アメリカの富が流出している・・・トランプ大統領の相互関税政策の裏にあるもの。
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/36506886.html
『トランプ大統領が、ベトナムに46%の相互関税をかけると発表しました。これは、本気ですね。というのは、今、中国で何が起きているかと言うと、ベトナムに生産工場を移して、関税を回避しようという動きが出ていたわけです。これを、潰しにきましたねぇ。ちなみに、中国に対する相互関税は、34%です。現時点で20%の関税が、かかっているので、合計すると54%ですね。これによって、ベトナムに対する中国資本の投資が無駄になる可能性が高いです。何よりも、影響がでかいのは、平均年齢の若い労働力で、高成長シナリオに乗りかけていたベトナムですけどね。中国と比べても安い労働力が確保できるベトナムは、海外生産基地として、発展シナリオに乗る矢先だったのです。なので、潰されるのは、かなり痛い。
この形振り構わない関税政策の裏には、アメリカの富が20年間に渡って流出してきたというトランプ大統領の政策の起点があります。これは、2003年頃に、投資の神様のウォーレン・バフェット氏が、指摘してきた事なのですが、生産工場の海外移転や、格安商品の流入による国内産業の停滞により、アメリカが内部に蓄積してきた富が海外へ流出し続けているという考え方です。この時の総額は、概算で2.3兆ドルと言われていたのですが、現在の額は20兆ドルを超えたとされていて、急速にアメリカの富が溶けている事を示しています。
自由貿易による利点は、お互いに得意な事(技術・特産品)、環境が有利な事(鉱物・資源)を、交易する事で、低コストで高品質な商品を融通するという単純なものでした。しかし、国内マーケットで、価格的な有利性を得る為に、海外へ生産を移転したり委託し、労働単価の安さで利潤を得るという、単なる労働単価による競争に市場が移行し、それは、貿易の本来のあるべき姿とは言えないと言えます。
本来は、生産によって、アメリカ国内で発生する価値が、海外で生産され、更に輸入によって、二重に富が海外に流出していると言い換える事もできます。この流れを止めて、海外へ流出した資本をアメリカ国内へ逆流させる事を目指しています。なので、海外資本を受けて、安い労働力で、利益を得ている国である程、高率の関税をかける結果になります。理屈によれば、それで、やっとアメリカ国内と平等な価格競争力が得られるという事です。
更には、関税というのは、アメリカの輸入業者が、政府に収める税金になるので、それは、最終的には商品価格に転嫁されます。つまり、消費税という名の、間接税として消費者から徴収する事になります。その代わり、直接税である所得税を止めるという方向へ舵を切ろうとしています。実は、1900年頃のアメリカには、所得税は無く、関税で国を回していました。制度的に国民の所得を把握して、税金を徴収する仕組みが無理だったので、関税が歳入の全てでした。
それによって、税金徴収から開放し、資本の活発な流通を促すというのが、この政策の肝になる部分です。しかし、私が再三書いているように、経済は予定通りにコントロールできるものではないので、この政策には、とても懐疑的です。数十年かけて、今のルールに最適化された流通を含めた経済システムを、強引に政治的な圧力で変えようとしても、必ず無理が発生します。事業者も消費者も、生産の回帰が完結するまで、高い経費に苦しむ事になります。そして、結果を完全に予測できる人間は、存在しません。これが、うまく機能する保証は、どこにもないのです。むしろ、貿易相手国のヘイトを買って、報復関税や、様々な嫌がらせを受ける可能性が高いです。
最近、トランプ大統領が、大統領制の同一人物の就任が、2期を上限としているのを変更して、3期目を目指す事が不可能ではないみたいな事を言い始めましたが、4年で達成する事は、かなり厳しいと思われます。むしろ、今後の4年間は、アメリカ国内の経済にとっても、リハビリによる痛みに苦しむ期間にしかならないという事です。
ただし、今のまま放置し、可能な限りの借金を続ける事で、無理やり経済を回すのも、アメリカと言えど限界が見えてきています。かつて、世界中に領土を持っていたイギリス帝国が、それでも、衰退し没落したように、創造する価値以上の支出を続ければ、どんな大国でも経済的に潰れます。それは、今までのオランダ・イギリスと続けてきた、覇権国の交代劇を見れば明らかです。今のアメリカ経済を例えるならば、足腰が弱ってベッドから動けないのに、点滴(借金)で生命を繋ぎ、髪のセットや化粧で、表面を取り繕っている病人のようなものです。それが可能なうちは、金をジャブ漬けにする事で、見せかけの好景気を演出できますが、点滴が切れた瞬間に国が終わります。まぁ、それを、積極的に理由を見つけて、ポリコレをガンガン推進して、組んだ予算からポッケに入れていたのが、バイデン政権です。また、その方針に沿って、拡大を続けてきたディープ・ステートと言われる官僚組織です。
私は、そのリハビリの理由を理解して、耐える事がアメリカ国民には、できないと踏んでいます。誰でも痛いのは嫌ですからね。もちろん、関税をかけられて、輸出に弊害が出る貿易相手国にも迷惑な話なのですが、アメリカ国民が何かを得るまでには、長い政策の継続性が必要で、恐らく無理ではないかと考えています。そして、所得税がなくなっても、全体の50%以下の低所得層にとって、もともと収めている税金が少ないので、恩恵が少ないのですよ。さらに、不法移民などは、税金を一度も収めた事が無い人々が普通です。つまり、何も変わりません。
一番に恩恵を受けるのは、全体の1%と言われる超富裕層で、所得税は累進課税なので、物凄い所得税を払っています。50%以下の平均以下の所得層の所得税は、合計しても全体の4%に過ぎませんが、上位1%の富裕層は、納税額にすると、全体の26%を支払っています。この直接税を間接税にする事で、誰であろうと、消費者から公平に税を徴収し、巨額の納税義務から資本を持つを人を開放するのが目的です。その資本は、持ち主がバカで無い限り、新しい価値を創造する資本として、投資に周り、国内経済の好循環が生まれるというのが、シナリオです。
書いていて、「絵に描いた餅じゃない?」とは、思います。だから、失敗すると思います。しかし、今のまま、アメリカが世界の消費の受け皿になって、世界経済が回る社会が、限界に来ている事は、我々も認識する必要があります。少なくても、病人本人が、リハビリをしようと決心しているところなので、こちらも、それなりの対応に切り替えないと、被害が拡大するばかりです。』