中国、市民の監視徹底 居住区の「危険人物」報告奨励

中国、市民の監視徹底 居住区の「危険人物」報告奨励
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM21ACB0R20C25A1000000/

『2025年1月23日 18:28 [会員限定記事]

【北京=田島如生、多部田俊輔】無差別殺傷事件が相次いだ中国で、習近平(シー・ジンピン)指導部が市民社会の監視を徹底している。社会に不満を抱くとみなされる人物の報告を居住区ごとに求め、低所得者らに金を貸す金融業者の強引な取り立ても禁じた。

景気が減速するなか、社会不安の高まりを警戒する。

「八失人員」や「三低三少」に該当する人を見つけたら状況を詳しく知らせるように――。2024年11月下旬、ある地…

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『「八失人員」や「三低三少」に該当する人を見つけたら状況を詳しく知らせるように――。2024年11月下旬、ある地方政府が居住区ごとにある中国共産党の末端組織「社区」のトップに宛てたメッセージがSNSで出回った。

「八失人員」は失業や投資の失敗、男女関係で失意に陥った人を指す。「三低三少」は所得や地位が低く、人付き合いなどが少ないことを意味する。習指導部はこうした人たちを凶悪事件犯の「予備軍」とみなす。

公安当局は危険分子と呼ぶ人物の割り出しや追跡、監視に注力する。膨大な数の顔認識監視カメラと人工知能(AI)、ビッグデータを活用し犯罪の芽を摘む手法だ。

中国政府によると、23年の人口10万人あたりの殺人事件は0.46件だった。「世界で最低水準」だと説明してきた。それでも不動産不況を背景にした経済の低迷で将来不安や政府への不信が強まり「社会性報復」と呼ばれる無差別事件が続く。』

『習国家主席はすぐさま、関係部門に「社会の安定を全力で確保せよ」と再発防止を指示した。それにもかかわらず数日後、江蘇省無錫市の高等専門学校で男が刃物で無差別に切り付け、8人が死亡する事件が起きた。

2つの事件を巡っては20日、犯人の死刑を執行した。無差別事件の模倣犯を防ぐ狙いがある。

香港紙の星島日報は21日、犯行から2カ月後の死刑執行は「史上最速」と指摘する弁護士の声を紹介した。「国民が怒り、社会への影響も大きい刑事事件は早く裁く必要がある。遅くなるほど負の影響が増す」という専門家の見方も伝えた。』

『社会への不満を背景にした事件の予防へ金融当局も動く。国家金融監督管理総局は17日、少額融資を手掛ける消費者金融会社の監督・管理を強める規則を公表した。

消費者金融会社は別の企業に返済の催促などを委託する。新規則は委託先に暴力や威嚇による取り立てをさせないようにする取り決めを厳格に守るよう指導した。個人向けなど一般の貸出限度額を20万元(約430万円)に設定し、保証人の個人情報の流布を禁じた。

内陸部にある消費者金融会社の関係者も「地元当局から強引な取り立てを控えるよう厳しく指導された」と明かす。』