米次期政権、増産で「エネルギー支配」 閣僚候補が表明

米次期政権、増産で「エネルギー支配」 閣僚候補が表明
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『2025年1月17日 7:43

バーガム氏㊧、ゼルディン氏㊥、ライト氏は「エネルギー支配」の重要性を主張する=ロイター

【ワシントン=赤木俊介】トランプ次期米政権のエネルギー・環境政策を担う閣僚候補が相次いで米国による「エネルギー・ドミナンス(支配)」を達成すると表明した。次期政権のエネルギー政策は化石燃料の増産と脱炭素化関連の規制緩和が中心となる見込みで、気候変動対策を重視してきたバイデン政権から方針が180度転換する。

16日、トランプ次期米大統領が内務長官に指名したダグ・バーガム氏と、環境保護局(EPA)長官に指名したリー・ゼルディン氏がそれぞれ米連邦議会上院の承認公聴会に臨んだ。内務省は国有地の資源開発と保護、そしてEPAは環境規制を所管する。

バーガム氏は米国が化石燃料の生産量を増やさない限り、ロシアやイランの勢力拡大につながると主張し「エネルギー支配は海外の戦争を終わらせ、インフレも抑制する」と証言した。さらに「(米国の)電力網は限界に達した。すぐにでも(化石燃料開発の)許認可を進める必要がある」と訴え、安定した電力源がなければ「中国との人工知能(AI)開発競争に負ける」と警鐘を鳴らした。

同氏は2000年代のシェール革命により米有数の産油州となった中西部ノースダコタ州の知事を2期務めた。

ゼルディン氏は16日の公聴会で「経済を妨げない形で環境保護に取り組む必要がある」と語った。バイデン政権下のEPAが定めた排出ガス規制を覆すかという質問に対しては「行政手続きの結果を事前に判断することはできない」として、回答を避けた。一方で、現存の規則を見直すことは「とても重要だ」とも述べた。

同氏は親トランプ派の元下院議員。アメリカ・ファースト政策研究所で中国政策の責任者を務めた。同氏はEPA長官に任命された24年11月、X(旧ツイッター)へ「米国によるエネルギー支配の再確立と、きれいな大気と水の保護を両立する」と投稿した。

15日には、エネルギー長官に指名されたクリス・ライト氏が「エネルギーは国家安全保障の根幹だ」と証言し、エネルギー支配の重要性を説いた。化石燃料開発と規制撤廃が「米国の歴史的な繁栄と世界平和につながる」というトランプ氏の主張を3人ともなぞった形だ。

エネルギー省、内務省、そしてEPAはバイデン政権で、再生可能エネルギーの導入拡大、液化天然ガス(LNG)の新規輸出・開発の審査凍結、国有地での石油・ガスの掘削手数料の引き上げ、そして排ガス規制の厳格化など脱炭素化と気候変動対策に力を入れてきた。トランプ氏はこうした規制をすべて撤廃するとしている。

トランプ氏は気候変動危機を「史上最大の詐欺」と非難したことがある。一方で、バーガム氏、ゼルディン氏、ライト氏の全員が公聴会で気候変動の存在を認めた。気候変動対策を重視する野党・民主党の議員らをなだめる意図があったとみられる。

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