の議論を下敷きとしっ
つ,以下3つの要因を挙げた。
•内政要因
プーチンは絶対権力者ではなく,エネル
ギー業界,軍需産業,保守派などの多様な利
益に配慮する必要がある。2012年に大統領職
に復帰したプーチンにとって特に重視せねば
ならなかったのは保守派のそれであり,中東
における影響力の維持が求められた。
筆者紹介
東京大学先端科学技術研究センター准教授。政治学
修士。
1982年千葉県生まれ。早稲田大学社会科学部,同
大学院政治学研究科終了後,民間企業,外務省専門分
析員,公益財団法人未来工学研究所特別研究員,国立
国会図書館非常勤調査員,先端研特任助教などとして
勤務し,2023年12月より現職。専門はロシアの軍事・
安全保障政策で,特に軍改革,核戦略,ハイブリッド
戦争,サイバー戦など。主著に『「帝国」ロシアの地
政学』(東京堂出版,2019年),『オホーツク核要塞』
(朝日新聞出版,2024年)などがあるほか,雑誌や
Web媒体でもロシアの軍事情勢に関する論考を定期
的に発表している。
•安全保障要因
ロシアは常にイスラム過激主義の脅威に晒されてきたのであり,中央アジアの安定化を
考えた場合にもイスラム過激主義対策は大きな意味を持つ。したがって,シリアへの介入
は「対テロ戦争」と位置付けられた。また,シリアにおけるアサド政権の危機はプーチン
の大統領復帰前後に起きたロシア国内の不安定状況とも二重写しに受け取られた。当時の
ロシアでは米国による内政転覆の危機が高まっているとの言説が隆盛しており,これが反
米・権威主義体制であるアサド政権の擁護に繋がった。
•米国中心秩序への挑戦
ロシアは米国による単独覇権の解体を長らく標榜し,これに代わるものとして「多極世
界」路線を掲げてきた。アサド政権の崩壊を阻止することはこの目標に資するものと受け
止められ,しかもオバマ政権の及び腰な姿勢はその好機とみなされた。
以上三つの視角に加えて,シリアへの介入がロシアによる最初のウクライナ介入(2014
年にロシアがウクライナ領クリミア半島を占拠するなどした事件。第一次ロシア・ウクラ
イナ戦争)と連続して起きたことも重要である,ということも当時の筆者は論じた。第一
次ロシア・ウクライナ戦争によって西側から経済制裁を科されていたロシアにとって,米
国の対中東政策を妨害する能力を持つことは対米レバレッジとして一定の価値を持つと考
えられたのではないかという仮説である。ただ,この仮説は同時代的な現象に関するもの
であるために実証的な形で立証できておらず,この点は現在も変わっていない。
しかし,ロシアは米国のように中東全体の秩序を形成•維持するだけの国力や外征能力
を持たない。したがって,ロシアの対中東戦略は,当該域内のあらゆるアクターと短期的・
2前掲の脚注1参照。
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便宜的な関係性を結び,その中から個別的な利益を得ることであろう。とするならば,ロ
シアが中東において2020年時点以上の関与を行おうとしたり,米国並みの軍事プレゼンス
を持とうとしたりすることもないだろう,というのが4年前の結論である。
大きくも小さくもならない軍事プレゼンス
以上を検証していくに際して,まずは中東に対する実際の軍事プレゼンスについて考え
てみたい。軍事的プレゼンスの大小は,ロシアが中東に対してどれだけの(特に軍事的な)
関与を行う意思と能力を持つのかを示す指標となりうるからである。
その上で結論を先に述べるならば,この4年間でロシアの中東軍事プレゼンスは大きく
も小さくもなっていない。つまり,基本的には現状維持である。
これは正規軍について特に当てはまる。この地域においてロシア正規軍が最も大規模に
展開しているのはシリアであり,主にフメイミム飛行場に展開する航空宇宙軍(VKS)部
隊とタルトウース港の海軍部隊,それに少数の特殊部隊から成る。筆者らの行っている衛
星画像分析(米マクサー•テクノロジズの高分解能光学画像の分析を中心とする)によれ
ば,これらの拠点に展開する航空機や海軍艦艇の数は,開戦から2年以上を経ってもほと
んど変化していない。フメイミムでは戦術航空機やヘリコプターの大部分が有蓋シェル
ターに収められているために正確な数をカウントするのは困難であるが,シェルターに収
