ビットコイン「ミーム」株急落、トランプラリーに冷や水

ビットコイン「ミーム」株急落、トランプラリーに冷や水
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN26DL00W4A121C2000000/

『2024年11月27日 7:24 [会員限定記事]

26日の米株式市場でダウ工業株30種平均は前日比123ドル高の4万4860ドルで終えた。5営業日続伸した一方、レディットなどの掲示板ではミーム株(はやり株)としてもてはやされてきたマイクロストラテジー(MSTR)は急落した。ミーム株の突然の失速はトランプラリーの酔狂をさます冷や水となるか。

「MSTRですべてを失った」「MSTR株は再び浮上するのだろうか」。MSTR株が12%安に沈んだ26日、オンライン掲示板のレディットは個人投資家の悲鳴で埋め尽くされた。

トランプ氏が米大統領選で勝利して以降、MSTRはミーム株としてもてはやされてきた。全体の発行高のおよそ2%にあたる38万6700ビットコインを保有し、ビットコイン相場の上昇にあわせて個人投資家の流入が相次いできたためだ。

人気の理由は値動きの大きさだ。大統領選のあった5日から直近高値までの上昇率は約140%と、ビットコインの4割を上回る。

10月30日には公募増資などで420億ドルを調達すると表明。22日には調達資金でビットコインを追加購入したことを明らかにした。創業者のマイケル・セイラー氏は「ビットコインの値動きを上回る方法を見つけた。レバレッジ(てこ)をかけることだ」との持論を披露する。

疑似的にビットコインに投資しつつ、節税を図れる点も魅力の一つとされた。日本の少額投資非課税制度(NISA)に類似する「ロスIRA(個人退職勘定)」を通じて同社株に投資すると、元本と運用益は課税対象外になる。

一方、仮想通貨交換会社などを通じてビットコインを売買すると、保有期間が1年未満なら運用益に通常の所得税がかかる。1年以上ならキャピタルゲイン課税の対象として最大20%の税金がかかる。

ロスIRAは原則、59.5歳未満で引き出すと通常の運用益課税に加え10%のペナルティー税が課される。それでもレディットには「ロスIRAの全額をMSTRに突っ込んだ!」とのスレッドが乱立した。

日々のリターンがMSTR株の値動きの2倍になる上場投資信託(ETF)に資金が流入するなど、熱狂に拍車がかかった。米タトル・キャピタル・マネジメントのマシュー・タトル氏は「我々はセイラー氏のような大物経営者がファンダメンタルズ(基礎的条件)を変えられる時代に生きている」と強調する。

米調査会社ヤルデニ・リサーチのエリック・ウォーラーステイン氏は「ビットコインが上昇すると、ビットコインを購入するためにさらに多くの資金を調達する。ビットコインは上昇し、MSTRも上昇する。そういう戦略のようだが、まるで暴走機関車のようだ」と同社株の先行きを懸念する。

MSTRの時価総額は約800億ドル。一方、保有するビットコインの時価総額は約350億ドルに過ぎない。前週には空売りを得意とするシトロン・リサーチが「MSTRはビットコインのファンダメンタルズと乖離(かいり)している」として空売りを開始。上昇一辺倒の値動きは転機を迎えている。

ビットコインも最高値から1割近く下落した。トランプラリーのうたげは終わりを迎え、市場はファンダメンタルズを冷静に見極める段階に入っている。

(ニューヨーク=三島大地)』