仮想通貨「$トランプ」登場 夫人の「$メラニア」も
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『2025年1月20日 0:10 (2025年1月20日 20:22更新)
トランプ氏は仮想通貨支持を鮮明にした(2024年7月、テネシー州の仮想通貨関連会議)=ロイター
トランプ次期米大統領の一族が運営するトランプ・オーガニゼーションの関連会社は米国時間17日夜、トランプ氏の公式暗号資産(仮想通貨)「$トランプ」を発行した。かつて仮想通貨に対して懐疑的な姿勢をとっていたトランプ氏だが、2024年の大統領選で仮想通貨業界から支援を受けて関係が深まっている。
$トランプは20日に大統領に就任する同氏の人気にあやかったもので、資金が殺到して19日に一時、時価総額は150億ドル(約2兆3000億円)規模に膨らんだ。19日にはメラニア夫人の公式仮想通貨「$メラニア」の発行も始まった。
トランプ氏は17日夜、自身のSNSでの投稿で「私たちが体現するもの、勝利を祝う時だ。特別なトランプ・コミュニティに参加し、$トランプを手に入れよう」と書き込み、宣伝した。
米情報サイト、コインマーケットキャップによると、発行直後の米東部時間17日深夜時点で7ドル台だった$トランプの価格は、19日午前7時(日本時間同日午後9時)ごろに75ドル近辺まで跳ね上がり、時価総額は150億ドル程度となった。ただ、同午後6時30分ごろには37ドル台とピーク時の半値まで下げる場面もあった。$メラニアも荒い値動きとなっている。
代表的な仮想通貨のビットコインやイーサリアムは、米国などで上場投資信託(ETF)の運用対象ともなり、金融資産としての性質をおびるようになった。一方、$トランプや$メラニアは「ミームコイン」と呼ばれる種類の仮想通貨だ。ミームコインは特定のキャラクターやジョークを主題に発行され、経済的な有用性というよりもファン向けグッズに近い。
$トランプは24年7月の暗殺未遂事件後にトランプ氏が発した「FIGHT FIGHT FIGHT(戦え)」という言葉をコンセプトにデザインされた。発行場所となったブロックチェーン「ソラナ」は、ビットコインなどと比べ処理速度が速く取引コストが安いため、ミームコイン市場で最も人気なブロックチェーンの1つとして知られる。
$トランプの公式ウェブサイトによると、最大供給量は10億枚、初期流通量は2億枚の設定だ。今後3年以内に追加で8億枚を発行していくという。同ウェブサイトでは「唯一の公式トランプ・ミーム」と説明し「投資機会や投資契約、有価証券を意図したものではない」と記載している。
異様なのは、最大供給量の8割にあたるコインをトランプ氏の関連会社が保有するとした点だ。通常、明確な使用用途を持たないミームコインでは供給の大半が市場に開放されるケースが多く、$トランプの中央集権的な保有構造には市場関係者から警戒の声が上がる。仮想通貨アナリストの西山祥史氏は「開発側による潜在的な売り圧力が存在する」とみる。
仮想通貨推進の政策を通じて$トランプの価値が高まれば、トランプ氏が実質的に支配する一族運営の会社が潤うことになる。国策と私的利益の間で相反が起きる可能性もゼロではない。
デジタル資産に強いカストディア銀行のケイトリン・ロングCEO(最高経営責任者)は18日、X(旧ツイッター)に「トランプ氏は今や米国の仮想通貨の課税制度を変える真のインセンティブ(動機付け)を持った」と投稿した。
24年の米大統領選以降、仮想通貨相場はトランプ氏への政策期待を追い風に急騰してきた。例えば、24年7月に米共和党議員が提出済みのビットコインを戦略的準備金として保有する法案を巡っては、米政府による大口の買いが発生するとの期待が先行している。
マネックス証券の松嶋真倫・暗号資産アナリストは「今後トランプ氏の一族だけが儲けているといった批判が世論で高まれば、そういった法案も通りにくくなり相場急落につながる」と警戒していた。
(ニューヨーク=竹内弘文、河井優香)
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