まらない大型航空機(輸送機や偵察機等)の出入りは開戦前とほぼ同様であり,これは作
戦規模が維持されていることを示すものと考えられよう。海軍についてはロシア海軍の各
艦隊から抽出された水上艦艇や潜水艦のグループ(地中海作戦戦隊)が東地中海に常時展
開しており,その一部が補給や休養のためにタルトウースに寄港するというパターンが変
わらず観察されてきた(なお,タルトウースは本格的な艦艇造修設備を持たず,あくまで
も物資装備補給拠点=PMTOとの扱いである)。
他方,一時期報じられていたエジプトへの空軍基地設置やソマリアへの海軍拠点設置は
実現しないまま現在に至っている。イラン領内へのロシア空軍機の展開についてもごく短
期間試みられただけで継続しなかった。外国軍の展開を禁じたイラン憲法の規定を無視し
てロシア側が一方的にその事実を明らかにしたことが原因とされるが,結果的に中東にお
けるロシア正規軍の展開拠点はシリア一国のままである。
第二次ロシア・ウクライナ戦争が始まって以降,トルコがボスポラス・ダーダネルス両
海峡を交戦当事国の軍艦に対して閉ざしたことも見逃せない。前述の地中海作戦戦隊に艦
艇を派遣し,あるいは補給を担ってきたのはセヴァストポリやノヴォロシースクを母港と
するロシア海軍黒海艦隊であったが,トルコの決定はシリア駐留ロシア軍を策源地から遮
断するものであった。シリアに展開するロシア軍がどうやって兵站を賄っているのかはは
っきりしないが,おそらくはジブラルタル海峡経由での海上輸送か,カスピ海=イラン=
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イラク領空を通過する空路に限定されよう。これはロシアが中東に兵力を展開させる上で
のコストを大きく高めるものである。
また,ロシアは民間軍事会社(PMC)ワグネルを中東•アフリカ諸国に展開させてき
た。体裁としてはPMCだが,実際のワグネルはロシア政府の意向を受けて動く「ロシア
軍別働隊」であり,したがってこれもロシアの軍事プレゼンスに数える必要がある。
広義の中東においてワグネルが最も大きなプレゼンスを持っていたのはリビアの八フタ
ル派支配地域とシリアであった。2023年にワグネルが起こした反乱未遂事件と,その首謀
者であるエフゲニー•プリゴジンの死去によって組織としてのワグネルはたしかに解体さ
れたが,その残党はロシア国防省の直接監督下において依然として活動を継続していると
見られる。実際,旧ワグネル部隊の管理を引き継いだとされるエフクロフ国防次官はプリ
ゴジンの死後,二度に渡ってリビアを訪問し,ハフタルも同時期にモスクワを訪れるなど,
両者の間には活発な往来が見られた。シリアについては旧ワグネル部隊の活動が縮小され
たとの観測が見られるものの,アサド政権を脅かすような規模で反体制派の活動が再活発
化しない限り,大きな影響は見込まれない。
以上のような状況は,今後も大きく変化しないと考えられる。ウクライナでの戦争が続
く限り,ロシアは兵力や財政能力のかなりの部分を欧州正面に割かざるを得ないと予想さ
れるためである。また,ロシアは2022年以降に軍事力の増強を進めてきたが,その大部分
は現在進行中の戦争に必要な兵力の確保と,新たにNATO加盟国となったフィンランド
との国境防衛(約1,350kmに及ぶ)の増強,あるいは核抑止力の根幹であるオホーツク海
周辺の防衛体制強化に充てられることになっており,中東の重要性はあまり高いとは言え
ない。
まだら状の対中東関係
今度は中東諸国との個別の関係性にもう少しフォーカスを絞って考えてみたい。
例えば第二次ロシア・ウクライナ戦争が始まった後,ロシアはイランから自爆ドローン
(シャヘド13レ136)を大量購入し,自国領内でのライセンス生産まで始めた。この戦争
においてロシアに殺傷性兵器をまとまって供与しているのは北朝鮮とイランだけであり,
この意味ではイランの振る舞いは他の中東諸国と一線を画す。さらにイランはロシアから
SU-35S戦闘機やMi-28N攻撃ヘリコプターなどの武器購入も再開しようとしており,力
スピ海を挟んだ軍事的結びつきは戦争の中で格段に強まってきた。
ただ,そのイランもロシアのウクライナ侵略を全面的に支持するには至っていない。口
シアの侵略非難とロシア軍即時撤退を訴えた国連総会緊急会合で,明確に反対票を投じた
