フォルクスワーゲンが、軍需産業に再参入する噂。

フォルクスワーゲンが、軍需産業に再参入する噂。
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/36383952.html

『ドイツのメルツ政権が、今までの軍縮路線を転換して、8000億ユーロ規模の再軍備計画を発表した事を受け、フォルクスワーゲンの軍需産業への再参入が噂になっています。この会社なのですが、実はナチス・ドイツ時代から、歴史的に政治と深いかかわりがある企業で、今でも、その影響が残っています。もともと、自動車後進国だったドイツが、ヒトラー政権下で「国民が普通に所有できる車(国民車)」を、普及させる事を目標にして、自動車エンジニアだったフェルデナンド・ポルシェ氏に設計を依頼し、ビートルとして知られる車を開発したのが発端です。この時、資金を調達する為に、労働組合を解散させるなどの強行措置をおこなっています。

第二次世界大戦中は、当然のように軍需産業へ転換させられ、かなり悲惨な強制労働が行われています。戦後はイギリスの管理下で再建され、今の姿になっています。つまり、創業から今までの歴史の中で、政治との関わり合いが、普通では無いくらい強い企業です。そして、この軍事需要に対してフォルクスワーゲンのオレバー・ブルーメCEOは、「軍事装備品の生産を検討する用意はある」と発言しています。また、自動車専業企業として、軍用車の製造に関して、同分野の他社へ助言する用意があるとも述べていて、軍需産業に噛む意欲を示しています。

この政治と企業の他には見られない繋がりは、企業の組織構成にも明確に出ています。例えば、ニーダザクセン州の地方自治体は、フォルクスワーゲンの監査役会に2議席を持っています。そして、従業員代表が10議席を持っています。これが、何を意味するかと言うと、経営者の判断で、会社の資金を自由に使えないという事です。使い道に対して、政治と従業員からの監査が入り、何をするにしても、資金の使い道として妥当かどうかチェックされます。これ、考え方によっては、良い事に見えますが、競争が激しい自動車産業にとっては、致命的に経営判断が遅れる原因にもなります。そして、高い人件費が維持される事で、コストが跳ね上がり、競争力を失う原因にもなります。ようは、大戦時から続く同社の歴史に鑑みて、警戒の鈴が首に付けられたまんまという事です。また、株主が同社の議決権を20%以上持てないようにする、特別な法律で守られています。ある意味、国策企業なんですよね。

その結果として、ドイツ国内の従業員の給料は、欧州の他国にある同社の工場の平均賃金の2倍近い金額になっており、経営危機に際して、海外より優先して、国内工場を3つ閉鎖する経営判断の根拠になっています。最終的に、この工場閉鎖とリストラは、労働組合がゴルフなどの主力製品のメキシコでの製造を飲む事を条件に撤回されましたが、原因が取り除かれたわけではないので、将来に禍根を残す結末とも言えます。これにより、将来的にドイツ国内での製造台数は、現在の半分以下に縮小し、コストの圧縮を図ると共に、「自主退社」による人件費の圧縮も進めるとしています。そして、結果が出なければ、会社が潰れる前に、国内工場の閉鎖問題は、再燃するのは確実です。

もともとは、ブランド価値を武器に、中国でガソリン車と同じように、高い収益率でEVを売りまくる予定だったのですが、中国政府がテスラと協業して、いち早く国内産業化を成し遂げた為、EVにおいて、価格差程の性能の差別化ができず、逆に中国国内企業の安売り合戦に巻き込まれて、まったく売れなくなってしまいました。新品の高級EVが半値でも売れなかったりします。中古の価値は、更に悲惨です。そもそも、ガソリン車と違って、EVでドイツ車に乗っていても、羨望の目では見られません。成功の証でも何でもないからです。

そして、アメリカがトランプ政権になってからの自動車関税の引き上げ、インドで発生した関税に関するインド政府との訴訟問題と、環境は考えうる限り最悪です。この裁判に負けると2100億円の脱税に対して追徴金を加えた損害が発生するので、インド市場を捨てて、撤退する可能性が高いです。この訴訟は、インドが自国の自動車産業を守る為に課している高額の関税を回避する為、部品単位でバラバラに輸入して、現地で組み立てるという回避策を行っていた事に対して、インドの税関が脱税を指摘した事によります。部品で輸入しても、それなりの関税がかかるのですが、フォルクスワーゲンは、輸入時期と輸入元を、バラバラにする事で、何の為に輸入した部品が判別がつかないようにして、結果として、関税回避を目的とした脱税行為を行ったとしています。

もともと、インドは関税による保護政策が強いので、この手が使えないのであれば、市場として捨てる方が良いという経営判断ですね。だとしても、この時期に脱税による罰金は、もし判決が確定すれば、かなり痛いです。

もともと、この企業は政府御用達の変なプライドがあって、テスラがドイツへ進出した時も、当時のCEOが、「過大評価するな。リンゴとオレンジを比べるな」と上から目線でコメントしています。2024年のドイツ国内におけるテスラのEV販売台数は、180万台ですが、フォルクスワーゲンの販売台数は、わずか38万3000台です。まさに、吐いた唾飲み込めよ状態になっています。まあ、最近はイーロン・マスク氏のやらかしで、不買運動が起きていますが、決して安いとは言えないテスラ車でも、ブランド力と価格性能比で、フォルクスワーゲンは負けていたという事です。

ある意味、軍需産業に噛めるのであれば、まさに渡りに船であり、フォルクスワーゲン的には、絶対に逃したくない案件でしょう。ドイツの軍事予算が爆増したのは、トランプ外交が引き起こした波紋とも言えますが、もともとグローバル化に対して、それを止める事を掲げて当選した大統領なので、それを実行しているだけとも言えます。メルケル政権時に、ドイツの天然ガスのロシア依存に、第一次トランプ政権で警告したのにも関わらず、まったく相手にしなかったツケが、今のドイツを招いているとするならば、結果だけ見て、トランプ氏の政策が誤りとは、言えない状況です。振り返れば、正しかったわけですから。彼の悪いところは、ちゃんと説明して同意を得るつもりが最初から無い点です。結果を求める事が優先するので、強制力を伴った命令として、周りに接触します。まあ、説明したところで、「大義」や「思想」を持ち出されて、特に欧州は最初から上から目線で聞く耳を持たないと考えているのでしょうが、外交は、それを知っていても、手続きを踏まないと、遺恨ばかり残って、悪い形で孤立する事になります。』