メキシコ、トランプ氏関税に警告 「米国40万人雇用失う」
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『2024年11月28日 6:51 [会員限定記事]
エブラルド経済相は自動車価格が上昇し、雇用が失われると警告した(27日、メキシコシティ)=大統領府提供
【メキシコシティ=市原朋大】メキシコのエブラルド経済相は27日、メキシコからの輸入に25%の追加関税をかけると宣言したトランプ次期米大統領に「自分で自分の足を撃つようなものだ」と警告した。同氏は独自の試算を元に「米国では約40万人の雇用が失われるだろう」などと分析した。
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シェインバウム大統領の定例記者会見に同席したエブラルド氏は、25%の追加関税が米ゼネラル・モーターズ(GM)や米フォードなどの「利益に対する税金を2倍にするのに等しい。自動車部品を含めた企業への影響は甚大だ」と述べた。価格上昇による販売不振が自国の自動車産業を直撃するとの主張だ。
エブラルド氏はトランプ第1次政権時にメキシコ外相として、トランプ外交と相対した経験がある。この日は1970年代のニクソン政権時の関税導入の結果、米国で輸入製品の価格が上昇し、消費者が最大の被害者となったとの見方を示した。
政治リスクの高まりや賃金格差の拡大を受け、日米欧の自動車大手はメキシコの生産拠点を増強してきた。エブラルド氏によると米国で販売されるピックアップトラックの8割超がメキシコ生産で、GMやフォード、欧州ステランティスなどは「最も影響の小さい想定でも1台あたり平均3000ドル(約45万円)の値上げとなる」と推定した。
エブラルド氏はトランプ氏再選後、米国からの輸入に対するメキシコの報復関税に言及したこともある。ただ、この日は米国、メキシコ、カナダが世界のGDPの30%を生み出していると強調したうえで「関税で経済を弱体化させるか、競争力のある地域を共に築くか」の二者択一を迫った。関税の応酬を避けたい希望がにじむ。
シェインバウム大統領はトランプ次期米大統領の就任前に協議を目指している(27日、メキシコシティ)=大統領府提供
シェインバウム大統領は「100年にわたってメキシコで製造し、米国に輸出している米国企業にも影響を与える」と述べ、重ねてトランプ氏の追加関税政策を非難した。メキシコ国内への海外直接投資額は2024年1?6月で310億9600万ドル(約4兆7000億円)と過去最高を更新し、うち4割超を米国系の企業が占めていた。
2026年に内容の見直しが予定される自由貿易協定、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)をめぐり、米国とカナダは中国への追加関税に追随しないメキシコに不満を抱いている。シェインバウム大統領は「中国とは良好な関係を築いており、世界全体とも非常に良い関係にある」と述べるにとどめた。
同氏はまた、デラフエンテ外相のチームがトランプ氏の政権関係者と連絡を取っているとして、25年1月に迫る同氏の大統領就任前に米国とメキシコの政権同士での協議の場を持てるよう交渉していると認めた。
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