国は,中東ではシリアだけであり,イランはイラクとともに棄権に留まった。また,イラ
ンは自国製の自爆ドローンについて「開戦前に供与したもの」と弁明して戦争への直接協
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力を公には否定しているほか,ロシア側の度重なる要請にもかかわらず弾道ミサイルの供
給を2年以上に渡って拒否し続けてきた。ロシアとイランの軍事的関係は従来よりも強ま
っているが,決して軍事的に一体化しているとまでは言えない。
その他の中東諸国となると,侵略を続けるロシアとの関係性にはさらに及び腰な態度を
見せる国が多い。軍事面で顕著なのは,ロシア製武器の買い控えが広がっていることで,
例えばエジプトは,既に自国向けに生産されていたSU-35S戦闘機の引き取りを拒否して
いる(極東のコムソモリスク・ナ・アムーレにあるスホーイ社の工場敷地内には行き場の
なくなったSU-35Sがシートを被せられて並んでいるのが観察できる)。トランプ米政権下
で「制裁を通じて米国の敵対者に対抗する法律(CAATSA)」が2017年に制定されて以
降,中東諸国内は米国からの二次制裁を恐れてロシア製兵器を敬遠する傾向を強めていた
が,第二次ロシア・ウクライナ戦争はこの流れを決定的なものとした。
さらにロシアは戦争で不足する軍需品を補うために,一度売却した自国製兵器のコン
ポーネントを買い戻したり,ソ連規格の砲弾を購入したりすることを打診していたと見ら
れるが,これについても中東諸国の多くは応じていないと見られる。2010年代に幾度か持
ち上がった,サウジアラビアによるロシア製兵器購入の動きも同様の理由で全く見られな
くなった。
イスラエルについては,もともとロシアとの間に深い軍事的関係が存在したわけではな
い。他方,同国はロシアやウクライナから多くの移民を受け入れている関係上,外交・経
済上の関係は浅からぬものがあったことはよく知られている。結果的に,イスラエルは第
二次ロシア・ウクライナ戦争ではほぼ中立を保ってきた。ウクライナ側では,ゼレンスキー
大統領がユダヤ人であるという民族的紐帯からイスラエルによる軍事支援に期待が持たれ
た時期もあったが,ロシアとの関係を慮るネタニャフ政権は早期警戒システムをウクライ
ナに供与する程度に留めている。さらに2023年以降,イスラエルとハマスの間で紛争が始
まると,ウクライナとイスラエルの間では米国からの軍事援助に関するトレードオフ関係
(特に155mm砲弾)まで生じることになった。
第二次ロシア・ウクライナ戦争とロシアにとっての中東
以上を踏まえた上で,筆者による4年前の見立てを再検証してみたい。
全体的に言えば,第二次ロシア・ウクライナ戦争の開戦後,ロシアが中東に関与する動
機はかなり後退したように思われる。
ミザメディンがいう「米国中心秩序への挑戦」という要因自体が大きく変化したわけで
はない。第二次ロシア•ウクライナ戦争が始まる前の2021年12月,ロシア外務省は,旧
ソ連諸国へのNATO不拡大の確約,東欧からのNATO部隊撤退,ロシアを脅かす軍事
演習の禁止といった一連の要求を米国及びNAT〇本部に突きつけているが,これはまさ
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に「米国中心秩序への挑戦」そのものであった。
変化したのは手段の方である。第一次ロシア・ウクライナ戦争後に起きた対西側関係の
悪化を巻き戻すための手段が中東への軍事介入であったというのが筆者の仮説であった
が,現在のロシアは明らかにそのような間接的アプローチを志向していない。ロシアにと
っての最重要正面である旧ソ連西部において,直接に力を用いて現状を変更しようとした
のが第二次ロシア•ウクライナ戦争であって,この意味では中東の相対的重要性は低下し
たと見るべきであろう。しかも,第二次ロシア・ウクライナ戦争の長期化によって,ロシ
アが投入できる軍事的リソースの大部分は欧州正面に拘束されることになった。
その背景ははっきりしない。ただ,中東への関与が対米レバレッジであったと仮定する
なら,実際にはそのような効果は得られなかったということは事実として指摘できそうで
ある。9年間に及ぶ中東介入は,域内におけるロシアの影響力をたしかに高めたものの,
