プーチン体制は、ソ連末期のパターンをなぞる崩壊過程にある。
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『Ambrose Evans-Pritchard 記者による2024-12-10記事「Putin’s regime may be closer to a Soviet collapse than we think」。
プーチン体制は、ソ連末期のパターンをなぞる崩壊過程にある。
軍事ケインズ主義は、1917年後半のドイツ財政と同様に、先行きが暗い。民生部門の生産力を軍需へ転用する国内カニバリズムによって、余命を保つのみ。
原油輸出による政府歳入は、軍費を賄うに到底足らない。
ロシアのデジタル大臣いわく、IT従事者が60万人足りない。それとは別に、軍需工場では40万人の労働者が足らない。ロシア全体では、500万人の労働力が不足している。
ナノテクノロジー分野が特に暗い。この分野で西側から受けている制裁には、抜け道がみつからない。そしてロシア国内にはこの分野の先端人材を育成する教育機関が無い。今後、自力でどうにかできる見通しは無い。
ロシア産の化石燃料を輸出することによる外貨収入は、2022年のなかばには、1日に12億ドルくらいだった。しかし直近10ヵ月だと、1日に6億ドル。
Goldの準備量は、直近15ヵ月で、554トンから279トンに減った。
JP Morgan の予測によると、来年は世界中で毎日130万バレルの原油が採掘される。ブラジル、ギアナ、そして米国のシェールが生産量に貢献する。結果、国際油価は、バレルあたり45ドルから50ドルまで値下がりする。これはインフレ調整をすると、1980年代と等しい。その低い油価が、ソ連邦を崩壊させたのだった。
※航行中のタンカーの船底から十分な距離をとって、その真下で小型機雷を爆発させると、船体に亀裂は入らないが、エンジンが止まってしまうという現象が起きる。ロシアのシャドー船団タンカーを撃沈すると国際油価が上がって米国政府が厭な顔をするが、タンカーを故障させて漂泊させるだけとすれば、困るのはロシアだけだ。ウクライナ政府はこのような攻撃を2022年のうちに考えて実行すべきだったのに、指導層に軍事的な目端の利く者がいなかったがために、かくも長期の苦境をみずから求めて味わっているのである。
IEAによる推計。ウラル原油をロシアは、2023~24年において、バレルあたり15ドルでダンピング輸出(インドと中国向け)する必要があった。
集積回路のチップを輸入できないことが、露軍兵器の調子を悪くしている。シャヘド136の内製品である「Geran-2」は、しばしば、勝手に墜落しているという。また、「Т-90М」戦車には本来、レーザー誘導システムが実装されるのだが、最近はそれが搭載されてないという(これは『ワシントンポスト』紙の特だね)。
ある専門家いわく。ロシア国内の工場では、90ナノメーター以下の絶縁幅をチップ上で実現することができないのだという。これは「中世暗黒時代」の水準だと言える。
今、注目されているのはサウジアラビア。同国が原油を増産すると決定すれば、国際油価はバレルあたり40ドルまで下がるはずだから。そうなれば1989年のソ連のように、プーチン体制は、一夜にして破産する。
ウクライナ戦争は、リヤドにおいて、終わるはずだ。』