欧州は平和維持軍の派遣合意に失敗、トランプはウクライナを経済的に侵略

欧州は平和維持軍の派遣合意に失敗、トランプはウクライナを経済的に侵略
https://grandfleet.info/european-region/europe-fails-to-agree-on-peacekeeping-troops-trump-invades-ukraine-economically/

『2025.02.18

欧州は平和維持軍の派遣合意に失敗、トランプはウクライナを経済的に侵略
Politicoは17日「ウクライナへの平和維持軍派遣に対する欧州首脳らの反応は期待外れで合意に至らなかった」と、Telegraphは「トランプの要求は新帝国主義国家の鉄拳制裁だ」「ウクライナはプーチンの軍事的侵略か、トランプの経済的侵略かを選ばなければならない」と報じた。

参考:Europe’s leaders find no quick response to Trump’s bombshell on Ukraine
参考:Revealed: Trump’s confidential plan to put Ukraine in a stranglehold
参考:Giorgia Meloni affiche ses doutes sur l’envoi de soldats en Ukraine

もう米国にロシアの侵略に抵抗するウクライナへの熱狂的な支持は残っていない

米国のヘグセス国防長官やヴァンス副大統領の発言を受けて欧州はパニック状態に陥り、各国の首脳らはパリで「トランプ政権主導の停戦」に話し合ったが、Politicoは17日「この議論の中心は『ウクライナとロシアが停戦で合意した場合、トランプ政権が参加を拒否した平和維持軍を欧州主体で派遣するどうか』だったが、欧州の首脳らは合意に至らず『ウクライナ支援』と『国防費増額』に関して従来通りの立場を口にしただけで、この問題に対する首脳らの反応は期待外れだった」と報じた。

この緊急会議を主導したフランスのマクロン大統領と英国のスターマー首相は「平和維持軍派遣」を支持しているものの、スターマー首相は「ロシアの攻撃を抑止するには米国の関与が不可欠」「平和維持軍のウクライナ派遣は米国参加が条件」と、ドイツのショルツ首相は「現時点で平和維持軍派遣を議論するのは時期尚早で不適切だ」と、米国とトルコに次ぐ戦力規模を誇るポーランドは「ベラルーシやカリーニングラードと国境を接しているためポーランド軍を派遣する余裕はない」と、デンマークは「派遣の是非を議論する前に明確すべきことが沢山ある」と主張し、平和維持軍に対する各国の考え方はバラバラだ。

首脳らは『ウクライナ支援』と『国防費増額』について一定の共通点を見出したものの、オランダのスホーフ首相は「欧州の安全保障について自助努力が必要という米国のシグナルは理解したが、国防費増額の目標について具体的な合意に達するには時期尚早だ」と主張し、Politicoは「ヴァンス副大統領が欧州の民主主義を痛烈に攻撃したにも関わらず、大半の指導者らは安全保障の支柱だった米国との決別には消極的だった」と報じ、ドイツは「欧米間で安全保障と責任の分担があってはならない」と、ポーランドは「欧米の緊密な協力こそが両者にとって最大の利益なる」と訴えている。

出典:President of Ukraine

さらに欧州を揺るがしているのはトランプ政権がウクライナに提案した経済協定の中身で、Telegraphは17日「トランプの要求は窮地に立たされた弱小国に対する新帝国主義国家の鉄拳制裁だ。一番良いのは取引に応じないことだが、ゼレンスキーにそんな余裕は残っていない。プーチンによる軍事的侵略か、トランプによる経済的侵略かを選ばなければならない」と報じた。

“ゼレンスキーは鉱物資源の権益を米国に与えることで武器支援が円滑に進むことを期待していた。さらに重要な鉱物資源は前線に近いウクライナ東部にあるため、ここで米企業が操業を開始すればプーチンの再侵攻を抑止する政治的罠を作り出せるとも計算していたが、まさか敗戦した侵略国に課される条件を突きつけられるとは思っていなかった。トランプが署名を迫った経済協定は1945年の敗戦後、ドイツと日本に課された経済的懲罰よりひどいもので、最終的には両国とも連合国から復興資金を受け取っていた”

出典:President of Ukraine

“トランプが署名を迫った経済協定は「ウクライナ資源に関連した経済的価値」を対象にしており、鉱物資源から得る収益の50%と将来発行される採掘ライセンスがもつ金銭的価値の50%だけでなく、石油・ガス資源、港湾施設、その他のインフラなども協定の対象に含まれ、米国は主権の免除を受けてウクライナの商品・資源経済の大部分をほぼ完全に掌握することになる。この協定は「今後のライセンスとプロジェクトについて米国は方法、選択基準、条件を決める独占的権利を持つ」といった調子で書かれており、これは国務省や商務省ではなく民間の弁護士が書いている”

“この協定を受け入れればウクライナはベルサイユ条約でドイツに課された賠償金(1921年と1924年に削減された額)よりもGDPベースで重い負担を強いられる上、トランプ大統領は「これを拒否すればウクライナはロシアのものになるかもしれない」と脅しており、協定内容を知っていたゼレンスキー大統領はミュンヘン安全保障会議で笑顔を浮かべながら「資源協定への期待」と「これを実行するには法律を改正する必要がある」と主張するしかなかった”

出典:President of Ukraine

他にもTelegraphは「26兆ドルと見積もられた鉱物資源の経済的価値は作り話」「ウクライナは欧州最大のリチウム埋蔵量を誇るが、2022年のバブル崩壊後にリチウム価格は88%も下落し、世界中で大規模なリチウム鉱床が発見され、ネバダ州でも推定埋蔵量4,000万トンのリチウム鉱床が確認されており、まだ採掘も加工されていないウクライナのリチウムはそれほど役にたつものではない」「他の鉱物資源も同様で鉱物資源の価値は誇張されすぎている」と指摘。

それでもTelegraphは「トランプの要求は窮地に立たされた弱小国に対する新帝国主義国家の鉄拳制裁だ。一番良いのは取引に応じないことだが、ゼレンスキーにそんな余裕は残っていない。プーチンによる軍事的侵略か、トランプによる経済的侵略かを選ばなければならない」と書いており、もう米国にロシアの侵略に抵抗するウクライナへの熱狂的な支持は残っていない。

出典:Governo Italiano Presidenza del Consiglio dei Ministri/CC BY-NC-SA 3.0 IT DEED

追記:イタリアのメローニ首相は「欧州主体の平和維持軍はウクライナの安全を保障する上で『最も複雑かつ効果が低い選択肢』だ」「今回の協議は反トランプの取り組みになるべきではない」と述べ、これは米国の平和維持軍関与を求める英国やドイツに近い立場だ。

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※アイキャッチ画像の出典:President of Ukraine

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投稿者: 航空万能論GF管理人 欧州関連 コメント: 102 』