対テロ戦争で米露が協力するとか,対露制裁が緩和されるといったことはなかった。
イスラム過激主義に関わる「安全保障要因」が奇妙に捻れた形でクローズアップされた
のはこのためであろう。2024年3月,ロシアの首都モスクワではショッピングセンターを
狙ったIS (イスラム国)の大規模テロ攻撃が発生し,143人もの死者を出した。モスクワ
で発生したテロ事件としては,人質129人の死者を出した2002年の劇場占拠時点(ノル
ド•オスト事件)をも上回る過去最悪のテロ事案である。しかし,プーチン政権はこの事
件の背後にウクライナの情報機関が存在したとの主張を繰り返し,イスラム過激派の脅威
(まさにシリア介入の公的な理由とされたもの)をあまり強調しようとはしなかった。これ
は,現在のロシアにとって「安全保障要因」の圧倒的多くが旧ソ連西部の秩序によって占
められていることを示唆する。
では,絶対基準で見た場合の重要性はどうか。つまり,中東に大規模な軍事的プレゼン
スを確保しておくことの意味であり,これ自体が大きく低下したわけではないだろう。口
シアに対するイスラム過激派の脅威が消滅したわけではないことは前述のテロ事件一つを
とっても明らかであるし,軍事プレゼンスは中東情勢への影響力,すなわち「米国中心秩
序への挑戦」という観点からも依然として有用ではある。
ただ,ミザメディンのいう内政要因,すなわち「保守派を満足させるための中東介入」
という要素はある程度後退したと考えられる。 2020年7月の憲法改正によって5期目の大
統領選出馬を可能とした時点で,プーチンの国内政治基盤固めは概ね完了していた。2024
年に向けてプーチンがレームダック化する可能性は排除され,実際にプーチンの権力に正
面から対抗する政治勢力も大きなものとはならなかったからである。この構図を決定的な
ものとしたのが第二次ロシア・ウクライナ戦争であり,プーチン政権に異を唱える勢力は
リベラル派,体制内エリート,極右を問わず厳しい弾圧に晒されることになった。プーチ
ンの振る舞いは外見上,保守派の主張する世界観とある程度合致しているが,両者のカ関
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係は大きく変化した。
おわりに
以上の分析は,あくまでも軍事面に限ったものである。外交,エネルギー,食糧など他
の領域にまで視野を広げるならばまた違った構図が見えてこよう。ただ,これは筆者の能
力を明らかに超えるので,ここでは本稿で展開した考察を踏まえて簡単なまとめと今後の
展望を試みてみたい。
第一に,第二次ロシア・ウクライナ戦争は,ロシアの中東戦略を大きく変える契機であ
ったと考えられる。特にロシアの安全保障戦略に占める中東の相対的な意義は大きく低下
した可能性が高い。しかし,第二に,絶対基準で見た場合の中東は,ロシアにとって依然
として一定の意義を持ち続けている。それゆえに現在と大きく変わらない規模での軍事プ
レゼンスは維持されようが,別の言い方をすると,それが現在以上の規模となる見込みは
引き続き低いのではないか。
最後に,ロシアが中東において展開しているとされる「あらゆるアクターと短期的・便
宜的な関係性を結び,その中から個別的な利益を得る」アプローチには有効性と限界の双
方が観察された。前者を代表するのは,米国との極端な関係悪化に際しても依然として少
なからぬ国々がロシアとの関係性を維持し続けていることである。特に中東諸国がロシア
に対する経済制裁に加わらなかったことは,ロシアの戦争遂行能力を確保し,世界的な大
国としての地位を維持する上で大きな意味を持った。他方,これらの国々のうち,イラン
やシリア以外はロシアの戦争を直接支援する側には廻らず,公的には中立を維持し続けて
いる。これは限界といえば限界でもあろうし,好意的に見ればロシアのアプローチが一定
のレジリエンスを発揮した結果と見ることもできないではない。その結果が戦争の先行き
やロシアの将来にいかなる影響を及ぼすのかについては,またいずれ再検証の対象とせね
ばならないだろう。
・本稿の内容は執筆者の個人的見解であり,中東協力センターとしての見解でないことをお断りします。
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